陸水学雑誌
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66 巻, 2 号
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  • 野末 泰宏, 福島 和夫, 公文 富士夫
    2005 年 66 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    白駒池は,山岳域(標高2115m)の貧栄養―腐植栄養湖である。本研究では,白駒池の水深8m地点で採取した94cmの柱状堆積物試料を有機地球化学的に解析し,白駒池の古環境変遷を復元した。14C年代測定の結果,平均堆積速度は0.21mmy-1であった。堆積物の層相から有機質泥層(コア深度0-47cm)は湖での堆積物,泥炭質層(47-70cm)は水深の浅い移行期での堆積物,植物遺骸を多く含む泥炭層(70cm以深)は湿原での堆積物と考えられた。したがって,湿原から移行期を経て,約2200年前に白駒池が形成されたと推定した。C/N原子比と4α,23, 24-trimethyl-5α-cholest-22-en-3β-o1の変動から湖形成初期には,水深が浅く,内部生産が大きかったと推定した。有機質泥層には,過去2200年間の古気候変動を反映していると考えられる脂質成分が残されていた。また,堆積物中には,dehydroabietaneと18-norabieta-8, 11, 13-trieneが含まれていた。これらのアビエチン骨格をもつ化合物は,流入河川の懸濁物で検出され,針葉樹を主体とする流域の古植生を復元するのに役立つ分子指標となるかもしれない。
  • 萱場 祐一
    2005 年 66 巻 2 号 p. 93-105
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究では岐阜県各務原市に設置された実験河川の流程に沿った2地点において夜間溶存酸素濃度を連続観測し,再曝気係数を簡便に算出することを試みた。次に,この結果を昼間に用いて一次生産速度,呼吸速度の推定を行った。算出した再曝気係数の値,一次生産速度と呼吸速度の推定値は既往の研究における値と同程度となり,本手法に基づく推定値の精度は概ね良好と考えられた。ただし,本手法を現地に適用する場合には,2地点間の流下時間が短いこと,2地点間の溶存酸素濃度の差が時間的に変動すること,流下方向に水理条件が均一であるといった条件を満たす必要がある。今後,これらの適用条件をより具体化することが課題として残された.
  • 高村 典子, 竹門 康弘
    2005 年 66 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    現在の京都市深泥池の水質分布特性を調べ,幾つかの人的撹乱要因との関係について論じた。調査は2003年11,月3日に40地点で行った。水中溶存物質13項目の主成分分析から,第一に池の南東からの水道水漏水が池本来の水質を大きく撹乱していることが示された。影響は,東南開水域で大きく,南西開水域にも及んでいた。水道水漏水は泥炭層を持つ深泥池本来の水質に比べ,pHと電気伝導度,および5種のイオン濃度(Mg2+,SO42-,Na+,Cl-,Ca2+)が高くDOC濃度は低かった。第二は池北側の道路や人工構造物由来の負荷による撹乱が考えられた。池北側では池本来の水質に比べ,Fe,K+,Si,SRP,Ca2+の濃度が極めて高かった。水生植物の生産性に関連する10項目の主成分分析では,第一に南北の環境傾度が選ばれた。北側の地点では南側よりFe,TP,SRP,Si,K+,Ca2+,TNの濃度が高く富栄養化が進んでいることが示された。第二にpHとCa2+などミズゴケの生育に関連する因子の環境傾度が選ばれた。浮島地点ではpHとCa2+濃度が低かった。浮島内地点と反対の環境傾度を示したのは池東側の地点であった。
  • 伊藤 富子, 大高 明史, 上野 隆平, 桑原 康裕, 生方 秀紀, 堀 繁久, 伊藤 哲也, 蛭田 眞一, 富川 光, 松本 典子, 北岡 ...
    2005 年 66 巻 2 号 p. 117-128
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    2003-2004年に,釧路湿原の南東部に位置する達古武沼の水生大型無脊椎動物相を調べ,94分類群の生息を確認した。その内訳は次のとおりで,全体として浅い富栄養な海跡湖の特徴を示していた。ユスリカ科34分類群,貧毛綱18分類群,軟体動物8分類群,トンボ目7種,カメムシ目5分類群,ヒル亜綱,トビケラ目各4分類群,ダニ目,ワラジムシ目,コウチュウ目,ヌカカ科各2分類群,線形動物門,ヨコエビ亜目,エビ目,アミ亜目,カゲロウ目,ヘビトンボ目各1分類群。
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