肝胆道疾患におけるERCPの診断的価値は稀めて高い.しかし胆嚢癌の診断においてはERCP, PTCが普及した今日でも困難である.今回われわれは485例のERCPのうち胆道造影が可能で,手術により確認し得た10例についてERCP所見と共に検討した.平均年令は61.8歳,男女比は1:1で上腹部痛と腫瘤触知が主症状であった.
手術症例のうち,切除症例は4例で,姑息手術が6例であった.切除例のうち2例は5年生存が期待できる早期の胆嚢癌と考えられた.しかし姑息例の6例と切除例の他の2例はほとんど1年以内に死亡している.
胆嚢癌のERCP所見について検討すると乳頭所見では発赤が9例に,腫大が3例にみられ,そのうち3例に乳頭炎を認めた.
胆嚢造影所見を胆嚢陽性,陰性に分類してみると,完全陰性例は6例で一部造影例は3例,陽性例は1例であった.このうち胆嚢一部造影例では予後が完全陰性例に比し良好であった.またわれわれは胆嚢癌の胆嚢,胆道の造影所見より6型に分類した. I型は胆嚢,胆管造影型で胆嚢内に陰影欠損が認められる症例, II型は胆嚢一部造影,総胆管造影型で総胆管の外部からの圧排,変形を伴なわないものをII a,伴なうものをII bとした. III型は胆嚢完全陰性例で総胆管が1側から圧排,変形がみられるもの, IV型は総胆管の両側からの圧排,変形,狭窄等がみられるもの, V型は癌の浸潤が総胆管を閉塞している症例である. I~II型では切除可能症例が多く, NevinらのStage分類ではIIに入る.また永光らの分類では早期と考えられる. III型以上ではStage Vに属しほとんど1年以内に死亡している.
以上われわれの型分類とNevin,永光らの分類とよく相関した.胆嚢癌の早期発見には経口, DIC等のscreeningによりチェックし, ERCPによる胆嚢造影所見に注意し,またPTC, Angio等の精査を併用することにより,より早期に発見し,手術を施行すべきであると考える.
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