水田湛水層におけるCO
2,溶存酸素(以下,DO),pHおよびRpHは,日射量の変動に関連して変動していることが確認された。変動している各要素の相互関係についての報告はされていないことから,これらの変動を3つに分け解析することとした。
フェーズIでは,日射量の増加とともに,CO
2は減少し,DOおよびpHは増加した。 CO
2とDOの値,および CO
2の対数値とpHとは,ともに線形関係を示した。フェーズIIでは,日射量があるにも関わらず,湛水層における CO
2は,ほとんどゼロを示した。DOおよびpHはピークに達した後,徐々に減少した。フェーズIIIでは,日射量の減少とともに CO
2は増加し,DOおよびpHは減少した。
CO
2とDOとの間には,直線的な部分と曲線的な部分からなる関係が,log[CO
2]とpHとの間には,部分的に直線形でその傾きは同程度であり,それぞれにヒステリシスの関係が見られた。
水田湛水層におけるこれらの現象は,化学的な変化のみでは説明することが困難であった。その要因として,湛水層に生息するシアノバクテリアや藻類の活動が水質に影響を及ぼしていることが考えられた。今後,ヒステリシスの関係を生じさせる原因を明らかにするために,水田湛水層に生息するシアノバクテリアや藻類の物理現象への役割について,より詳細に明らかにしていくことが課題である。
抄録全体を表示