陸水学雑誌
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75 巻, 2 号
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原著
  • 岩木 真穂, 熊谷 道夫, 西 勝也, 焦 春萌
    2013 年 75 巻 2 号 p. 87-98
    発行日: 2013/12/12
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     湖の水位は,湖への流入と湖からの流出の収支によって長期的にはバランスしている。一方,短期的な水位変化は,表面波動(静振, 風波), 流入(降水,河川流入,地下水流入), 流出(蒸発, 河川流出)などによって常に変化しており,それぞれが異なる時間的・空間的スケールを有している。それらの中で,短時間に大きな水位変化を引き起こすのは強雨である。湖面への降水は,水位上昇に直接的に寄与し,集水域への降水は河川や地下水を通して湖へと流入する。しかしながら,短時間の強雨によって湖の水位がどの程度上昇するのかということは,これまでに十分議論されてこなかった。本研究では,湖の水位変動が支配する物理現象によってそれぞれ異なる時間スケールをもつことに着目した。すなわち,琵琶湖で測定した水位データを時間スケールに基づいて分離することによって,集水域に降った強雨が湖に流入する割合を評価することを試みた。具体的には,琵琶湖の南湖において2010年から2012年まで水位と降水量の連続観測を行った。抽出された強雨事象について,合計59回の琵琶湖の水位に寄与する割合を計算した。平均寄与率âは,降水の特徴や降水前の地表面状態の影響も受けると考えられるが,積算降水量の増加に伴い増加することが示された。また,積算降水量が増大するに伴って水位が定常に達する時間も長くなることが分かった。積算降水量(P)に対する平均寄与率(â)を評価したところ,â = 100 (1 - e -P/100) (R2=0.95, n = 42,p < 0.001)という有意な関係がみられた。このことから,琵琶湖のような大型湖において,多時間スケールを用いた水位変動の解析が有効であることが示された。
短報
  • 山室 真澄, 神谷 宏, 石飛 裕
    2013 年 75 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2013/12/26
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     宍道湖では近年,沈水植物が広範囲に繁茂するようになった。2008年秋に漁網に水草が大量付着したと報告されていることから,本研究では前年の2007年に沈水植物の繁茂が始まったと仮定し,湖心部での水質(水温,電気伝導度,浮遊物質濃度,植物色素濃度,透明度)の長期変動(2001年1月から2012年12月)と,2002年から2012年までの水田除草剤年間販売量を検討した。また沈水植物が発芽する5月における湖内7地点での水質を,繁茂前(2001~2006年)と繁茂後(2007~2012年)とで比較した。水温と電気伝導度は全地点において繁茂後の方が高かった。光環境に関わる浮遊物質濃度と透明度は地点間で傾向が異なったが,植物色素濃度は全地点で繁茂後に増加していた。全水質項目において繁茂前後の6年間の平均値を比べたところ,植物色素濃度は繁茂後が有意に高かった。宍道湖周辺で販売された水田除草剤の有効成分量は,2006年度の4291kgから2007年度の3305kgと激減し,以後2000kg台にまで減少した。以上より宍道湖で沈水植物が繁茂するようになった原因は,2007年度以降に水田除草剤使用量が減少したためである可能性が高いと判断した。
資料
  • 芳賀 裕樹, 石川 可奈子
    2013 年 75 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2013/10/15
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     琵琶湖南湖において2012年9月に沈水植物の種ごとの現存量の平面分布をSCUBAサンプリングにより調査した。沈水植物は52地点中48地点に出現した。出現種数は12で,1地点あたりの出現種数は4.6±2.0だった。沈水植物の分布範囲の面積と総現存量(乾燥重量)はそれぞれ47.6 km2と3264±1445 tだった。2007年と比較すると,沈水植物の分布範囲は1 km2 減少したに過ぎないが,現存量は 6360 t 減少した。センニンモ,Potamogeton maackianus, オオカナダモ Egeria densa, マツモ Ceratophyllum demersum の現存量は2007年から2012年にかけて有意に減少した(paired Student’s t-test, P < 0.05, n = 52)。3種の現存量の減少幅はそれぞれ4107,879,804 t で,この3種で全体の減少幅の91%を占めた​​。統計的に有意ではないが他の種の現存量もササバモ Potamogeton malaianus とオオササエビモ Potamogeton anguillanus 以外は減少した。
  • 山室 真澄
    2013 年 75 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2013/12/26
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     近年,国内のいくつかの湖沼で水草の繁茂が問題になっている。富栄養化した汽水湖沼でも少数種の水草が高密度に繁茂する可能性があることから,日本の汽水湖沼で繁茂による弊害が懸念・報告されている,もしくは海外で侵略的外来種とされている沈水植物・浮葉植物について,繁茂できる塩分範囲を文献調査した。文献から繁茂塩分範囲の情報が得られた淡水産維管束植物12種類のうち10種類については繁茂できる塩分が10PSUまでであり,それ以上の塩分まで繁茂できる淡水産維管束植物はリュウノヒゲモとイトクズモの2種類だった。
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