昭和48年8月から52年12月まで4年4カ月間に開腹術を施行した胃癌は389例で,そのうち切除例は373例であった(切除率95.9%).
これらを胃癌取扱い規約第9版に従い,深達度およびリンパ節転移を組織学的に検討した進行度はstage I 82例, stage II 34例, stage III 122例, stage IV 135例で,非切除16例はすべてStage IVであった.切除した高度進行胃癌であるStage IVの理由についてP
(+), H
(+), sei(si), N(n
4)
(+)などいずれか単一因子によるもの82例, 2つ以上の複合因子53例であり,非切除例はすべて複合因子であった.高度進行胃癌に対する手術々式は胃切除73例,噴門側切除2例,胃全剔60例で,そのうち他臓器合併切除を45.2%に行ない,非切除例には胃腸吻合などであった.しかし,治癒切除は11例8.2%にすぎなく,非治癒切除のうち絶対非治癒切除が98例72.5%もみられた.切除例のうち9例が生存中で,最長生存5年1カ月であり,それらはP
1 5例, H
1 1例sei (si) 2例, P
1 sei 1例である.
生存例と直死5例を除いた死亡例の平均生存期間は絶対治癒切除20.0カ月,相対治癒切除9.0カ月,相対非治癒切除15.5カ月,絶対非治癒切除7.8カ月であったのに比べて,非切除例のそれは3カ月にすぎなく,最長生存でも5カ月であった.死亡例のうち2年以上生存例は6例みられ,それらはP
1の相対非治癒切除3例, sei (si)の絶対治癒切除3例である.
切除した135例のリンパ節転移について, 2年以上の生存例はすべて第2群n
2(+)以下の転移で,第3群n
3(+)以上の転移はすべて2年以内に死亡した.従って,高度進行胃癌であってもリンパ節転移n
2(+)以下で, P
1, H
1, SEI (SI)因子例では手術適応を拡大して,現在生存中9例を含めて15例の2年以上生存例があったがn
3(+)以上ではもはや長期生存は望めない.しかし,たとえその希望がなくとも非切除例に比べて延命効果があり,適切な補助療法を併用することにより高度進行胃癌であっても積極的な姿勢で対処することが望ましい.
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