理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
36 巻, 4 号
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原 著
  • 後藤 文彦, 渡邉 英弘, 中島 大貴, 井戸 尚則, 岡山 直樹, 冨山 直輝, 木村 大介, 長谷川 龍一
    2021 年 36 巻 4 号 p. 481-489
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は,運動教室後に継続して自主グループに参加した高齢者のソーシャルサポート・ネットワークを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は,従来型運動教室に参加した30名と,自主グループ設立を目的とした運動教室に参加し,自主グループに継続して参加できた26名とした.ソーシャルサポート・ネットワークの評価にはLubben Social Network Scale 短縮版(LSNS-6)を用い,運動教室の前後とフォローアップ3ヵ月後の計3時点で評価した.〔結果〕LSNS-6の下位項目の交互作用は,友人で認められたが,家族では認められなかった.〔結語〕自主グループへの参加は,ソーシャルサポート・ネットワークの友人を維持することが可能とみられた.

  • 山下 裕太郎, 山下 和馬, 黒飛 陽平, 蓮井 誠, 山内 克哉
    2021 年 36 巻 4 号 p. 491-494
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕二重課題トレーニング機器であるコグニバイクによる介入効果を調査した.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者21名(男性8名,女性13名,平均年齢76 ± 10.5歳)とした.介入は,PT,OT,STの個別療法に加え,週3回,約15分間の認知予防エクササイズを4週間実施し,介入前後の歩行能力,認知機能を測定した.〔結果〕歩行時間の改善に加え,二重課題条件下の歩行時間,Trail Making Test-Bに改善がみられた.〔結語〕コグニバイクによる認知予防エクササイズは,二重課題能力にも改善を示す可能性が示唆された.

  • ─1ヵ月間の理学療法士の介入にて─
    山本 将揮, 鈴木 俊明, 中塚 映政
    2021 年 36 巻 4 号 p. 495-498
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕慢性腰痛患者に対する1ヵ月間の運動療法前後での患者報告アウトカムの変化を検討した.〔対象と方法〕慢性腰痛女性28名(平均年齢78.4歳)に対し,一般的な運動療法を1ヵ月間実施した前後にタンパ運動恐怖症スケール(TSK),腰痛特異的QOL尺度(RDQ),疼痛生活障害尺度,視覚的スケール(VAS)(最大・最小・平均VAS)を聴取した.〔結果〕運動療法前後では,TSKと最大VASに中等度以上の効果量を認め,TSKとRDQは負の相関関係,TSKと最小VASは正の相関関係を示した.〔結語〕運動療法に併せてTSK変化に伴うRDQの変化に対する動作指導や負荷量の調整を行うことが重要である可能性が示唆された.

  • 森田 鉄二, 松本 浩実, 馬壁 知之, 萩野 浩
    2021 年 36 巻 4 号 p. 499-504
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域在住高齢者の立位姿勢と身体機能,複数転倒との関連性を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は地域在住高齢者219名(平均71.6 ± 9.1歳)とした.過去1年間の転倒回数,ロコモティブシンドローム,歩行速度,四肢骨格筋量,握力,骨量を評価した.立位姿勢は,円背指数,体幹傾斜角度,脊柱後弯角度(上位傾斜角度・下位傾斜角度)を評価した.〔結果〕上位傾斜角度,下位傾斜角度,体幹傾斜角度が大きいほど年齢が高く,ロコモティブシンドロームが進み,歩行速度も遅く,骨量も低かった.転倒なし群と転倒単回群と転倒複数回群で比較を行ったところ,複数回群は単回群に比べ,上位傾斜角度が高値であった.〔結語〕上位傾斜角度が大きいと身体機能が低く,複数転倒と関連する可能性がある.

  • 大塩 祐子, 岩村 真樹, 岡本 祐輔, 東伊牟田 芽句, 藤本 翔大, 杉野 正一
    2021 年 36 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕座位が主体で行われるパーキンソンダンス教室(PDダンス)がパーキンソン病患者の身体機能へ与える即時効果の検証を目的に実施した.〔対象と方法〕対象はPDダンスに参加したパーキンソン病患者24名とした.PDダンス前後でのTimed up & Go test(TUG)と歩行速度との結果を比較した.〔結果〕TUGはPDダンス後に有意な減少を認めた.また,歩行速度は有意な低下を認めた.歩行速度で2群に分けて歩行速度の変化を比較した結果,低速歩行群にのみ有意な歩行速度の上昇を認めた.〔結論〕座位主体でのPDダンスにおいてバランス機能改善は行えるが,歩行速度に与える影響は限定的であることが示唆された.

  • 上田 泰久, 上條 史子, 大竹 祐子, 福井 勉, 藤下 彰彦
    2021 年 36 巻 4 号 p. 511-514
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕頭頸部の運動による脊柱アライメントの変化について基礎的な知見を得ることとした.〔対象と方法〕若年男性28名と高齢男性24名を対象とした.測定肢位は端座位とした.頭頸部の運動は中間位・屈曲位・伸展位とし,スパイナルマウスを用いて脊柱アライメント(胸椎後弯角度・腰椎前弯角度・仙骨前傾角度)を測定して3条件間で比較した.〔結果〕胸椎後弯角度では若年男性・高齢男性ともに3条件間で有意な差を認めた.一方,腰椎前弯角度と仙骨前傾角度では若年男性・高齢男性ともに3条件間で有意な差を認めなかった.〔結語〕頭頸部の運動は,下行性に胸椎のアライメントまで変化させるが,腰椎・仙骨のアライメントまでは変化させないことが示唆された.

  • 長谷 麻由, 原口 健三
    2021 年 36 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    [目的]地域在住高齢者のego-resiliency(ER)と緊急事態宣言期間中の健康維持活動およびフレイル傾向との関連性を検討した.[対象と方法]A市在住の高齢者1200名を対象に質問紙調査を実施した.680件の回収のうち,477件を有効回答とし,高ER群と低ER群に割り付けた.検討因子は,基本的属性,The Tilburg Frailty Indicator(TFI),対人交流方法,健康維持活動の実施状況とした.[結果]高ER群は低ER群に比べ,Eメールの活用状況,趣味活動,運動/体操の取り組みの項目が有意に高かった.[結語]緊急事態宣言期間中というストレス状況下においても,ERが高いほど趣味や運動などの健康維持活動に積極的に取り組み,Eメールを用いて他者との交流を維持していることが示唆された.

  • 松野 悟之
    2021 年 36 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕要介護高齢者を対象に,ゲーム機を用いた脳トレーニング(脳トレ)に関するアンケート調査を実施した.〔対象と方法〕要介護高齢者24名とした.ゲーム機は,任天堂スイッチ,ゲームソフトは脳を鍛える大人のトレーニングを用いた.アンケートは,教育歴,ゲームを経験しての楽しさや難しさ,ゲーム機の操作,脳トレを今後も継続したいかを調査した.〔結果〕脳トレをやや楽しく感じ,今後もやや続けてみたいと返答した者が有意に多かった.しかし,ゲーム機の操作においては,教えてもらわないとできない者が有意に多かった.〔結語〕要介護高齢者におけるゲーム機器を用いた脳トレは,機器の操作を適切に誘導することで楽しみながら継続できる可能性が示唆された.

  • 丸山 勇, 飯田 修平, 窪川 徹, 青木 主税
    2021 年 36 巻 4 号 p. 527-532
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕歩行周期に合わせて足関節底屈・背屈運動をアシストする電動アシスト付短下肢装具(AFO)を使用した歩行練習の効果を明らかにするための予備研究とした.〔対象と方法〕生活期脳卒中片麻痺者12名に対し,電動アシスト付AFOを使用した歩行練習を実施した.介入前後,介入2・4週間後に快適歩行速度,Timed “Up and Go” test,歩行動画解析(歩幅,単脚支持期時間,歩行率,麻痺側下肢関節角度)を計測し,経過比較した.〔結果〕快適歩行速度が介入4週間後,立脚終期の麻痺側股関節屈曲角度が介入2・4週間後にそれぞれ有意な差を認めた.〔結語〕電動アシスト付AFOを使用した歩行練習を行うことは,立脚終期の麻痺側股関節屈曲角度変化に影響する可能性が示唆されたとともに,使用方法等についてさらなる検討が必要となった.

  • 小関 統大, 宮沢 千瑛里, 沢谷 洋平, 柴 隆広, 広瀬 環, 渡邉 観世子, 石坂 正大, 小林 薰, 久保 晃
    2021 年 36 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕栃木県北地域在住高齢者における2分間ステップテスト(TMST)と身体機能の関係を明らかにする.〔対象と方法〕対象は地域在住高齢者33名(男性20名,女性13名),年齢77.0 ± 7.7歳(平均 ± 標準偏差)とした.そのうち,要支援・要介護高齢者22名,健常高齢者は11名であった.TMST,体組成成分,握力,歩行速度を測定し,相関を求めた.〔結果〕TMSTは健常高齢者108.2 ± 17.8回/2 min,要支援・要介護高齢者72.3 ± 21.5回/2 minで有意に低値を示した.健常高齢者では年齢に負の相関(r=-0.610)が認められ,要支援・要介護高齢者とは歩行速度と正の相関(r=0.655)が認められた.〔結語〕高齢者におけるTMSTは歩行速度との関連が強い.

  • 芦澤 遼太, 本田 浩也, 槫林 可純, 武 昂樹, 吉本 好延
    2021 年 36 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,要介護高齢者において座位行動(sedentary behavior:SB)と中高強度活動(moderate to vigorous physical activity:MVPA)それぞれの関連要因を明らかにすることである.〔対象と方法〕通所サービスを利用した要介護高齢者68名(中央値85.0歳,女性48名)を対象に横断研究を実施した.SBとMVPAに関連すると考えられた項目として,基本項目を診療録より抽出し,身体機能項目や認知機能項目,心理的項目を測定した.〔結果〕SBと有意に関連した要因は住居環境であり,MVPAと有意に関連した要因は5 m歩行速度であった.〔結語〕本研究では,要介護高齢者のSBとMVPAの関連要因が異なることが明らかになった.

  • 兎澤 良輔, 源 裕介, 浅田 菜穂, 荒井 沙織, 平野 正広, 川崎 翼, 赤木 龍一郎, 加藤 宗規
    2021 年 36 巻 4 号 p. 543-546
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕小学校高学年児童におけるmodified Star Excursion Balance Test(mSEBT)の信頼性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常な小学校高学年児童9名にmSEBT を2回連続で実施し,その際の検者内信頼性およびBland-Altman分析(BAA),誤差範囲を算出した.〔結果〕3つの方向の級内相関係数(ICC)(1,1)は0.797–0.875であった.BAAの結果,前方リーチ,同側後方リーチに固定誤差が認められた.測定の誤差は最大で16 cmであった.〔結語〕小学校高学年児童においてmSEBTのICCは高値を示したが,測定の誤差は測定値から比較して許容できないほど高値となったため,小学校高学年児童に対するmSEBTは慎重に利用すべきである.

  • 金子 賢人, 松田 雅弘, 千葉 康平, 山下 智幸, 刀祢 麻里, 粟野 暢康, 久世 眞之, 猪俣 稔, 林 宗博, 出雲 雄大, 森本 ...
    2021 年 36 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕新型コロナウイルス感染症(COVID-19)群と細菌性肺炎群の身体機能と経過について検討する.〔対象と方法〕入院前ADLが自立していた患者で,入院中に人工呼吸管理を行ったCOVID-19患者12例,または細菌性肺炎患者10例を比較検討した.〔結果〕COVID-19群の入院からリハビリテーション開始までの期間は,細菌性肺炎群の入院からリハビリテーション開始までの期間と比較して有意に遅延していた.しかし,リハビリテーション介入を実施することで身体機能や基本動作能力が向上する傾向にあり,対照群との身体機能の回復傾向は同等であった.〔結語〕COVID-19患者においても早期からリハビリテーションを開始する必要性があることが示唆された.

  • ─新規要介護認定と総死亡のリスク要因について─
    森田 泰裕, 新井 智之, 渡辺 修一郎
    2021 年 36 巻 4 号 p. 553-560
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕地域在住高齢者における基本チェックリストの各領域が,3年後の転帰として新規要介護認定と総死亡に関連するリスク要因となるか検討することを目的とした.〔対象と方法〕地域在住高齢者を対象に2012年度に基本チェックリストを調査し,新規要介護認定については20747名,死亡については22021名を解析した.基本チェックリストが3年後の新規要介護認定と総死亡のリスク要因となるか検討した.〔結果〕新規要介護認定には運動機能低下,低栄養,認知機能低下,うつ,総死亡には運動機能低下,閉じこもり,認知機能低下が有意なリスク要因であった.〔結語〕基本チェックリストの運動機能低下,認知機能低下は,早期の予防が重要であると考えられる.

  • 菅 博貴, 宮田 一弘, 柿間 洋信, 林 翔太, 五十嵐 達也
    2021 年 36 巻 4 号 p. 561-565
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕Rasch分析にてFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)の構造的妥当性を検証すること.〔対象と方法〕60名の急性期脳卒中患者を対象とした.入院中に2回測定したFACTに対して,Rasch分析を実施した.〔結果〕項目1(支持あり静的座位保持)と項目2(支持なし静的座位保持)は解析から除外した.項目難易度は,項目9(体幹回旋位保持)が最も高く,配点が3点の項目10(片側上肢挙上)は難易度が高くなかった.また,3項目の適合度が不良であった.〔結語〕Rasch分析よりFACTの項目において,除外や不適合であった5項目以外の妥当性が認められた.5項目に関しては改善の余地が示され,項目や配点等のさらなる検討が必要であることが明らかになった.

  • 上條 史子, 千代丸 正志, 大川 孝浩, 上田 泰久, 西村 沙紀子
    2021 年 36 巻 4 号 p. 567-572
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕健常高齢者における素早い立ち上がり後のふらつきの要因について検討すること.〔対象と方法〕対象は男性健常高齢者15名とした.三次元動作解析システムを使用し,素早い立ち上がりとその後の立位姿勢を計測した.立ち上がり後の立位不安定の指標には,重心の進行方向位置から実効値を算出し使用した.実効値と立ち上がり動作における下肢運動学的項目と運動力学的項目の相関について検討した.〔結果〕実効値と左股関節伸展モーメント最大値の発生タイミング間には負の相関を,左膝関節モーメントの最大値とは正の相関を示した.〔結語〕立ち上がり後の立位を不安定にさせる要因には,離殿後の股関節の遠心性制御能力が考えられ,それに関連して膝関節の伸展筋力も関与すると示唆された.

  • 袴田 友樹, 千鳥 司浩
    2021 年 36 巻 4 号 p. 573-577
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕臥床による身体不活動が,体性感覚機能の指標である足底の2点識別覚や足関節位置覚に与える影響を経時的に調査した.〔対象と方法〕安静臥床が指示された脊椎圧迫骨折患者8名を対象とした.測定項目は足底における2点識別覚,足関節位置覚であり,測定時期は臥床開始,臥床終了,介入後とした.〔結果〕足底の2点識別覚は,臥床開始と比べて臥床終了,臥床開始と比べて介入後において低下した.一方,足関節位置覚においては変化が生じなかった.〔結語〕臥床による身体不活動によって足底の2点識別覚閾値が増加したことから,2点識別覚が低下したことが示唆された.さらに2点識別覚が低下した影響は,理学療法介入が開始された後でも残存した.

  • 吉塚 久記, 佐野 伸之, 光武 翼, 浅見 豊子, 小坂 克子
    2021 年 36 巻 4 号 p. 579-585
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕遺体実写の3D解剖教育システム(3D解剖体)を用いた実習が,解剖学初学者の学習プロセスに及ぼす影響と,その有効な活用法を質的に検討した.〔対象と方法〕3D解剖体を用いた実習を受講し終えた理学療法学科・作業療法学科の大学1年次生8名を対象としたFocus Group Interviewを実施し,Steps for Coding and Theorizationにて分析した.〔結果〕481の発言から57の構成概念が抽出され,3D解剖体によって認知領域・精神運動領域・情意領域の学びが得られる一方で,遺体実写の観察には十分な基礎知識が必要であることが示された.〔結語〕3D解剖体は高度な学びが期待される一方,初学者には難解な教材であり,他教材と3D解剖体を併用する相補完的な活用が望まれる.

  • 大谷 知浩, 宮田 一弘, 篠原 智行, 臼田 滋
    2021 年 36 巻 4 号 p. 587-593
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕入院患者のFalls Efficacy Scale-International(FES-I)の臨床的有用性を検証した.〔対象と方法〕整形外科疾患患者84名を対象に,10 m歩行を獲得した時点において退院時の状態を予測したFES-Iの信頼性や妥当性,および転倒恐怖感の予測精度を検討した.〔結果〕FES-I合計得点の級内相関係数(ICC)(1,1)は0.83と高値であり,生活空間や健康関連QOLと有意な弱い負の相関関係を認めた.また,退院時の転倒恐怖感に影響する因子として10 m歩行獲得時のFES-Iのみが有意な関連要因であり,退院時の転倒恐怖感を判別するFES-Iのcut off値は41点であった.〔結語〕歩行獲得早期に退院時の状態を予測したFES-Iであっても,一定の有用性が示唆された.

  • 西山 侑汰, 名頭薗 亮太, 辰見 康剛
    2021 年 36 巻 4 号 p. 595-599
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕肩関節痛の既往歴を有する大学女子ソフトボール選手の肩関節外旋および内旋筋力と関節可動域の特徴について明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕大学女子ソフトボール選手23名を対象にした.肩関節痛既往群と健常群で肩関節外旋および内旋の等尺性筋力と関節可動域を両群間で比較した.〔結果〕利き手/非利き手の肩関節内旋可動域は,肩関節痛既往群の方が健常群よりも有意に低値を示した.〔結語〕肩関節痛の既往歴を有する大学女子ソフトボール選手は,肩関節内旋可動域が低値を示す特徴があった.

  • 相馬 夏月, 横川 正美, 内山 圭太, 間所 祥子, 三秋 泰一
    2021 年 36 巻 4 号 p. 601-606
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕要支援高齢者の身体活動量(PA)を活動強度に着目して測定し,歩行能力との関連を検討した.〔対象と方法〕要支援高齢者28名(男性9名,女性19名)の活動量計を用いてPAを測定した.PAは1.6~2.9 METsをlight-intensity physical activity(LPA),3.0 METs以上をmoderate to vigorous physical activity(MVPA)の時間とした.加えて,運動・心理機能および生活活動度を測定した.〔結果〕PAを測定できた20名のLPA 306 ± 114分/日,MVPA 16.6 ± 20.8分/日であった.重回帰分析では10 m歩行時間に関連する要因としてLPAは選択されず,MVPAが選択された.〔結語〕要支援高齢者の身体活動量の増進を考えるうえで,特にMVPAに着目する重要性が示唆された.

  • ─足関節の柔軟性に加えて下肢・体幹の筋活動に着目して─
    畠山 穂高, 佐々木 誠
    2021 年 36 巻 4 号 p. 607-610
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕しゃがみ込みテストが可能な者の割合を特定し,しゃがみ込み姿勢時の重心動揺と関節可動域や筋活動との関連をみること.〔対象と方法〕健常大学生20名を対象に,しゃがみ込みテストを行わせた.実施可能な者では,足関節背屈角度,下肢・体幹の筋活動の計測,しゃがみ込み姿勢時の重心動揺の相関関係を検討した.〔結果〕可能な者16名,不可能な者4名であった.重回帰分析で,足関節背屈角度,しゃがみ込み姿勢時の前脛骨筋・腹直筋筋活動が,しゃがみ込み姿勢の重心動揺を説明する変数として選択された.〔結語〕大学生においてしゃがみ込みが不可能な者は,先行研究の結果と同様に一定の割合いることが示された.しゃがみ込み姿勢のバランスを規定する要因として,足関節背屈可動域に加え,前脛骨筋・腹直筋の筋機能が関与している可能性が示唆された.

  • 松嶋 里美, 小松 淳, 牟田 智也, 山下 淳一, 堀本 ゆかり
    2021 年 36 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕腰部脊柱管狭窄症(LSS)の治療効果判定として有用である日本整形外科学会腰痛疾患問診票(JOABPEQ)と多面的理学療法評価との関連を検討した.〔対象と方法〕対象はLSSと診断され腰椎手術を受けた76名とした.多面的理学療法評価はVisual Analog Scale(VAS),6分間歩行負荷試験(6MWT),痛みの破局的思考尺度(PCS),画像所見(立位アライメント,傍脊柱筋横断面積)を実施した.画像所見のみ入院時を使用し,その他は退院時測定した.JOABPEQと多面的理学療法評価の関連を,重回帰分析を用いて検討した.〔結果〕退院時JOABPEQに影響を与えている要因は,立位矢状面アライメントとPCSであった.6MWTとVASの関連は低い結果であった.〔結語〕術後理学療法介入の際は,多面的理学療法評価の必要性が示唆された.

  • 井上 由里, 田村 暁大, 櫻井 陽子, 志村 圭太
    2021 年 36 巻 4 号 p. 617-621
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究では理学療法学科学生のライフスキルの特性を検討すること,学業成績との関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕2年生70名と4年生78名を対象とした.日常生活スキル尺度(大学生版)の結果を学年間,加えて2年生は性別と学業成績で比較した.〔結果〕4年生と比較して2年生は,対人スキルである「リーダーシップ」と個人スキルである「前向きな思考」,「情報要約力」は低値を,対人スキルである「感受性」,「対人マナー」は高値を示した.学業成績には「計画性」が関連した.〔結語〕理学療法学科学生には社会スキルに加えて.行動に表れにくい個人スキルにも着目する必要性がある.また入学時に,「計画性」を高める指導が1年次の学業成績を向上させる可能性が示された.

  • 丸谷 康平, 新井 智之, 三浦 佳代, 藤田 博曉
    2021 年 36 巻 4 号 p. 623-629
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕プレフレイルに対する ロコモティブシンドローム(ロコモ)と転倒経験の関連を調査し,より早期からのフレイル予防の一助にすることを目的とした.〔対象と方法〕地域在住の中高齢者を,ロコモや転倒経験の有無によりA群(ロコモ有・転倒有),B群(ロコモ有・転倒無),C群(ロコモ無・転倒有),D群(ロコモ無・転倒無)に分類し,プレフレイルの有無を従属変数にしたロジスティック回帰分析を行った.〔結果〕D群に対しA群はオッズ比3.669となり,B群に対しA群は1.839となった.〔結語〕ロコモ該当者はプレフレイルのリスクが高く,さらに転倒経験を有すると,一層リスクが高くなると示唆された.そのため,まずはロコモ予防を図ることが有用と考える.

症例研究
  • ─装具療法に次いで手術に至った事例への理学療法経験から─
    近藤 夕騎, 有明 陽佑, 三浦 篤行, 野澤 大輔, 大矢 寧, 松井 彩乃
    2021 年 36 巻 4 号 p. 631-636
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕6型コラーゲン関連筋疾患に対し,術前の装具療法によって両アキレス腱延長術後もスムーズに実用的な歩行能力を得られたため,その経過について報告する.〔対象と方法〕30歳代男性.6型コラーゲン関連筋疾患の診断.成長期を過ぎて内反尖足が進行し荷重時痛を生じ,徐々に歩行実用性が低下し,当院に受診した.当初手術を希望せず,足底装具を作成した.その2年後,歩行能力改善を目指して両アキレス腱延長術を実施し,術後早期から立位,歩行を中心とした理学療法を実施した.〔結果〕足底装具装着によって膝伸展筋力改善および姿勢制御戦略の変更がなされた.術後半年には術前歩行能力を上回った.〔結語〕進行性筋疾患の成人期重度尖足に対して,手術に術前装具療法を組み合わせることで良質な歩行再建法となり得ることが示された.

  • 月田 隼貴, 浦井 龍法, 林 雅之, 近藤 仁
    2021 年 36 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
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    〔目的〕距骨軟骨損傷の一般的な治療方針は数週から数ヵ月間,免荷などの安静加療である.今回,理学療法開始時よりスポーツ活動を併行し,競技復帰を目指した症例を経験したため報告する.〔対象と方法〕17歳女性の高校生卓球選手である.足関節内反捻挫後より十分な安静がとれず,受傷8週後に距骨後外側部の軟骨損傷が発覚し,理学療法開始となった.スクワット動作時のleg heel alignmentや舟状骨高などのアライメント検査,テーピングによる評価をもとに,力学的負荷を考慮し理学療法や運動強度の調節を行った.〔結果〕理学療法介入から12週後に患部の治癒が確認できた.〔結語〕力学的負荷を考慮した理学療法介入および運動強度の調節により,スポーツ活動継続のもと一般的な治療計画と比較し,同程度の期間で患部の治癒に至った.

  • 稲垣 郁哉, 中村 祐太, 佐々木 隆紘, 柴 伸昌
    2021 年 36 巻 4 号 p. 643-646
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
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    〔目的〕術後に長引く母趾痛を呈した舞踊家に対して,足袋へ入谷式足底板を応用した結果について報告する.〔対象と方法〕リスフラン関節固定術の術後1年半以上しゃがみ込み時に右母趾MP関節痛を有する50代女性である.足底板処方前後のNumerical Rating Scale(NRS),Brief Pain Inventory(BPI),しゃがみ込み動作,足部足関節評価質問票(SAFE-Q),Pain Catastropllizing Scale(PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を評価した.〔結果〕NRS,BPI,しゃがみ込み動作,SAFE-Qは改善し,PCS,HADSは軽度改善した.〔結語〕足袋に応用した入谷式足底板の処方は有効であり,舞踊など靴を使用しない活動における足部の症状改善に有用であると考えられた.

  • 五十嵐 達也, 林 翔太
    2021 年 36 巻 4 号 p. 647-652
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
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    〔目的〕慢性期脳卒中患者の一症例に対するボツリヌス療法とfunctional electrical stimulation(FES)を併用した中長期的な介入経過を報告することであった.〔対象と方法〕対象は既往に重度の右麻痺と,modified Ashworth Scaleで3の下肢痙縮を認めた39歳女性であった.24ヵ月の経過中に,複数回のボツリヌス療法とFESを併用した介入を実施した.歩行持久性の指標に6-minute walk test(6MWT)を評価した.〔結果〕平均介入時間は10.3時間/月であった.介入前後の6MWTは162 m,275 mであった.〔結語〕ボツリヌス療法とFESを併用した中長期的な介入は,慢性期脳卒中患者の歩行持久性の向上に寄与する可能性が示唆された.

  • 尾方 太亮, 高野 吉朗, 松瀬 博夫
    2021 年 36 巻 4 号 p. 653-656
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
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    〔目的〕慢性腰痛者に対し長期間の低強度有酸素運動を実施し,疼痛閾値(PPT)の運動前後の変化を検証すること.〔対象と方法〕対象は腰痛が12ヵ月以上ある慢性腰痛者8名とした.測定方法は,腰部と上下肢など身体部位7ヵ所のPPTと,腰部のVisual Analogue Scale(VAS)を介入前・介入後・介入後8週目の合計3回測定した.運動介入内容は,自転車エルゴメーター運動を週2回・8週間の合計16回実施した.〔結果〕介入前後で比較した結果,全てのPPTと腰部のVASが有意に向上していた.介入後8週目の測定では,介入前と比較し,上下肢など4ヵ所のPPTで有意な向上が認められた.〔結語〕定期的な自転車エルゴメーターでの低強度の運動は,慢性腰痛者のPPT向上に伴い,腰痛の軽減が認められた.

紹介
  • ─本学科における事業継続計画の策定と今後の課題─
    豊田 輝, 田中 和哉, 平賀 篤, 佐野 徳雄, 菅沼 一男, 西條 富美代, 安齋 久美子, 渡辺 長, 相原 正博, 渡邊 修司, 青 ...
    2021 年 36 巻 4 号 p. 657-664
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルス感染症によるパンデミックへの対応経験を理学療法士(PT)養成課程における一つのモデルとし,今後の備えとなる事業継続マネジメント(BCM)の在り方を検討した.具体的には,BCMプロセスに沿って本学科のパンデミック発生後からの対応を振り返り検討した.結果,BCMプロセスごとに8つの問題点が抽出され,その対応策としてパンデミックに対応する業務継続計画を策定した.今回,BCMプロセスに沿った検討により,本学科における全業務の洗い出しと業務優先度の選定,それに必要な組織体制の見直しが可能となり,さらには今後の課題も明確となった.今後も,社会の要請に応えるべく,パンデミック発生時においても質の高いPTの養成が継続できる組織であるため再考を続けたい.

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