陸水学雑誌
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67 巻, 2 号
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原著
  • 芳賀 裕樹, 大塚 泰介, 松田 征也, 芦谷 美奈子
    2006 年 67 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     琵琶湖南湖の52地点で, 2002年9月に潜水による沈水植物の定量採取を行った。沈水植物は43地点に出現した。平均現存量と出現地点数から, 調査時の南湖全体の沈水植物の現存量は10735±3030t, 分布面積は43km2と推定された。センニンモの現存量が最大で, これにクロモ, マツモ, オオカナダモ, ホザキノフサモを加えた5種で沈水植物全体の現存量の99%を占めた。センニンモとマツモの分布は高い重なり合いを示した (Pianka's α=0.71)。沈水植物の現存量と環境要因についてSpearmanの順位相関係数を求めた。センニンモの現存量は平均透明度/水深比との相関が最も強く (ρ=0.50), 湖底の相対的な光の強さが現存量の大きさを規定する可能性が示された。マツモの現存量は透明度と正の相関を (ρ=0.44), オオカナダモの現存量は底質の平均粒径 (φmean) と負の相関を示した (ρ=-0.40)。南湖の沈水植物の現存量の歴史的変遷を整理した。2002年の沈水植物の量的な種組成は, かつて沈水植物が豊富だった1936年と大きく異なっていた。
  • ―尾瀬ケ原のアカシボにみられる無脊椎動物―
    福原 晴夫, 大高 明史, 木村 直哉, 菊地 義昭, 山本 鎔子, 落合 正宏, 福井 学, 野原 精一, 尾瀬アカシボ研究グループ
    2006 年 67 巻 2 号 p. 81-93
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     春の融雪期に, 尾瀬ケ原の一部で, 例年「アカシボ」と呼ばれる彩雪現象がみられる。このアカシボ雪の中や表面に, 線虫類, ソコミジンコ類, ケンミジンコ類, ミズダニ類, クマムシ類, 貧毛類, ガガンボ科幼虫, ヌカカ科幼虫, ユスリカ科幼虫などが出現した。この中でも特に, ソコミジンコ類, 貧毛類, ガガンボ科幼虫, ヌカカ科幼虫, ユスリカ科幼虫の密度が高かった。見本園アカシボの総密度は雪中で2.4~3.6×104個体m-2, 雪表面で0.3~2.2×103個体m-2であった。見本園の根雪前, 融雪後のアカシボ残存物中にはアカシボ雪と共通の分類群が出現することより, アカシボ雪の無脊椎動物は湿原の土壌動物に由来するものと推定された。土壌動物がアカシボ雪中に移動する原因として, 融雪期に積雪下の地表面が湛水すること, 溶存酸素濃度が低下すること, さらにアカシボ雪の形成時にFe2+の酸化のために, 酸素が消費され, 雪中の酸素濃度が低下することが推定された。雪原食物網研究の重要性について考察した。
短報
  • 國安 理奈子, 森川 和子
    2006 年 67 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     表面の物理的構造が異なる2種類の自然礫, 泥岩と砂岩に生息する付着微生物群集について, 分離した細菌株の生理学的性質とLV-SEMによる付着状態を比較した。付着微生物群集の採取は表層部とクラック (孔隙) 深部を区分するため, 超音波処理により分画採取した。礫当たりのコロニー形成細菌数は, クラックサイズの大きい砂岩の試料で高い傾向にあった。超音波処理時間の違いによる分画毎の細菌数は, 泥岩では表層部の分画において高く, 砂岩では下層分画において高かった。分離細菌株の種類構成は泥岩・砂岩とも分画毎に異なり, 上層から順次剥離している様子がうかがえた。砂岩の下層分画の細菌株は単一種類と見られ, クラック内で増殖した可能性が考えられた。また, 砂岩の表層部と泥岩のクラック深部の種類構成が類似していることが明らかにされ, 下層分画に生息する細菌株は両礫間で異なった。LV-SEMによる礫表面の観察からも, 超音波処理による付着微生物群集の剥離のされかたは礫種により異なり, 礫に形成される付着微生物群集は基層となる礫の表面構造を反映してパイオニア微生物が規定される可能性が示唆された。
  • ―圃場における流出実験―
    山田 佳裕, 井桁 明丈, 中島 沙知, 三戸 勇吾, 小笠原 貴子, 和田 彩香, 大野 智彦, 上田 篤史, 兵藤 不二夫, 今田 美穂 ...
    2006 年 67 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     しろかき期において強制落水を行ったときに水田から流出する懸濁物 (SS), 窒素, リンの量を圃場 (30×100m) における流出実験から見積もった。強制落水における総流出量は, 水位の減少の小さい圃場 (8mm, 水田A) ではSSが33kg, 全窒素が85g, 全リンが46g, 水位の減少が大きい圃場 (72mm, 水田B) ではSSが110kg, 全窒素が589g, 全リンが146gであった。水深が深い圃場からのリンの流出が特に大きいことが明らかになった。さらに, 強制落水による排水のN/P(モル比)は, それぞれ4.1 (水田A), 8.8 (水田B) であった。植物プランクトンのN/Pが16であることを考えると, 強制落水は特にリンを高い効率で流出させることがわかった。琵琶湖へのリンの供給は富栄養化の促進の点から望ましくなく, 水田の粗放的水管理の改善が今後の琵琶湖の水質を考える上で重要であることが指摘された。
  • 植田 真司, 築地 由貴, 近藤 邦男
    2006 年 67 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     汽水湖尾駮沼におけるアマモ場の水平分布および資源量に関する調査を2004年6月から2005年4月に至る期間, 航空写真の画像解析と潜水調査の両面から実施した。アマモ (Zostera marina) およびコアマモ (Zostera japonica) の2種のアマモ類の植生が確認された。両種の分布水域を調査した結果, アマモは湖岸の水深約1~1.5mの等深線に沿って, 細長く帯状の分布状況が確認された。一方, コアマモは, 水深約0.5m以浅の砂泥質域においてパッチ状の分布状況が確認された。アマモ場 (アマモおよびコアマモ) 群落の総面積は約0.08km2で, これは尾駮沼の湖面積の約2%に相当する。底質における有機物含量がアマモ場の分布を支配する重要な要因であることが示唆された。また, 尾駮沼全体におけるアマモ場の総資源量 (葉部と根部の和) は, 一年のうちで6月に最大値 (約72t) を, 4月に最小値 (約22t) をそれぞれ示した。約30~40年前の尾駮沼全体におけるアマモ場の総資源量と比較した結果, 日本国内の多くの沿岸水域で観測されているような減少状況は認められなかった。
資料
  • 芳賀 裕樹
    2006 年 67 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     琵琶湖南湖の面積について, 文献に記されている値の検証を行った。いまでも広く用いられている58km2という面積は, 湖岸の埋め立てがほとんど行われていない1955年の湖岸線を基に計算された値だった。別の文献で55km2と計算されている面積は1969年の値だった。1998年の南湖の面積を最新の地形図から計算したところ, 南湖全体の面積は54.5km2, 島などを除く水面面積は51.6km2と推定された。筆者らが2004年に報告した2001年9月の南湖の沈水植物の分布面積と現存量を新たに計算された南湖の面積を用いて再計算したところ, それぞれ29km2と6,500tに下方修正された。
  • ―特に河川の流量変化との関係について―
    佐藤 裕司, 横山 正, 真殿 克麿, 辻 光浩, 水野 雅光, 魚留 卓, 妹尾 嘉之, 杉野 伸義, 永野 正之, 三橋 弘宗, 浅見 ...
    2006 年 67 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     兵庫県上郡町の安室川では, 2004年1月の調査で9年ぶりに淡水産紅藻チスジノリ (Thorea okadae) の配偶体の生育が確認された。安室川のチスジノリは水中の石やコンクリート壁に着生していた。チスジノリが多く出現した場所の水深は20~100cm, 流速 (表層) は14~84cm s-1の範囲にあった。1991年から2004年までの, チスジノリ配偶体の出現状況と河川流量変化との関係を解析した。その結果, 日平均流量最大の洪水が夏期 (7~8月) に発生し, それ以降に大きな洪水がなかった場合に, その年の秋から翌年の春にかけて配偶体は多数出現する傾向にあることが示唆された。なお, 下流側の調査地点 (C区域) では, 川床の石に着生するチスジノリの胞子体 (Chantransia stage) も見出された。
  • 山室 真澄
    2006 年 67 巻 2 号 p. 135-152
    発行日: 2006/08/20
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
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