日本臨床外科医学会雑誌
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39 巻, 5 号
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  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 661-679
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 680-692
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 四方 淳一
    1978 年 39 巻 5 号 p. 693-698
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 診断と治療のために
    河西 信勝, 篠崎 登, 西田 貞之, 綿貫 哲, 内田 正興
    1978 年 39 巻 5 号 p. 699-708
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    日常の外科外来診療において,往々にして診断に窮する疾患として頚部の腫瘤がある.しかも一般外科におけるこれらの診断と治療の進歩は“未だし”の感が強く,これは本領域が一般外科・耳鼻咽喉科・甲状腺外科・口腔外科・胸部外科の領域と重複するためと考えられ,このため今後,頭頚部外科の存在意義を考えなければならない点と思われる.
    頚部の腫瘤はきわめて多岐にわたり,日常最も多く認めるものとして甲状腺腫瘤・頚部リンパ腫・唾液腺腫瘤があり,一般にこれらの腫瘤の診断は,その局在部位・性状および臨床経過などによってある程度診断しうるものが多く,その補助診断も少ない.これらの点から頚部の腫瘤の臨床的特徴を正確に把握することがきわめて大切であると考え, 1964年1月から1974年12月までに慈恵医大第一外科において経験した頚部腫瘤の臨床像をここにまとめるとともにその診断と治療にまで言及した.
  • 大城 隆
    1978 年 39 巻 5 号 p. 709-724
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃癌術前照射における所属リンパ節転移を検索するために1967年より1975年までの9年間に東京医科大学外科において術前照射を施行し胃癌取扱い規約に従い検索された進行胃癌197例(照射群)について非照射進行胃癌290例(非照射群)を対照に各因子別に比較検討し次の如き結果を得た.
    結果
    1. 照射群では非照射群に比し,転移率で13.1%,転移度で9.1の低下と第2群リンパ節以遠の遠隔転移の減少をみた.
    2. 占居部位別にみると,上部C,中部M,下部Aの限局型で転移率の低下をみるが,特に,中部Mと下部Aでは第2群リンパ節以遠の遠隔転移の減少が著明である.
    3. 廓清用リンパ節別にみると,照射群では各占居部位で第1群リンパ節と第2群リンパ節の(7), (8), (9)に転移率の低下をみた.
    4. Borrmann分類別にみると, I型, II型, III型で転移率の低下をみるが,特に, II型, III型で著しい.
    5. 組織型別にみると,腺癌,単純癌共に転移率は低下するが,特に単純癌で著しい.
    6. 癌腫の大きさ別にみると, 6.0cm以下, 6.1cm以上共に転移率の低下をみるが,特に6.0cm以下のもので著しい.
    7. 胃壁深達度別にみると, s2までは転移率の低下をみるが,特に, s1までは第2群リンパ節以遠の遠隔転移も著しく減少する.
    8. 転移程度と5年生存率についてみると, n1(+)で4.5%, n2(+)で8.4%,照射群全例で12.5〓の向上をみた.
    9. リンパ節転移癌巣のXの程度は照射線量の増加に従い強くなるが,主病巣のXの程度よりはやや弱い傾向を示した.
    10. リンパ節転移癌胞巣のpH 4.1 TBM染色によるメタクロマジーの程度は偶然間質で陰性(-)~微弱陽性(±),癌固有間質で強陽性(〓)を示した.
  • 第三相臨床試験,特定疾患に対する効果,安全性の検討
    浅石 和昭, 山本 直也, 早坂 滉
    1978 年 39 巻 5 号 p. 725-730
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    Messerらによって開発された抗炎症剤Ketoprofenについて乳腺,甲状腺疾患の術後疼痛に対する効果と安全性を第三相の臨床試験として検討した.ヒトにおいては慢性関節リウマチに薬効を認めると報告されているが,外科的手術後の疼痛に対する効果はすでに我々が報告している.
    今回は注射薬としての速効的な効果,副作用を25例の乳腺疾患,甲状腺疾患の術後の疼痛を中心に観察した. Ketoprofen 50mgを臀筋内に投与し経時的に鎮痛効果,副作用としての消化器症状,皮疹等の皮膚変化,血圧変化を注意深く観察し次の結果をえた.鎮痛効果は注射後1~2時間にて最大の効果を呈する.累積改善率でみると第1回目の投与群では25例中13例50%が著明改善をしめし,中等度改善を含めると25例中18例が有効であり,軽度改善を含めると25例中22例88%が有効であった.第2回投与ではさらに有効率が高まり著明改善は7例中6例86%であり,軽度改善を含めると全例が有効であった.副作用は特に認めなかった.一方鎮静効果は投与前と投与後の各時間において,有意の差を認めなかった.
  • 野田 剛稔, 古賀 政隆, 松原 信也, 山田 隆平, 宮田 昭海, 原田 昇, 伊藤 俊哉, 土屋 凉一
    1978 年 39 巻 5 号 p. 731-734
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    日常臨床において比較的まれにしか経験しないといわれている妊娠・授乳期乳癌について検討し,併せて妊娠可能年代の一般乳癌との比較を行った.本症の頻度は全乳癌の1~3%といわれ,教室の症例も186例中4例, 2%で一致した頻度であった.妊娠・授乳期乳癌は一般乳癌と比べ病悩期間が長く,またその予後も悪い.その要因としては,本症特有の生理現象のために,診断が遅れたり,誤診されることが大いに関与していると考えられた.しかし,リンパ節転移の認められない症例ではその予後は一般乳癌とほとんど差はなく良好であるため,妊娠,授乳期乳癌といえども決して悲観的な疾患ではなく,他の疾患と同様,早期発見,早期治療の重要性が示唆された.そしてその為には本症を常に念頭においた診療が望まれ,疑わしいものは穿刺吸引細胞診や積極的な生検が必要である事を報告した.さらに妊娠中絶,卵巣摘出の是非,再妊娠の時期について文献的考察を加え,妊娠中絶か卵巣摘出は根治性のある本症に対しては消極的な意見が多く,再妊娠はリンパ節転移の認められない症例では3年以上,転移陽性例では5年以上もしくは永久避妊が望ましい事をのべた.
  • 伊藤 進, 長谷川 英之, 後藤 隆人, 菊地 福三郎, 井出 研, 吉村 義之
    1978 年 39 巻 5 号 p. 735-742
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    肺動静脈瘻は本邦では比較的稀な疾患であり,最近報告例が増えつつあるが,その集計例数は各報告者により一定していない.そこで我々は左上葉舌区内の単発性肺動静瘻の1治験例を経験したのを機会に出典の明らかな文献報告例65例を集計し,これに本例を加えた66例の臨床的検討を行い,かつこれ等と外国報告例との比較を試み,以下の結果を得た.
    (1) 年齢は若年層に多く20代未満例が42.4%を占める,性差は8:5と男にやや多い.
    (2) Rendu-Osler-Weber病との合併は外国例(30~60%)程多くはなく,家族歴を含めても66例中8例と12.1%を示したにすぎない.
    (3) 臨床症状は本邦例,外国例ともほぼ同様でチアノーゼ,太鼓バチ指,運動時呼吸困難,多血症等の慢性低酸素血症由来の症状が多く,それぞれ50%前後の発症率を示した.
    しかし約30%の症例は全く無症状であり,かつ本症に特徴的とされる病巣部に一致しての血管雑音も約40%の症例に聴取されなかった.
    (4) 発生形態は単発と多発とあるが,本邦例では単発が70.8%と外国例(約60%)よりも多い.単発例の発生部位は両下葉が多く,各肺葉別の発生率は外国例と驚く程,一致した.
    (5) 治療は手術的切除であり葉切例が最も多く80%を占めている.しかし本症は本質的には良性疾患であり,最近核出術等の切除範囲を少くする方向に努力されている.
    (6) 予後は,本邦66例中手術例54例は, 1例の直死例(術後7日目,消化管出血を合併し死亡)を除きいづれも良好である.
  • 年代別にみた検討
    岸本 宏之, 古賀 成昌, 岩井 宣健, 西村 興亜
    1978 年 39 巻 5 号 p. 743-751
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1948年から1977年までの30年間に教室で経験した原発胃癌に対する胃全摘256例,近位胃切除74例を対象に,主として手術成績と遠隔成績を年代別(4期)に検討した.
    胃全摘例には浸潤型, ps(+)の低分化型腺癌が多く,年代別にも症例の進行度に大差なかったが,近位胃切除例には限局型, ps(-)の分化型腺癌が比較的多く,進行度,治癒度ともに年代別に著明な改善が認められた.術後合併症の発生率は胃全摘例で44%,近位胃切除例で55%であり,縫合不全は各11%, 12%にみられた.直接死亡率は胃全摘で7.8%,近位胃切除で6.8%であったが,年代別には第1, 2期の12.5% (胃全摘), 11.5% (近位胃切除)から,第3, 4期には4.2% (両術式)に減少し,両術式症例を通じて,縫合不全後の直接死亡率も第1, 2期の63%から,第3, 4期には29%に減少した.
    遠隔成績に関して,第3期までの胃全摘全例(160例)の相対5年生存率は22%,直接死亡と絶対非治癒切除を除くと31%で,近位胃切除例ではそれぞれ31% (43例), 50%であったが,年代別にみると,絶対非治癒切除を除く胃全摘例(耐術例)の相対5年生存率は,第2期37%,第3期35%と変らず,逆に,近位胃切除例では第2期の19%から,第3期は78%と著明な成績の向上が認められた.
    また,再発死亡例と長期生存例の癌巣所見では,深達度,ついで脈管侵襲の程度が大きく相違しており,再発に関しては,胃全摘例に術後2年未満の腹膜再発が圧倒的に多く,断端再発,骨再発,肺再発も認められ,低分化型腺癌との密接な関連が推定された.
    さらに,胃全摘術後5年以上生存中の21例を対象に,各種臨床検査を施行した結果,血清総蛋白量は1例以外良好な成績を示したのに反し,貧血,とくに高色素性貧血はかなり多く,血中ビタミンB12は1/3の症例が極端な低値を示しており,術後管理上十分に留意すべき問題点と思われた.
  • 山口 隆, 佐渡 豊, 玉山 睦
    1978 年 39 巻 5 号 p. 752-757
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1. 大量の吐血・下血によりショックに陥った2症例の緊急開腹手術に際して,膵頭部の破格を認めた.
    1例は73歳女. Harris' band様模様構築物に胃幽門部及び十二指腸の前面を被われ,この模様物を切離することによって十二指腸下行部を囲む完全な輪状膵を認めた.輪状膵は幽門輪をも被い,これを剥離して幽門輪直下に十二指腸潰瘍を見出した.
    他の1例は35歳男.十二指腸下行部がその前面の一部を除き膵頭部に取囲まれる不完全な輪状膵であった.幽門輪直下に十二指腸潰瘍を認めた.
    何れも幽門側広範囲胃切除を行い,結腸前胃空腸吻合で再建した.
    切除標本には2症例ともに十二指腸潰瘍の他に散在多発性胃潰瘍が存在した.
    2. 輪状膵の成因,症状,合併疾患診断,治療等につき考察した.とくに成人輪状膵の特質につき臨床的考察を加えた.
    3. 消化性潰瘍を合併した輪状膵の手術々式は幽門側広範囲胃切除術が最適であることを確認した.
  • 前田 和良, 戸田 慶五郎, 半羽 健二, 山本 誠己, 田中 智之
    1978 年 39 巻 5 号 p. 758-765
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    数年にわたり上腹部の激痛発作を繰り返してきた36歳,男子の膵炎患者に,左上腹部の小児手拳大有痛性腫瘤を触知したため,腹腔動脈撮影を施行した.これにより,脾動脈主枝起始部に径約2cmの球状の動脈瘤が描出され,触診での腫瘤の位置と一致した.開腹すると,膵体部に径約8cm大の球状の仮性嚢胞があり,さらにこれを切開すると内腔に径約3cm大の球状の動脈瘤が認められた.膵尾部はほとんど壊死自潰していた.脾と共に,動脈瘤,嚢胞,膵体尾部を一塊として摘出した.摘出標本では,動脈瘤は嚢胞の内壁後面と連らなり,また動脈瘤壁は約1.5cmの厚さをなし後壁にて脾動脈側壁と径約7mm大の円孔をもつて通じていた.病理組織学的には,動脈瘤は,非特異的な慢性動脈炎を示す脾動脈との移行部より次第に内膜が線維性に肥厚し,弾性板も消失していた.膵は慢性膵炎像を呈し,動脈瘤はこの炎症の波及によるものと思われた.術後経過は良好で膵炎発作は消失した.
    著者の集計し得た本邦での脾動脈瘤の症例は自験例を含めて63例で,このうち術前診断されたものは39例であつた.発生原因別にみると,門脈圧亢進症30例,動脈硬化症13例,血管壁の先天性異常7例,動脈の限局性炎症4例,他は不詳であつた.動脈の限局性炎症の原疾患は,梅毒, Behçet症候群が各1例,および自験例を含めた膵炎の2例であつた.なお欧米においても膵炎に合併して脾動脈瘤がみられた報告は, 4例にすぎなかつた.
    今後,腹腔動脈撮影で膵炎症例にも脾動脈瘤が多数発見されるものと思われる.
  • 自験7症例と本邦報告例の検討
    中尾 丞, 中越 享, 下山 孝俊, 北里 精司, 高木 雄二, 石川 喜久, 柴田 興彦, 石井 俊世, 内田 雄三, 三浦 敏夫, 調 ...
    1978 年 39 巻 5 号 p. 766-774
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    我々は石灰乳胆汁の7症例(38歳女, 47歳女, 34歳女, 65歳女, 51歳男, 43歳男, 24歳女)を経験したので,これらの臨床像・石灰乳胆汁の形態と成分分析を報告するとともに,昭和52年12月末日迄に,重複症例を除外して集計し得た本邦石灰乳胆汁症例188例について考察を加えた.発生頻度は比較的稀で,胆石症手術に対する割合は約1~3%である.男女比は1:2.7と女性に多く, 30歳台に最も多くみられる.症状は腹痛を主とし,胆石症のそれとほぼ一致するが,黄疸・発熱をみるものは少ない.また,無症状に経過する例もかなり多くあるものと思われる.診断上重要なのはX線所見であり,腹部単純撮影にて胆嚢部に一致して陽性像が得られ,体位変換により形・位置が変化する例も多く見られ,また,結石の頚部あるいは胆嚢管への嵌頓が認められることがほとんどである.十二指腸液検査ではB胆汁の欠除することが多いが,検血・肝機能・血清電解質に異常を認めることは少ない.治療は特殊な症例を除き,胆嚢摘出術が行われている.石灰乳胆汁の性状は,自験例では,乳状・泥状・粥状・生ゴム様・白墨様・粘土状と様々であつたが,本邦集計例では,糊状及び粘性ゴム状物質等の中等度硬度を示すものが多かつた.また,この成分分析では,天然炭酸カルシウムのAragonite 型結晶と同様のX線回折パターンを示すものが大多数を占めていた.摘出標本については,本症の成因の必要条件と考えられている慢性胆嚢炎の像と結石による胆汁流出路の閉塞が認められた.本症の成因はまだ明らかではないが,胆汁流出路の閉塞,胆嚢の慢性炎症,胆嚢内の pH の変化が必要であると考える.
  • 森 文樹, 繩田 泰生, 倉田 悟, 守田 知明, 兼行 俊博
    1978 年 39 巻 5 号 p. 775-779
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    急性胆嚢炎の外科的治療における手術時期の問題,高齢者患者の場合の問題点については依然議論が多い.自験例の急性胆嚢炎手術21例を詳細に検討し,併せ文献的考察を加えて,我々の見解を述べた.
    21例の内訳は男9例,女12例であり, 70歳以上の高齢者が10例と,約半数を占めた.発症後72時間以内の早期手術12例に対し, 3~4週間の保存的療法後の待期手術9例を比べてみると,早期手術は高齢者,胆嚢穿孔例など重症かつpoor riskの場合が多く,待期手術は軽症で,比較的若年者や急性膵炎合併例などであつた.それぞれに手術死亡はなく,術後合併症の頻度にも著しい差を認めなかつた.
    高齢者(70歳以上)の急性胆嚢炎の特徴はビ系石及び総胆管結石を伴う例が多く,胆嚢穿孔の頻度が高く,心肺機能異常例が多かつた.また,癌合併が2例あり,術前検査にて肝機能障害,脱水状態が強いことが示唆された.
    故に我々は入院期間の短縮や胆嚢穿孔などの重篤な合併症を避ける点から,早期手術が望ましいものと考える.特に高齢者に対してはpoor riskな症例が多く,可及的な救命手段として,局麻下でも可能な外胆嚢瘻造設術の有効性を強調した.
  • 臨床像と外科的治療を中心に
    下山 孝俊, 北里 精司, 南 寛行, 中越 亨, 高木 敏彦, 石川 喜久, 石井 俊世, 内田 雄三, 三浦 敏夫, 調 亟治, 辻 泰 ...
    1978 年 39 巻 5 号 p. 780-786
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    教室に於て1961年以降に43例の原発性肝癌を手術し,うち6例の肝癌自然破裂症例を経験したので,肝癌破裂の診断と外科的治療の問題点について自験例を中心に検討し,文献的考察を加えた.肝癌破裂6例の内訳は性別では男性5例,女性1例,年齢は36~66歳,平均48.5歳で成人の原発性肝癌の年齢分布と差はない.臨床症状は上腹部痛と腹部膨満感を初発とし, 2例が突発的な激烈な上腹部痛で来院した.貧血は全例にみられたが,来院時のショック症状は1例であつた.臨床検査所見では肝機能障害は全例に認め, 3例は肝癌の治療中に発症,他の3例は慢性肝炎または肝硬変の既往があり,診断上重要視すべきである.腹腔穿刺は3例に施行し腹腔内出血の診断を得た.術前診断は肝癌破裂4例,急性虫垂炎,急性腹症各1例である.腹腔内出血量は900~5,150cc,平均2,575cc.肝癌の肉眼的形態は多発結節型4例,うち3例が両葉に散在,塊状型2例(左葉中心1例,右葉孤立単発1例)である.出血巣は右葉3例,左葉3例で,いずれも表在性腫瘍からであつた.肝硬変と肝線維症の合併は全例に認めた.組織検索は2例に行なわれ,肝細胞癌で肝静脈,門脈内に腫瘍塞栓がみられた.外科的治療は待期的な肝右葉切除1例,姑息的左葉外側切除1例,タンポナーデによる止血のみ4例で,予後は右葉切除例が15カ月生存したほかは,全て肝不全で15日以内に死亡した.これら自験例の検討から本症は進行癌で肝硬変合併率が高いことから,術式の選択はまず肝動脈結紮を含めた一時的な止血法にとどめ,後日待期的な肝葉切除を考慮することを強調したい.このほか本稿では肝癌破裂の疫学的事頃,発生機序,診断,外科的治療などについて若干の考察を加えて言及した.
  • 小牧 文雄, 山川 達郎
    1978 年 39 巻 5 号 p. 787-793
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1978年5月までの過去4年1カ月間に, 79例の胆管遺残結石, 32例の肝内結石症を含む236例のT-tube挿入例に対して,計710回の術後胆管内視鏡検査法(Postoperative Choledochoscopy: POC)を施行し,この間,瘻孔穿孔を8例に,胆管穿孔,十二指腸瘻を各々1例に経験した.瘻孔穿孔例8例中4例が非遺残結石例で, routineのPOC時の遇発症であつたごとく,いずれもT-tube瘻孔に問題のあつたもので, 8例中6例が細小及び腹腔内弯曲瘻孔であつた他,右肝管にT-tubeが挿入されていたものやpenrose drainとT-tubeとの間に共通瘻孔を形成していたものであつた.瘻孔穿孔例8例中,レ線上多量の造影剤の漏出と腹腔内貯瘤が認められたものは3例で,うち1例で横隔膜下膿瘍に進展し,後に腹腔ドレナージが必要とされたが,他は全例抗生物質などによる保存的療法で軽快した.また胆管穿孔の1例は, POC時,三管合流部に巨大結石が嵌頓していたもので,結石による胆管の圧迫壊死をおこしていたため,結石摘出用鉗子の操作中に容易に胆管穿孔をきたしたものと考えられる.十二指腸瘻の形成は肝内結石症の1例にみられたまれな合併症で, T-tube瘻孔の途中より胆道fiberscopeが十二指腸first portionに挿入されるなど複雑な瘻孔形成が認められた.
    結局,合併症例で再開腹術を必要としたものは3例で,うち1例では前述のごとく腹腔ドレナージがなされた他,右肝管にT-tubeが挿入されていたものと胆管穿孔例では,結石摘出のための再手術が後日なされた.その他遺残結石症の1例で,著しい細小T-tube瘻孔のため胆道fiberscopeの挿入が不能で,再手術による結石摘出が必要であつた.
    その他のPOCによる合併症は,検査中の疼痛,嘔吐,出血,検査終了後の発熱,下痢などが主なものであつた.これらの合併症例を中心に, Burhenneらの非観血的結石摘出法と対比しながら検討し,直視下に行ない得る本法の有用性と問題点につき若干の考察を加えた.
  • 木南 義男, 浅野 健, 浅野 栄一, 宮崎 仁見, 山崎 英雄, 宮崎 逸夫
    1978 年 39 巻 5 号 p. 794-800
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    乳頭形成術は,主として胆石症に対する付加手術として,実施されているが,私共は1968年から1976年までの9年間に教室において行われた乳頭形成術51例の術後成績を検索し,本法の評価を試みた.症例の平均年齢は54.8歳で,男女比は1:1.1であつた.これら症例中,肝外胆管結石例が56.5%と最も多いが,同期間内の全胆石症手術例に対する本法施行頻度は10.8%であり,結石部位別では肝内,肝内外胆管結石例に対し66.7%, 64.7%と高率に行われている.本法の遺残結石排出率は53.8%で,全症例の手術死亡率は3.9%であつた.入院中および退院後とも肝内,肝内外胆管結石例は臨床所見の異常発現率が高く,良好な経過をとるとはいい難かつた.一方,結石数の増加に伴い異常所見発現率も高くなると推定されたが,結石少数例でも所見を有する症例が可成りあり注目された.乳頭形成術後, 4例が遺残結石で再手術されたが, 3例は本法施行時,肝内,肝内外胆管結石例であり,上部胆管の病変残存例(狭窄・拡張所見)であつた.一方,退院後に何ら異常所見を認めない18例(36%)は, 77.2%が肝外胆管結石例で, 88.9%が13個以下の結石数例であつた.なお,消息判明例は1~10年経過しているが,現在では13%に胆管炎,肝機能異常所見などをみている.
  • 押淵 英晃, 五十嵐 達紀, 村上 平, 金山 和子, 鈴木 博孝, 榊原 宣
    1978 年 39 巻 5 号 p. 801-806
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    消化器における重複癌の治療は容易でなく,また予後も不良である.そこでこれら重複消化器癌をretrospectiveに検討することにより,重複消化器癌全般にわたる治療成績のoutlineをつかもうとした.
    検索対象は昭和42年12月から昭和52年7月までにわれわれが経験した消化器に関する同時性重複癌45例,異時性重複癌18例,計63例である.これらについて原発臓器および治療法と予後との関係を検討した.
    同時性食道胃重複癌では両癌腫とも切除できたものはその他のものより予後が良かつた.しかし切除率は42.9%にすぎなかつた.
    同時性胃結腸重複癌でも両癌腫とも切除された場合の予後が良く,また切除率は71.4%と比較的良好であつた.
    その他の同時性重複癌では実質臓器癌あるいは食道癌を伴つたものの予後はきわめて不良であつた.
    異時性食道胃重複癌についてみると,食道癌先行例では二次癌である胃癌を部分切除した症例の予後が比較的良好であつた.胃癌先行例では二次癌である食道癌に対して手術的治療を施行した症例は化学療法あるいは放射線治療を施行した症例よりわずかながら予後が良かつた.
    その他の異時性重複癌ではやはり食道癌あるいは実質臓器癌を伴つた場合の予後はきわめて不良で,これらの早期発見の必要性が痛感される.
  • 山田 榮一, 佐藤 忠敏, 吉野 信二
    1978 年 39 巻 5 号 p. 807-812
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    肝・胆道・膵系を除く部位の重症感染症時に稀に黄疸を伴うことはすでに外国の文献で数多く報告がみられ,中でも新生児の尿路感染症時に多く,成人では比較的稀とされている.本邦ではこの面での認識が浅く,その報告は数例を散見するに過ぎない.
    著者らが経験した重症細菌感染症(丹毒)に黄疸を随伴した1症例は31歳の独身男性で左環指背側の挫創から感染し手背・前腕・上腕にかけて浮腫状に発赤・腫脹し,圧痛を伴い更に有痛性発赤は躯幹左半部にまで及ぶ広汎な丹毒で,著明な白血球増加(43,800)と核形左方推移を認め,いわゆる類白血病性反応を示し,肝機能は直接型ビリルビンの増加を伴う黄疸と軽度のAl-P, GOT, GPTの上昇を認めた.左環指挫創面からはStaphylococcus epidermidisとCloacaが検出されたが,血液培養は4回とも陰性であつた.入院後直ちに強力な化学療法と肝庇護療法および局所氷罨法などが行われたが,入院当初はその治療効果が現われず入院第2-3病日になると黄疸・白血球数増加は更に増強し,見当識消失・譫妄状態などの精神症状も現われて来たが,第5~6病日頃より徐々に自・他覚的所見は改善され,第7~10病日には肝機能・白血球数は正常となつた.胆道造影(DIC, ERCP)肝生検などの諸検査により本症例の黄疸は細菌のtoxic productにより急性肝内胆汁うっ滞症を起したものと結論した.そこで重症細菌感染症時に随伴する黄疸の発生機転ならびにVirus性肝炎・薬物性肝炎・肝外性閉塞性黄疸との鑑別診断について考察した.
  • 大島 昌, 川満 富裕, 長島 道夫, 石塚 慶次郎
    1978 年 39 巻 5 号 p. 813-818
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    29歳,男性, 5カ月前から腹痛,体重減少,微熱があつた.回盲部に鶏卵大の腫瘤を触れ, X線所見で回腸末端より盲腸にかけて内腔の狭窄像を認めた.術前診断は回盲部腫瘤(Crohn病の疑),手術所見から盲腸腫瘤と回腸終末部の浮腫, Creeping,腸間膜の肥厚と腸間膜リンパ節の腫脹を認め,回腸・盲腸Crohn病と診断した.右半結腸切除術を施行した.切除範囲は近位・遠位側腸管病変部から30cmの距離をおいて切除し,腸間膜リンパ節廓清を盲腸癌根治手術と同等に行なつた.剔出標本では腫瘤に一致する腸管壁の肥厚と敷石状の粘膜隆起,回腸粘膜には腸間膜附着側を縦走する線状潰瘍を認めた.病理組織学的所見では回腸筋層内および腸間膜リンパ節にサルコイド様肉芽腫を証明した.これらの所見はCrohn病の診断基準のうち2, 3, 4の条件を満す回腸・結腸(盲腸) Crohn病であると判断した.手術後2年を経過した現在,再発もなく正常勤務についているが,慎重な経過観察が今後も心要である.
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 819-829
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 829-840
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 840-848
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 848-857
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 857-871
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 871-880
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1977 年 39 巻 5 号 p. 880-884
    発行日: 1977年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 885-898
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
  • 1978 年 39 巻 5 号 p. 890-903
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
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