長良川下流部で,1990年3月から1991年2月の1年間にわたり,流下珪藻群集と水質の変動を観察した。
夏の渇水期に,下流部の緩流域で, Cyclotella atomus, C. meneghinianaが,多量に発生し(3.1×10
3 cells・ml
-1),クロロフィルa濃度は,32.6μg・l
-1に達した。日本の,勾配の急な河川では,河川棲浮遊藻類は生育し得ないとされてきたが,この2種の珪藻類は,長良川における分布,及び,干満を考慮した日変動の観察から,河川本流に生育する自生的な河川棲浮遊珪藻類であると判断された。
浮遊藻類の発生は,渇水により河川流量が減少した時に見られ,下流域での滞留時間が長くなることにより引き起こされると考えられた。豊水時にも,河川水のクロロフィルαが高くなることがあったが,その場合,流下藻類群集の付着藻類の比率,及び,フェオ色素/クロロフィルa比が高くなり,自生的な浮遊藻類群集の発生と区別することができた。
多量の浮遊藻類の発生した時期には,河川表層水の有機物濃度は,著しく増加し,BODは,4mg・l
-1に達した。また,その時期に無機態の窒素・燐の消費が観察された。
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