日本産トビケラ目チェックリスト
2.ヤマトビケラ科,ツノツツトビケラ科,フト ヒゲトビケラ科およびホソバトビケラ科
日本産トビケラ目各種の分類,生物地理および種生態に関する文献のチェックリストの第2報として,ヤマトビケラ科,ツノツツトビケラ科,フトヒゲトビケラ科およびホソバトビケラ科のリストを示した。ヤマトビケラ科では,誤同定に基づく 4種 (Agapetus comatus PICTET, Agapetus fuscipes CURTIS, Glossosoma boltoni CURTISおよびGlossosoma vernale PICTET)を除き,現在までに日本から,2属10種のコヤマトビケラ亜科(新称)Agapetinae,1属9種のヤマトビケラ亜科Glos-sosomatinaeおよび1属1種のケシヤマトビケラ亜科(新称)Protoptilinaeが記録されている。そのうち,原記載論文中において種名に二つのつづりがみられた2種について,学名の訂正を行った(Agapetus budaensis KOBAYASHIおよびGlos・sosoma uogatanum KOBAYASHI)。しかし,まだ以下の5つの問題が残されている。1)ヒメナガレトビケラAgapetus annulicornis(MATSUMURA)は,雌の外形のみが記載されており,今後詳細な記載が必要である。2)幼虫と巣の記載だけがなされている多くの'種'では,種ときには属の特徴が明確に示されていない。3)Mystroglossa亜属の特徴が明確でないので,本亜属とSynafophora 亜属の関係を再検討する必要がある。4)イノプスヤマトビケラGlossosoma inops(TSUDA)は,隣接する国の近緑種と比較して,種名を検討する必要がある。5)雄交尾器が日本産の既知種と明らかに異なる北海道産の種の種名が確定していない。
ツノツツトビケラ科(新称)Beraeidaeでは,最近はじめて日本から1種が記録された。
フトヒゲトビケラ科では,現在までに日本から2属4種が記録されているが,次の3つの課題が残されている。1)ヨツメトビケラPerissoneura paradoxa McLACHLANとオオヨツメトビケラPerissoneura similis BANKSの地理的変異を調べる必要がある。2)Psilotreta armata MARTYNOVの模式標本を精査する必要がある。3)幼虫が他の2種と明らかに異なる,沖縄県産のキソトビケラ属Psilotretaの種名が決定されていない。
ホソバトビケラ科では,現在までに2属3種が日本から記録されているが,クロホソバトビケラ(新称)Molanna nervosa ULMERの模式標本を精査する必要がある。
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