陸水学雑誌
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54 巻, 2 号
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  • 冨田 重行
    1993 年 54 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    環境水に含まれるキレート物質である溶存フミン物質を,陰イオン交換樹脂ジエチルアミノエチルセルロースを使用して濃縮し、吸光光度分析を行った。瀬田川、琵琶湖湖水に適用したが、環境分析法として有効性の高いことを確認できた。瀬田川河川水の1991年5月~12月の問の継続的な分析ではフミン物質濃度は0.3~0.73μg・ml-1、8、9、10、11月の琵琶湖南湖のフミン物質は0.2~0.91μg・ml-1の範囲にあった。瀬田川では台風による琵琶湖の増水によって溶存フミン物質濃度は増加し、瀬田川の濁水の治まるにつれ急減した。琵琶湖南湖のフミン物質は東岸部、赤野井湾や矢橋湾人工島水路で高い値を示し、北湖水の流入域で低いものとなった。フミン物質を構成するフミン酸/フルボ酸の比率、溶存態と懸濁態の構成比率なども求めたが、降雨の影響で大きく変化している可能性が示唆された。
  • 浦部 美佐子
    1993 年 54 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    琵琶湖水系及びその周辺の2地点より得られたチリメンカワニナSemisulcospira reinianaを,遺伝的変異と成殻・胎殻形態の面から調べた。浜大津・宇治・美濃津屋の3ケ所では,遺伝的に区別される2型が生息していた。MPI-A型は,比較的小さく平滑または縦助のある胎貝を持っていた。MPI-B型は大きく縦肋のある胎貝を持っていた。しかし,同じ地点から得られたこれら2型は,成殻形態では区別できなかった。これらの結果から,過去の分類学的研究においては2型が混同されてきたことを指摘し,さらに成殻の収斂現象について示唆した。
  • 田畑 真佐子, 高田 陽子, 佐藤 正紀, 鈴木 潤三, 鈴木 静夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    湖水のDNA,RNA分解菌数は,それぞれ102-104個・ml-1で,従属栄養細菌数の8-67%を占めた。また分解菌数は,クロロフィルa量の多い湖水に多く認められた。底泥のDNA分解菌数は104-106個・g-1,RNA分解菌数は103-106個・g-1で,底泥の従属栄養細菌数の6-50%を占めていた。震生湖での循環期,停滞期のDNA,RNA分解菌数の垂直分布は,水深2mか表層水で最大値を示した。
    DNAまたはRNAを単一栄養源として生育が可能な菌株をそれぞれ1種ずつ分離し,DNA分解菌はMoraxella属,RNA分解菌はBacillus属の菌種と同定した。DNAを単一栄養源としてMoraxella sp.を液体培養すると,DNase,アルカリホスファターゼが培養液中に産生されると共に,DNAの分解が起こり,DNAの分解産物とオルトリン酸が生成された。Bacillus sp.では,RNaseとアルカリホスファターゼの産生が見られ,同時にRNAが分解され,RNAの分解産物とオルトリン酸の生成が認められた。
  • 土谷 岳令, 野原 精一, 岩熊 敏夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦・江戸崎入りの湖岸帯で水生大型植物の帯状分布と微地形を調査した。江戸崎入り底質は砂であるが,抽水植物群落の発達した湖岸では砂質の基底の上に泥やリターの堆積がみられた。陸側の水深80cm以浅には抽水植物(陸側からヨシ,マコモ,ヒメガマの順)が,水深60から200cmの沖側には浮葉植物(アサザ)が分布していた。しかし,これらの帯状分布は,水深や泥質層の厚さよりも(泥質層をのぞいた)砂層までの深さと相関が高かった。
  • 川幡 佳一
    1993 年 54 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1984年から3年間の5月から11月にかけての,琵琶湖におけるEodiaptomus japonicusの死亡速度の季節的変化および発育にともなう変化を調べた。各採集間隔における死亡速度は,ある時間間隔に生まれた個体の集団について,第二の採集日における実際の個体数と死亡がないときに期待される個体数を比較して求めた。本方法は,既存の方法のように固定した令階級を考慮するのではなく,発育してゆく個体の数の変化を追うものである。成体のE.japonicusは全期間を通じて大きな死亡速度を示したが,未成熟個体は1984年と1985年の5月から7月の間に大きな値を示した。
  • 松山 通郎
    1993 年 54 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    貝池H2S層上端でブルームを形成しているChromatium sp.をPFENNIG(1965)の培地で異なる照度下培養した。細菌の比生長速度(Y)は分裂細胞出現率(X)によって次のように近似され,Y=0.098e3.8X(r=0.609)
    分裂細胞出現率の測定が生長速度を推定する上で有効できわめて簡便な方法であると考えられた。細菌の現場での比生長速度は約0.17・日-1と推定され,純粋培養で求められる菌数を維持する上で必要最小の比生長速度の約2倍にしか相当しない。
    細菌が環境制限に呼応し,生長能力をそのような低いレベルまで抑制できることは貝池でのブルーム形成を可能とする要因の一つと考えられる。
  • 伊藤 富子, 谷田 一三, 野崎 隆夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    著者らは,日本産トビケラ目各種の分類,生物地理および種生態に関する文献を網羅して,チェックリストを作成中である。その第1報として,ヒメトビケラ科およびカクツツトビケラ科のリストを示した。
    ヒメトビケラ科では現在までに日本から,3属7種のヒメトビケラ亜科Hydroptilinaeと1属3種のカメノコヒメトビケラ亜科(新称)Ptilocolepinaeが記録されている。しかし,ヒメトビケラ亜科の分類学には次の4つの問題が残されている。1)ヌマヒメトビケラHydroptila itoi KOBAYASHIとカクヒメトビケラStactobia japonica IWATAは,隣接する国の近縁種と比較して種名を検討する必要がある。2)ウスグロヒメトビケラHydroptila usuguronis MATSUMURAとホソヒメトビケラ(新称)Oxyethira angustella MARTYNOVは,雌の外形のみが記載されており,今後より詳細な記載が必要である。3)幼虫と筒巣によって仮名が与えられている数'種'の記載では,種の特徴が明確に示されていない。4)4種の未記載種がすでに著者らによって採集されている。
    カクツツトビケラ科は,比較的分類学的研究の進んでいるグループであり,現在までに日本から5属31種が記録されている。しかし,この科の分類学においても,次の2つの課題が残されている。1)シロツノカクツツトビケラ(新称)Dinarth-codes albicorne(BANKS),カスガカクツツトビケラD.kasugaensis TANI,ツシマカクツツトビケラD.albardanus(ULMER)およびオナガカクツツトビケラD.elongatus MARTYNOV,については,属への所属を再検討する必要がある。2)本科においてもすでに9種の未記載種が採集されている。
  • 1993 年 54 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 54 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 1993/04/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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