現在の京都市深泥池の水質分布特性を調べ,幾つかの人的撹乱要因との関係について論じた。調査は2003年11,月3日に40地点で行った。水中溶存物質13項目の主成分分析から,第一に池の南東からの水道水漏水が池本来の水質を大きく撹乱していることが示された。影響は,東南開水域で大きく,南西開水域にも及んでいた。水道水漏水は泥炭層を持つ深泥池本来の水質に比べ,pHと電気伝導度,および5種のイオン濃度(Mg
2+,SO
42-,Na
+,Cl
-,Ca
2+)が高くDOC濃度は低かった。第二は池北側の道路や人工構造物由来の負荷による撹乱が考えられた。池北側では池本来の水質に比べ,Fe,K
+,Si,SRP,Ca
2+の濃度が極めて高かった。水生植物の生産性に関連する10項目の主成分分析では,第一に南北の環境傾度が選ばれた。北側の地点では南側よりFe,TP,SRP,Si,K
+,Ca
2+,TNの濃度が高く富栄養化が進んでいることが示された。第二にpHとCa
2+などミズゴケの生育に関連する因子の環境傾度が選ばれた。浮島地点ではpHとCa
2+濃度が低かった。浮島内地点と反対の環境傾度を示したのは池東側の地点であった。
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