1996年春から初冬にかけ,毘沙門沼東湖盆の最深部,水深7.5mの観測点でいくつかの物理・化学的,生物学的因子を定期観測した。観測期間を通じ,水温躍層は形成されないか,形成されても微弱であった。この水温構造に呼応し,溶存酸素は全水柱でほぼ均一に分布し,飽和度90%以上であった。透明度は平均5.1±1.1mであった。栄養生成層を透明度の2倍の深度までとすると,東湖盆の全ての水体は栄養生成層となる。pHは7月から12月までかなり一定で,平均および標準偏差6.15±0.08であった.過去のデータと比較すると,毘沙門沼のpHは,過去,比較的短期間にかなり変動したが,近年はpH6前後で安定している。Na,K,Mg,Caの濃度はm moll
-1オーダーで,FeとMnはμmol 1
-1オーダーであった。それらの濃度は高い方から順に,Na,Ca,Mg,K,Mn,Feであった。Chl.aの年間の最大値は,5月に1.5μg 1
-1であった。小さな極大や極小を除くと,Chl.a濃度はほとんどの季節1μg 1
-1以下で,平均は0.51μg 1
-1であった。このChl.a濃度は貧栄養のレベルである。Chl.aのサイズ分画より,毘沙門沼では2-20μmのナノプランクトンが優先し,20μm以上のマクロプランクトンは余り重要ではなかった。
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