理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
37 巻, 6 号
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原 著
  • 藤田 大輔, 高村 浩司, 駒形 純也, 玉木 徹, 坂本 祐太, 三科 貴博
    2022 年 37 巻 6 号 p. 525-530
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕理学療法士養成課程における職業的アイデンティティと進学に対する動機づけの関連性を調査した.〔対象と方法〕理学療法士養成大学の第3学年の学生60名を対象にして,職業的アイデンティティと進学に対する動機づけについてアンケートを行った.〔結果〕職業的アイデンティティに対して知的向上心(β=0.40),外的報酬(β=0.22),青春謳歌(β=0.20)は正の影響があり,無気力(β=-0.40)は負の影響を及ぼした.〔結語〕理学療法士養成課程における職業的アイデンティティには,異なる因子の動機づけが関連することが示唆された.

  • 田中 航, 小野 武也, 佐藤 勇太, 廣瀬 勇太
    2022 年 37 巻 6 号 p. 531-535
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕ラット足関節拘縮に対する自由飼育の影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕右足関節の最大底屈位固定と後肢懸垂を実施した後,8日目に固定を除去した.その後14日目まで関節固定を解除して自由飼育を7日間行う7日自由飼育群,自由飼育を6日間行う6日自由飼育群,自由飼育を行わない0日自由飼育群に分けた.〔結果〕固定解除8日目の3群間の足関節背屈可動域に有意差は認められなかった.実験最終日の14日目の足関節背屈可動域について,7日自由飼育群は他2群より有意に改善を認めた.6日自由飼育群と0日自由飼育群では有意差はみられなかった.〔結語〕後肢懸垂による非荷重状態よりも,自由飼育による足関節可動域改善が認められた.一方で自由飼育は,関節拘縮に対して過負荷となった可能性が示唆された.

  • 金子 賢人, 石坂 正大, 千葉 康平, 山下 智幸, 乃美 証, 田中 清和, 髙橋 仁美, 久保 晃
    2022 年 37 巻 6 号 p. 537-542
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕重症COVID-19肺炎で入院し,自立歩行で退院した患者の特徴を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕集中治療室でリハビリテーションを実施した112例を対象に,退院時の歩行の可否で自立群(76名)と非自立群(36名)を基礎情報,呼吸機能,身体機能,離床状況を2群で比較,検討した.〔結果〕自立群と非自立群は,年齢(55.8 ± 12.3 vs 66.7 ± 13.0歳),せん妄(12 vs 12名),Sequential Organ Failure Assessment score(SOFA)スコア(7 vs 8),ferritin(1813 vs 1168 ng/mL),挿管期間(6.1 vs 11.1日)で有意差がみられた.〔結語〕自立群では,年齢,せん妄,SOFAスコア,ferritin,挿管期間が関係することが示唆された.

  • 鈴木 里砂, 藤谷 克己, 市川 香織, 松下 博宣
    2022 年 37 巻 6 号 p. 543-550
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究では,看護師と療法士の職務習熟度と多職種連携の実態の関係性を明らかにするために,それぞれの臨床実践能力段階と,多職種連携の実態を計測する尺度である日本語版多職種連携協働評価スケール(AITCS-II-J)得点を調査し,これらの関連性を比較検討した.〔対象と方法〕対象は,リハビリテーション専門病院の看護師および療法士部の職員であり,115名が分析対象となった.〔結果〕AITCS-II-J総得点では,ラダー間の有意な差は認められなかったが,質問項目別では,各ラダーにより看護師と療法士部の得点に差が認められた.〔考察〕職種やキャリアラダーの段階に応じて,多職種連携について意識している観点が変わってくることが示唆された.このことから,職種連携の認識促進のための介入時期や,内容を工夫することが必要であると考えられた.

  • 木村 祐紀, 古谷 英孝, 江森 亮, 柏木 秀彦, 渡邉 英憲
    2022 年 37 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕心疾患患者における軽度の認知機能低下と身体活動量(PA)の関連を明らかにする.〔対象と方法〕対象は,心臓リハビリテーション実施中の心疾患患者48名(平均年齢72.6歳)とした.軽度の認知機能低下はJapanese version of Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)を用いて評価した.PAは活動量計を装着し,1日あたりの平均歩数を算出した.MoCA-JとPAの関連を分析した.〔結果〕MoCA-Jは25 ± 3.6 点,PAは5337 ± 2534 歩/日であった.分析の結果,MoCA-JとPAに相関が認められた.〔結語〕心疾患患者における軽度の認知機能低下を早期に発見する必要性が示唆された.

  • 横山 大輝, 大谷 知浩, 吉田 敏哉, 大塚 智文, 臼田 滋
    2022 年 37 巻 6 号 p. 557-563
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕養成校にて臨床実習を現場で行えた理学療法士と,学内実習で代替した理学療法士の臨床能力を比較し,臨床実習の形態の違いが卒後の臨床能力に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕2020年度に4年制理学療法士養成校を卒業した理学療法士51名を対象として,アンケート調査を実施した.臨床能力は,理学療法における臨床能力評価尺度(CEPT)を使用し測定した.臨床実習を通常通り現地で実習した群を通常実習群,学内実習で代替した群を代替実習群とし,群間比較を行った.〔結果〕CEPT合計点に有意差は認められなかったが,通常実習群と比較し代替実習群の方が,大項目「知識」,「自己教育」において有意に低値を示した.〔結語〕学内実習で代替した理学療法士は,知識,自己教育の臨床能力が低い傾向にあることがわかった.

  • 古谷 直弘, 四宮 明宏, 松山 良子, 土田 忠行, 川崎 諒太, 松本 こずえ, 田村 博之
    2022 年 37 巻 6 号 p. 565-569
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕Nutritional Risk Index for Japanese Hemodialysis Patients(NRI-JH)とGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)や運動機能,骨格筋量指数(SMI)との関連性を分析し,NRI-JHの有用性について検討する.〔対象と方法〕外来維持透析患者60名(男性38名,女性22名)を対象とした.評価項目は,年齢,性別,身長,透析後体重,Body Mass Indexなどの基本特性と,NRI-JHスコア,GNRI,握力(HGS),5回椅子立ち上がりテスト,SMIとした.〔結果〕NRI-JHスコアはいずれの項目とも有意な関連性を認めず,GNRIは,SMI,HGSと正の関連性を認めた.〔結語〕NRI-JHはGNRIや,運動機能と関連性を認めなかった.また対象者の制限による研究の限界があった.今後,NRI-JHと他の栄養スクリーニング,運動機能やSMIとの関連性を検討する必要がある.

  • 辻下 聡馬, 辻下 千賀, 池田 耕二
    2022 年 37 巻 6 号 p. 571-578
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕児童に対する保護者およびスタッフの目標や課題を明らかにし,理学療法の課題を提示することである.〔対象と方法〕対象は保護者10名とスタッフ5名とし,10名の各児童の目標・課題を質問紙による自由記述式にて調査した.分析方法はオープン・コーディング法とし,短期・長期的な目標や課題を整理したうえで保護者とスタッフのものを比較した.〔結果〕短期的な目標・課題では,保護者は家庭内の生活のことを,スタッフは学校内の生活のことを気にする意見が多く,認識の相違が認められ,長期的な目標・課題では,保護者もスタッフも就労に関するものが多く,将来の方向性は類似していた.〔結語〕今後の理学療法の課題は,保護者およびスタッフに対して定期的に理学療法評価の結果を伝え,協働してリハビリテーションを進めていくことが重要である.

  • ─言語指導に着目した観察的研究─
    我妻 昂樹, 鈴木 博人, 川上 真吾, 鈴木 さゆり, 佐藤 清登, 松坂 大毅, 嶋田 剛義, 榊 望, 藤澤 宏幸
    2022 年 37 巻 6 号 p. 579-584
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕運動器疾患患者の治療場面を観察し,理学療法士の言語指導の実態を明らかにすることとした.〔対象と方法〕理学療法士13名,患者11名が参加し,19場面を測定した.測定後,言語指導を言語教示,フィードバック,言語強化に分類した.〔結果〕理学療法士による言語指導の43.0%が言語強化であった.また,理学療法士が使用した言語教示の69.1%,フィードバックの89.0%がInternal Focus of Attentionであった.〔結語〕理学療法士は,言語強化を無自覚に多用している可能性が示唆された.動作指導では目標物を設置しづらいが故に,Internal focus of attentionが多用される可能性が示唆された.

  • 佐藤 健斗, 昆 恵介, 春名 弘一, 三富 菜々, 佐藤 ケイト, 小林 大二
    2022 年 37 巻 6 号 p. 585-592
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本邦で使用可能な義肢・装具ユーザの満足度評価尺度の作成を目的に,欧米で使用されているOrthotics Prosthetics Users Survey-Client Satisfaction with Device(OPUS-CSD)を翻訳して日本語版のOPUS-CSD-Jを作成し,その信頼性と妥当性を確認した.〔対象と方法〕義肢・装具ユーザ54名を対象とし,作成したOPUS-CSD-JのスコアのCronbach’s α係数から内的整合性の観点での信頼性を評価し,汎用的な満足度評価尺度であるSystem Usability Scaleのスコアとの相関係数を算出することで,併存的妥当性を評価した.〔結果〕義肢ユーザにおいて一定の信頼性と妥当性がある一方で,装具ユーザでは信頼性と妥当性が十分とは言えない結果となった.〔結語〕対象とする疾患や義肢・装具の種類や目的を適切に絞り,ユーザの意見を反映させ,本邦に適合させた満足度評価尺度の作成が必要であると考える.

  • ─3週間入院運動プログラムにおける症状変化を通して─
    池田 耕二, 藤田 信子, 松野 悟之, 高井 範子, 金子 基史, 三木 健司, 仙波 恵美子
    2022 年 37 巻 6 号 p. 593-599
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕3週間入院運動プログラム(有酸素運動,筋力増強運動など)における線維筋痛症(FM)女性患者の症状改善傾向を類型化すること.〔対象と方法〕対象はFM女性患者11名,方法はプログラムの開始前,中,後で,①SF-8(身体的健康度(PCS),精神的健康度(MCS)は前後のみ),②体調,③疲労度,④熟睡度,⑤疼痛,⑥楽しさ,⑦歩数,⑧睡眠時間,⑨睡眠効率,⑩姿勢(座位・立位の割合)を測定し,各項目の改善傾向から数量化Ⅲ類分析を用いて症状改善傾向を4つに分類した.〔結果〕症状改善傾向は,1)睡眠時間,熟睡度,疲労度,2)姿勢とPCS,3)歩数,MCS,睡眠効率,4)疼痛,楽しさ,体調の4つのグループに分類できた.〔結語〕本研究はFM女性患者の運動療法の効果の現れ方を4つに類型化した.

  • 松野 悟之, 明見 匡人, 大道 柊人, 鈴木 みのり, 国宗 翔
    2022 年 37 巻 6 号 p. 601-604
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕荷物所持方法の相違が,立位足圧中心および上半身重心の動揺に与える影響を検討した.〔対象と方法〕地域在住高齢者男女15名とした.荷物所持は,無所持条件,リュック,手提げ鞄手持ち,手提げ鞄肩かけの4条件とした.足圧中心の評価は,総軌跡長,左右・前後方向軌跡長を計測した.上半身重心動揺の評価は,加速度センサーを用いて左右および前後方向Root Mean Square(RMS)を計測した.〔結果〕無所持条件と比較して他の3条件では,総軌跡長,左右および前後方向軌跡長が有意に低値を示した.RMSは,無所持条件と比較して他の3条件では,前後および左右方向で有意な差はなかった.〔結語〕リュックと手提げ鞄肩かけ,手提げ鞄手持ちは,上半身重心動揺には影響を示さなかったが,立位足圧中心動揺の減少に寄与する可能性が示唆された.

  • 池田 圭介, 芦澤 遼太
    2022 年 37 巻 6 号 p. 605-610
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕要介護高齢者のFunctional Reach Test(FRT)見積もり誤差値と過去6ヵ月の転倒歴との関連を明らかにすること.〔対象と方法〕通所サービスを利用する要介護高齢者31名(男性14名,年齢83.1 ± 8.8歳)を対象に横断研究を実施した.転倒歴に関連すると考えられた項目として,FRT見積もり誤差値に加えて,基本項目を診療録より抽出し,身体機能,認知機能,転倒恐怖心を測定した.〔結果〕転倒歴の関連因子としてFRT見積もり誤差値が選択された.〔結語〕本研究では,FRT見積もり誤差値が大きい要介護高齢者は,転倒リスクが高いことが示唆された.

  • 武田 裕吾, 仲山 勉, 古川 勉寛
    2022 年 37 巻 6 号 p. 611-626
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕スマートフォンアプリケーションを用いた関節可動域測定(SG)の測定方法と妥当性および信頼性に関するシステマティックレビューを実施すること.〔対象と方法〕PudMed,Cochrane,医中誌のデータベースから検索を行い,適格性基準を満たす論文を質的に分析し,論文の質を確認するためにQuality Appraisal of Reliability Studies(QAREL)を用いた.〔結果〕検索された論文612件から,適格性基準を満たした57件を採用した.論文の質は中程度であった.妥当性および信頼性は一定数値以上であった.測定分類は徒手での固定が37件,アームバンド固定が16件,イメージセンサを用いた方法が8件あった.〔結語〕SGは多様な関節で測定の試みがなされ妥当性と信頼性が示唆されたが,測定方法は研究間で異なるため,さらなる検討が必要である.

  • 千葉 康平, 金子 賢人, 出雲 雄大, 山下 智幸, 林 宗博, 田中 清和
    2022 年 37 巻 6 号 p. 627-633
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する腹臥位療法実施前後の呼吸機能を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕2020年3月~2021年11月に日本赤十字社医療センターで人工呼吸器管理を行ったCOVID-19患者24例を対象とした.対象群における腹臥位療法実施前後での呼吸機能を比較検討した.呼吸機能の指標には,血液データからP/F比と人工呼吸器のグラフィックモニターからPpeak,PEEP,⊿P,Cstatを用いた.〔結果〕腹臥位療法実施後,P/F比とCstatは有意に増加していた.腹臥位療法実施後,PpeakとPEEP,⊿Pは減少していたが有意差はなかった.〔結語〕重症COVID-19患者に対する腹臥位療法実施は,呼吸状態改善に寄与することが示唆された.

  • 飯田 修平, 加藤 勝行, 徳田 良英, 窪川 徹, 阪井 康友
    2022 年 37 巻 6 号 p. 635-641
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い,学外での見学実習が不可能となったため,緊急措置として実施した学内の代替実習の教育効果を検証した.〔対象と方法〕理学療法学科1年生102名,臨床実習指導者の外部講師8名を対象に,主観的学習達成度と習得内容をアンケート調査した.〔結果〕情意領域,認知領域,技能領域での主観的学習達成度は,全て肯定的回答であった.得られた経験は,情意領域全般,幅広い分野の業務内容,動画を通した患者の接し方,症状,理学療法であった.得られなかった経験は,実際の患者とのコミュニケーション,現場実習の緊張感や雰囲気,詳細な患者状態であった.〔結語〕臨床実習を想定した学内での教育の質を向上させることが重要である.

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