理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
23 巻, 1 号
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原著
  • ─集団運動提供時の心肺機能に関するリスク管理の検討─
    上村 さと美, 秋山 純和
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    介護老人保健施設で行われている集団運動において,過負荷が生じている可能性がある。入所者を対象に反復起立運動を運動負荷方法に用い,安静時から運動時における心肺機能評価を行った。安静時および安静時から運動時評価項目を設定し,反復起立運動の前後に5分間の安静を保持する測定過程において評価を行った。全対象の11名(45.8%)に問題を認めたことから,集団運動では過負荷が生じている可能性が示唆された。集団運動についても,個々の心肺機能評価に基づく運動の提供が必要と考える。
  • 松本 和久, 木村 篤史, 松本 渉
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    膝を押す立ち上がり(膝押し群)と坐面を押す立ち上がり(坐面押し群),および肘掛けを押す立ち上がり(肘掛け押し群)にて,最大努力速度でのTimed“Up and Go”test(TUG)を,平均年齢20.4±0.7歳の健常女性8名を対象に10 kgの負荷を課して測定した。それぞれの結果の有意水準は5%でWilcoxonの符号付き順位検定を行った。膝押し群は,坐面押し群と肘掛け押し群の両群に対して有意に遅かった(p<0.01)が,坐面押し群と肘掛け押し群の間には有意差を認めなかった。このことから,これまでのTUGの報告は再度検証する必要があり,TUGの計測には高さの等しい肘掛け椅子を使用する方法に統一する必要があると考えた。また肘掛けのない椅子を用いる場合には,具体的な教示をすることが必要と考えられた。
  • 石井 慎一郎, 山本 澄子
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    スクリューホームムーブメントの特性を明らかにするため,非荷重位での膝関節伸展運動をPoint Cluster法を用いた三次元動作解析により計測した。対象は20~65歳までの健常成人30名とした。その結果,19人の被験者は膝関節の伸展運動中に脛骨が外旋し,5人の被験者は終末伸展付近から脛骨が内旋し,6人の被験者は伸展運動中に脛骨が内旋していた。終末伸展付近から脛骨が内旋する被験者は女性が多く,全ての被験者がLaxity Test陽性という身体的特徴を有していた。また,膝関節伸展運動中の脛骨前方変位量も大きいという特徴も認められた。伸展運動中に脛骨が内旋する被験者は,40~60歳代の年齢の高い被験者であった。スクリューホームムーブメントは,靭帯の緊張や加齢変化によって影響を受けることが明らかとなった。
  • 江口 淳子, 渡邉 進, 小原 謙一, 石田 弘
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,ボールを用いた脊柱可動性増大運動の介入を行うことで生じる脊柱の彎曲角の変化を検討することを目的とした。対象は,下肢・体幹に疾患の無い健常男性10名(平均21±1.1歳)とした。脊柱彎曲角の測定には脊柱計測分析器を用いた。指標は体幹傾斜角,胸椎彎曲角,腰椎彎曲角,仙骨傾斜角とした。立位での体幹屈曲時の脊柱彎曲角を介入前後で計測した。介入はリラックスしてボール上に60秒間腹這位をとることとした。介入前後の脊柱彎曲角をWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較した(p<0.05)。その結果,体幹傾斜角と仙骨傾斜角は介入後に有意に増大し,腰椎彎曲角は有意に減少した。これらの結果から,ボールを用いた脊柱可動性増大運動は,脊柱の彎曲角,主に仙骨傾斜角に影響を及ぼすことが示唆されていた。
  • ─ラット足関節固定モデルを用いたトレッドミル走行との併用効果の検討─
    坂口 顕, 沖 貞明, 金井 秀作, 長谷川 正哉, 清水 ミシェルアイズマン, 大塚 彰
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    廃用性筋萎縮予防に効果があると報告されている運動療法と温熱療法を併用することで,より効率よく廃用性筋萎縮の発生予防が可能であるかどうか検討するため,ラットを用いて実験的研究を行った。一側の足関節に1週間のギプス固定を施すことによってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を発生させ,固定期間中に運動療法としてはトレッドミルを,温熱療法としては温浴を用いた。その結果,運動療法および温熱療法単独の施行においては,筋萎縮の発生は予防できなかったものの,それらを併用した群においては筋萎縮の発生を予防することができた。これは,臨床場面においても,温熱療法と運動療法を併用することで,より効果的に筋萎縮の発生を予防できる可能性があることを示すものである。
  • ─ICFコアセットを用いて─
    日下 隆一, 小森 昌彦, 田中 康之, 逢坂 伸子, 長野 聖, 黒川 直樹, 藤本 哲也
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    自治体に勤務する理学療法士を対象に,郵送したICFコアセットを用いて介護予防における理学療法士の関わりを調査,分析し,効果的な介護予防のあり方を検討した。理学療法士の視点の強さは「心身機能」「活動と参加」「環境因子」の順であったが,それぞれの構成要素に対する介護予防との関連性は50%以下であった。また,項目間の偏りが顕著であり運動機能とその関連項目が高い値を示した。これらは,理学療法士がICFの理念や概念は理解しているものの,その活用が不十分であることを示すものであり,効果的な介護予防の企画や実施にあったては,「心身機能」「活動と参加」「環境因子」のそれぞれの具体的な関連性から考えることも重要であると考えられた。
  • 三谷 保弘, 森北 育宏
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,健常な成人男性20名を対象に,静的立位における矢状面での腰仙椎アライメントを測定し,体幹筋力ならびに下肢筋伸張性との関係を検討することである。腰仙椎アライメントは,X線像を基に仙椎傾斜角と腰椎前弯角を測定した。体幹筋力は,体幹屈曲ならびに伸展の最大等尺性筋力を測定した。また,体幹伸展/屈曲筋力比(E/F比)についても求めた。下肢筋伸張性は,大腿直筋とハムストリングの伸張性を測定した。結果,腰仙椎アライメントは,体幹筋力ならびに下肢筋伸張性との関係を認めなかった。ただし,腰仙椎アライメントとE/F比との間には正の相関を認める傾向にあった。これは,腰仙椎アライメントの変化が体幹の筋活動に変化を生じさせ,その結果,E/F比にも変化が及んだものと考えた。
  • 山野 薫, 秋山 純和
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は急性期病院の理学療法部門におけるリスクマネジメント体制整備の調査を目的としている。福祉保健医療情報ネットワーク事業の登録病院(9,019施設)の中から条件により絞り込み抽出した169施設を対象とし,質問紙法によるリスクマネジメント(RM)に関する調査を実施した。回収数は,112通(回収率66.3%)であった。病院の規模は200~1,500床,平均24診療科,平均理学療法士数は10.5人であった。理学療法部門で整備配置している主な機器は,心電図モニター,経皮的酸素飽和度測定器,酸素,吸引装置などであった。吸引装置を整備している施設(53.6%)の中で,看護師が勤務していない施設が37.5%あり,理学療法士の吸引技術の習得が必要な時期となっていると考えられる。安全な理学療法施行の対策は,機器・帳票類の整備によるRMなどと考えられ,緊急時の対応に関して抜本的な見直しが必要である。
  • 越智 亮, 太場岡 英利, 片岡 保憲, 森岡 周
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,異なる摩擦抵抗の支持面上で立位をとっているとき,外乱に対して下腿筋活動の特性が変化するかどうか,そして繰り返しの施行によってその筋活動パターンが修正されるかどうかを明らかにすることである。健常男性7名を対象に実験を行った。内側腓腹筋と前脛骨筋から,EMGを導出した。実験手順は,1)ゴムマット(摩擦高い),2)木製板(摩擦中間),3)ビニールシート(摩擦低い)の3種類の支持面を用意し,その上で立位をとった被験者に,足関節底屈の角度が経時的に漸増する外乱を与えた。また,各々の条件は5回ずつ繰り返し,1施行目と5施行目のそれぞれの筋活動を記録した。その結果,内側腓腹筋の筋活動量は支持面の摩擦抵抗によって異なること,および繰り返しの施行によって筋活動パターンが修正されることが示唆された。
  • 下田 隼人, 佐藤 春彦, 鈴木 良和
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,身体重心の軌跡の変動に基づき,歩行時の動的安定性を直接数値化し,それが安定した歩行と不安定な歩行を明確に区別できるかを検討した。対象は健常成人男性11名とした。歩行条件としては,トレッドミルを利用した低速度(1.0 km/h),中速度(2.5 km/h),高速度(5.0 km/h)での定常歩行3条件(安定歩行条件)と,トレッドミルのベルト速度を加減速(0.1 - 5.0 km/h)させ,身体のふらつきを誘導した不安定歩行条件の計4条件とした。歩行安定性の評価として,前額面上における身体重心の軌跡から,1歩行周期毎の身体重心左右動揺幅と1歩行周期時間それぞれの平均値,標準偏差,変動係数を求めた。その結果,身体重心左右動揺幅と1歩行周期時間の標準偏差および変動係数は,安定歩行条件下では歩行速度間で有意な差を認めなかったのに対し,安定歩行条件と不安定歩行条件の間には有意な差を認めた。以上より,身体重心軌跡の左右変動は,歩行の不安定さを直接的に表す指標となる可能性が示唆された。
  • ─1事例研究デザインによる予備的研究─
    高取 克彦, 松尾 篤, 庄本 康治, 梛野 浩司, 徳久 謙太郎, 鶴田 佳代
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    右視床出血により左上肢のComplex regional pain syndrome type 1(CRPS1)を呈した1症例に対し,Moseleyの運動イメージ・プログラム(Motor imagery program: MIP)を実施した。MIPは3種類の介入(1.手の左右認知,2.患手の運動イメージ,3.Mirror therapy)で構成されており,皮質ネットワークの賦活を目的としたものである。介入効果は一事例研究デザインにて検証した。結果としては,MIP実施期間に特異的な疼痛軽減が認められ,その効果はMIP終了後も持続していた。また患手の模写による身体図式の評価ではMIP後,より詳細な描写に変化した。これらのことからMIPは脳卒中後CRPS1患者の身体図式を変化させ中枢性の疼痛軽減効果を持つ可能性が示唆された。
  • 豊田 輝, 山崎 裕司, 加藤 宗規, 宮城 新吾, 吉葉 崇
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では模擬大腿義足歩行を課題として,シェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を活用した練習プログラムを考案した。そのプログラムを課した介入群の運動効果と自身による反復練習を課した対照群の運動効果について比較検討した。結果,対照群,介入群の両群ともに練習後有意な10 m歩行時間の短縮と,膝折れ回数,外転歩行回数,および体幹の側屈歩行回数の減少を認めた。しかし,その改善度合はいずれの項目も介入群において大きく,伸び上がり歩行回数については,介入群でのみ改善を認めた。したがって,今回のシェイピングとチェイニング法,プロンプト・フェイディング法を用いた歩行練習は,口頭説明と対象者自身による反復練習に比べ,より早期に模擬大腿義足歩行のスキルを向上させるものと考えられた。
  • 龍田 尚美, 中嶋 正明, 秋山 純一, 野中 紘士, 祢屋 俊昭
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    我々は,関節固定期間中に固定の解除と再固定が自由かつ簡便にできるラット膝関節創外固定法を考案した。本関節創外固定法は2本のキルシュナー鋼線をそれぞれ大腿骨と脛骨に前額-水平軸にそって刺入し,それら2本のキルシュナー鋼線を連結ディバイスによって結合させることにより膝関節を不動にするものである。今回,我々は実験動物としてラットを用い,この関節創外固定法の実験的関節拘縮モデル作成法としての有用性を検証した。5週間の関節固定負荷の結果,関節固定時に特徴的とされる関節可動域の減少や組織学的所見が確認された。また,浮腫,炎症,鬱血などの副次的作用を排除することができた。この結果より,本関節創外固定法は実験的関節拘縮モデル作成法として有効であることが示された。
  • 村田 伸, 大山 美智江, 大田尾 浩, 村田 潤, 豊田 謙二, 藤野 英巳, 弓岡 光徳, 武田 功
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,地域在住の女性高齢者56名(平均年齢74.8±6.3歳)の開眼片足立ち保持時間を測定し,上下肢筋力や柔軟性,足底感覚などの身体機能評価ならびに注意機能との関連を検討した。重回帰分析によって,片足立ち保持時間に影響を及ぼす因子として抽出されたのは,足把持力と年齢であり,足把持力が強いほど,また年齢が若いほどに,片足立ち保持が安定していることが確認された。今回の知見より,地域在住女性高齢者の片足立ち能力を高めるためには,足把持力を高めることの重要性が示された。
  • 宮原 洋八, 小田 利勝
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 地域高齢者の2年間の追跡調査にもとづき自立に影響するライフスタイル,生活機能,社会的属性との関連を明らかにすることである。調査の対象は,奄美大島笠利町に住む高齢者223名(平均年齢76.4歳)で,初回調査時(2005年)に性,年齢,家族構成,転倒状況を聴取し,ライフスタイル22項目,生活機能13項目に関して質問紙を用いた面接調査を行った。これらの対象に対する追跡調査(2007年)でIADLの全項目が自立していた者は75.4%に見られた。各要因の自立への影響を検討するために,ロジスティック回帰分析を行った。その結果,社会的なライフスタイル,生活機能を維持することが高齢期における自立を維持するために有用であることが示唆された。
  • 竹内 弥彦, 武村 珠里, 櫻井 健弘, 山田 雅子, 吉村 実千晴
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,母趾末節底部の触圧覚刺激が足圧中心トラッキング動作(動的バランス)に与える影響を明らかにすることである。対象は健常学生15名とした。刺激条件は裸足での刺激なしと母趾末節底部をゴム球で刺激する2条件とした。フォースプレート上で,前方のモニターに映しだされる目標点に足圧中心を一致させるトラッキング動作を課題とした。課題における評価項目は,立ち上がり時間,目標点との誤差,誤差の改善率,足圧中心の動揺速度および動揺加速度とした。結果は,母趾末節底部に刺激を負荷した条件で,誤差の改善率が有意に高くなり,さらに,足圧中心動揺速度と加速度が有意に低下した。本研究の結果から,トラッキング動作における母趾末節底部の触圧感覚情報の増加は,目標点との位置誤差の修正と足圧中心動揺の安定性に関与していることが明らかとなった。
  • 木野田 典保
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は脳卒中片麻痺例において,どのようなボディイメージがみられるかを確認することである。脳卒中片麻痺7例に対し半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。得られたインタビューデータより定義付け,概念化を試みると「身体の不明瞭な感覚」,「感じられる異常感覚」,「動作の拠りどころとなる感覚」,「動作上達の要件」という4項目があがった。また,生成した概念とカテゴリーの関係を検討して結果図を作成し,分析における全体像を表した。結果,脳卒中片麻痺例にみられるボディイメージの障害構造の一端を表している可能性を示唆した。今後,ボディイメージに関する評価を確立する上でも質的研究が大きな役割を果たすものと期待される。
  • 山下 弘二, 盛田 寛明, 小島 俊夫
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,セグメンタル生体電気インピーダンス法(BIA)による脳卒中片麻痺患者の非麻痺側と麻痺側における筋量測定の有用性を検討することである。対象は脳卒中患者11名と健常者16名であった。脳卒中患者は発症後6ヶ月以内で,運動療法を行っていた。筋量はセグメンタルBIA法による四肢誘導12電極の筋量測定装置を用いて,仰臥位で測定した。その結果,脳卒中患者の非麻痺側筋量と健常者の左右筋量の間に有意な差が認められなかった。脳卒中片麻痺患者の麻痺側筋量は,健常成人の左右筋量より有意に低値を示した。脳卒中患者の非麻痺側と麻痺側の筋量差は,健常者の左側と右側の筋量差より有意に高値を示した。以上の結果から,セグメンタルBIA法は,脳卒中発症からの非麻痺側と麻痺側の筋量の差異を鋭敏にとらえることができ,簡便で非侵襲的な筋量測定法として理学療法の臨床で有用であることが示唆された。
  • 西上 智彦, 榎 勇人, 野村 卓生, 中尾 聡志, 芥川 知彰, 石田 健司, 谷 俊一
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    低活動状態の1日歩行量を補填し,腓腹筋の廃用性筋萎縮を予防するために運動療法メニューの適切な運動回数を検討した。対象は健常者10名。評価筋は右側腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭とした。腓腹筋筋活動量の測定は(1) 端坐位片足踵上げ,(2) 立位両足踵上げ,(3) 立位片足踵上げ,(4) つま先立ち歩行,(5) 最大等尺性足関節底屈運動とした。分析方法はまず,自由歩行時の筋活動量を(1)から(5)の各動作の筋活動量で除し,各運動療法メニュー1回に対応する歩数を求めた。次に,低活動状態を想定し,6,000歩(片側3,000歩)の筋活動量と対応する各運動療法メニューの回数を求めた。結果,一般臨床で実施されている運動回数では筋萎縮の抑制効果は極めて少ない可能性が示唆された。
  • 佐藤 仁
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    臨床評価実習を控えた3年生に対して模擬患者を導入した授業を試みた。模擬患者は上級生に協力依頼し,臨床実習で担当した片麻痺者を演じさせた。1グループ4~5名で理学療法評価を行い,評価結果から立案した理学療法プログラムを発表させた。アンケートによる授業評価も実施し,当該授業の在り方について検討した。模擬患者を導入したことで,全体像から各検査測定を選択実施して評価する姿勢が見られた。言葉遣いや態度をはじめ,検査測定方法,理学療法プログラムなどに関する同級生内の相互指摘が,学生にとって良い刺激かつフィードバックになった。当該授業は,学生にとって理学療法評価の流れなどのイメージ化や理解の向上に有効と考えられる。
  • 郭 丹, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    一般的測量手法の中の三角測量の原理を用いて,物体の空間位置(3次元座標)を測定する装置を開発し,その信頼性および妥当性を検討した。信頼性は,三角定規を空間に設置し,それを10名の検者で計測し評価した。妥当性は,3次元動作解析装置の計測値と比較することで評価した。結果,検者間級内相関係数は0.97,3回の繰り返し計測の検者内級内相関係数は0.93であった。また,3次元動作解析装置との比較では,その誤差は1 mm以内であった。これらより,開発した空間位置計測装置の信頼性と妥当性が示され,特に局所的な動作分析装置として有効に使用できるものと考えた。
  • 甲田 宗嗣, 新小田 幸一
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 125-131
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    椅子座位から立ち上がり,歩行に至る一連の動作(起立-歩行動作)について,三次元動作解析装置および床反力計を用いてバイオメカニクス特性を分析し,膝筋力,バランス指標および転倒経験の有無との関連について検討した。対象は健常高齢男性18名(平均年齢73.9±5.3歳)であり,対象にはできるだけ速く起立し,3 m歩行するよう教示した。バランス指標はTUGテスト,Functional Reachテスト,左右最大一歩幅とした。結果として,起立-歩行動作のバイオメカニクス特性と膝筋力およびバランス指標との間に幾つかの相関が認められた。また,転倒群ではTUGテストの所要時間が長く,起立-歩行動作において直立位近くまで立ち上がってから歩き始めるという特徴を示した。
  • ─歩行自立群と非自立群を比較して─
    斉藤 琴子, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺者の非麻痺側の敏捷性と歩行自立との関係について検討した。対象は脳卒中左片麻痺者18名(歩行自立群9名,歩行非自立群9名)と健常中高年者9名とした。方法は非麻痺側の最大タッピング,最大ステッピングの叩打間隔時間を測定した。各群の最大タッピングと最大ステッピングの間では有意差がみられ,最大タッピング,最大ステッピングは共に歩行非自立群,歩行自立群,健常中高年者群の順で速かった。脳卒中片麻痺者の非麻痺側の敏捷性は低下し,歩行能力に影響していることが示唆された。麻痺側のみのアプローチだけではなく非麻痺側へ敏捷性を含めたアプローチを行う事により歩行能力などの改善へつながる可能性が考えられる。
  • 斉藤 琴子, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    健常成人22名を対象とし,上肢の敏捷性および同調性の測定部位の差異による影響について検討した。課題は最大タッピングと4 Hzの音刺激に同調した同調タッピングとし,両側の指と手のタッピングを用い,タッピング時間間隔と変動係数を求めた。利き手と非利き手を比較すると,利き手の手タッピングはタッピング時間および変動係数に有意な低値がみられた。指タッピングはタッピング時間に有意差はないが,変動係数には有意な低値がみられた。利き手の手関節は他の部位よりタッピング時間および変動係数が低値であった。これらのことから,利き手の手タッピングが最もパフォーマンスが高いことが示された。
  • 菅田 由香里, 田中 浩介, 浦辺 幸夫
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,大腿部と下腿部の回旋を個別に測定できる装置を作製し,スポーツ動作中の膝関節の回旋運動を捉えることを目的に行った。着地動作について,特にACL損傷が発生しやすいとされる着地動作初期に注目し,膝関節運動を解析した。対象は下肢に既往のない学生30名(男性15名,女性15名)とした。結果として,大腿に対する下腿の回旋(膝関節回旋)は男性については静止立位から踵接地にかけて外旋することが明らかとなった。女性については膝関節が外旋するものと内旋するものに二分された。したがって,正常膝であっても女性では着地動作初期において,膝関節の外旋も内旋もありうるということが明らかとなった。
  • 寺垣 康裕, 新谷 和文, 臼田 滋
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳血管障害患者の座位前方リーチテストの臨床的有用性の検証であり,脳血管障害患者22名を対象に座位前方リーチテストを実施し,Optical Righting Reactions(ORR)・Trunk Control Test(TCT)との関連性,Functional Reach Test(FRT)・Functional Movement Scale(FMS)・Functional Independence Measure-motor item(FIM-m)との関連性を検討した。座位前方リーチテストはORRと中等度の相関を認め,体幹機能の関与が伺えた。座位前方リーチテストとFRT間に有意な相関を認め,今後の予後予測への利用を踏まえると発症早期から実施可能な座位前方リーチテストの臨床的測定意義は大きい。座位前方リーチテストとFMS間に中等度の相関を認め,下肢機能を含めた測定が有用と考えた。座位前方リーチテストは体幹機能の経時的変化を定量的に追え,簡便かつ短時間で実施可能な評価指標であり臨床的に有用であると考えられた。
  • 木下 聡美
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 157-161
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,起立補助付き歩行車の開発に向けて,立ち上がり動作の分析と一部改良の試作歩行車を作製した。立ち上がり動作の分析は,健常成人大学生(N=20)を対象に高さの異なる2本の補助手すりを用いた5パターンの動作で行い下肢関節トルクを床反力計と3次元動作解析装置にて測定した。結果は,下肢関節トルクが高い順に,手すりなし,低い手すり,低→高把持,高い手すり,高低同時把持で,一元配置分散分析で有意差を認めた(p<0.05)。股・膝・足関節別の比較では,股関節が有意に高い値を示した(p<0.05)。試作歩行車を使用した在宅施設高齢者(N=10)へのインタビュー結果は,立つのが楽である,いろいろな立ち上がりが可能というものであった。
  • 田中 浩介, 宮下 浩二, 浦辺 幸夫, 井尻 朋人, 武本 有紀子, 石井 良昌, 越智 光夫
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 163-167
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,膝OA患者の歩行時にみられる体幹傾斜運動と骨盤回旋運動の相関関係を明らかにすることを目的とした。対象は膝OA患者15名(平均年齢70.3歳)であった。三次元動作分析により,体幹最大傾斜角度の平均値は患側2.9 °,健側3.5°,骨盤回旋角度の平均値は患側8.6 °,健側8.1°であった。体幹最大傾斜角度と骨盤回旋運動の相関係数は患側r=-0.53,健側r=-0.56であり有意な負の相関を認めた(p<0.05)。体幹傾斜する方向は立脚側と遊脚側にほぼ同数で2分していた。本研究の結果は,膝OA患者の歩行能力を知り,それを改善する運動方法を提案するための一助になると考えられた。
  • ─ラットにおける実験的研究─
    陳之内 将志, 小野 武也, 沖 貞明, 梶原 博毅, 金井 秀作, 長谷川 正哉, 坂口 顕, 島谷 康司, 清水 ミシェル・アイズマン, ...
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 169-173
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,関節可動域制限発生の予防に必要な持続的伸張運動時間を関節角度と筋の形態学的な変化から検討した。実験動物には9週齢のWistar系雌ラット35匹を正常群7匹と足関節を最大底屈位で1週間ギプス固定した固定群7匹,1日1回ギプスを除去し持続的伸張運動を実施した伸張群21匹に振り分けた。さらに伸張群は10分,30分,60分の伸張時間の違いによって7匹ずつ振り分けた。結果は,関節角度の変化から見ると,30分の持続的伸張運動が最も効果的に関節可動域制限の発生を抑制することができた。また筋の形態学的な変化から見ると,30分を超える持続的伸張運動では筋線維を脆弱化させる可能性が示唆された。
  • 佐藤 仁, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 1 号 p. 175-180
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究目的は,一側上肢へのPNFアプローチで反対側下肢への影響を明らかにすることである。一側上肢へPNF屈曲-外転-外旋パターン(PNF群)と肩関節屈曲運動(屈曲群)の開始肢位,中間肢位,終了肢位で等尺性抵抗運動を施し,その運動中に両下肢伸展方向にかかる力を等尺性筋力測定装置で測定した。同時に,一側上肢の抵抗値も測定した。結果,PNF群一側上肢終了肢位での等尺性抵抗運動中に反対側下肢伸展方向にかかる力が増大し,最大筋力値の54.3%を示した。一側上肢の抵抗値は,両群とも終了肢位が低い傾向であった。一側上肢のPNF同パターン終了肢位での等尺性抵抗運動は,上肢抵抗値は低値だが,反対側下肢伸展方向にかかる力は増大することがわかった。
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