陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
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73 巻, 1 号
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原著
  • 高津 文人, 渡邊 未来, 林 誠二, 今井 章雄, 中島 泰弘, 尾坂 兼一, 三浦 真吾
    2012 年 73 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/15
    ジャーナル フリー
     筑波山周辺の渓流水中の硝酸イオンの濃度と同位体比の夏季と冬季の俯瞰的な調査結果から,1)夏季と冬季の硝酸イオンの濃度特性を基に40流域は13流域からなるグループ1(濃度が低く,季節間差も小さい)と17流域からなるグループ2(濃度は低くないが,季節間差は小さい)と8流域からなるグループ3(濃度は低くないが,夏季に濃度が低下する)と2流域からなるグループ4(濃度は低くないが,冬季に濃度が低下する)に大別できた。2)グループ1では冬季にδ18Oの大きく上昇する地点が多く,グループ3では冬季にδ15N, δ18Oともに低下する地点が多かった。3)硝酸イオン濃度の低いグループ1で冬季に雨水由来の硝酸イオンの寄与が増大することとグループ3では冬季に硝酸イオンの消費活性が大きく低下していることが示唆された。4)雨水由来の硝酸イオンが流入した場合の濃度とδ18Oの挙動を同位体混合モデルで解析した結果,硝酸イオンの量として最大見積もりで8.2%程度の雨水由来の硝酸イオンが渓流水へ流出したと推測された。5)雨水由来の硝酸イオンのシグナルが検出された流域の平均勾配は小さく,土壌の湿潤分布状態を示すTWI(地形的な湿潤指標)が高かったことから,そうした流域では水の滞留時間が長く,硝酸イオンの消費活性が高く,その結果,硝酸イオンの濃度が低くなったことが原因と考えられた。
短報
  • 玉置 泰司, 桟敷 孝浩, 高橋 義文, 徳田 幸憲
    2012 年 73 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/15
    ジャーナル フリー
     渓流釣り場での禁漁区の解禁に対する,遊漁者の支払意志額(WTP)を計測し,WTPに影響を与える背景を明らかにするため,遊漁者へのインターネットリサーチを実施した。その結果,渓流釣り場選択のための情報としては,「以前来たことがある」,「知人などからの紹介」としたものがそれぞれ約7割と最も多かった。川選びで重視する点では「水がきれい」が73.3%と最も多かった。魚を殖やす方法として3つの方法から1つ選択させた結果,「流域の環境をよくする方法」が68.5%と最も多かった。仮想市場評価法(CVM)を用いた禁漁区解禁に対するWTPの経済評価をおこなった結果,解禁時には通常より2割程度高い遊漁料を設定しても受け入れられる可能性を示した。また,高い遊漁料を支払う傾向にある遊漁者の特徴として,釣り場の選択に際しては「以前来たことがある」を重視し,川選びの重視点では,「大型魚が釣れる」,「天然魚が釣れる」,「遊漁者が少ない」,「遊漁者のマナーがよい」などを選択した。魚を殖やす方法では「淵と瀬の造成・復元」が一番重要と思い,同居世帯年収は高いほど,渓流釣り歴年数は多いほど高い金額を支払う傾向にあることを把握した。
  • 管原 庄吾, 圦本 達也, 鮎川 和泰, 木元 克則, 千賀 有希子, 奥村 稔, 清家 泰
    2012 年 73 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/04/15
    ジャーナル フリー
     2007年の12月から1年間,有明海北東部荒尾沖のタイラギ(Atrina pectinata)漁場における海底堆積物中溶存硫化物の鉛直分布を経月的に調査した。溶存硫化物濃度は,低泥温期には2 mgS L-1以下で推移したが,泥温が上昇するにつれて9 mgS L-1まで上昇した。本結果より,タイラギの斃死が堆積物中溶存硫化物濃度の増加に誘発された可能性のあることが示唆された。
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