秋元湖は檜原湖,小野川湖同様,1888年の磐梯山の噴火に伴う泥流によるせき止め湖である。全窒素,全リン,クロロフィル,透明度に基づき,秋元湖は貧栄養と中栄養の境界にあると判断された。この栄養状態は,檜原湖と同じで小野川湖より貧栄養である。恐らく,最大水深(秋元湖33m,檜原湖31m,小野川湖21m)の違いが,この100年の間に,栄養状態の違いを生み出したのであろう'。
この栄養状態の違いが秋元,檜原湖と小野川湖の間に,いくつかの湖沼学的な相違を生み出している。即ち,1)深水層における見かけ上のアンモニアの再生は,小野川湖では秋元湖,檜原湖の6~14倍である。2)秋元,檜原湖では,深水層の溶存酸素はゼロにならないが,小野川湖ではほぼ2カ月半,嫌気状態となる。3)硝酸塩の時空間分布より,3つの湖共に硝酸還元は起こっていると判断されるが,秋元湖,檜原湖では硝酸還元により深水層の硝酸塩がゼロになる前に秋の循環が始まる。小野川湖の硝酸塩はほぼ3カ月間,完全になくなる。4)硝酸塩の時空間分布より,秋元湖と檜原湖では硝化が起こっていると判断されるが,小野川湖では硝酸塩の時空間分布からは,硝化は示唆されない。アンモニア再生,硝化,硝酸還元活性のバランスが湖により異なると考えられる。
これら3つの湖は歴史が明らかで,年齢が同じで,同一環境に存在するが,栄養状態は貧から中栄養の秋元湖及び檜原湖,中から富栄養の小野川湖と異なる。それ故,様々な観.点からの比較湖沼学的研究のために良い研究対象となろう。
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