陸水学雑誌
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53 巻, 4 号
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  • 加藤 寛久, 小倉 紀雄
    1992 年 53 巻 4 号 p. 265-272
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    東京北多摩地区の地下水(湧水及び深井戸水)の水質が1986年から1988年にかけて調査された。
    湧水N-0の硝酸態窒素濃度は467から653μgat・l-1であった。そして,硝酸態窒素濃度は,夏に低く,冬に高いという傾向を示した。また,湧水N-0において,1976年から1988年にかけて,湧出水量と塩化物イオン濃度は減少する傾向を示したのに対して,硝酸態窒素濃度は徐々にではあるが,増加する傾向を示した。国分寺崖線の湧水では,硝酸態窒素濃度が800μgat・l-1を越える高い値を示したものがあった。深井戸2地点における硝酸態窒素濃度は,国分寺崖線の湧水よりも低い値を示した(W-1:353-609μgat・l-1, W-2:143-253μgat・l-1)。
  • 市川 忠史, 吉岡 崇仁, 和田 英太郎, 林 秀剛
    1992 年 53 巻 4 号 p. 273-280
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    窒素安定同位体(15N)を用いたトレーサー実験を行い,淡水のプランクトンの窒素の取り込み速度を測定した。数100個体以下(5μgN程度)での微小動物プランクトンの微量な15N変化の検出のため,同位体比既知の物質(アラニン)をNキャリアーとして用い,比率直読式質量分析計で測定を行った。キャリアー添加によって生ずる誤差は-0.00210~+0.00113 15Natom%(平均0,00048±0.0010S.D.)の範囲にあった。この方法で測定を行った結果,中綱湖のKellicottia longispinaについて8.5×10-8mg・atom-N・indiv.-1・day-1,諏訪湖のKeratella quadrataについて4.2×10-7mg・atom-N・indiv.-1・day-1の値が得られた。取り込み速度,窒素含量及び炭素含量から計算した純生産速度はK. longispinaで5.1×10-6mgC・indiv-1・day-1, K. quadrataで2.5×10-5mgC・indiv-1・day-1となった。質量分析と15Nトレーサー実験の組合わせにより,動物プランクトンの種のレベルで,栄養塩から植物プランクトンを経た窒素の取り込みが,同時に,かつ同じ空間で測定が可能であることが示された。
  • Yudhi Soetrisno GARNO, 坂本 充
    1992 年 53 巻 4 号 p. 281-292
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    隔離実験水界を用い,植物プランクトン群集の遷移におよぼす栄養塩と動物プランクトンの影響を調査した。実験開始時の栄養塩添加により,クロロフィルaの濃度と植物プランクトン量は顕著な増加を示したが,実験後半には急速な減少がみられた。栄養塩の経時的減少環境下で,植物プランクトンの増殖パターンには三つのタイプが認められた。時間差をおいて添加した枝角Simocephalus vetulus個体群の成長は,植物プランクトンの後半における密度減少を促進した。種特異的な植物の栄養塩の利用効率の差と,栄養塩の減少が三つのタイプの植物プランクトンの経時的変化を支配する主要因子と判断された。
  • 上村 仁, 石渡 良志
    1992 年 53 巻 4 号 p. 293-303
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    榛名湖堆積物コア試料(16cm)中の脂肪族炭化水素およびホパン炭化水素を測定し時間変動を調べた。
    コア試料中のn-C25~C33n-アルカンの炭素優位性指標は,深さ7~16cmで6.0~7.7であったのに対して上層に向かって減少し表層(0~1cm)では2.2であった。UCM(ガスクロマトグラムにおけるハンプ)は下層から上層に向かって増加し,3~4cm層において極大を示した。UCMの鉛直分布は17α(H),21β(H)ホパンの鉛直分布と一致した。これらの鉛直分布から,榛名湖における石油汚染は1940年代(深さ6~7cm)から始まり,1969~1976年(深さ3~4cm)において極大となったことが分かった。C3117α(H),21β(H)ホパンは堆積物中の石油汚染の最適の指標であると結論された。
  • 臼井 恵次, 東 俊雄
    1992 年 53 巻 4 号 p. 305-315
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    硬水湖沼ほどカルシウム濃度は高くないが,石灰岩台地を集水域にもつ小野湖において,夏季の成層形成期の表水層で,水温の変化や植物プランクトンの光合成に起因するpHの増加によって,炭酸カルシウム(calcite)に対して飽和指標(IAP/Kc)が計算上20以上の非常に高い過飽和状態が存在することがわかった。しかし,この状態では自生の炭酸カルシウム沈殿を生じることはなかった。炭酸カルシウムの種結晶の不在がこの原因と考えて,N2ガスを用いた脱CO2およびNaOH添加という2種類の方法で湖水のpHを上げて夏季の表層の状態を再現し,これに種結晶を添加して炭酸カルシウムの生成実験を行った。その結果,自生性炭酸カルシウムの生成には種結晶の添加と現在の全炭酸量を変えずにpHを上昇させることが必要であった。また,その添加の効果は11の湖水あたり炭酸カルシウムの種結晶を約600μmol(60mg・l-1)添加したときが最も高く,湖水中のカルシウムイオンの約20%が炭酸カルシウムになることがわかった。この時,溶存PO4-Pの1.0μmolが炭酸カルシウムと共沈除去された。
    この現象は脱塩水や他のカルシウム濃度が低い湖沼では起こらず,添加した炭酸カルシウムは一部溶解され,PO4-Pを共沈することはなかった。
  • 佐藤 泰哲, 落合 正宏, 小山 智和, 小出 直樹
    1992 年 53 巻 4 号 p. 317-326
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    1990年5月から11月にかけ,池塘水中の溶存炭水化物(DCHO)濃度を3種類の異なった方法で定量した。フェノール硫酸(PSA)法の測定値の範囲は1.22-4.01mgC・l-1,平均2.15mgC・l-1で,常に一番高かった。塩酸3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)法の測定値(以下,MBTH-DCHO)は0.75-2.18mgC・l-1,平均1.36mgC・l-1であった。溶存有機炭素(DOC)に対するMBTH-DCHOの割合より,DCHOはDOCの中でかなり一定の割合で存在する事が分かった。8種類の中性糖がガスクロマトグラフィー(GC)で定量された。8種類の糖の合計(以下,GC-DCHO)は0.28-1.99mgC・l-1の範囲で,平均は0.99mgC・l-1であった。グルコール(25%),ガラクトース(22%),マンノース(15%)が主要な糖であった。春から8月初旬にかけ,GC-DCHOはMBTH-DCHOと良く一致し,秋にはMBTH-DCHOより低かった。
    今まで報告されている,PSA法及びMBTH法の特異性の比較より,MBTH法の結果を全DCHOのプールサイズを表す指標として採用した。これに照らすと,PSA法は池塘水中のDCHO濃度を過大評価していたと言える。一方,測定に時間がかかり,また中性糖しか分析できないが,糖類組成を明らかにできるのはGC法の利点である。
  • 畠山 成久, 福嶋 悟, 笠井 文絵, 白石 寛明
    1992 年 53 巻 4 号 p. 327-340
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    除草剤が河川の藻類生産に及ぼす影響を評価するため,1991年4月から8月まで小貝川定点の河川水中で緑藻のSelenastrum capricornutum の増殖試験を行い,同時に水中の除草剤濃度を測定した。また河川水中で検出された除草剤のSelenastram生長阻害試験とそれら除草剤の複合影響試験を行った。Selenastrumの増殖は5月初旬から下旬にかけて著しく抑制され,それはbutachlorとpretilachlorの相加的影響が主因であることを示した。5月末に河川水中の除草剤の種類は大きく入れ替わった。5月末前後には数種の除草剤の複合影響は認められるものの,6月初旬からはほとんどsimetryn単独の影響でSelenastrumの増殖が阻害され,その濃度低下と共に増殖阻害は6月末まで徐々に回復した。5月下旬につくば市近辺の他の河川水で行った試験でもSelenastrumの増殖阻害が顕著であった。小貝川定点に設置した人工基物上の藻類群集の増加率は5月中旬に急減したが,これは除草剤による可能性が極めて高く,この時には全ての優占種の現存量が減少した。除草剤により群集増加率が阻害を受けていると見なされる期間中では群集を構成する種類数も10種以下と少なくなった。6月中旬以降除草剤の濃度が低下し,河川水中でのSelenastrum増殖が回復した後にも群集増加率は降雨等の影響により時により低下したが,群集構成種は10~20種と除草剤の影響期間に比べ多かった。以上の結果から,田園地帯を流下する河川の藻類生産は5~6月に各種除草剤により影響を受けることが示唆された。
  • 好気的実験条件下におけるソウギョの糞の分解過程
    岩田 勝哉, 高村 典子, 李 家楽, 朱 学宝, 三浦 泰蔵
    1992 年 53 巻 4 号 p. 341-354
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    上海郊外の淀山湖湖畔にある中国綜合養魚系では,ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)と食性の異なる他の数種のコイ科の魚を水草を主な飼料として混養し,非常に高い生産をあげている。このシステムでは,養魚池中に多量に排出されるソウギョの糞が直接,間接的に他の魚の餌として重要な役割を果たしていることが推察される。事実,この池から取り上げたフナ(Cayassius auratus)やコクレン(Aristichthys nobilis)の消化管内容物中にはソウギョの糞に由来する水草の断片が多数発見されている。本研究ではソウギョの糞が池の食物連鎖網の中でどのような役割を果たしているかを知るために,セキショウモ属の水草(中国名:苦草,Vallisneria spiralis)の砕片からなるソウギョの糞を養魚池から集め,それを実験室内で分解した。16日間の分解期間の問,糞中の炭素はほぼ一定の速度で減少し,元の含有率の約1/2にまで減少したが,窒素は分解8日後までほとんど減少しなかった。分解過程のソウギョの糞の単位乾燥重量あたりの窒素やアミノ酸含有率は分解8日後までは時間経過に伴って増加し,上限に達した。
    その後の含有率は分解時間の進行に関わらずほぼ一定値を示した。培養液中に加えた15NH43H-チミジンは速やかに分解過程の糞に取り込まれた。
    分解過程のソウギョの糞は細菌が繁殖するための基質として役立ち,また,付着細菌を含む分解過程の糞全体は池に共存する無脊椎動物や魚の新たな食物資源として重要な役割を果たすことが示唆された。
  • 湖水におけるカルサイト形成の可能性
    福原 晴夫, 青柳 則子, 斎藤 優子, 佐藤 修
    1992 年 53 巻 4 号 p. 355-361
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    青梅石灰岩地帯に隣接する高浪池(新潟県糸魚川市,最大水深14.4m,)のカルシウムの年平均濃度は18.7mg・l-1であり,調和湖沼中最も高い濃度を有し,夏期に強い成層を示す。1990年8月の表水層の平均濃度は16.6mg・l-1,水温躍層では20.4mg・l-1であった。表水層では6月から8月に光合成によりpHが8以上となり,カルサイトの過飽和層が出現した。カルシウムの成層,カルサイトの過飽和層の出現,5月から9月にかけての表水層各深度におけるカルシウム濃度とアルカリ度の比例的減少より,表水層中でカルサイトが形成されている可能性が強く示唆された。
  • 高村 健二
    1992 年 53 巻 4 号 p. 363-372
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    屋外に設置された流路長約30mの循環水路6本を用いてユスリカ羽化に対する界面活性剤ABS(アルキルベンゼンスルホン酸塩)の影響を調べた。水路からは8種のユスリカが羽化したが,そのうちCricotopus tamapullusとParatrichocladius rufiventrisの2種が優占した。平均濃度で約0.2,1.0 ppmの2段階と約2.7ppmの1段階とに2回に分けて非暴露水路を対照として1カ月以上の長期暴露を行った。このうち2.7ppmでのみ優占ユスリカ2種の羽化の有意な減少が認められた。この羽化の減少は,表面張力の低下により羽化が困難になるか,あるいは水中生活期のユスリカが不利な影響を被る事によって起きたものと推測された。後者の可能性は,羽化が減少した暴露水路で付着藻類現存量が顕著に減少した事実によって二次的影響として示唆された。
  • 松原 健司
    1992 年 53 巻 4 号 p. 373-377
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    富栄養化の進む手賀沼で越冬するハシビロガモの食性を明らかにするために,1990年3月に採餌中のハシビロガモ7羽を捕獲し消化管内容物の分析を行った。胃内容からは主に橈脚類(Cyclpos spp.)および付着性の緑藻の一種Cladophora glanurataが検出された。このほか輪虫類のBrachionus calyciflorus, B.leydigii,B.angulayis,Trichocerca birostris, Polyarthra spp.とNemutodaに属すると思われるもの,Navicula属,Synedra属の付着性の珪藻も若干含まれていた。この結果から,本種は表層水中の動物プランクトン及び魚網などに付着する藻類を主な餌としていることが考えられ,こうした餌となる水生生物群集と本種の摂食生態との関係に関する研究の必要性が示唆された。
  • Raoul HENRY
    1992 年 53 巻 4 号 p. 379-384
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    ユルミリム貯水池(Jurumirim)の溶存酸素不足量および酸素減少率について1988年の3月より1989年の3月までの調査で得た水温と溶存酸素のデータより推定を行った。10月から3月にかけて水温の成層がみられた。水温躍層は常に水柱の3分の2よりも深いところに見られた。水温が成層している問,酸素は急激に変化した。1年を通して,水深20mまでは酸素は十分供給された。水底(水深5m)では水温成層期に溶存酸素が著しく減少した。したがって,酸素不足の程度は底の方が高かった。溶存酸素総不足量および酸素減少率はそれぞれ0.03から0.72mg・cm-2と0.013から0.032mg・cm-2・day-1の間で変動した。透明度やクロロフィルaのような他の水質の指標からユルミリム貯水池は貧栄養段階に分類されることが明らかとなった。
  • 小林 道頼
    1992 年 53 巻 4 号 p. 385-394
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    オオミジンコの血リンパ中のHb濃度と生息水の溶存O2量には逆相関の関係が見られる。低O2下でのHb合成は未成熟個体で高い。Hbの多い個体は少ない個体が遊泳できない程の低い酸素下でも長距離を遊泳できる。オオミジンコは02調節形の呼吸を示し,Hbの多い個体は少ない個体よりも低い臨界O2濃度を持っている。Hbの多い個体と少ない個体の生体内Hbが50%O2化するO2圧はそれぞれ15と35torrである。Hbの多い個体の精製HbのO2親和性は少ない個体のものよりも高い。
    等電点電気泳動法によりオオミジンコHbは少なくとも6種以上の成分に分離される。Hbの多い個体と少ない個体ではHb成分の量比が異なり,Hbの多い個体では,等電点の高い成分が増加している。
    オオミジンコはO2親和性の異なる多成分系Hbをもつことにより,広範なO2環境に適応することができるものと思われる。
  • 1992 年 53 巻 4 号 p. 395
    発行日: 1992/10/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 4 号 p. 395a
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
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