-
合田 秀人, 岩井 浩一
2022 年 37 巻 1 号 p.
1-7
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕Knowledge Translation(KT)プログラムが,評価指標の使用頻度を高める効果があるか,その効果は持続性があるかについて検討する.〔対象と方法〕対象は地域理学療法実践者17 名とし,6種類の評価指標に関する資料の配布およびe-メールによるコミュニケーションを用いた介入を12週間実施した.介入前後および介入終了3ヵ月後の評価指標の使用頻度を調査した.〔結果〕介入直後,老研式活動能力指標など5種類の評価指標の使用頻度が有意に高まった.介入終了直後に普及を図った6種類の評価指標の使用が増えた13名のうち,9名は介入終了3ヵ月後も評価指標の持続的な使用を認めた.〔結語〕本KTプログラムには,評価指標の使用を促す効果が認められ,さらに持続効果があることも示唆された.
抄録全体を表示
-
─段階的難易度設定による介入が動作時間に及ぼす影響─
中山 智晴, 山﨑 裕司, 森田 ゆかり, 大﨑 康史, 古谷 博和
2022 年 37 巻 1 号 p.
9-13
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕パーキンソン病(PD)患者に対する段階的難易度設定による起居動作練習が,動作時間に及ぼす即時的効果について検討した.〔対象と方法〕PD患者13名を対象として,段階的難易度設定の技法を用いた起き上がり動作練習と寝返り動作練習を,計10~15分間実施した.〔結果〕介入前の起居動作時間の中央値は7.5秒,介入後の起居動作時間の中央値は4.4秒であり,動作時間は有意に短縮した.動作時間の改善度は,起居動作に時間を要していた重症度の高い症例ほど大きかった(rs:0.95).〔結語〕段階的難易度設定による起居動作練習は,PD患者の起居動作時間を短縮させる即時的効果を持つ,有効な動作練習と考えられた.
抄録全体を表示
-
岩井 信彦, 小嶋 功, 森本 陽介, 南 哲, 大久保 吏司, 小形 晶子, 下 和弘
2022 年 37 巻 1 号 p.
15-21
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕臨床実習に際し,学生が抱く思いやその特徴を客観的に把握するため,ポートフォリオ評価(実習に対する自己評価レポート)をデータ化し分析した.〔対象と方法〕対象は理学療法学科3年生28名.臨床実習前後に行った自己評価レポートを計量テキスト分析し,作成した共起ネットワーク図からレポートの特徴を可視化した.〔結果〕実習後において,個々の知識が臨床経験でつながったという気づきがある一方,検査測定の結果と動作分析結果との関連づけが不十分であることや,リスク管理に関心が薄いことがわかった.〔結語〕学生のポートフォリオ評価の通読だけでは見い出せない情報を計量テキスト分析で抽出することができ,その知見を面談や実習指導に利用できる可能性が示唆された.
抄録全体を表示
-
岡山 裕美, 大谷 虎輝
2022 年 37 巻 1 号 p.
23-26
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕噛み合わせおよび歯並びの主観的な良不良が等速性肘関節筋力に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕健常大学生に対して,噛み合わせと歯並びに関するアンケート調査を行った.各項目を良好群と不良群の2群に分け,噛む,噛まない,の2つの課題を行い,等速性肘関節屈伸のピークトルクを測定した.〔結果〕群間の違い(①噛み合わせ良好群および不良群,②歯並び良好群および不良群)と課題の違い(噛む,噛まない)の2要因で検討した結果,角速度60 deg/secでの屈伸運動において,噛み合わせにおける群間の違いにおいて主効果が認められた.〔結語〕噛み合わせの主観的な良不良が肘関節の筋力発揮に影響を与えることが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
重島 晃史, 山﨑 裕司, 片山 訓博
2022 年 37 巻 1 号 p.
27-31
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕幼児の運動器機能不全の実態を把握するため,事前動作練習の有無が運動器機能検査結果に与える影響について検討した.〔対象と方法〕幼児182名を検査対象として,しゃがみ込み,立位体前屈,および片足立ちのそれぞれの動作において,事前動作練習の有無によって対照群および学習群の2群に分類した.そして,群間および群内の学年間で動作可否の割合を比較した.〔結果〕しゃがみ込みおよび立位体前屈では,年少・年中児で事前動作練習の学習効果が有意に認められ,90%以上の遂行率であった.片足立ちは,両群ともに年長児ほど可能群の割合が有意に大きかった.〔結語〕幼児に対する事前動作練習の実施は,運動器機能不全の実態を正確に捉えるうえで重要である.
抄録全体を表示
-
出口 純次, 三浦 哉, 田村 靖明, 石川 みづき
2022 年 37 巻 1 号 p.
33-37
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕有酸素性運動および筋力発揮調整能の課題を併用したトレーニングが及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕健常成人16名であり60%VO2 maxで10分間の自転車こぎ運動後に筋力発揮調整能の課題を実施するAE群(n=8),筋力発揮調整能の課題のみを行うCON群(n=8)に無作為に振り分けた.筋力発揮調整能の課題として,握力課題を実施し,頻度は週3回,4週間とした.握力課題の成功数および課題遂行時間を,トレーニング前・後に測定した.〔結果〕握力課題の成功数は,AE群でトレーニング前と比較してトレーニング後に有意な増加が認められたが,CON群では有意差は認められなかった.〔結語〕有酸素性運動および筋力発揮調整能の課題を併用したトレーニングが,筋力発揮調整能を促進させる可能性が示唆された.
抄録全体を表示
-
五十嵐 達也, 松岡 秀典, 星野 涼, 臼田 滋
2022 年 37 巻 1 号 p.
39-44
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕亜急性期脳卒中患者における大腿部骨格筋の筋厚,筋輝度に関連する要因を検討した.〔対象と方法〕対象は亜急性期入院脳卒中患者41名とした.超音波診断装置により大腿直筋と内側広筋の筋厚と筋輝度を測定し,健患差を比較した.各筋厚,筋輝度と年齢,体格,罹患期間,栄養状態,病前の歩行能力,運動麻痺の重症度,歩行能力との間で相関分析と重回帰分析を行った.〔結果〕筋厚,筋輝度ともに有意な健患差を認めなかった.麻痺側内側広筋の筋厚で,病前の歩行能力に加えて罹患期間や運動麻痺の重症度が関連した.〔結語〕麻痺側内側広筋の筋厚は,運動麻痺が重度で病前の歩行能力が低く,罹患期間が長期化した者で低値を示す傾向にあった.亜急性期脳卒中患者の大腿部骨格筋の筋厚,筋輝度にはそれぞれ異なる要因が関連していた.
抄録全体を表示
-
─心理面談により明らかになった理学療法士の対応の重要性─
高井 範子, 藤田 信子, 池田 耕二, 金子 基史, 丸山 伸廣, 中原 理, 三木 健司, 高橋 紀代, 仙波 恵美子
2022 年 37 巻 1 号 p.
45-58
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕新たに考案した3週間入院運動プログラムによる介入前後の線維筋痛症(FM)患者の心身の変化を調査し,理学療法士(PT)の適切な対応を明らかにすることである.〔対象と方法〕FM女性患者12名を対象とし,医療や心理学などの専門家による共同チームが考案した3週間入院運動プログラムによる介入を行い,その前後において質問票(日本語版線維筋痛症質問票(JFIQ),日本版ベック抑うつ質問票(BDI-Ⅱ),The 8-item Short-Form Health Survey (SF-8))による評価と心理面談による聴き取りを行った.〔結果〕本プログラムによりFM患者のJFIQでは11名,BDI-Ⅱでは10名,SF-8では9名(身体面),8名(精神面)が改善を示した.患者の語りからは,患者の痛みや辛さに寄り添う姿勢など,PTの対応が患者にとり重要であることが示唆された.〔結語〕本プログラムはFM患者の心身に変化を及ぼす効果があり,その遂行において患者の痛みや辛さに寄り添うPTの姿勢が重要である.
抄録全体を表示
-
─新人理学療法士の自己評価による検討─
森井 慎一郎, 木村 圭佑, 櫻井 宏明, 金田 嘉清, 松本 隆史
2022 年 37 巻 1 号 p.
59-63
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕新人理学療法士の卒後10ヵ月における臨床能力の自己評価の変化を明らかにする.〔対象と方法〕新人10名に理学療法における臨床能力評価尺度(Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy:CEPT)を用いて,入職後1,4,7,10ヵ月に自己評価を行った.評価時期の変化に反復測定分散分析,多重比較検定を行った.〔結果〕思考,技術,会話,態度,自己教育,全合計に卒後10ヵ月以内で有意な向上を認めた.自己管理を除く全ての大項目は1~4ヵ月間で低下傾向を示した.〔結語〕臨床能力の自己評価の向上する時期は大項目による差があり,指導を要する時期も異なる可能性が考えられた.入職後早期に臨床能力の自己評価が低下する可能性があり,指導の際に配慮する必要性が示唆された.
抄録全体を表示
-
福山 友見, 藤田 晃史, 森内 宏充, 熊田 仁, 西島 吉典
2022 年 37 巻 1 号 p.
65-70
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕非接触型の前十字靭帯(ACL)損傷者における股関節の形態が,股関節周囲筋および膝外反角に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕ACL損傷者20名と対照群20名を対象とした.両股関節正面レントゲン像にて,股関節骨形態と骨盤傾斜角を測定した.股関節周囲筋は主動作筋力/拮抗筋力で評価した.膝関節外反角の測定は,片脚スクワット時の膝関節屈曲60°の肢位で計測した.〔結果〕股関節周囲筋と膝外反角は,群間に差がなかった.ACL損傷群はAcetabular-Head Indexが有意に小さく,骨盤後方傾斜角は有意に大きかった.そのため股関節不安定性があると考えられた.〔結論〕骨盤後方傾斜角の増加に従い股関節外旋/内旋筋力の減少を認め,この主動作筋/拮抗筋比率の不良がACL損傷の受傷肢位を助長すると考えられた.
抄録全体を表示
-
上田 泰久, 千代丸 正志, 大川 孝浩, 柿崎 藤泰, 福井 勉
2022 年 37 巻 1 号 p.
71-75
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕上肢・上肢帯アライメントが頸部の筋硬度および可動域に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕健常な成人男性20名とした.測定肢位は座位姿勢とし,上肢・上肢帯アライメントは3条件(両上肢下垂・両上肢免荷・左上肢免荷)とした.測定機器は生体組織硬度計と超音波方式三次元動作解析システムを用いて,頸部の筋硬度と可動域を測定した.〔結果〕頸部の筋硬度は,両上肢免荷で左右僧帽筋,左上肢免荷で左僧帽筋が有意に低下した.頸部の可動域は,両上肢免荷の条件で伸展・回旋・側屈,左上肢免荷で左回旋・右側屈が有意に増加した.〔結語〕上肢・上肢帯アライメントは頸部の筋硬度および可動域に影響を及ぼすことが示唆された.
抄録全体を表示
-
─大学野球選手を対象として─
安田 良子, 栗原 俊之, 篠原 靖司, 伊坂 忠夫
2022 年 37 巻 1 号 p.
77-86
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕本研究は片足立位(I),前方への片足踏み込み(II),台からの片足踏み込み(III)の急性期と安定期の重心動揺を比較し,足部アライメント指標(FA)との関係を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は大学野球選手64名とした.FAは内側縦アーチ高率,第1・第5趾側角,開張角,足幅/足長比とし,重心動揺指標は足圧中心(COP)軌跡速度,重心動揺面積とした.〔結果〕急性期のCOP軌跡速度は条件I,II,III間に有意な差が認められたが,安定期はIIとIIIとの間に有意差を認めなかった.IIIではFAとCOP軌跡速度との間に有意な相関関係を認めなかった.〔結語〕急性期の重心動揺は身体重心方向と衝撃力が影響し,安定期は足部接地前の準備動作が影響した可能性がある.IIIは足部より上位関節が重心動揺と関係した可能性が推察された.
抄録全体を表示
-
則竹 賢人, 窪 優太, 林 尊弘, 山田 和政
2022 年 37 巻 1 号 p.
87-93
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕高齢入院患者における栄養評価指標としての位相角(PhA)の有用性を明らかにすること.〔対象と方法〕回復期リハビリテーション病棟に入院した患者207名(男性67名,女性140名)を分析対象とした.診療録よりPhAおよびその関連因子を後方視的に収集し,男女別にPhAと,基本属性,骨格筋指数,栄養評価指標,日常生活活動能力との関連性について検討した.〔結果〕男女ともにPhAと栄養評価指標に有意な関連が認められた.〔結語〕栄養評価指標が他の因子よりも強い関連を認めたことから,PhAは簡便かつ非侵襲的に栄養状態を評価するための指標になり得ることが示唆された.
抄録全体を表示
-
─横断研究─
鈴木 皓大, 井川 達也, 小野寺 佳輝, 中村 友紀, 浦田 龍之介, 谷 浩明
2022 年 37 巻 1 号 p.
95-99
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕歩行時のスマートフォン利用(以下,歩きスマホ)が単純反応時間に与える影響について明らかにすること.〔対象と方法〕対象は健常成人39名.音刺激に対する反応を声で行う単純反応時間をトレッドミル上で測定した.通常歩行,歩きスマホの2条件の反応時間を比較した.加えて,普段から歩きスマホを行っているかを聴取し,習慣,非習慣の2群の反応時間を比較した.〔結果〕測定条件において有意な主効果を認めた.事後検定の結果,習慣群および非習慣群ともに,歩きスマホ条件は歩行条件よりも有意に反応時間が遅かった.〔結語〕歩きスマホの習慣の有無にかかわらず,歩きスマホは通常歩行条件と比較して,反応時間が有意に遅くなることが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
山下 淳一, 堀本 ゆかり, 千葉 淳弘
2022 年 37 巻 1 号 p.
101-105
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕理学療法士の「働きがい」の構成要素と影響度を明らかにすることを目的とし調査を行った.〔対象と方法〕当院理学療法士61名を対象に5件法による全18項目のアンケート調査を実施し,重回帰分析およびパス解析を用い分析した. 〔結果〕「働きがい」の構成要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」,「能力向上」,「配置」,「達成感」で構成されていることが明らかとなった. そのうち「働きがい」と特に関係が強い要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」の順であることが明らかとなった.〔結語〕理学療法士に対する「働きがい」を向上させるための具体的取り組みとして,まずは「評価・処遇」の改善が必要であることが示唆された.
抄録全体を表示
-
西山 裕貴, 萩野 浩
2022 年 37 巻 1 号 p.
107-110
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕リハビリテーション(リハ)を実施した高齢肺炎患者の在院日数に影響する要因を明らかにすること.〔対象と方法〕肺炎で入院した65歳以上の患者で,リハを実施した192名を入院短期群と長期群に分類し,在院日数の影響因子を検討した.〔結果〕在院日数の影響因子として,早期リハ開始までの日数とリハ開始時のBarthel Index(BI)が抽出された.〔結語〕入院後のリハ早期介入,リハ開始時BIが高いことが在院日数短縮に関連することが示された.
抄録全体を表示
-
小坂 健二, 神澤 佑哉
2022 年 37 巻 1 号 p.
111-115
発行日: 2022年
公開日: 2022/02/20
ジャーナル
オープンアクセス
〔目的〕前胸部柔軟性テストおよび胸郭拡張差を用いて肩関節周囲炎患者における,胸郭可動性と肩関節機能との関連を検討した.〔対象と方法〕対象は肩関節周囲炎と診断された22名とした.理学療法初診時に前胸部柔軟性テストおよび胸郭拡張差と,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア),安静時および運動時Visual Analogue Scale(VAS),肩関節可動域(屈曲,下垂位外旋,内旋)との相関関係を調査した.〔結果〕前胸部柔軟性テストおよび胸郭拡張差と安静時VASにそれぞれ相関が認められた.〔結語〕肩関節周囲炎患者では胸郭可動性と肩安静時痛が関連している可能性が示唆された.
抄録全体を表示