肝内結石の治療上大きな問題となる遺残結石を中心に,遠隔成績,肝機能に及ぼす影響を検討し,肝内結石症の治療について考察を加えた.対象は東京女子医科大学消化器病センターにおいて,過去10年間に行われた肝内結石症87例で,これを胆道狭窄の部位を基準とし, I型,肝内・外胆管に狭窄がなく胆管の拡張が軽度なもの12例,II型,乳頭部または下部胆管に狭窄があり,かつ胆管拡張が著しいもの40例, III型,肝内胆管に狭窄があるもの15例, IV型,肝内胆管枝(偏在性)に狭窄があるもの16例, V型,両側の肝内胆管枝に多発する狭窄を有するもの4例に分類し,術後遺残結石率,遠隔成績からみた結石除去の役割,結石遺残の影響について検討した.更に,結石遺残が肝機能からみて予後にどのような影響を与えるかを検討し,病型別に適切な術式の選択について再検討した.術直後の結石遺残率はI型25%, II型23%, III型53%, IV型50%, V型で100%である.術後6カ月の結石遺残率はI, II型では0%, III型では15%, IV型19%, V型は100%である.肝機能は,術直後結石完全除去例,術後3カ月以内結石除去例,術後6カ月以内結石除去例,術後6カ月以上経過結石非除去例の4群に分け検討した.肝機能の改善は結石除去の時期が早い程顕著であり,肝機能の面からも結石の遺残は好ましくないと言える.術式についてみると, I型に対しては,胆管外瘻術, II型, III型には,狭窄部の解放術と胆汁誘導付加手術, IV型には,胆汁誘導付加手術では不十分であり,術後胆道鏡の効果も少ない.このような症例には,病根を絶つ意味でも肝葉切除術を行なうべきものと考える. V型に対しては,いまだ定型的術式を持っていない.
抄録全体を表示