〔目的〕介護予防の観点から外出の重要性が報告されているが,環境要因により外出が阻害されることもある.そこで,居住地の標高が外出頻度や身体機能に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕高齢者サロンに参加した84名を対象に,身体機能評価(握力,片脚立位,Timed Up and Goテスト(TUG),5回立ち上がりテスト),アンケート(居住地の標高,外出頻度,外出目的,外出手段)を実施した.〔結果〕多変量解析の結果,TUGに年齢が影響していたが,居住地の標高は外出頻度,身体機能に影響していなかった.〔考察〕年齢は歩行能力に影響することが報告されており,本研究でも同様の結果が得られた.加齢に伴い外出頻度は減少する傾向にあるため,身体機能維持には積極的な外出を促すことが重要だと考えられる.
〔目的〕人工膝関節全置換術を施行した高齢女性の術後3ヵ月から6ヵ月の膝伸展筋力向上群と膝伸展筋力低下群における移動能力の経時的変化の検討を行うことである.〔対象と方法〕人工膝関節全置換術を施行した高齢女性について膝伸展筋力向上群,膝伸展筋力低下群に群分けをし,日本整形外科学会膝疾患治療判定基準(JOAスコア)の各群間内推移比較を行った.〔結果〕JOAスコアの結果は,両群ともに術後3ヵ月のJOAスコアを術後6ヵ月まで維持していた.さらに総得点,疼痛・階段昇降能力は,膝伸展筋力向上群が膝伸展筋力低下群より早期に回復を認めた.疼痛・歩行能力は,膝伸展筋力向上群のみ改善がみられた.〔結語〕本研究より,膝伸展筋力向上群は移動能力が早期に向上していたことから,術後早期に移動能力の改善を目指した個々の患者に合わせた理学療法の重要性が考えられた.
〔目的〕非特異的慢性腰痛症におけるコルセット着用停止の効果を検討した.〔対象と方法〕コルセットを着用している非特異的慢性腰痛症患者58名を対象とし,痛みの強度(Numerical Rating Scale:NRS),不安感(Pain Catastrophizing Scale日本語版:PCS),腰部多裂筋筋断面長の評価を実施した.31名の対象者でコルセットの着用継続を停止し,経過を検討した.〔結果〕研究開始時点で両群間に有意差は認められなかったが,12ヵ月後にはコルセット着用停止群でNRSおよびPCSが有意に低下した.着用継続群では腰部多裂筋断面長が有意に減少し,特に着用歴1年未満の群で顕著であった.〔結語〕コルセット着用停止により非特異的腰痛症の痛みの軽減,悪化の予防が期待できる.
〔目的〕理学療法における臨床推論の概念を,Huhnらの概念分析以降に蓄積された国内文献を含む最新の知見を基に,明確化することを目的とした.〔対象と方法〕2018年以降に発表された理学療法領域の臨床推論に関する国内外の文献を対象に,Walker & Avantの概念分析に基づいて,概念の構成要素を抽出し整理した.〔結果〕採用した20文献から,先行要件3カテゴリー,属性7カテゴリー,結果4カテゴリーを抽出し,理学療法における臨床推論の概念を明らかにした.〔結語〕本研究により明らかとなった理学療法における臨床推論の概念は,教育プログラムの設計や評価のための基礎になる可能性が示唆された.
〔目的〕地域在住高齢者における呼吸サルコペニア分類の実態を明らかにすること.〔対象と方法〕地域在住高齢者187名を対象に,骨格筋指数,握力,5回椅子立ち上がりテスト,呼吸筋力,肺機能,Timed Up and Go test,認知機能を測定した.〔結果〕分析対象180名のうち,呼吸サルコペニア(可能性が高い)は31名(17%),呼吸サルコペニア(可能性がある)は10名(6%),呼吸機能障害による筋力低下は8名(4%)であり,呼吸サルコペニア(可能性が高い)は,呼吸筋力低下のない対象者より肺機能および身体機能が有意に低下していた.〔結語〕呼吸筋力低下を有する地域在住高齢者において,呼吸サルコペニア(可能性が高い)が最も多く(17%),肺機能および身体機能が低下しやすいことが示された.
〔目的〕椅子の高さを変えることでSit-to-Walkでの歩行開始動作に与える影響を調査すること.〔対象と方法〕13名の健常若年者を対象に,椅子の高さを3段階に設定した研究を実施した.デジタルビデオカメラと三軸加速度計を用いて,椅子から立ち上がり最大歩行した際の歩幅,1歩速度を測定し3群間で比較した.歩幅と1歩速度の変動係数を測定するとともに,安定した歩行達成に必要な歩数,体幹前傾角度,重心移動速度を比較した.〔結果〕低い椅子は1歩目の歩幅は狭く,速度は遅かった.安定した歩行に至る歩数は有意差がなかった.低い椅子ほど体幹前傾角度は大きく,上方重心移動速度は速かった.〔結語〕低い椅子からのSit-to-Walkでは,不安定な姿勢で足を降り出すため1歩目の歩幅は狭く,速度は遅かったと考える.
〔目的〕日本の理学療法分野における学術出版での女性研究者の参画状況を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕2011・2012年および2021・2022年に邦文理学療法関連誌に掲載された原著論文1,296件を対象に,著者の性別を特定した.〔結果〕全著者に占める女性割合は17.1%,筆頭著者16.0%,最終著者11.1%であり,10年間に有意な変化はなく,いずれも低水準であった.筆頭・最終著者がともに男性の論文は75.5%,ともに女性は2.6%にとどまった.回帰分析では,筆頭・最終著者に女性を含む論文で女性著者割合が有意に高かった.〔結語〕上位著者層への女性参画は,研究チーム全体の女性比向上と関連し,理学療法分野におけるジェンダー多様性推進の一助となる可能性が示唆された.
〔目的〕右側人工股関節全置換術(THA)後の1症例に対し,免荷式歩行リフトPOPO(モリトー社製)の前進負荷機能を用いた歩行練習(前進負荷歩行)を実施し,その効果を歩行中の股関節伸展角度に着目して検討した.〔対象と方法〕右側THAを施行した80歳代女性を対象に,前進負荷歩行を5日間,計60 m/日行った.〔結果〕介入前後でT字杖歩行時の右股関節最大伸展角度は-11.8 ± 1.4°から-2.2 ± 0.5°へ拡大し,歩行速度は0.37 m/sから0.55 m/s,平均歩幅は33.3 cmから38.5 cmへ改善した.〔結語〕前進負荷歩行は,THA後症例の歩行時股関節伸展角度の拡大および歩行能力の改善につながる可能性が示唆された.