陸水学雑誌
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67 巻, 1 号
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原著
  • 松本 源喜, 阿久津 由記, 高松 信樹
    2006 年 67 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     千葉県北西部に位置する印旛沼は, 流域の都市化により水質が悪化した典型的な富栄養湖である。本研究では, 西印旛沼 (面積680ha, 平均水深1.8m) の表層堆積物 (0~5cm) 中の全有機炭素 (TOC), 全窒素 (TN), 炭化水素およびステロールの特徴を明らかにし, 湖環境と関連しそれらの起源を考察した。表層堆積物中のTOC濃度は3.41~7.18% (平均5.54%) と高く, 典型的な富栄養湖の値を示した。炭化水素は天然および石油関連の人為起源の混合物で, n-アルカンは炭素鎖C29に極大ピークを有し, スクアランとUCMH (unresolved complex mixture of hydrocarbons) が含まれる。一連のステノールおよびスタノール (C27-C29) が, コレスト-5-エン-3β-オール, 24-メチルコレスト-5-エン-3β-オールや24-エチルコレスト-5-エン-3β-オール等を主成分として検出された。スタノールがかなり多く含まれるが, ケイ藻や渦鞭毛藻等により供給されたものの他に, 堆積物中におけるステノールの選択的分解や還元の影響があるものと考えられる。自生性有機物の寄与率は47.1~72.2% (平均62.8%) で, 外来性有機物より大きいことが判明した。石油汚染性の炭化水素を含む外来性有機物は, 主として新川および鹿島川からの流入水によるが, 後者からは維管束植物片を多く含む流入水があるものと考えられる。
  • 真田 哲也, 田中 佳孝, 山崎 一, 高松 信樹
    2006 年 67 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     福島県裏磐梯の長瀬川を主流とする沼尻水系には, 沼尻温泉及び中ノ沢温泉の温泉水や旧硫黄鉱山の廃坑から強酸性の湧水が流入している。本研究では沼尻水系の河川水中に含まれる希土類元素に着目して, 流下の過程における挙動を考察した。河川水中の希土類元素は, 流下に伴う中性河川水の流入による希釈とpHの上昇によるFeまたはAlの水酸化物沈殿の生成に伴う共沈作用により, 河川水中から除去されたものと推測した。また, 河川水中希土類元素の起源と流下の過程における挙動を考察するため, 硫黄廃坑付近で採取した変質の少ない岩石を用い, 溶出実験を行った。その結果, Euは負のアノーマリーが顕著に現れ, 他の希土類元素とは異なる溶出挙動を示した。一方, 沼尻水系においてそれは顕著ではなかった。このことから, Euは比較的耐酸性の鉱物に含まれていることが明らかとなった。また, 沼尻水系本流においては, 溶出する能力を維持した酸性の河川水が, 変質作用を受けEuの正のアノーマリーを有する岩石と再接触することによりEuが付加されていると考えられた。
短報
  • 芳賀 裕樹, 芦谷 美奈子, 大塚 泰介, 松田 征也, 辻 彰洋, 馬場 浩一, 沼畑 里美, 山根 猛
    2006 年 67 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     琵琶湖南湖で2002年9月2日から5日にかけての日中に湖底直上の溶存酸素濃度を観測した。84地点中36地点で湖底直上の溶存酸素飽和度が50%未満となった。9月6日から11日にかけて, 前述の84地点のうちの44地点で潜水士による沈水植物の定量採取を行い, 種別の乾燥重量を得た。また9月17, 18日に41地点で底質を採取し強熱減量を得た。調査地点の水深, 観測時刻, 沈水植物の現存量, 底質の強熱減量を説明変数として, 重回帰分析を行った。オオカナダモ (Egeria densa), ホザキノフサモ (Myriophyllum spicatum), センニンモ (Potamogeton maackianus) の現存量, ならびに水深を説明変数とする重回帰モデルで湖底直上の溶存酸素濃度を推定できることが明らかになった (R = 0.65, R ' = 0.61, n = 44, P < 0.01)。偏回帰係数と偏相関係数はともにオオカナダモの現存量が湖底直上の溶存酸素濃度の変動に大きな影響を与えることを示した。
  • 稲垣 聡, 平沢 太郎, 伊藤 承央, 寺井 久慈
    2006 年 67 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     紫外線ランプの周りに二酸化チタンのコーティングをほどこした粒状の多孔質光触媒を配した円筒状の反応器を用いて, 下水処理施設の最初沈殿水処理システムの検討を行った。硝化細菌 (アンモニア酸化菌+亜硝酸酸化菌) を反応槽に投入し, 最初沈殿水中のPOC, DOC, NH4+, NO2-, およびNO3-濃度の経時変化の測定を行なった。多孔質光触媒がPOCの捕捉およびDOCの吸着と分解の効果を示すという結果が得られた。また, この反応槽内でNH4+がNO3-まで硝化されており, 反応槽内の一部に紫外線の照射があっても光触媒反応器の内部または外部で硝化細菌が活動できることが示された。さらに, 光触媒反応器の導入により, 硝化細菌のみの場合よりも硝化反応が促進されることが示された。反応槽内の光触媒反応器を倍加すると, 硝化速度が増加した。しかし, POC, DOCは光触媒反応器の設置数にあまり影響を受けなかった。
資料
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