1. 河川に出現する, 珪藻以外の藻類は, 普通, どの河川でもその種類数が少ないが, Kauai 島の河川の場合も, 同様に僅少種の出現を認めたにすぎない.それらの大部分は, 世界各地に広く分布する普遍種であり, この島に特有の種と考えられるものは,
Micrasterias truncataの変異型と,
Netrium sp. の2者のみであつた.
また, それら藻類のfloraは, 日本の河川でのそれとよく似ているが, 日本の温泉に産出する藍藻類が, 僅かではあるが, 河川中に産出しているのは, 生態学的に興味深い事実である.
2. Kauai島の河川に出現した珪藻の種類数は, 19属61種24変種3品種に達しているが (Table 1, Plate 1~3), これらのうち, 約1/3の14属21種2変種は世界普遍種であり, 4属5種1品種は, 日本の本州中部以南に産出する暖性種と考えられる.残りの12属38種15変種2品種のうち, 7種は, 日本では未だ報告された例のない種であり, 8種は九州からだけ発見されている種である.他の23種は, 日本では, 一部の限られた地域からの僅かな報告があるにすぎない種であるが, それらの産地は, 大体日本の本州中部以南である.
これらの普遍種および日本での限られた水域にのみ発見された種のほとんど総ては, Sumatra, Java, Bali 島の諸水域にも出現するが (1938, 1939), standing crop をも含めてのfloraとしては, 熱帯の上記諸島の水域のfloraよりも, むしろ, 日本の河川におけるfloraとよく似ている.
いま, 各地点において, 特に量産した種について, それらの日本における分布をみると, Station 1では,
Synedra amphicephala, Gomphonema subclavatum, Nitzschia paleaceae N. filiformis は, 九州, 大阪近辺において発見される種であり,
Achnanthes Biasolettianaは, 日本の諸河州での普遍種である.また, Station 2, 3では, 量産するものの大部分が普遍種である.
3. 渡辺 (1961, 1962) の, 珪藻の種類数に基づく汚濁指数の値は, St.1 : +118, St.2 : +132, St.3 : +200で, St.1のみが低汚濁水域であることを示し, St.2の値は, 日本の汚濁を受けない一般渓流での値と一致し, St.3では, 理論的な最高値と一致して, 最も清冽な水域であることを示している.St.3の珪藻のflora が, 高層湿原のそれと酷似することからも, 湧水の水源が, このStation の近くにあるのではないかと考えられる. St.1での汚濁は, 人為的な汚濁源の存在は考えられず, 多量の落葉の分解生成物の溶出による, 自然汚濁が影響しているものと思われる
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