人間の胃腸管中に, 毛髪塊を見ることは稀有にして, 今日まで僅か60數例の報告あるに過ぎす.
余等の經驗例は, 10歳の少女にして胃切開に依り巨大なる毛塊を摘出し經過順調に, 全治せしめ得たり.
本例は, 從來文獻の67例目, 本邦に於ては, 第6例目に位し, 若年なること第2位, 重量は 1050gに及べるものにして第4位を占む.而して年齢に對する, 腫瘍の重量の比は實に世界第1位を占む.
斯る大なる腫瘍にも關らず, 自覺的症状殆ど缺如し, 腹部腫瘍と羸痩を主訴として來診し爲めに診斷に少からず迷されたり.
既往歴に特記すべきことなく, 家族歴に精紳病其の他神經性疾患なけれども患者の兄及び父親に異味食者を有するは興味あることなり.
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