外科領域における栄養管理は手術成積を左右する重要な問題である。我々の教室ではチューブ栄養法により術後早期より高熱量・高蛋白栄養,更に乳化脂肪を添加した積極的な栄養補給を行い,その際の物質代謝を種々の面より研究してきた。
当教室で昭和30年5月より昭和41年4月迄の11年間に施行した胃手術患者716例中の677例について調査し,チューブ栄養法による術後管理の実態を検討した。
術後チューブ栄養施行は全体の76%にあたり,術後6日間のチューブによる補給栄養量は平均蛋白質1.4g/kg/日,総熱量35.Cal/kg/日とかなりの量を補給出来ているが,チューブ抜去直後では経口摂取カロリー量は約20Cal/kg/日と一過性の減少がみられた。栄養補給量は胃切除術BI, BII法との間には差はないが,他臓器の合併切除を行なうような大きな侵襲ではむしろ補給量を十分に与えることは困難であった。また,チューブ栄養に肪質を添加することにより約10Cal/kg/日の増加をさせることができ,熱量補給上脂質の重要さが改めて認識された。避腸栄養との比較では補給栄養量の上で著しい差が認められ,チューブ栄養法の有用性が分った。更にチューブ栄養法における愁訴,副作用及び合併症について検討を加え,胃手術後の栄養補給について質・量の面より術後栄養法を如何にすべきかを考察した。また,チューブによる栄養補給の際に蛋白同化ステロイドを併用した場合について窒素代謝の面より観察し,尿中窒素排泄量の減少と窒素出納の正えの移行の早くなることが認められた。更に根治手術不能の癌患者の栄養補給及び腸痩造設例の栄養補給について検討し,チューブ栄養法は外科領域において術後並びに低栄養患者の全身状態改善に極めて有力な栄養補給法であることが確認された。
抄録全体を表示