陸水学雑誌
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63 巻, 2 号
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  • 輿水 達司, 京谷 智裕
    2002 年 63 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    南部フォッサマグナ地域の二つの主要河川であるとともに,地質学的特徴が極端に異なる岩石種が分布する富士川及び相模川水系河川水中の多元素濃度の特徴について,その流域に分布する岩石種を知ることのできるV濃度を指標として地球化学的に解析した。V濃度には,両水系沿い及び上流域に分布する岩石・土壌の化学的組成に対応して,明瞭な地域差が認められた。V以外の測定した全元素(Na, Mg, Al, K, Ca, Cr, Mn, Co, Cu, Zn, Ga, Sr, Mo, Cd, Cs, Ba, W, Pb)は,岩石種による濃度変動がVのそれと比べて著しく小さいため,地質を反映した結果であっても岩石中濃度の大小関係を河川水中では鋭敏に反映していない場合が多かった。しかし,これら元素のV濃度との関係図における分布域の違いから,測定した全元素がそれぞれ概ね3グループ(A:花崗岩類・安山岩類・堆積岩類の複合的影響を反映;B:主に花崗岩類の影響を反映;C:主に玄武岩類の影響を反映)に分類でき,V濃度を指標とすることで,多元素についても地質の違いを明瞭に反映した地域性を読みとる事が可能となった。その結果,従来指摘されてきたVだけでなく,多元素の河川水中濃度が地質により大きく支配されていることを明らかにできた。Cu, Zn, Cd, Pb等の従来岩石以外(人為的寄与)からの寄与が大きいと考えられる元素でさえも,この分類に概ね当てはまり,従来の環境汚染調査においては,これら重金属汚染を過大評価してきた可能性が示唆された。環境汚染調査に当たっては,本研究のように地質を反映したバックグラウンド濃度の把握が重要と考えられる。
  • 植田 真司, 川端 一史, 久松 俊一, 稲葉 次郎, 細田 昌広, 横山 瑞江, 近藤 邦男
    2002 年 63 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    青森県の下北半島のほぼ中央部に位置する浅い汽水湖尾駮沼における塩分躍層の構造特性の中で,特に塩分躍層の安定度の大きさ,さらに塩分躍層の形成および消失と潮汐,湖流および気象条件等との関係を明らかにするために,塩分,湖流,潮位および水位等を1998年4月から2000年12月まで連続観測した。その結果,湖心部(水深4.5m)の深さ0,2および4mにおける平均塩分は,それぞれ15,17および25psuであり,年間をとおして塩分躍層の形成が確認された。最大塩分勾配を示す深さは夏季に最も浅く,秋季,冬季および春季の順に深くなる規則的な季節変動特性を有していることがわかった。塩分躍層の成層構造の安定度をリチャードソン数(Ri)の観点からみると,ほぼRi>10(最大4.0×105,最小1.0×10-1)であり,湖心部における成層は通常極めて安定していることが明らかにされた。塩分躍層の消失と風向および風速との関係を解析した結果,東西方向の風速6~8ms-1の風では深さ0~3mの塩分が均一になる程度であったが,風速10ms-1以上の風が約3時間以上継続した場合には湖水が全層にわたって混合され,塩分躍層が消失することが明らかにされた。この塩分躍層の消失は一時的なものであり,風が緩やかになると速やかに再形成された。
  • 真田 哲也, 高松 信樹, 吉池 雄蔵, 今橋 正征, 樋口 英雄
    2002 年 63 巻 2 号 p. 135-145
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    わが国における代表的な火山性酸性泉のひとつである,秋田県にある玉川温泉大沸泉水中の希土類元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて測定した。その結果,温泉水中の希土類元素濃度はppbレベルであり,Oddo-Harkins則に従っていることを認めた。希土類元素濃度の経年変化は硫酸イオン濃度のそれと一致しており,温泉水中の硫酸イオン濃度が増加するに従い,希土類元素濃度が高くなる正の相関が見出された。また,全ての希土類元素の濃度が均一に増加するのではなく,重希土類元素よりも軽希土類元素の濃度が増加する傾向が見られた。これらは,硫酸イオンが希土類元素の重要な溶出因子であることを示唆している。バッチ法による溶出実験では,希土類元素は早い段階で溶出が始まっていることが観察され,その溶出挙動はCaと酷似していた。また,硫酸の含まれる割合が増加することにより,初期溶出速度が大きくなることがわかった。
  • 森川 和子, 徳永 真知子
    2002 年 63 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    秋川西青木平橋付近において,石面付着層(epilithon)と砂上堆積物(epipelon)に生息する細菌群集の構成を比較した。単位面積当たりの乾重量,強熱減量,平板に形成されるコロニー数(CFU),全染色性粒子数(AODC)はいずれもepipelonで多かったが,藻類量を表わすクロロフィル量はepilithonで高かった。また,藻類活性を表すクロロフィルa/(クロロフィルa+フェオフィチンa)(C/C+P)の値もepilithonで高かった。Epilithonから130株,epipelonから158株の細菌を単離し,単離菌株の形態観察,生理学的検査を行なった。OFテストの結果,epipelonにはグルコース分解能をもつ通性嫌気性細菌が多いことが示され,両者の生理学的性質は異なった。これまでの報告を総合して作成した分類基準と照合した細菌群集の種類構成は,epilithonとepipelonでは優占するグループが異なり,epilithonではFlavobacterium,Cytophagaなどを含むグループが,epipelonではEnterobacter,Erwiniaなどを含むグループが優占した。また,epipelonにはBacillus, Corynebacterium, Arthrobacter等の土壌細菌を含むグループも認められた。河床微生物群集の機能を把握するためには,河床の一形態単位のみではなく,多様な河床構造を考える必要がある。
  • 2002 年 63 巻 2 号 p. 155-170
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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