陸水学雑誌
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56 巻, 1 号
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  • 芳賀 裕樹, 坂本 充
    1995 年 56 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    淡水試料中の15N比を測定するためのアンモニア抽出法の改良,およびアンモニア再生に関する研究への適用
    アンモニアの再生速度を測定する15N一同位体希釈法において,主要,かつ,律速過程となる試水中のアンモニア抽出過程について,コンタミネーションの低減と迅速化を試みた。試水中のアンモニアをアルカリ条件下でチモールと反応させ,インドチモール色素とした後,クロロフォルムで抽出しグラスファイバー・フィルター上に乾固した。本法で1日に抽出できる試料数は,約20検体である。標準試料(0.366-9.58atom%-N,濃度10μM)について,アンモニアの同位体比を測定した結果は,抽出過程における同位体比の変動が無視できるほど小さく,窒素のコンタミネーションは0.08μM以下であると推定された。抽出時のアンモニア-Nの回収率は,同じサンプル濃度にもかかわらず51-84%と大きく変動したが,同位体比の測定に有意な影響は示さなかった。窒素濃度で1μM-Nのグリシン,セリン,2μM-Nのグルタミン,尿素は,アン毛ニアの同位体比の測定に影響を与えず,湖水中の溶存態有機窒素(その多くはnMのオーダーと考えられる)の混入によるアンモニア同位体比の過小評価はほぼ起こらないものと推察された。本法を用いて得られた木崎湖有光層中のアンモニア再生速度について,抽出過程で0.08μMの窒素のコンタミネーションが生じた場合の影響にっいて推定したところ,その影響は0.026-0.458μmole・l-1・h-1の範囲で常に1%以下だった。以上の結果から本法は,湖沼のアンモニア再生速度を測定する上で十分有用であると考えられた。
  • 對馬 康夫, 日野 修次, 大高 明史, 齋藤 捷一
    1995 年 56 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    青森県南西部に位置する津軽十二湖湖沼群の全30湖沼を対象とした水質調査を実施し,湖沼群の水質特性,水質形成因子について検討した。
    1)本湖沼群の水質はキーダイヤグラムにより領域I(Ca・HCO3型)と領域IV(Na・Cl型)に属するものが多く,領域Iには18湖沼,領域IVには7湖沼が含まれた。
    2)キーダイヤグラムとパターンダイヤグラムから,本湖沼群は,典型的なCa・HCO3型の水質で同一水脈の湧水により涵養されるグループ(11湖沼),海水の希釈により派生するグループ(6湖沼),それらの中間型のグループ(12湖沼)の3タイプに分類された。
    3)本湖沼群の水質を支配する要因としては,海岸に近いことと湧水に涵養される湖沼が多いことから,風送塩と地質の影響が大きいことが推測された。
    4)本湖沼群のCl-濃度は,海からの風送塩に由来し,最高値と最低値は海岸からの距離を反映していた。また,隣接した湖沼のCl-度には,谷筋,山蔭という地形を反映した違いが見られた。
    5)地質にかかわる成分のうち,Ca2++Mg2+はアルカリ度との間に正の相関関係がみられたことから,地質と炭酸を含んだ水との反応により生じると考えられた。Ca2+,Mg2+濃度は崩山の崩壊面に起源する湧水に涵養される湖沼群で高く,沸壺の池のCa2+濃度はわが国の調和型湖沼では最も高い部類に属していた。本湖沼群中には,K+も特異的に高い湖沼が存在し,そのような湖沼は同時に溶存ケイ酸も高い傾向が認められた。
    6)落葉堆積物で被われた小湖沼群の水質は,色度,PPC,総鉄が高かった。これらの項目の間には正の相関関係がみられることから,鉄は有機態で存在していると推測された。
  • 谷口 智雅
    1995 年 56 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    戦前の水環境について,特に水質については現在発表されている数値に対応できるレベルのデータはない。そのために歴史的水環境の復元をするにあたり,文学作品中の水に関する記述に注目し,現在の資料と同じレベルの指標に変換することによって水環境の評価を行った。文学作品は著者による主観的なものではあるが,その時代や土地柄などの背景を十分映しだしている。そのため,自然の描写や社会情勢などは,ある程度客観的なものとして捉えることができるとみなした。文学作品中の河川や魚,植生などの自然の描写は,水環境を復元するうえで有効な資料である。
    文学作品中の生物的・視覚的水環境表現は生物的水域類型をもとに3段階評価を行い,1920,1940年頃の東京の水環境をメッシュマップとして復元した。その結果,1920年頃は「きれいな水域」が24,「少し汚れた水域」が186,「汚れた水域」が56であったのが,1940年頃にはそれぞれ13,150,113になった。1920~1940年頃にかけては「きれいな水域」と「少し汚れた水域」が減少し,「汚れた水域」のメッシュ数は2倍以上にも増加した。
  • 花里 孝幸
    1995 年 56 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    サイズの異なるミジンコの魚のカイロモンに対する反応
    魚の存在下で成熟サイズを小さくすることは,ミジンコにとって捕食される前に産仔するチャンスを増やすことになり,利益をもたらす。魚が放出するカイロモン(臭い)にさらされると,大型のカブトミジンコ(Daphnia galeata)と小型のマギレミジンコ(Daphnia ambigua)はどちらも生活史特性を変化させた。しかし,その反応は種によって異なった。カブトミジンコは成熟サイズを低下させなかったが産む仔虫サイズを低下させた。小さな仔虫の生産は次世代の個体群の成熟サイズを小さくする効果が期待される。一方,マギレミジンコは成熟サイズを小さくしたが,仔虫サイズは低下させなかった。2種のミジンコの異なった反応は,無脊椎捕食者に対する仔虫の食われ易さの違いを反映した適応の結果と考えられる。
  • 土谷 岳令, 篠塚 篤, 生嶋 功
    1995 年 56 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    抽水植物マコモの光合成および蒸散特性
    常陸利根川の河岸のマコモ個体群において光合成速度と蒸散速度の日変化を測定した。最大純光合成速度は約12μmolCO2・m-2・S-1であり,抽水植物の値としては低い方であった。光合成速度と蒸散速度はともに真昼に最大値をとり,昼寝現象はみられなかった。光強度が光合成や蒸散を律速しており,大気一葉内飽差は葉コンダクタンスの制限要因とはならなかった。
  • 高田 秀重, 高橋 晃, 小倉 紀雄
    1995 年 56 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    キャンプ場排水による渓流の水質汚染について検討した。東京都の多摩川支流の大丹波川において1992年8月に24時間観測を,また,対照としてオフシーズンの11月にも12時間観測を行なった。8月の観測では合成洗剤の界面活性剤の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)がキャンプ場下流で数μg・l-1のオーダーで検出された。一方,オフシーズンの11月の観測およびキャンプ場の上流ではLASは検出されなかった(0.1μg・l-1以下)。1日のうちでLAS濃度は朝,昼,夕の食事時間前後にピークとなり,検出されたLASの起源が主に食器洗いであることが示唆された。また,平日に比べ週末に高くなる傾向が示唆された。
    キャンプ場からのLASの負荷量の原単位は一人一日あたり0.3gと計算された。一方,塩化物イオン,アンモニア態窒素,有機炭素についてはバックグランド濃度を大きく越えるような影響は認められなかった。
  • 佐藤 泰哲, 中村 宗献, 落合 正宏
    1995 年 56 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    小野川湖の湖中林
    裏磐梯の小野川湖の水没林の分布を,超音波測深で初めて明らかにした。同湖は,1888年の磐梯山噴火の際発生した大規模な泥流が,小野川水系をせき止め形成された。その時水没した立ち木が,未だ湖底に立っている。
    水没した木は,湖の北西端から600m以内の地域に集中的に分布する。この地域の水没した木は,湖中林と呼べるほどの密度である。湖の中央部における水没した木の分布はまばらで,湖の南西部には存在しない。中央部は,水没前,集落が存在していた場所で、水没前に既に立ち木は少なかったと考えられる。南西部は浅く,点々と小島が存在する。これら小島は,「流山」と呼ばれ,押し寄せた泥流が盛り上がってできた。流山が存在し,水深が浅いと言うことは,湖の南西部は泥流の埋め立てを受けたことを示唆する。この地域では,
    たとえ,水没以前に立ち木が存在していたとしても,それらは泥流に埋まってしまったと考えられる。
    湖中林の莫大な表面は,付着生物のよい基層となるであろう。湖中林のある水柱ではない水柱に比べ,これら付着生物の呼吸により溶存酸素の消費が促進され,順次,脱窒や,マンガン,鉄の還元等の嫌気的諸過程も影響を受けるであろう。
  • Natalia G. SHEVELEVA, Galina I. POMAZKOVA, Natalia G. MELNIK
    1995 年 56 巻 1 号 p. 49-62
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    バイカル湖のワムシ類,枝角類,カイアシ類の生態・分類学的概説
    バイカル湖の甲殻類(枝角類,カイアシ類)とワムシ類について,これまで報告されたデータと著者らのオリジナル・データを整理し,出現種およびそれらの湖内での分布のリストを作製した。
    全出現種の属数は84,種(亜種)数は310に達し,そのうち63種(亜種)は固有種であった。分布はその特徴から,沖部,湾部,および沿岸部の三つに分けられた。また,出現種についての若干の生態学的考察を加えた。
  • 福島 和夫, 鈴木 啓助
    1995 年 56 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 56 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 石渡 良志, 西村 弥亜
    1995 年 56 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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