本研究では,硝酸性窒素(NO
3--N)の陸域から海洋への流出過程を明らかにするため,沿岸扇状地の果樹園の広く分布する小流域において,洪水流出時を含めた河川の上流から下流へのNO
3--N負荷量の変動を確認するとともに,地下水としてのNO
3--N流出量の見積もりを行った。その結果,以下のことが明らかになった。1)平水時には,河川の中流から下流に向かって河川流量が減少し,それにともないNO
3--N負荷量も減少した。2)総雨量11mmの降雨イベント時には,河川流量の増加にともないNO
3--N負荷量が増加し,流量のピーク時には平水時の約16倍に達した。また,イベント全体を通しては,河川からのNO
3--N流出量が,平水時約4日分の量に相当した。3)地下水のNO
3--N濃度は中流域で20mgL
-1を上回る高濃度を示したが,最下流域では2.0mgL
-1以下に減少した。その結果,地下水としての海洋へのNO
3--N流出量は,施肥としての年間窒素インプット量の約2.4%程度であると推定された。また,下流域におけるNO
3--Nの消失は脱窒反応によるものである可能性が示唆された。
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