蛍光顕微鏡による湖沼堆積物中の細菌数の直接計数法の検討
湖沼堆積物中の細菌の直接計数法について蛍光顕微鏡を用いた検討を行った。計数効率を評価するため既知密度の細菌を含む合成堆積物を使用した結果,アクリジンオレンジ(AO)染色の場合では非生物粒子と細菌との判別が困難で細菌数を正確に評価できなかった。一方,4'6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)染色では93%以上の計数効率が得られた。染色時のDAPI濃度としては1.0μg・ml
-1において計数性が最も優れていた。堆積物粒子から付着細菌を分散させるには剥離剤としてピロ燐酸ナトリウム(10mM)を添加し超音波処理をすることが有効であった。さまざまな希釈濃度における堆積物粒子による視野内遮蔽面積と細菌計数値の変化などから,堆積物をフィルターに濾集する場合には,含水率,粒子組成,デトライタスの形状と量などの堆積物の性質に応じて最適希釈量を検討する必要性が示唆された。
この直接計数法を用い諏訪湖湖心堆積物の細菌数の垂直分布を調べた結果,表層(0-3cm)で2.94×10
10細胞・g乾重
-1,深層(45-50cm)で3-5×10
9細胞・g乾重
-1であり,平板希釈法での計数法のそれぞれ600,1,500倍の値を示した。また画像解析装置を用いて計測したDAPI染色による細菌細胞長の分布は表層と深層で差がみられ,表層でより大型の細菌の比率が高かった。堆積物中の細菌細胞数やサイズ分布と堆積物中の有機炭素量との関係をあわせて考察した。
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