陸水学雑誌
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65 巻, 3 号
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  • 田中 晋, 大高 明史, 西野 麻知子
    2004 年 65 巻 3 号 p. 167-179
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    2001年8,月から2002年8,月にかけて,琵琶湖沿岸帯4カ所と周辺の20内湖からミジンコ類を採集して得た34サンプルを検鏡した結果,7科23属39種のミジンコ類を検出した。採集場所がいずれも水草帯であったため,採集された種の半数以上はマルミジンコ科に分類される種であった。多くの地点で採集され,個体数も多かった種はCamptocercus rectirostris, Ilyocryptus spinifer, Scapholeberis kingi, Simocephalus miztus, Simocephalus serrulatus, Bosmina longirostris, Chydorus sphaericusなどで,これらの種が琵琶湖沿岸帯と周辺内湖を代表する種であると言える。内湖のミジンコ相に共通した特徴はみられず,また琵琶湖沿岸帯と内湖の間にもミジンコ相の明らかな相違はみられなかった。しかし,内湖に出現した種数の合計は32種で,琵琶湖沿岸帯に出現した24種よりも多く,総体としての内湖におけるミジンコ相の豊かさを表しているといえる。ここで得た記録と過去の記録を合わせ,琵琶湖および内湖のミジンコ相について考察した。
  • 山本 鎔子, 大高 明史, 林 拓志, 福原 晴夫, 野原 精一, 落合 正宏
    2004 年 65 巻 3 号 p. 181-191
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1998年3月から2003年5月の融雪期に東北地方に発生した47地点の赤雪についての原因調査を行った。
    赤雪中には赤褐色の粒子が多数存在し,高濃度のFeが含まれていた。この赤褐色の粒子の多くは緑藻Hemitoma sp.の休眠胞子であり,粒子数と全Fe含有量とのあいだには高い相関関係があった。赤雪の発生地域は融雪時期に積雪下層部と湿原もしくは土壌との境界面に流れた水が留まる窪地であった。休眠胞子形成の時期や胞子形成の機構は不明であるが,融雪期に融雪水の動きに伴って積雪中を移動し,雪の表層にあらわれ出てくるため,雪が赤褐色に着色するものと推定した。
  • 草野 晴美, 伊藤 富子
    2004 年 65 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    北海道千歳川水系における淡水性ヨコエビの分布を調べたところ,本流にはトゲオヨコエビEogammarus kygi (Derzhavin),支流にはオオエゾヨコエビJesogammarus jesoensis(Schellenberg),湧水源流付近にはエゾヨコエビSternomoera yezoensis(Uéno)が生息していることがわかった。また千歳川支流のひとつ,内別川におけるオオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの調査から,(1)2種の分布は,隣接するにも関わらず重複が少なく,分布境界が明瞭であること,(2)その分布境界の上流と下流で河川の物理的な環境に差異は見られないが,産卵後サケ死体の現存量に有意な差が認められること,(3)2種とも消化管に植物質,動物質の餌を含むが,トゲオヨコエビの方がオオエゾヨコエビより動物質の餌,特にヨコエビ破片を含んでいる頻度が高いこと,が明らかになった。これらの結果から,オオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの分布を決めている要因について,(1)トゲオヨコエビが千歳川下流から遡上することによってオオエゾヨコエビよりあとから上流域へ分布を広げた,(2)トゲオヨコエビは動物性の餌資源をより多く必要とするためサケ遡上区域(産卵後サケ死体の分布)と重複するように分布し,オオエゾヨコエビは貧栄養的な支流に追いやられている,(3)2種間に捕食などの直接的な関係があることによって分布が排他的になっている,という3つの可能性を考察した。
  • 北浦におけるセディメントトラップ実験結果
    納谷 友規, 谷村 好洋, 土谷 卓, 阿部川 秀人, 中里 亮治, 天野 一男
    2004 年 65 巻 3 号 p. 203-213
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    浅い湖における沈降粒子の挙動と珪藻殻堆積過程を明らかにすることを目的として,茨城県南東部に位置する浅い富栄養湖である北浦においてセディメントトラップを設置し,沈降粒子と珪藻殻の堆積量を測定した。その結果,北浦における全沈降粒子堆積量の80%が再懸濁による再堆積物であることが明らかになった。そして,珪藻殻捕集量の季節変化は生体と遺骸で異なる傾向を示し,遺骸の捕集量変動は再懸濁物量変動と似た傾向を示すことが明らかになった。これらの事実は,再懸濁による堆積物の巻き上がりが浅い湖における珪藻殻堆積過程を支配する主な要因であること,そして再懸濁は堆積物表層に生体で存在する珪藻を再び水柱に循環させ,浅い湖における珪藻の生産にも直接関係していることを示唆している。浅い湖における再懸濁は,物質循環を理解するためだけではなく,珪藻の生態を考察する上でも,重要な要素と考えられる。
  • 築地 由貴, 植田 真司, 近藤 邦男, 清家 泰, 三田村 緒佐武
    2004 年 65 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    青森県下北半島の太平洋側中央部に位置する汽水湖尾駮沼における動物プランクトンの出現特性を2001年4月から2004年3月に至る期間,沼奥部および湖心部の2地点において調査した。沼奥部および湖心部における動物プランクトンの平均出現個体密度はそれぞれ5.4×104および3.4×104個体m-3であり,その季節変動は両地点ともに春季および秋季にピークが観測された。調査期間において出現が確認された分類群は45であり,その優占はカイアシ亜綱(Acartia hudsonica,ハルパクチクス目およびポエキロストム目),そして多毛綱,腹足綱,二枚貝綱およびフジツボ亜目の幼生であった。また,冬季にはワムシ綱の出現する割合が大きくなる傾向が認められた。動物プランクトンの出現個体密度および分類群構成を沼奥部と湖心部との問で比較した結果,両地点間の差異は小さかった。
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