日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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41 巻, 3 号
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  • 1980 年 41 巻 3 号 p. 349-377
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1980 年 41 巻 3 号 p. 378-404
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1980 年 41 巻 3 号 p. 405-414
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1980 年 41 巻 3 号 p. 414-421
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • とくにH2-receptor拮抗剤の効果について
    富永 幹洋, 西田 茂, 武 豪, 柄谷 茂温, 水野 敏彦, 森田 建
    1980 年 41 巻 3 号 p. 422-427
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性上部消化管出血,とくにStress潰瘍やびらん性胃炎などを包括するacute gastric mucosal lesion (AGML)は,しばしば予後不良であり,治療方針の基準も確立されておらず,外科臨床の大きな問題である.教室では,さきに1977までの10年間の術後急性上部消化管出血についての統計的観察を行った.この時期の治療は,主として輸血,輸液などの全身管理と,緊急手術に頼っていた. 1977年より,胃酸中和療法と, Pharmacoangiographyとの局所療法を加え,慢性潰瘍の血管露出性の出血例以外は,できるだけ保存的治療を行うことを原則とし,治療成績の改善を図った. 1979年7月より,上記の方針にさらにH2-receptor antagonist (cimetidine)の点滴投与を加えて,その成績を検討してみた.
    この結果, 1977年までの輸血,輸液あるいは手術に頼っていた時期のAGML 19例中14例, 74%と高い死亡率を示していたのに対し,酸中和療法やPharmacoangiographyを加えた治療の群では, 13例中6例, 46%の死亡率となり,さらにcimetidineを加えた群では, 19例中4例, 21%の死亡率と改善した.
    以上の成績改善には,早期治療開始の影響もあろうが,急性上部消化管出血に対して,胃内の酸中和,酸分泌抑制, Pharmacaoangiographyなどの非手術的療法が,その治療方針として有効なものと考え報告した.
    なお,教室の統計では,腹膜炎,重症黄疸,あるいは重症肝障害例に,術後上部消化管出血併発の頻度が高いことが知られたので,かかる症例の術後には,酸中和,酸分泌抑制による予防的治療も検討中である.
  • 二期分割腹会陰式直腸切断術
    浦 伸三, 勝見 正治, 殿田 重彦, 森本 悟一, 庄司 宗弘, 家田 勝幸, 山口 敏朗, 広田 耕二, 松本 孝一, 今井 敏和, 竹 ...
    1980 年 41 巻 3 号 p. 428-433
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本邦における大腸癌,特に直腸癌の増加の著るしさは諸家の認めるところである.中でも高齢者直腸癌の占める割合が極めて大となって来ている.今回,私達の消化器外科教室開設以後,現在までの約8年間に経験した直腸癌症例172例の内, 70歳以上の所謂,高齢者直腸癌手術症例48例について検討を行なった.
    更に,病巣の部位,進行度からは,当然, Miles術式が適応されるべきだが,高齢者がゆえ,または,術前のRiskの悪さの為に人工肛門造設術のみに終っていた様な症例に対して, Miles術式を二期に分割する事により手術侵襲を少なくし,積極的に癌病巣を切除することに好成績を挙げているので報告する.即ち,初回手術で,腹側操作を完全に終了しておき, 2~3週間後,全身状態が,好転してから会陰側操作のみを行なう方法である.現在まで, 7例(平均年齢77.3歳)に施行したが,略々満足出来る結果を得ている.
  • とくに乳癌患者に対する治療と免疫能
    北村 正次, 冨永 健, 酒井 忠昭, 金子 甫, 林 和雄, 高橋 勇, 粟根 康行, 片柳 照雄, 伊藤 一二
    1980 年 41 巻 3 号 p. 434-442
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌患者132例,胃癌患者167例について免疫能の比較検討を行った.
    乳癌例において末梢血中リンパ球数をstage別に比較したが有意差はなく, stage IIと再発症例との間には有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage IIとIVとの間に有意差を認めた(p<0.05).
    PPD皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌ではstage I, IIおよび良性乳腺疾患とstage IVとの間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage IとIVとの間に有意差を認めた(p<0.05).
    PHA皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌では各stage間には差はなく, stage IIおよびIIIと再発乳癌患者との間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstage Iはstage IVに比較すると,反応は有意に強かった(p<0.05).
    DNCB皮膚反応をstage別に比較したところ,乳癌ではstage IVで陽性率が著明に低く, stage I, II, IIIおよび乳腺良性疾患との間に有意差を認めた(p<0.05).胃癌ではstageの進行とともに陽性率の低下傾向を示したが有意ではなかった.
    乳癌におけるImmunoglobulinをstage別に比較したが有意差を認めなかった.
    乳癌における末梢血中T細胞数およびリンパ球幼若化反応(SI)を健常人女性25例と乳癌34例を比較したところ, T細胞数では健常者が乳癌より有意に高く(p<0.01), SIの比較では有意差を認めなかった.
    術前および術後のT細胞数の変動をみると,術後2週目にはほとんどの症例が低下傾向を示したが有意な低下ではなく, S. I.では術後において有意な低下を示した(p<0.05).
    再発乳癌に対する化学療法および進行癌に対する術後補助化学療法施行時における免疫学的パラメータを検討したところ,免疫能の低下が認められたため,免疫賦活剤の併用が必要と考えられた.
  • 山下 忠義, 伊藤 信義
    1980 年 41 巻 3 号 p. 443-453
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    昭和48年8月から52年12月まで4年4カ月間に開腹術を施行した胃癌は389例で,そのうち切除例は373例であった(切除率95.9%).
    これらを胃癌取扱い規約第9版に従い,深達度およびリンパ節転移を組織学的に検討した進行度はstage I 82例, stage II 34例, stage III 122例, stage IV 135例で,非切除16例はすべてStage IVであった.切除した高度進行胃癌であるStage IVの理由についてP(+), H(+), sei(si), N(n4)(+)などいずれか単一因子によるもの82例, 2つ以上の複合因子53例であり,非切除例はすべて複合因子であった.高度進行胃癌に対する手術々式は胃切除73例,噴門側切除2例,胃全剔60例で,そのうち他臓器合併切除を45.2%に行ない,非切除例には胃腸吻合などであった.しかし,治癒切除は11例8.2%にすぎなく,非治癒切除のうち絶対非治癒切除が98例72.5%もみられた.切除例のうち9例が生存中で,最長生存5年1カ月であり,それらはP1 5例, H1 1例sei (si) 2例, P1 sei 1例である.
    生存例と直死5例を除いた死亡例の平均生存期間は絶対治癒切除20.0カ月,相対治癒切除9.0カ月,相対非治癒切除15.5カ月,絶対非治癒切除7.8カ月であったのに比べて,非切除例のそれは3カ月にすぎなく,最長生存でも5カ月であった.死亡例のうち2年以上生存例は6例みられ,それらはP1の相対非治癒切除3例, sei (si)の絶対治癒切除3例である.
    切除した135例のリンパ節転移について, 2年以上の生存例はすべて第2群n2(+)以下の転移で,第3群n3(+)以上の転移はすべて2年以内に死亡した.従って,高度進行胃癌であってもリンパ節転移n2(+)以下で, P1, H1, SEI (SI)因子例では手術適応を拡大して,現在生存中9例を含めて15例の2年以上生存例があったがn3(+)以上ではもはや長期生存は望めない.しかし,たとえその希望がなくとも非切除例に比べて延命効果があり,適切な補助療法を併用することにより高度進行胃癌であっても積極的な姿勢で対処することが望ましい.
  • 奥道 恒夫, 西亀 正之, 藤井 俊宏, 児玉 治, 黒田 義則, 児玉 求, 江崎 治夫
    1980 年 41 巻 3 号 p. 454-459
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    昭和45年1月より昭和54年7月までに教室で経験した自然気胸手術症例は50例であり,両側手術4例を含み,計54回の開胸手術を施行した.男女比は44:6と男性に多く,発生側は右側14例,左側23例,両側13例であった.年齢別頻度では20歳台にピークを認め,平均年齢は28歳であった.術前のX線にて16例(30%)に胸水を認め, 33例(61%)に嚢胞を認めた.
    手術適応に関しては,両側気胸(同時,異時) 13例(26%),同側再発22例(44%),肺再膨張不全7例(14%),明らかな嚢胞5例(10%),血胸2例(4%),膿胸1例(2%)であり,初回発作にて手術を施行したのは15例であった.開胸所見では, 54例中49例(91%)に嚢胞を認め, 2コ以上の多発性嚢胞例は34例(63%)であり,嚢胞の存在部位は,肺尖部のみが39例(72%)と最も多く次いで肺尖部+S6の6例(11%)であった.
    開胸方法は初期の25例は全て後側方開胸を施行したが,以後は,肺尖部にのみ病変を認める例には腋窩開胸,肺尖部以外にも病変を認める例や嚢胞不明例には後側方開胸を原則として施行した.手術術式は,嚢胞切除兼肺縫縮術48例(89%),肺縫縮術4例(7%),剥皮術兼胸廓成形術1例,肺葉切除1例であった.術後合併症では,初期の後側方開胸例の3例において一過性の肋間神経痛を認めたが,他の重大なる合併症は認めなかった.術後の肺機能では, 30症例中2例にのみ軽度の肺機能障害を認めた. 50症例に対し54回の開胸手術を施行し1例のみに再発を認め,再発率は1.8%であった.
    自然気胸の外科的療法は, (1) 入院期間が短期間ですむ, (2) 術後合併症が少ない. (3) 術後肺機能障害が少ない. (4) 再発率が低い等より自然気胸の根治療法として最良の方法である.
  • 藤田 秀春, 山口 明夫, 草島 義徳, 宮崎 逸夫, 中島 良明, 岡田 保典
    1980 年 41 巻 3 号 p. 460-464
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期食道癌の2例を経験したので報告した.症例1は53歳男子でImに位置する表在隆起型で,上皮内進展を伴っていた.郭清したリンパ節は49個で,転移を認めず,癌は高分化癌扁平上皮癌で深達度はsm, ly(-), v(-)であった.術後ブレオマイシン100mgとPSKの投与を行っている.
    症例2は63歳男性でEi上部に存在する潰瘍型の癌であった.境界部は正常粘膜におおわれ,あたかも,粘膜下に浸潤した腫瘍の表層が崩壊したような形で潰瘍が形成されていた.摘出リンパ節は18個で転移を認めず,組織学的には低分化型の扁平上皮癌で,深達度はsm, ly(-), v(-),であった.
  • 東海林 茂樹, 添野 武彦, 江口 季夫, 佐藤 真, 山口 俊晴, 高橋 俊雄
    1980 年 41 巻 3 号 p. 465-468
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    いわゆるspontaneous gastrojejunostomyは極めてまれで国内外を含め僅か11例を数えるにすぎず,殊に胃癌での報告はHornerの1例のみで本邦には報告例がない.我々は胃癌の進行に伴い胃空腸瘻を形成した手術症例を経験したので報告する.患者は61歳女性.昭和53年4月嘔気嘔吐あり,腹部腫瘤に気付き,同年7月14日入院.臍部に手拳大の腫瘤を触れる.表面凹凸不整,弾力硬,辺縁は不明瞭,移動性はなく,圧痛なし,胃透視では,まず胃体下部大弯側より空腸が造影され,ついで幽門部,十二指腸球部が造影された.胃ファイバースコープにても胃体下部大弯にBorrmann III型の癌があり,空腸に穿通しファイバーはこの孔を通じて容易に空腸に挿入し得た.この他,消化管の交通は認めない.昭和53年8月16日開腹術施行,癌は胃体部よりTreitzの10cm肛門側空腸に浸潤穿孔していた.胃亜全摘と,この穿通した空腸を前後5cm部分切除した.患者は手術時既に腹膜播種あり,一時軽快するも術後30病日鬼籍に入った.
    本症例の胃空腸瘻の成因に関しては内臓下垂症の胃体部前壁に発生した癌が,まず腹壁に浸潤癒着して発育したのち,大網空腸へ進展し横行結腸の前面を通り空腸へ浸潤癒着して穿通をきたしたものと考えられた.
  • 奥山 正治, 阿曽 弘一
    1980 年 41 巻 3 号 p. 469-475
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術は,今日まで数多く行なわれ,その手術術式や手術成績に関しても数多くの研究者によりしばしば報告されてきた.しかし,このような手術を行なう際,外科経験の浅い術者と長年経験を積んだ術者との間では,手術所要時間,輸血量,出血量,手術成績,術後退院までの期間,術後合併症,予後にどのような差がみられるかについて検討した報告は数少い.そこで著者は,これまで行なわれた16例の膵頭十二指腸切除術について,外科経験10年未満の術者によって行なわれた症例と外科経験10年以上の術者によって行なわれた症例との2群に分け,まず,症例のrisk factorとして,年齢,性差,手術適応,黄疸の有無,病悩期間,ビリルビン値,耐糖試験,既往の手術,腫瘍の大きさ,進行度について両群を比較した上で,上記項目について両群の差を検討した.その結果は当然ながら経験年数10年以上の群がすべての項目において1日の長がみられた.
  • 松本 高, 渡辺 晃, 村上 穆
    1980 年 41 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年鈍的腹部外傷による肝損傷は増加の傾向にあるが,我々は過去11年間に85例の鈍的腹部外傷を経験し,うち22例に肝損傷を認めた.受傷原因の77%は交通外傷であった.肝の単独損傷例は8例のみで他の14例は複数臓器の損傷を伴っていた.肝の損傷部位をみると,内側区域,前区域,後区域に多く認められ,外側区域の損傷は3例にみられた.
    施行術式は,単純肝縫合術11例, unroofing 4例,圧迫充填又は電気凝固止血3例,拡大右葉切除術1例,外側区域切除術1例,試験開腹術1例,その他3例である. 22例中,大量出血にて2例を失い,死亡率は約9%であった.
    肝破裂の手術は, (1) 確実な止血, (2) 肝壊死組織のdebridement, (3) 胆汁ドレナージ,の3点に要約されるが,高度の肝挫滅症例では,その止血に苦慮し術式の選択に迷うことが多い.我々も止むなく拡大肝右葉切除術を1例に施行したが,半年後に突然死亡した.いわゆるliver deathと考えられたが,良性疾患という観点からみれば,外傷に於ける肝葉切除術の適応について深く反省させられた症例であった.その後同様の症例を経験したが,二期手術を予定し, 3日後に再開腹を行い, unroofingとドレナージを施行したのみで,無事止血,救命し得た.貴重な症例であった.近事, deep central fractureの症例に対して,肝動脈結紮術(HAL)を行って止血を計り,その成功例も報告されているが,肝葉切除術を施行する前に考慮すべき術式と云えよう.われわれ自身の経験はないが,今後症例に応じて試みたいと考えている.
    以上鈍的肝外傷22例の自験例について,その概要を報告すると共に,手術法のポイントを述べ考察を加えた.
  • 副肝管並びに肝管合流異常について
    廣田 耕二, 勝見 正治, 浦 伸三, 青木 洋三, 殿田 重彦, 山口 敏朗, 尾野 光市, 宇都宮 晴久
    1980 年 41 巻 3 号 p. 482-486
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    私達は比較的めずらしい左右肝管分枝異常例・左副肝管例・右副肝管例の3例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例1は27歳女性で右季肋部痛を主訴として来院した.結膜に軽度黄疸あり,血液検査で,総ビリルビン・GOT・GPT・Al-pの上昇が認められ, ERCPにて左右肝管の分枝異常と胆石症が確認され,手術を施行した.左右肝管の低位合流がPars Pancreatica部まで認められ結石も存在したため,胆嚢摘出とT-tube挿入を行なった.
    症例2は29歳女性で,主訴は右季肋部痛であった.結膜黄染が認められ,総ビリルビン・GOT・GPT・Al-p・アミラーゼ等の高値が認められ, ERCPを施行したところ,左副肝管が認められた.他に結石像等異常がなかったため,保存的療法を行い症状は改善した.
    症例3は46歳男性で,心窩部痛を主訴とし来院した.肝機能は異常なく血中アミラーゼ843 Somogyi単位を示し急性膵炎の診断のもとに治療中であった.臨床症状改善後ERCPを施行したところ,右副肝管が認められた.膵尾部には軽度の膵管狭小化が存在し,膵炎によるものと判断した.
    これら胆道系の異常はめずらしいもので,特に左右肝管分枝異常と左副肝管の報告は数少ない.術前にこれらの異常を知っておくことは手術に際して大きな力となり,胆道系の損傷予防にも役立つものと考え, ERCPの重要性を痛感した.
  • 肝拡大右葉切除後肝管十二指腸吻合による再建例を中心に
    藤田 博正, 橋本 敏夫, 丸谷 巌, 片桐 誠, 高橋 任夫, 佐藤 正典, 大山 廉平, 島津 弘, 高野 真澄, 富田 濤児
    1980 年 41 巻 3 号 p. 487-494
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌に対し,肝拡大右葉切除を行ない,左肝管十二指腸吻合により再建し, 1年6カ月後健在である症例を報告するとともに,自験例14例の臨床像を検討し,幾つかの問題点をとりあげ,文献的考察を加えた.
    保存的治療では長期生存は期待できず,試験開腹(3例)では平均1.3カ月,減黄術のみ(10例)では平均6.9カ月で全例死亡している.ただし,ループ式胆管外瘻と放射線治療の組み合わせで1年生存例が3例あり,保存的治療の中では比較的良い方法であろうと考えている.一方,根治的切除は自験例でも,文献的にも予後良好である.
    自験例を進行度別に分類すると,肝切除や血行再建が理想的に行なわれれば切除可能と考えられる症例が半数以上(14例中9例)であった.従って,安全な術式の完成とともに, PTCDやSoupault drainageなどの減黄術を含めた術前管理が肝要であろう.
    胆管切除後の胆道再建法はRoux-Y式肝管空腸吻合が常識的であるが,われわれは肝管十二指腸吻合を試み何ら不都合をみなかった.しかし,上行感染の問題もあり,長期の経過観察が必要である.
  • Silicone rubber T-tubeの危険性について
    佐々木 政一, 柿原 美千秋, 橋本 忠明, 青木 洋三, 勝見 正治
    1980 年 41 巻 3 号 p. 495-500
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    総胆管切開後のT-tube drainageは,胆管内減圧,感染胆汁の除去および洗浄,胆管のsplinting,胆石溶解剤の注入,遺残結石の摘出など,その利用価値は高い.一方胆道感染,胆管狭窄,抜去後の胆汁性腹膜炎など,合併症も少なからずみられ,なおいくつかの問題を残している.
    我々は最近,周囲の組織反応が弱いとされているsilicone rubber T-tube抜去の際に,瘻孔形成不完全に起因すると思われる胆汁性腹膜炎を3例経験した.
    Silicone rubberは従来のlatex rubberと比べ,そのすぐれた無刺激性,無反応性により,癒着障害,胆管壁刺激などのやっかいな合併症は避けられるが,瘻孔形成に時間を要し,短期間で抜去すると,瘻孔形成不完全に起因する胆汁性腹膜炎を惹起する危険性をはらんでいる.
    よって,悪性腫瘍の際のintubation,肝内遺残結石の洗浄などの長期間留置を必要とする場合を除いて,術後の一時的な減圧を目的とする短期間のT-tube drainageには,瘻孔形成に時間を要するsilicone rubberは避けるべきで, latex rubberを使用することを勧めたい.
  • 大島 行彦, 山尾 哲彦, 榊原 譲, 大場 正己
    1980 年 41 巻 3 号 p. 501-505
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは,癌性腹膜炎による難治性腹水の患者12名に対し,旭メディカル製Hollow Fiber (AHF-MA及びAHF-UN)を用い, 20回の腹水濾過濃縮再静注(以下腹水透析と略す)を施行し,良好な成績を得た.腹水透析により腹囲の減少,尿量の増加,腹満感の軽減,経口摂取量の増加などの自他覚症状の改善を認めた. AHF-MAは癌細胞,細菌など細胞成分を完全に除去し,蛋白は全量通過した.これは腹水用濾過膜として優れた特性である.しかし発熱物質は通過した. AHF-UNは蛋白などを濃縮し,水,電解質,アンモニア,尿素窒素,クレアチニンなどを同じ割合で限外濾過した.これは腹水用濃縮膜として優れた特性である.しかしビリルビン, GOT GPTなども濃縮した.われわれは平均約3,000mlの腹水を,約2分の1に濃縮した.これらの治療前後の電解質,アンモニア,ビリルビン, GOT, GPTなどの血清値に有意の差は認められなかった.以上より,これらの組み合わせによる腹水透析は,癌性腹膜炎による難治性腹水の治療法として有用な方法であると考える.しかし発熱物質,ビリルビンなどの濃縮再静注に関しては,今後の問題であろう.
  • 柴田 信博, 酒井 英雄, 野口 貞夫, 大島 進, 水嶋 肇, 相川 隆夫, 松浦 成昭, 芝 英一, 竹村 久康, 斉藤 憲男
    1980 年 41 巻 3 号 p. 506-510
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    広範な転移をきたした汗腺癌の1例を報告する.症例は15歳の男性で,主訴は右腋窩部の有痛性腫瘤である.試験切除を行い,未分化型の汗腺癌と診断した.術前放射線療法及び化学療法を行い,腫瘤縮小後,主腫瘤を含む広範囲切除と所属リンパ節郭清を行った.しかし術後早期に再発し,広範な血行転移をきたして死亡した.
    汗腺癌は症例数が少なく,組織学的にも問題のある疾患である.また汗腺癌転移症例の報告も非常に少ないため,予後についても一定の見解が得られていない.本論文では我々の症例について組織学的検討を加えると共に,予後や治療方針についての若干の文献的考察を加えた.
  • 小山 省三, 小口 国弘
    1980 年 41 巻 3 号 p. 511-516
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ホルマリンによる腐蝕性胃炎は極めてまれであるが,養蚕用消毒液としてのホルマリンを誤飲した2例を経験した.
    症例1は67歳の男性で,誤飲後一時的にショック状態を呈したが,ショック状態より離脱後,第17病日の胃X線検査では小弯の短縮,浮腫,胃粘膜の不整,乱れ,不整形のバリウム斑,さらにトライッツ靱帯近くの十二指腸と空腸の拡張低下部を認めた.さらに第31病日には幽門狭窄症状が出現し,胃X線検査では胃壁の拡張は悪く,ノウ胞状の形態を示しさらに胃内視鏡検査では,発赤,出血,浮腫,ところどころに白苔さらに著明な凹凸と多彩な所見を呈し幽門狭窄が高度のため,胃亜全摘術と胃空腸吻合術を施行した.
    症例2は66歳の男性で,誤飲後12時間目に胃内視鏡検査を施行された.胃内腔全体が,凝固壊死に陥つた白苔で被われており,この白苔はわずかな刺激ではがれ,その白苔下には広汎な浮腫と充血を認めたが,誤飲後2週間目には軽度の浮腫を残すのみであつた.
    このようなホルマリンによる腐蝕性胃炎は,本報告例では清酒との誤飲で発症しており,ホルマリンの保管管理を充実する必要がある.さらにホルマリン誤飲例に対しては,急性期のショック状態に対する処置と同時に蛋白等による中和剤での胃洗浄を十分施行する必要があり,さらに長期観察中にホルマリンによる蛋白凝固作用で幽門狭窄の発生した場合や胃粘膜欠損による低蛋白血症が生じる様な際には,積極的な外科的処置が必要であり,やむなく残胃に病変が残存するような場合にも,病変を有する残胃と正常な空腸との間に,十分良好な創傷治癒が期待できると思われる.
  • 高場 利博, 石井 瑞弥, 堀 豪一, 山城 元敏, 稲生 紀夫
    1980 年 41 巻 3 号 p. 517-523
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本邦においても慢性下肢動脈閉塞症に対する外科手術例が増加しているが,この血行再建術後には種々の合併症もみられている.術中のリンパ管損傷による術後リンパ瘻はほとんどの例では重大な合併症とはならず,数週間で治癒するが,リンパ管損傷の程度が大きかったり,また混合感染を合併してくると難治性となり長期の入院を余儀なくされる.
    教室では最近4年間に5例を経験し, 4例は短期間に治癒したが, 1例は難治性で長期の入院を要した.
    下肢血行再建術に際し,リンパ管の損傷は解剖学的なリンパ管の走行からある程度は止むをえないことであるが,これまで本症の報告はあまりみられない.これはリンパ管の再生が早いことと,大きな合併症に発展する例が少ないために看過される例が多いものと考えられる.
    しかし自験例のごとく難治性となる症例もあり,術中操作でできるだけリンパ管の損傷を避けるように努めることが大切である.また一旦発生すれば下肢へのリンパ流量を減少させるように安静,患肢の挙上,弾性ストッキングの着用などの内科的治療と早期に発見して漏れのあるリンパ管の結紮を行う外科治療とがあるが,いずれにしても混合感染の予防のための抗生剤投与を忘れてはならない.
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