陸水学雑誌
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60 巻, 3 号
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  • 山本 いずみ, 土谷 岳令, 生嶋 功
    1999 年 60 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    富栄養条件の実験池で育てた6種の沈水植物,エビモ,ササバモ,ハゴロモモ,クロモ,オオカナダモ,コカナダモの純光合成速度と葉の寿命を測定した。陸上植物での報告と同様に,浮葉植物を含めて純光合成速度と葉の寿命には負の相関関係があった。純光合成速度および葉の寿命の特性は越冬方法や初期成長などの生活型との関連性があることが示唆された。
  • 三田村 緒佐武, 橘 淳治
    1999 年 60 巻 3 号 p. 265-280
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    琵琶湖の水域の異なるヨシ帯においてヨシ付着藻類と植物プランクトンの基礎生産,ならびに水中の栄養塩および溶存有機物の現存量を測定した。ヨシ帯における生元素物質の分布変動は,それぞれのヨシ帯内とヨシ帯間あるいは季節的に規則性が認められなかった。
    ヨシ帯は不均質な環境であると考えられる。付着藻類の光合成速度はヨシの茎表面積あたり0.2~5.7mgCm-2hr-1であり,一方,植物プランクトンは4~70mgCm-3hr-1であった。ヨシ帯の水深とヨシ密度から,ヨシ付着藻類と植物プランクトンによる単位面積あたりの生産量を推定した。植物プランクトンは,夏季で3~56mgCm-2hr-1,冬季で1~12mgCm-2hr-1であった。一方,付着藻類による生産は,夏季で0.3~9.7mgCm-2hr-1,冬季で0.4~3.1mgCm-2hr-1と見積もられた。ヨシ帯水中の基礎生産に対する付着藻類の役割は,光合成活性が植物プランクトンに比較してかなり低いにもかかわらず,現存量が高いため平均15%を占めていた。これらのことは,琵琶湖のヨシ帯においてヨシ付着藻類は重要な基礎生産者であることを示している。
  • 国井 秀伸
    1999 年 60 巻 3 号 p. 281-289
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    島根県松江市のため池において,浮葉植物ジュンサイの浮葉の寿命,葉面積および現存量を,非破壊的なマーキング法によって1986年から1988年にかけて定量的に観察した。
    この3年め問で,浮葉の葉面積指数,現存量および純生産量は,それぞれ0.9~1.36,52.5~80.5g乾重m-2および154.9~243.5g乾重m-2-1と大きく変動した。しかしながら,年平均寿命,回転率およびP/Bmax比は,それぞれ25~28日,6.0~6.3および2.95-3.25年-1と,比較的一定の値を示した。浮葉の純生産量(P<0.05)と現存量(P<0.005)は,5月から9月にかけての積算日照時間と有意な直線関係にあったが,気温の積算値との有意な関係は見られなかった。今回の結果はジュンサイの成長にとって日照時間が非常に重要であることを示唆している。
  • 堀内 栄子, 土谷 岳令
    1999 年 60 巻 3 号 p. 291-297
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    抽水植物が存在すると根圏にしみ出す酸素によって硝化が促進され,硝酸塩の総量が増加するために脱窒が活発になるという予測を基に,1994年7,8月,灌水土壌表面から気泡となって放出されるガスを計量した。マコモを植栽したポットの土壌表面からのガス放出速度は無植栽の対照ポットにおけるそれよりもやや高かったが,ヨシでは明らかに低く,予測とは異なった。ヨシにおいては,若いシュートから地下茎内を通過して他のシュートへと流れる換気流にのって,土壌中で生成したガスの大部分が植物体を通って大気へ運び出されたと考えられる。
  • 岸本 直之, 大西 庸介, 宗宮 功, 大西 正記
    1999 年 60 巻 3 号 p. 299-317
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    Peridinium bipesの栄養細胞の走性を規定する因子について実験的に検討した。使用した株はPeridinium bipes f. occultatumの無菌クローン培養株であり,顕微鏡下で遊泳状態を観察し,遊泳速度や遊泳方向を測定した。光の照射方向を上下に切り替えて遊泳方向を観察した結果,どちらの場合にもP.bipesは上方への遊泳を示したことからP. bipesは負の走地性を有していることが確認された。負の走地性の発現はP.bipes栄養細胞の幾何中心と重心の位置の違いに起因していると推測された。またP.bipesの上方への遊泳速度は主に水温に依存し,光強度に依存していなかったことからP.bipesの鉛直遊泳は主に負の走地性によって引き起こされていると考えられた。走地性による遊泳速度,走光性による遊泳速度および沈降速度を個別に評価し,それに基づいてP.bipes群集の鉛直移動数理モデルを構築したところ,光照射強度0~80.5μmol m-2 sec-1の範囲において実際の鉛直移動パターンを再現することが可能であった。一般にPeridinium属は正の走光性を有しており,これが鉛直移動の主因と考えられているが,本結果は明らかに走地性が鉛直移動の主因であることを示しており,今後,Peridinium属の水表面への集積を解析する上で重要な知見であると考えられる。
  • 伊藤 富子
    1999 年 60 巻 3 号 p. 319-333
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    シロツノカクツツトビケラGoerodes albicornis(BANKS,1906)とカスガカクツツトビケラG. kasugaensis. (TANI,1971)の雄,雌,幼虫,幼虫の筒巣を記載した。このうち,シロツノカクツツトビケラの雄,幼虫,幼虫の筒巣と,カスガカクツツトビケラの雌,幼虫,幼虫の筒巣は初記載である。主に幼虫の形質に基づいて,2種をコカクツツトビケラ属Goerodesに移した。ケトビケラ科として記載されていたPycnocentria speculifer MATSUMURA,1907の模式標本を検討して,カクツツトビケラ科に移し,ヌカビラカクツツトビケラGoerodes nukabiraensis (KOBAYASHI,1964)をこの種のシノニムとし,同種の雄交尾器の地理的変異を記載した。沖縄県西表島からイリオモテカクツツトビケラGoerodes iriomotensis n. sp.の雄,雌,幼虫,幼虫の筒巣を新たに記載した。なお,この種は中国大陸東南部に分布するG. arcuatus HWANG として,西表島から誤って記録されていたものである。
  • 石手川の場合
    森 雅佳, 香川 尚徳
    1999 年 60 巻 3 号 p. 335-345
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    愛媛県下の石手川上流部では,出水時を除いて取水堰で河川水がすべて取り去られるとともに,堰の下流で地下水の湧き出しによって河川が再生している。堰の下流2.4km地点で1985年から1997年まで毎月1回,10時から14時までの間に定期的な水質調査を行ったところ,平水時の110試料について,溶存酸素濃度―飽和溶存酸素濃度(△DO)がpHと有意な正の相関を示した(r=0.585, P<0.001)。また,同地点における一昼夜の調査で,△DOとpHは同様の経時変化をした。さらに,堰直下の湧水地点と下流2.4km地点とで10時と22時に昼夜の比較調査を4回行ったところ,湧水地点では△DOとpHとに昼夜の差がなかった。
    また,両者は流下に伴って増大したが,特に日中に高い値となった。△DOとpHは昼夜を通して大気とのガス交換によって増大するが,日中はさらに光合成の作用によって増大すると考えられる。次に,堰の下流2.4km地点で夜間調査を8回行った結果,△DOは変動が小さく,平均値は-1.26mgl-1であった。日中の△DOはこの値以上となっており,河川の光合成指標として有効であるとみられる。最後に,最近4年間の経月的調査で河床の生物膜と河川水中の光量子量を調査した結果,△DO濃度は生物量だけでなく光量子量によっても制御されていた。
  • 野崎 隆夫, 谷田 一三, 伊藤 富子
    1999 年 60 巻 3 号 p. 347-366
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    日本産トビケラ目各種の分類,生物地理および種生態に関する文献のチェックリストの第3報として,キタガミトビケラ科,マルバネトビケラ科,トビケラ科,カクスイトビケラ科およびコエグリトビケラ科のリストを示した。キタガミトビケラ科は1属1種,そしてマルバネトビケラ科は1属2種が現在までに日本から記録されている。トビケラ科では現在までに日本から6属15種が記録されているが,以下の3つの分類学的な問題が残されている。1)幼虫で記録されたウンモントビケラ属Agrypniaの1種の種名が決定されていない。2)幼虫で記載されたフタスジトビケラOligotricha kawamurai(IWATA)は種の確認ができない。3)幼虫で記載されたオオムラサキトビケラNeuronia maxima(IWATA)は,ムラサキトビケラEubasilissa regina(MCLACHLAN.)のシノニムとされたが,ゴマフトビケラSemblis melaleuca(MCLACHLAN)のシノニムである可能性が指摘されている。カクスイトビケラ科では現在までに日本から3属15種が記録されているが,分類学的には以下の5つの問題点が残されている。1)ヤマトツツトビケラBrachycentrus japonicus(IWATA)とカクスイトビケラ属BraChycentrusまたはマルツツトビケラ属Micrasemaとして仮名が与えられている3つの'種'は,幼虫および筒巣のみが知られるが,成虫との関連を調べる必要がある。2)幼虫で記載されたオオハラツツトビケラEobrachycentrus oharensis(IWATA)は種の特徴が明確に示されていない。3)キタヤマカクスイトビケラEobrachycentru kitayamanus(TSUDA)の記載は不十分で,種の確認ができない。4)雄の交尾器が図示されているマルツツトビケラ属Micrasemaの1種の種名が確定していない。5)幼虫で記録されたマルツツトビケラ属Micrasemaのなかには'種'の特徴が明確にされていないものがある。6)日本には未記載種が数種存在する。コエグリトビケラ科では現在までに日本から4属20種が記録されているが,そのうち原記載論文中において種名に二つのつづりがみられた2種について学名の修正を行った(Apatania momoyaensis KOBAYASHIおよびMoropsysche higoana KOBAYASHI)。しかし,まだ以下の二つの分類学的問題点が残っている。1)幼虫と巣の記載だけがなされているコエグリトビケラ属Apataniaとクロバネトビケラ属Moropsycheのいくつかの'種'では,種の特徴が明確に示されていない。2)日本にはまだ多くの未記載種が存在する。
  • 菅原 幸太郎, 日野 修次, 中里 亮治, 落合 正宏, 佐藤 泰哲
    1999 年 60 巻 3 号 p. 367-377
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1996年春から初冬にかけ,毘沙門沼東湖盆の最深部,水深7.5mの観測点でいくつかの物理・化学的,生物学的因子を定期観測した。観測期間を通じ,水温躍層は形成されないか,形成されても微弱であった。この水温構造に呼応し,溶存酸素は全水柱でほぼ均一に分布し,飽和度90%以上であった。透明度は平均5.1±1.1mであった。栄養生成層を透明度の2倍の深度までとすると,東湖盆の全ての水体は栄養生成層となる。pHは7月から12月までかなり一定で,平均および標準偏差6.15±0.08であった.過去のデータと比較すると,毘沙門沼のpHは,過去,比較的短期間にかなり変動したが,近年はpH6前後で安定している。Na,K,Mg,Caの濃度はm moll-1オーダーで,FeとMnはμmol 1-1オーダーであった。それらの濃度は高い方から順に,Na,Ca,Mg,K,Mn,Feであった。Chl.aの年間の最大値は,5月に1.5μg 1-1であった。小さな極大や極小を除くと,Chl.a濃度はほとんどの季節1μg 1-1以下で,平均は0.51μg 1-1であった。このChl.a濃度は貧栄養のレベルである。Chl.aのサイズ分画より,毘沙門沼では2-20μmのナノプランクトンが優先し,20μm以上のマクロプランクトンは余り重要ではなかった。
  • 林 義雄, 尹 順子
    1999 年 60 巻 3 号 p. 379-384
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    ガロアシマトビケラ Cheumatopsyche galloisi (MATSUMURA,1931)成虫と Hydropsychodes sp.HA として記録された幼虫のエステラーゼアイソザイムの比較を行った。両エステラーゼパターンは互いに一致し,その他のコガタシマトビケラ属とは明らかに区別することができた。このことから, Hydropsychodes sp.HA はガロアシマトビケラの幼虫であると考えられた。
  • 布川 雅典, 井上 幹生
    1999 年 60 巻 3 号 p. 385-397
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    北海道北部の森林地帯から草地へ流れる小河川において,河畔植生の異なる3つの区間(森林区間,移行区間,および草地区間)で,底生昆虫群集を比較した。総生息密度は夏季,秋季ともに森林区間よりも移行および草地区間において高かった。夏季のタクサ数も森林区間よりも移行および草地区間で高かった。秋季の破砕食者の生息密度は森林および移行区間よりも草地区間で低かったが,収集食者,濾過食者,および捕食者のそれは夏季,秋季ともに森林区間よりも移行区間および草地区間において高かった。また,クラスター分析を用いて25タクサの生息密度をもとに分類された群集タイプは,河畔タイプに対応した出現様式を示した。
  • 1999 年 60 巻 3 号 p. 403-426
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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