陸水学雑誌
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53 巻, 1 号
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  • フロラ,群集変動,及び水質に与える影響
    村上 哲生, 伊佐治 知明, 黒田 伸郎, 吉田 恭司, 芳賀 裕樹
    1992 年 53 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    長良川下流部で,1990年3月から1991年2月の1年間にわたり,流下珪藻群集と水質の変動を観察した。
    夏の渇水期に,下流部の緩流域で, Cyclotella atomus, C. meneghinianaが,多量に発生し(3.1×103 cells・ml-1),クロロフィルa濃度は,32.6μg・l-1に達した。日本の,勾配の急な河川では,河川棲浮遊藻類は生育し得ないとされてきたが,この2種の珪藻類は,長良川における分布,及び,干満を考慮した日変動の観察から,河川本流に生育する自生的な河川棲浮遊珪藻類であると判断された。
    浮遊藻類の発生は,渇水により河川流量が減少した時に見られ,下流域での滞留時間が長くなることにより引き起こされると考えられた。豊水時にも,河川水のクロロフィルαが高くなることがあったが,その場合,流下藻類群集の付着藻類の比率,及び,フェオ色素/クロロフィルa比が高くなり,自生的な浮遊藻類群集の発生と区別することができた。
    多量の浮遊藻類の発生した時期には,河川表層水の有機物濃度は,著しく増加し,BODは,4mg・l-1に達した。また,その時期に無機態の窒素・燐の消費が観察された。
  • 花里 孝幸
    1992 年 53 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    湯の湖のゾウミジンコの個体群動態と季節的形態変化を調べた。
    ゾウミジンコ個体群は真夏に大きく個体数を減少させ,秋に回復した。夏の減少の原因として餌不足が最も重要であったと考えられ,またその餌不足には夏に個体数を増したミジンコ(Daphnialongispina)が競争を通して大きく寄与したものと思われた。
    ゾウミジンコは顕著な季節的形態変化を示した。
    すなわち春から夏に第一触角(antennule)と殼の後端部刺状突起(mucro)を短くし,秋にそれらを伸ばした。それらの長さと無脊椎捕食者のケンミジンコ(Cyclops sp.)の個体群密度との間に有意な正の相関が認められたことから,この捕食者の存在がゾウミジンコの季節的形態変化を引き起こした主要な要因であったと推察された。
  • 松山 通郎
    1992 年 53 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    2種類の大型の細菌,Macromonas sp.とChromatium sp.が貝池H2S層上端に年間を通して密集分布している(バクテリアプレート)。Macromonas sp,のCaCO3よりなる大きくて真珠のように白く光沢ある顆粒はバクテリアプレート試料をpH6.3以下に酸性化すると急速に細胞から消失した。しかし,pHを初期の値(8.5)に復帰させると,これら細胞は再び顆粒を急速に貯留し,CaCO3の蓄積が細胞機能を維持する上で基本的に重要な活動の一つであることを示した。これら顆粒の消失は細菌が生きている限り,H2S溶液に曝しても観察された。Macromonas sp.はCaCO3顆粒を環境中のH2Sに対し遮蔽物として利用することによりH2S層上端に生息すると推察された。
  • 花里 孝幸, 野原 精一
    1992 年 53 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1987年と1988年に尾瀬沼の枝角類Holopedium gibberumとBosmina longirostrisの個体群動態を調べた。また夏にこれらの枝角類の垂直分布の日周変化を調べた。2種の枝角類は7~10月のあいだ水柱全体に分布し,顕著な日周垂直移動は行っていなかった。個体群密度,生物量,成体の割合,抱卵率,出生率はどれも比較的安定していた。H.gibberumについては,平均個体サイズおよび最小の抱卵個体サイズが魚の少ない湖の同種のものより顕著に小さかったことより,この種に対する魚の捕食圧は尾瀬沼ではかなり高かったものと考えられた。
  • 田中 晋
    1992 年 53 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    カブトミジンコDaphnia galeata Snxsは形態の変異が大きく,古くから多くの変種(variety)が記載されるなど,分類学的に混乱した状態にあったが,最近ヨーロッパにおいて,近縁のウスカワハリナガミジンコDaphnia hyalina LEYDIGと区別されるはっきりとした種であることが明らかにされた。しかしわが国では,ハリナガミジンコD.longispina O.F.MULLERまたはD.hyalinaのシノニムか亜種としてあつかわれてきており,D.galeataの分類上の位置が確定されないできた。特にD.hyalinaとは明瞭に区別されていない。本報では,D.galeataとD.hyalinaの両種が分布する湖とされてきた琵琶湖と木崎湖のDaphniaを調べたところ,出現した種はどちらもD.galeataだけであることが明らかとなった。どちらの湖とも出現したD.galeataには大きな形態の変異があり,変異は二つの湖で異なっているが,この二つの湖の標本にもとづき単為生殖雌と雄の形態の記載と若干の考察を行った。
  • 花里 孝幸, 野原 精一
    1992 年 53 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    尾瀬沼における動物プランクトンの季節変動と垂直分布を1987年と1988年に調べた。個体群密度ではワムシ類が枝角類より多く,また橈脚類はわずかしか見られなかった。最も優占した種は,ワムシ類ではPolyarthra trigla,枝角類ではBosmina longiyostyisであった。生物量では枝角類がワムシ類を上回ることが多く,また動物プランクトン全体の生物量の中では枝角類Holopedium gibberumの占める割合が最も大きかった。数種の動物プランクトンは調査期間中絶えず多くの個体が出現していたが,出現が大変不規則な種もあった。近年尾瀬沼ではワムシ類の現存量が増加しているように思われた。
  • 宮島 利宏
    1992 年 53 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    琵琶湖北湖における栄養塩類の動態に関する最近の調査において,停滞期に硝酸が深水層に高濃度に蓄積される様子が観察され,深水層における硝酸の回帰速度は40.5mmol・m-2・mon-1と評価された。しかしながら,酸素消費量に基づく計算,によると,深水層において無機化された有機物のC:N比は19-21であったことがわかり,このことから,窒素の回帰効率は炭素のそれに比べて低いことが示唆された。溶存態リン酸は,底部付近に低濃度で蓄積されることが見いだされたが,その回帰速度は大変遅く(0.22mmol・m-2 mon-1),深水層の生物群の活性はこの湖盆におけるリンの再循環に対してほとんど寄与していないものと考えられた。栄養塩類の回帰効率を決定していると思われる要因について,深水層の微生物の生理学的特性と関連づけて考察を加えた。
  • 楊 宗興
    1992 年 53 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    木崎湖低酸素条件下におけるN2O蓄積量をこれまでに得られたデータについて比較したところ,0.17-26.5μgatomN・1-1にわたるきわめて大きな変動が見出された。さらに,1983年,1988年にはいずれも0.6μg atomN・1-1以下,他の年では2.4μgatomN・1-1以上と,年によって著しい違いを示した。N2O蓄積量の変動はピークの低酸素層中の出現深度と関連しており,小さなピークほどその上部に,大きなピークほどその下部に出現する一連の関係が認められた。N2O,NO3-,O2濃度の各年の分布特性から,このようなN2O蓄積量の変動は脱窒過程におけるN2O生成・消費間のバランスの変化によってもたらされたものであり,深水層への易分解性有機物の供給状態がその重要な要因であると考えられた。
  • 1992 年 53 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 1 号 p. 103-109
    発行日: 1992/01/29
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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