青森県南西部に位置する津軽十二湖湖沼群の全30湖沼を対象とした水質調査を実施し,湖沼群の水質特性,水質形成因子について検討した。
1)本湖沼群の水質はキーダイヤグラムにより領域I(Ca・HCO
3型)と領域IV(Na・Cl型)に属するものが多く,領域Iには18湖沼,領域IVには7湖沼が含まれた。
2)キーダイヤグラムとパターンダイヤグラムから,本湖沼群は,典型的なCa・HCO
3型の水質で同一水脈の湧水により涵養されるグループ(11湖沼),海水の希釈により派生するグループ(6湖沼),それらの中間型のグループ(12湖沼)の3タイプに分類された。
3)本湖沼群の水質を支配する要因としては,海岸に近いことと湧水に涵養される湖沼が多いことから,風送塩と地質の影響が大きいことが推測された。
4)本湖沼群のCl
-濃度は,海からの風送塩に由来し,最高値と最低値は海岸からの距離を反映していた。また,隣接した湖沼のCl
-度には,谷筋,山蔭という地形を反映した違いが見られた。
5)地質にかかわる成分のうち,Ca
2++Mg
2+はアルカリ度との間に正の相関関係がみられたことから,地質と炭酸を含んだ水との反応により生じると考えられた。Ca
2+,Mg
2+濃度は崩山の崩壊面に起源する湧水に涵養される湖沼群で高く,沸壺の池のCa
2+濃度はわが国の調和型湖沼では最も高い部類に属していた。本湖沼群中には,K
+も特異的に高い湖沼が存在し,そのような湖沼は同時に溶存ケイ酸も高い傾向が認められた。
6)落葉堆積物で被われた小湖沼群の水質は,色度,PPC,総鉄が高かった。これらの項目の間には正の相関関係がみられることから,鉄は有機態で存在していると推測された。
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