陸水学雑誌
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65 巻, 2 号
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  • 嘉藤 健二, 神門 利之, 景山 明彦, 芦矢 亮, 三島 幸司, 神谷 宏, 朱 根海, 大谷 修司, 石飛 裕
    2004 年 65 巻 2 号 p. 69-82
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    二層に成層した潟湖の中海において,渦鞭毛藻類Prorocerztrum minimumによる赤潮の動態を明らかにするため,高頻度観測による水質状況の把握,植物プランクトン種の同定,および,懸濁態物質のC:N:P比分析を行った。
    季節風による上下混合の始まる1996年秋季,上層に過剰のリン酸態リンが存在する中で,硝酸態窒素が降雨によって供給された後にP. minimumによる赤潮が発生した。赤潮は冬季も継続し,1997年春季に再び増殖し,上層への無機態の窒素とリンの供給が減少した5月中旬に消滅した。1996年秋季から翌年春季まで,懸濁態のC:N:P比は,130:14:1から300:30:1へと連続的に変化した。
    1980年代初頭と比較すると,暖候期における湖心下層のリン酸態リン濃度が上昇し,このため,赤潮の発生する秋季の上層水質はリン制限から窒素制限に変化した。リン過剰の中で硝酸態窒素が供給された場合, P. minimumは硝酸態窒素の高い利用能を示す。水質環境が窒素制限に変わったことが,近年,珪藻類Skeletonema costatumによる赤潮が見られなくなり,ほとんどがP. minimumによる赤潮となった原因と考えられた。
  • 井内 国光, 安富 英樹
    2004 年 65 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究は感潮河川近くの建設工事に伴って発生した地下水の塩水化について,まず,その実態を示し,次に数値解析に基づく現状再現によって,塩水化の原因究明を行ったものである。問題となった下水管渠築造工事では地下水位を下げる必要があったので,地下水位低下工法の一つであるウェルポイント工法が採用された。工事は1年6ヶ月にわたって行われたが,工事の後半から現場付近の井戸で高濃度の塩分が観測されるようになり,周辺の地下水が人為的に塩水化された可能性が懸念された。三次元非定常の移流分散モデルを用いた数値解析の結果,現地の塩水化が再現され,原因がこの地下水位低下工法に起因することが特定された。また,問題とする井戸が塩水化されるかどうかは,揚水量も重要な要因であるが,揚水が行われる地点と問題とする井戸の地点との位置関係も重要であることが判明した。さらにこのような観測結果を用いることによって現地の分散長や地下水滴養量の見積もりが可能となることも指摘した。
  • 影山 志保, 角野 猛, 諸岡 信久
    2004 年 65 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    尾瀬沼の水質に及ぼす人為汚染の影響を明らかにするため,1999年から2002年にかけて,尾瀬沼を含む計10地点で水質調査を行った。その結果,尾瀬沼が富栄養化していることと,河川水が細菌によって汚染されていることが明らかとなった。これらの原因として,排水による影響も考えられた。また,低温時には浄化槽の効率が悪く,有機物汚染が生じやすく,一方,高温時には浄化の過程で生成した溶存態の栄養塩の流出が示唆され,富栄養化が促進されることが示唆された。
  • 吉川 俊一, 田崎 和子, 奥田 昭三, 中川 和子, 吉田 宏三, 三原 啓子
    2004 年 65 巻 2 号 p. 99-108
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1993年から2003年の期間の酸性雨陸水影響モニタリング調査において,沢ノ池(京都市)のpH,アルカリ度の平均値はそれぞれ5.53,16μeqL-1であり,環境省による国内の湖沼についての調査結果の中では最も低いレベルに属していた。モニタリングの期間にpH,アルカリ度,各種イオン類の濃度は,特別の経年的な増加または減少の傾向を示さなかった。しかし池水のH+イオン濃度は池の水位と負の相関を示しながら変動する傾向(Y=-0.652)があり,SO42-イオン濃度とは正の相関(γ=0.632)を示した。一方H+イオン濃度と水温や,クロロフィルa濃度との相関性(γ=-0.143および0.006)は低く,池水のpH変動は水温や光合成活性の変化を反映した結果ではないと考えられる。モニタリング期間には2000年の三宅島噴火の影響をうかがわせるpH低下例もみられた。池水下層部では弱い躍層が形成される夏季にDOが低下し(最低値:1.9mgL-1),アルカリ度とRpHの上昇(最高値:52μeqL-1,65)がみられた。
  • 昆野 安彦, 渡辺 俊介
    2004 年 65 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    広瀬川下流域の水生昆虫相を明らかにするために,広瀬橋(地点1)と千代大橋(地点2)に調査地点を設定し,2001年4月から2002年1月にかけて水生昆虫の種数と現存量を調査した。その結果,2地点から,合計7目25科43タクサ2,862個体の水生昆虫類が採集された。個体数の優占3タクサは,オオマダラカゲロウ,ウルマーシマトビケラ,オオクママダラカゲロウ,現存量の優占3タクサは,オオマダラカゲロウ,ヒゲナガカワトビケラ,オオクママダラカゲロウであった。分散分析の結果,タクサ数と現存量には2地点で有意差はなかったが,個体数は地点2が地点1よりも有意に少ない結果が得られた。
  • 2004 年 65 巻 2 号 p. 115
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
  • G. Allen Burton Jr.
    2004 年 65 巻 2 号 p. 117-134
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    汚染した底泥の処理に関する規制策定関係者の参考に供するため,過去20年間に多くの底泥質ガイドラインが考えられてきた。従来,底泥の汚染状態は,個々の化合物の総化学物質濃度を評価し,バックグラウンド値や参照値と比較することによって決められてきた。1980年代から今日に至るまで,底泥質ガイドラインが細分化される過程で,生物学的な影響についても考慮されるようになってきた。こうした試みは,底泥の汚染状態と毒性応答との関連性を明確にするための反復を原則とした経験則的手法と,平衡分配(たとえば,有機炭素や酸揮発性硫化物に基づく方法)を用いて生物利用能における違いを説明しようとする理論的手法とに分類することができる。
    このようなガイドラインの中には,いくつかの国の各種規制担当機関によって採用され,環境修復活動の達成目標として用いられたり,また汚染地域の優先処理順位を決めるために用いられたりしているものもある。初期の底泥質ガイドラインは,総化学濃度を参照試料あるいはバックグラウンド値と比較するもので,底泥汚染物質が生態系に及ぼしうる影響についてはほとんど考慮されていなかった。したがって,個々の化学物質のための底泥質ガイドラインは,現地底泥の化学的特性と,現地や実験室で得られる生物学的な影響データに基づいて開発されてきた。底泥質ガイドラインの中には,汚染が進んだ状態にある特定の場所を示す上で比較的良い指標だとされているものもあるが,こうしたガイドラインの中にもいくつかの制約がある。つまり,
    ・偽陽性予測や偽陰性予測が,多くの化学物質において20-30%の割合で頻繁に起きており,場合によってはその割合がさらに高いこともある。
    ・これらのガイドラインは,化学物質ごとに特定のものであり,化学物質の混合が起こっている場合の因果関係を確定するものではない。
    ・平衡理論に基づいたガイドラインは,曝露過程のひとつである底泥摂取について考慮したものではない。
    ・これらのガイドラインは時空間的変動性を考察していないので,動的に変化している底泥や粒径の大きな底泥には適用できないと思われる。
    ・最後に,底泥の化学的性質もしくは生物利用能(底生動物による利用など)は,サンプリングやその後の保存処理過程によって容易に変化するので,計測値に基づいた底泥質のガイドラインは,現地の状況を反映していないかもしれない。
    どのような評価法も有益な情報を与えるものだが,例えば底泥質ガイドラインや,実験室における毒性および生物濃縮底生生物指標などといったものは,特定の現地曝露影響データが利用できない場合には誤った解釈をされてしまうことがある。底泥質ガイドラインは,「スクリーニング(選別)」手法あるいは「実証主義的」アプローチにのみ限定して用いられるべきである。底泥を含む水圏生態系は,統合的なアプローチを用いて,複数の構成要素(例えば,底泥質ガイドラインに関連した生息環境要素,流体力学的要素,生物相に係わる要素,毒性および物理化学的要素など)を評価する「全体論的な」方法において評価する必要がある。
  • 2004 年 65 巻 2 号 p. 161
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
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