陸水学雑誌
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76 巻, 3 号
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原著
  • 河 鎭龍, 伊澤 智博, 北野 聡, 永田 貴丸, 坂本 正樹, 花里 孝幸
    2015 年 76 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2015/02/05
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー
     外来種であるオオクチバスの食性は,在来の魚類やエビ類,水生昆虫に対する捕食影響と関連づけて報告されることが多い。しかし,これらの餌生物が減少した後のオオクチバスの食性変化に関する知見は少ない。長野県白樺湖では,2000年から水質浄化を目的とした生物操作(Biomanipulation)が実施され,それまでオオクチバスの主要な餌となっていた小型魚類(主にワカサギ)が激減した。2009年にオオクチバスの食性を再調査したところ,成魚の主餌が動物プランクトン(カブトミジンコやノロ)に変化していることが明らかとなった。個体成長に伴ってオオクチバスが動物プランクトンから魚類に食性をシフトすることはよく知られているが,成魚がプランクトン食に強い依存性を示すという報告は限定的である。本湖における生物操作前後の比較から,オオクチバスはプランクトン食魚の減少とそれに伴う動物プランクトンの増加に柔軟に対応して食性を変更した可能性が示唆された。
短報
  • 斎藤 裕美, 望月 成, 谷野 賢二
    2014 年 76 巻 3 号 p. 203-216
    発行日: 2014/11/26
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー
     貧栄養湖において,湖岸域の底生動物群集の生態系に関する知見は沖域のそれと比べると極めて少ない。本研究では,貧栄養湖の湖岸域の底生動物群集の時空間的な変動を明らかにするために,支笏湖沿岸の3調査地点にて,2006年から2007年まで1年間,底生動物群集と潜在的餌資源を調査した。本研究の結果から,底生動物群集は25科47タクサが確認され,従来の支笏湖のデータと比べると多様な底生動物相が確認された。底生動物群集のタクサ数,個体数,現存量は時空間的変動が大きく,中礫の湖岸は他の調査地点よりも最も高い値を示した。潜在的餌資源の藻類量や粒状有機物量においても時空間的変動が大きく,中礫の湖岸が最も高い値を示した。摂食機能群別解析では,総ての調査地点にて個体数にて採集食者(49-81%)が最も多く,次いで捕食者(20-35%),剥離食者(11-15%),破砕食者(1-5%)の順に群集を構成する比率が高かった。重回帰分析では底生動物群集は付着藻類量ならびに1 ㎜以上の有機物に依存しており,1 ㎜以上の粒状有機物は採集食者にとって餌資源として利用される可能性が低いため,底生藻類の変動が底生動物群集に影響している可能性が明らかになった。
  • 佐藤 紗知子, 大城 等, 馬庭 章, 管原 庄吾, 神谷 宏, 大谷 修司
    2015 年 76 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2015/01/21
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー
     島根県東部に位置し汽水湖である宍道湖では,夏季にアオコが発生することがある。1984年から2012年までのアオコの発生を判別分析することにより、どのような条件の時にアオコが発生するのかを検討した。結果,起点月(アオコ発生の年は発生月,アオコ未発生の年は8月)の1ヶ月前の水温,起点月の塩化物イオン濃度及び起点月の2ヶ月前の塩化物イオン濃度が判別変数に採用され,89.7%が正しく判別された。
     起点月と起点月の1ヶ月前の塩化物イオン濃度のPearsonの相関が高かった(r=0.78)ため,起点月の1ヶ月前の水温,塩化物イオン濃度及び起点月の2ヶ月前の塩化物イオン濃度を判別変数に用いて判別分析を行った。その結果,86.2%が正しく判別され,起点月の塩化物イオン濃度を用いて判別した場合とほぼ同様だった。これらの結果から,アオコ発生の有無をアオコの発生の前月までに高確率で判別できることが示された。
資料
  • 神谷 宏, 大城 等, 中島 結衣, 佐藤 紗知子, 野尻 由香里, 江角 敏明, 岸 真司, 藤原 敦夫, 神門 利之, 管原 庄吾, 山 ...
    2014 年 76 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 2014/11/19
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル フリー
     溶存有機炭素濃度(DOC)の温度依存性を明らかにするため,2010年7月1日から2011年6月27日まで,週1回の頻度で汽水湖である宍道湖の湖心において採水を行った。一年間の調査における全有機炭素濃度(TOC)の最大値,最小値,平均値,中央値がそれぞれ4.7,1.9,2.8,2.6 mg L-1であった。DOCはそれぞれ2.7,1.3,1.9,1.8 mg L-1,であった。TOCに占めるDOCの割合(DOC/TOC)の最大値,最小値,平均値,中央値はそれぞれ0.86,0.47,0.70,0.72であった。DOCと水温とには相関が見られたが,DOC濃度は水温の増減より若干遅れて連動して増減している傾向があった。DOCが採取された時間に遅れを加えると水温との単相関は高くなり,8.6週(60日)加えた際に相関は最も高くなった。
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