著者らは,日本産トビケラ目各種の分類,生物地理および種生態に関する文献を網羅して,チェックリストを作成中である。その第1報として,ヒメトビケラ科およびカクツツトビケラ科のリストを示した。
ヒメトビケラ科では現在までに日本から,3属7種のヒメトビケラ亜科Hydroptilinaeと1属3種のカメノコヒメトビケラ亜科(新称)Ptilocolepinaeが記録されている。しかし,ヒメトビケラ亜科の分類学には次の4つの問題が残されている。1)ヌマヒメトビケラHydroptila itoi KOBAYASHIとカクヒメトビケラStactobia japonica IWATAは,隣接する国の近縁種と比較して種名を検討する必要がある。2)ウスグロヒメトビケラHydroptila usuguronis MATSUMURAとホソヒメトビケラ(新称)Oxyethira angustella MARTYNOVは,雌の外形のみが記載されており,今後より詳細な記載が必要である。3)幼虫と筒巣によって仮名が与えられている数'種'の記載では,種の特徴が明確に示されていない。4)4種の未記載種がすでに著者らによって採集されている。
カクツツトビケラ科は,比較的分類学的研究の進んでいるグループであり,現在までに日本から5属31種が記録されている。しかし,この科の分類学においても,次の2つの課題が残されている。1)シロツノカクツツトビケラ(新称)Dinarth-codes albicorne(BANKS),カスガカクツツトビケラD.kasugaensis TANI,ツシマカクツツトビケラD.albardanus(ULMER)およびオナガカクツツトビケラD.elongatus MARTYNOV,については,属への所属を再検討する必要がある。2)本科においてもすでに9種の未記載種が採集されている。
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