千葉県北西部に位置する印旛沼は, 流域の都市化により水質が悪化した典型的な富栄養湖である。本研究では, 西印旛沼 (面積680ha, 平均水深1.8m) の表層堆積物 (0~5cm) 中の全有機炭素 (TOC), 全窒素 (TN), 炭化水素およびステロールの特徴を明らかにし, 湖環境と関連しそれらの起源を考察した。表層堆積物中のTOC濃度は3.41~7.18% (平均5.54%) と高く, 典型的な富栄養湖の値を示した。炭化水素は天然および石油関連の人為起源の混合物で, n-アルカンは炭素鎖C
29に極大ピークを有し, スクアランとUCMH (unresolved complex mixture of hydrocarbons) が含まれる。一連のステノールおよびスタノール (C
27-C
29) が, コレスト-5-エン-3β-オール, 24-メチルコレスト-5-エン-3β-オールや24-エチルコレスト-5-エン-3β-オール等を主成分として検出された。スタノールがかなり多く含まれるが, ケイ藻や渦鞭毛藻等により供給されたものの他に, 堆積物中におけるステノールの選択的分解や還元の影響があるものと考えられる。自生性有機物の寄与率は47.1~72.2% (平均62.8%) で, 外来性有機物より大きいことが判明した。石油汚染性の炭化水素を含む外来性有機物は, 主として新川および鹿島川からの流入水によるが, 後者からは維管束植物片を多く含む流入水があるものと考えられる。
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