陸水学雑誌
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58 巻, 1 号
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  • 日野 修次
    1997 年 58 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    富栄養化の進んだ茨戸湖において微生物群集の生理活性の変化をアデニル酸の組成比を指標とし,ケイ藻およびラン藻が優占する6月および8月について調べた。>100μm,100-2μm,および2-0.2μmに分画された微生物群集において生物量を表すアデニレート総量と生理活性の指標となるAEC値は,ともに一日のうちで大きな変化を示したが,100μm以上と,100-2μmの両面分に含まれるプランクトン群集はアデニレート量の変化とAEC値の変化の間には対応が認められなかった。また,溶存無機態窒素は湖水中に多量に存在していること,およびリン酸塩の存在量にほとんど影響を受けないことから両群集の生物量や生理活性の変化はこれら栄養塩類以外の因子が関与していることが推定された。
    また,100-2μmと2-0.2μmの両画分に含まれる微生物群集のAEC値と湖水中の溶存蛋白質量や溶存糖類量の間には比較的高い相関が認められた。100-2μm画分中の微生物群集はAEC値が高くなると蛋白質や糖類といった有機物を体外に放出することにより,溶存有機物を増加させ,2-0.2μm画分に含まれる微生物群集を活性化したものと考えられた。
  • 渡辺 直, 石綿 進一
    1997 年 58 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    直接の標本採集に加えて,アンケート(質問票および一部標本)および文献にもとづいて日本におけるオオシロカゲロウの地理的分布を調査した。この種は,およそ北緯39度(北上川)から33度(番匠川)までの47水系54地点に分布していた。秋から春にかけての水温がこの種の分布を限定する主要因と考えられる。オスがいないか,あるいはきわめて少ない個体群と,メスと同様に多くのオスがいる個体群があり,両者の分布は広い範囲で重複していた。オスのほとんどいない個体群は単為生殖によって維持されているものと思われる。
  • 鷲 邦彦, 遠藤 修一, 川嶋 宗継, 奥村 康昭, 服部 達明, 中山 聖子
    1997 年 58 巻 1 号 p. 27-44
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    びわ湖の湖底高濁度層(Benthic Nepheloid Layer)の特徴や季節変動を捉えることを目的とし,4年間にわたる水温・濁度・クロロフィルαなどの観測にもとづいて研究を行った。湖底高濁度層は、水温成層期に発達し,非成層期には存在しない。湖底高濁度層の厚さや濁度の変動は,主として降雨後に河川から流入した土壌起源物質による。土壌起源物質の指標である粒状態アルミニウムが高濁度層内で増加する時には,同時に植物プランクトンの指標である粒状態リンの増加が見られる。これは河川からの濁水が表層や躍層に生息する植物プランクトンの一部を吸着し,ともに湖底に沈降したためと考えられる。ただし,アルミニウム濃度がその後すぐに減少するのに対し,リン濃度は増加する。すなわち,土壌起源物質は密度が大きいためにすぐに沈降・堆積し,吸着されなかった植物プランクトン起源の物質がその後ゆっくりと沈降したためと考えられる。あるいは,一度湖底に堆積したデトライタスがその密度が小さいために湖底付近の流れによって再浮上したためとも考えられる。したがって,河川流入が少ないときにも湖底高濁度層が維持されているのは,植物プランクトンの沈降および再浮上による濁度の供給と,それらの分解(無機化)による堆積に伴う濁度の減少との収支がほぼ釣り合っているためと考えられる。このほか,夏季から成層末期にかけて底層水の低酸素化に伴うマンガンの化学変化による濁りの形成が見られた。さらに,強風の連吹後に発生した底層での強い流れにより底泥の巻き上げが生じたが,その濁りはその後急速に消滅した。
  • 小野寺 真一, 加藤 正樹
    1997 年 58 巻 1 号 p. 45-59
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,気候特性の変化が森林土壌中のNO3--NやSO42--Sの移動に及ぼす影響を明らかにするため,1992年から1994年までの土壌溶液中の溶存物質の濃度の変化をモニターした。その結果,以下のことが明らかになった。1)1992年および1994年に比べ,冷夏と呼ばれた1993年の夏季には,表層のNO3--N濃度が上昇しなかった。そのため,1993年以降,林地に流入している硝酸汚染地下水は希釈され,1992年に比べ,2割以上濃度が低下した。2)土壌溶液中のNO3--Nは,降水による流入と最表層の深度2.5cm付近で硝化反応によって生成され,微生物活動による硝化反応は,温度の依存性が確認された。3)深度75cmをフラックス面とした物質収支より,各年の夏季におけるNO3--Nの生成量が推定され,1993年の夏季は明らかに他の年に比べNO3--Nの生成量が少なかったことが示唆された。また,降水量が少なかった1994年の夏季には,水のフラックスが小さかったため,NO3--Nの下方への流出量は小さかった。4)1993年以降土壌中のNO3--N濃度の低下にともない,SO42--S濃度の上昇が認められた。土壌中には,陰イオンとしてはSO42--Sが主に吸着されているため,この成分が流出したことが示唆された。5)溶液中のSO42--S含量は,溶液中の総イオン濃度が低下し,pHが上昇することに伴って,増大する傾向を示した。つまり,冷夏の年には,硝化反応が抑制され,pHも低下せず,陽イオン濃度も上昇しなかったため,吸着態のSO42--Sがより流出したものと推定された。
  • 松山 通郎, 文 尚郁
    1997 年 58 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1996年5月24日,貝池H2S層の色々な深さから得た試水中に自由遊泳する下毛類繊毛虫が見られた(<10細胞ml-1)。H2S層上端でブルーム(バクテリアプレート)を形成している光合成細菌,Chromatium sp.,の生きた細胞を繊毛虫に与え,その成長を検討した。細菌は湖で繊毛虫の効果的な餌となっていることが判った。繊毛虫の最大比成長速度は0.6日-1と求められたが、その速度が細菌数に依存すると仮定すると,繊毛虫1個体は短時間に2500個体になり,細菌群集を食い尽くす。湖での繊毛虫の成長はバクテリアプレートおよびその周辺に分布する大型動物プランクトンの摂食,高濃度のH2Sの出現など他の環境要因により大きく抑制されていると推察された。H2S層中の繊毛虫は本来の生息層から駆逐された個体であると考えられた。
  • 四條 八束, 三田村 緒佐武, Kozo HINO, 生嶋 功, José Galizia TUNDISI, Takako M ...
    1997 年 58 巻 1 号 p. 69-82
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    パンタナルは南米大陸のほぼ中央に位置する世界最大の湿原であるが,それに関する科学的知見はきわめて不足している。われわれは1983年7月にパンタナル南部のパラグアイ川とその支流,1986年1月にパンタナル北部のボルトジョブリ付近の小湖群ならびにクイアバ川について,水の化学的性状を中心に調査を行った。パラグアイ川とその支流はきわめて貧栄養的であり,ボルトジョブリ付近の湖と川は富栄養的であった。これらの水系では,基礎生産の制限因子はリンでなく窒素であると考えられた。また,水温も異なり,水中の有機物量にも顕著なちがいが認められたにもかかわらず,両水域ともに一般に溶存酸素飽和度は低かった。
  • 1997 年 58 巻 1 号 p. 83-104
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 58 巻 1 号 p. 105-124
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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