最近,経口的栄養摂取の不能な病態の患者に,静脈栄養のみで可成り豊富な栄養補給が出来るようになつた.すなわち従来使用されていた糖液やアミノ酸液に脂肪乳剤を併用することによつて,栄養補給が画期的に改善された.私共の教室においても大豆油を主体とした10%脂肪乳剤を臨床的に用いて満足な成績をおさめている.しかし,脂肪を補給した際にその補給された脂質の代謝過程,更にこれによつて生ずる糖質ならびに窒素代謝などへの影響については未解決の問題も多く残されている.本研究においては特に補給脂質の体内利用状態を呼吸商の面から検討したものである.その結果,静脈内に補給された脂肪は直ちに代謝過程に入り燃焼され,注射開始後4時間で最もその代謝が盛んに行なわれることが分つた.また成人で1日体重当り脂肪1.0~1.5g程度の補給を5日間連日続けても注射速度を一定時間以上保てば血液中に脂肪の蓄積はみとめられないことを観察した.
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