日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
42 巻, 7 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 渡辺 公男
    1981 年 42 巻 7 号 p. 737-752
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃や膵,小腸などの消化管手術々後に発生する消化吸収障害について, PFD試験, PABA試験, D-Xylose試験, 131I-Triolein試験等を用いて臨床的に検討を行なった.
    PFD試験は経口膵外分泌機能検査とされているが,その代謝過程から膵以外の臓器機能の影響を受けることが予想される.
    著者はPFD試験のこうした欠点を考慮に入れ,術後膵外分泌機能の正確な検索方法を検討した.
    その結果, PFD値は腸管の吸収機能を表わすD-Xylose値と密接な関係があり,しかも,両者の関係から腸管吸収機能の影響を除外した膵外分泌障害の程度を数量的に算定することが可能であることが判明した.すなわち,この算定値をP-S試験と対比すると,PFD値よりも正確に膵外分泌障害を表わすことが確認されたので,著者はこれを膵性消化障害率(Pancreatic maldigestive ratio: PMDR)と呼称した.また, PMDRを131I-Triolein試験やD-Xylose試験と併用して各種術後消化吸収障害の検討を行なった結果,これらの組合わせによって,各手術群の消化吸収障害の特徴が良く表わされ,その病態の把握や発現機序の簡単な鑑別が可能であった.
  • 2. エジンバラ方式の紹介
    杉浦 和朗, 村岡 潔
    1981 年 42 巻 7 号 p. 753-758
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    意識混濁の評価法としては多くの方法が提唱されているが,それを実施臨床上に使用することの妥当性につき,科学的実証の与えられたものはほとんどない. Glasgow Coma Scaleでは若干の検討がなされているが,今後解決せねばならない問題点も多数抱含されている.
    筆者は,この種の評価法の有するべき条件を考察し,現時点でこれらの条件に最も近いものとしてE1およびE2 Coma Scaleを紹介した.後者は理論的にも前者に優るものと思われる.頭部外傷患者の急性期管理に際しては,極めて有力なパラメーターとなり得よう.
  • 古川 信, 小坂 進, 田中 庸雄, 水上 哲秀, 稲田 章夫, 櫛引 健
    1981 年 42 巻 7 号 p. 759-764
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    根治術不能大腸癌に対し.腫瘍の減量を図るReduction Surgeryの意義と条件を知る目的で,教室の大腸癌症例163例中, 44例の非治癒手術例の解析を行った.
    非治癒手術例は,右側結腸36.6%,左側結腸23.1%,直腸25.3%にみられ,やや右側結腸に高率であった.根治術不能の原因としては,腹膜播種24例,広範囲浸潤21例,肝転移16例であり,遠隔転移,リンパ節転移によることは少なかった.非治癒因子が複合するもの25例,単一のもの19例であった.
    それらの平均生存期間をみると複合群8.5か月,単一群11.5か月であったが,推計学上の差はなかった.治療別によると,切除群11.0か月,電気凝固群13.5か月,非切除群4.5か月で, Reduction Surgeryの意義がみとめられた(p<0.01). しかし,治療と因子との組合せでみると,平均生存期間は,単一因子切除群16,7か月,複合因子切除群8.5か月,単一因子非切除群5か月,複合因子非切除群3.6か月となり,複合因子切除群と非切除群の間には有意の差がなく, Reduction Surgeryは単一因子の時に意義が大きいと結論した.特に,非治癒因子として腹膜因子をもつ時には,他にも複合して非治癒因子を有し, Reduction surgeryの意義は少なく,肝因子と複合する時には全く意味がなかった.
    電気凝固群は,それらに比し有意に生存期間の延長をみ, poor risk例に今後,多く用いるべきと結論した.
  • 具 栄作, 川村 展弘, 和気 一夫, 砂川 正勝
    1981 年 42 巻 7 号 p. 765-771
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Zollinger-Ellison症候群の一例を報告する.患者:68歳男性.主訴:心窩部痛.胃レ線像,胃内視鏡所見よりZollinger-Ellison症候群(以下本症)を疑った.空腹時血清ガストリン値は738.8pg/mlであった.開腹時所見では膵尾部に7×7×3cmの白色結節状の腫瘤があり, 巨大な十二指腸潰瘍は膵頭部に穿通していた.膵尾・脾合併切除,胃全摘,食道空腸Roux-en-Y吻合術を行った.膵周囲リンパ節,肝には転移はみられなかった.組織学的には膵腫瘍はNon-β islet cell tumorであった.胃は皺襞が肥大し各所にびらんがあった.
    術後順調に経過したが術後3か月頃より肝への転移がみられる様になり, 4か月目の血清ガストリン値は18700.0pg/mlであった.以後肝転移は急速に増大,肺転移も併発し術後9か月で腫瘍死した.死亡11日前の血清ガストリン値は81252.0pg/mlであった.剖検所見では肝・肺への著しい転移を認め,転移腫瘍中のガストリンは肝4.4±1.8×105pq/g,肺1.09±0.49×106pq/gであった.
    本症に対する胃全摘の抗腫瘍効果は文献的には多見されるが,本症例では全くみとめられなかった.
  • 宮永 忠彦, 入交 信廣, 平山 廉三, 江石 義信, 青木 望
    1981 年 42 巻 7 号 p. 772-780
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    性器外絨毛上皮腫,特に胃原発は極めて稀れで,内外の文献を通じて今日迄35例である.著者は1症例を経験したので報告し,文献的考察を加えた.
    症例, 60歳男性,幽門前庭部小弯を中心にしたボルマン3型の胃癌の診断で入院.両側女性乳房をみ,睾丸は正常.高度の貧血があった.手術を行い肝に暗赤色多発性の転移巣をみ原発巣は一部膵臓に浸潤し非治癒切除に終った. AM周S3 P0 H2 N3であった.組織学的には腫瘍辺縁の一部から分化型腺癌が,中心部には絨毛上皮腫があり一部に両者の移行を認めた.術後のホルモン検査でFriedman反応陽性,血清,尿中のHCG値の上昇をみ妊娠反応陽性であった. methotrexate, actinomycin Dを使用したが効果なく術後80日目に悪液質で死亡した.剖検は出来なかった.
    本症の診断を下すには組織学的に胃に絨毛上皮腫が存在し,且つ剖検により性器および性器外に原発を認めず,生物学的にHCGが陽性であることが必要である.今日迄35例のうち本邦例は11例である,本例を加えた36例についてみると,男23例,女13例で40歳代に最も多く平均54歳である.発生部位は幽門前庭部が半数以上で,腺癌と絨毛上皮腫の併存するものが54%,絨毛上皮腫のみ23%で, 77%に絨毛上皮腫の組織像をみたが残り23%は腺癌のみであった.剖検によって他の部位に原発巣のないことが確認されるものは36例中24例67%で,妊娠反応検査を施行しているものは17例47%で,内1例は陰性であった.即ち厳密な定義での本症は13例で報告例の36%である,遠隔転移部位は全例に肝転移をみ次いでリンパ節転移83%,肺転移71%であった.本症の特徴は血行を介して肝・肺に転移し原発巣のみならず転移部位から出血を来すことである.時に出血が死因となる.本症の組織発生に関しては癌細胞の逆分化retrodifferentiationが有力である.
  • 松谷 恵一, 深井 泰俊, 白鳥 常男
    1981 年 42 巻 7 号 p. 781-786
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    著者らは最近,大量の上部消化管出血を招来し緊急手術を施行した胃癌症例が,術後組織学的検索にてpoorly differentiated lymphocytic lymphosarcomaと判明した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は45歳男性で,主訴は吐血であった.患者は糖尿病のため本院第三内科に入院中であったが,その時施行された上部消化管透視,胃内視鏡検査の結果,胃癌と診断され当科に紹介された.腫瘍占居部位は穹窿部後壁でありボールマンIII型の進行胃癌と診断された.生検による組織学的診断はcarcinoma simplexであった.入院後6日目に大量の吐血があったため緊急手術を施行した.手術方法は胃全摘・膵脾合併切除・肝部分切除を施行し,再建方法としては食道空腸Roux en-Y吻合を行った.腫瘍の浸潤が左横隔膜に強固であったため,胃壁の一部を左横隔膜へ付着残存させたまま手術を終了した.術後4日目,左横隔膜に残存した腫瘍の壊死に起因した汎発性腹膜炎症状が出現したために救急的に開腹ドレナージ手術を施行したが,再手術後12時間目に死亡した.摘出腫瘍の組織学的検索では多数の異型性の強いリンパ球様細胞が認められpoorly differentiated lymphocytic lymphosarcomaと診断された.
    悪性リンパ腫の術前診断は上部消化管X線検査,内視鏡或いは生検などを駆使しても困難なことが多く,しばしば胃癌と診断される.とりわけ生検によっても診断の困難な理由としては,生検組織片では粘液産生の弱い未分化癌が悪性リンパ腫に良く似た組織像を呈するからである.この場合PAS染色を行えば未分化癌では細胞質にPAS陽性の粘液を証明できるので鑑別が可能となる.
    本症の治療法は言うまでもなく早期発見,早期外科的治療であり,その予後判定には組織型よりも進行度が重要視されている.
  • 安藤 久實, 伊藤 喬広, 長屋 昌宏, 杉藤 徹志, 山田 昂, 飯尾 賢二, 弥政 洋太郎, 久野 邦義
    1981 年 42 巻 7 号 p. 787-795
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    先天性結腸閉鎖症の1例を経験した.嘔吐,腹部膨満を来した生後2日目の女児で,腹部単純レ線写真では,ニボーを伴い体位変換によって位置を変える大きなガス像がみられ,注腸造影ではunused microcolonの像とHook signがみられた.これらの所見より,先天性結腸閉鎖症と診断し開腹したところ,上行結腸のLouw III型閉鎖であり,閉塞部断端を用いて人工肛門を造設した.生後4カ月目に上行結腸と横行結腸を吻合した.術後経過は良好であった.
    先天性結腸閉鎖症の本邦報告例は, 1940年以来43例の報告をみる.上行結腸が最も多く,約8割は右側結腸であった,診断はもっぱらレントゲン写真によって行われるが,腹部単純レ線写真での体位変換によって移動する巨大なガス像と,注腸造影でのunused microcolonとなっている結腸閉塞部断端カギ状に曲がるHook signなどが特徴として挙げられる.
    手術々式としては,安全性および術後の体重増加の面より,初回手術は人工肛門造設術のみを行い,患児の一般状態の改善を計ると共に,拡張部腸管の機能回復を待ち,しかる後に回盲弁を温存させた結腸結腸吻合術を行う,という二期的手術が良いと考える.
  • 公平 不二雄, 山川 達郎
    1981 年 42 巻 7 号 p. 796-799
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸管ベーチェットによる穿孔性汎発性腹膜炎に対し,腸管の腹腔外昿置術を施行し, 2期的に治癒せしめえた症例を経験し,その経過の概要を報告するとともに,本症の治療に関し, 1考察を加えた.
    症例は50歳男性, 4年前,腸管ベーチェットに罹患し, 多発性小腸潰瘍の診断のもとに結腸右半切除術をうけている.今回は腹痛を主訴として入院し,吻合部に再発した潰瘍の穿孔による汎発性腹膜炎の診断のもとに緊急手術がおこなわれた.多発性潰瘍穿孔部を含めて腸管の腹腔外昿置術を施行し,腹膜炎症状の消腿と腸管ベーチェットの寛解を待って,昿置腸管切除ならびに腸管吻合術を行った.術後,創傷〓開をみたが2期手術後80日目に無事退院した.
  • 中神 一人, 二村 雄次, 前田 正司, 神谷 順一, 横井 俊平, 安井 健三, 宮田 完志, 犬飼 偉経, 向山 憲男, 松田 真佐男, ...
    1981 年 42 巻 7 号 p. 800-805
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸原発の悪性腫瘍は比較的まれな疾患であり,特異的な症状のないこと,解剖学的な制約から検査が困難なこと,また諸家の認識の乏しいことなどの理由により,従来より術前診断の困難な予後下良な疾患とされてきた.
    癌腫ではその病理学的特性から狭窄ないしは閉塞をきたしやすく,比較的早期に臨床症状を呈することが多いが,肉腫ことに平滑筋肉腫ではほとんどが腫瘤型の発育を示すため経過が潜行性であり,臨床症状をきたしにくく,従って腫瘍の壊死による消化管出血や腸重積あるいは腫瘍が高度に発育し腹部腫瘤を呈するようになってはじめて来院するような症例が殆んどである.しかも上述のような理由により術前適確に診断される症例は極めてまれであった.
    しかし近年小腸造影検査,血管造影検査,あるいは内視鏡検査などの進歩とともに諸家の小腸疾患に対する関心の高まりなどにより適確に術前診断のなされた症例の報告例も増加してきた.
    私共も最近54歳 男子で左上腹部腫瘤を主訴とし,某病院で上部消化管造影, CT,超音波検査等で膵の嚢胞性腫瘍と診断された症例に対して当院にて選択的血管造影および小腸二重造影検査を施行し,ことに血管造影検査所見から術前に空腸平滑筋肉腫と診断し得た症例を経験したので,その概要とともに,主に診断を中心として若千の文献的考察を加え報告する.
  • 伝野 隆一, 戸塚 守夫, 早坂 滉, 中島 芳雄, 木村 弘通, 藤田 昌宏, 下田 晶久
    1981 年 42 巻 7 号 p. 806-811
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    組織球由来の増殖性病変は組織球腫として総括されるが,ほとんどが表在性のものである.最近われわれは,後腹膜に発生した線維性組織球腫の症例を経験したので報告する.
    症例は, 59歳,男性で下腹部腫瘤に気づき受診,腸管粘膜下腫瘤を疑い左結腸半切除術を施行した.腫瘍は4×2×4cmの卵円形,割面では結腸壁筋層と腫瘍塊との境界不鮮明であった.組織学的には線維芽細胞,紡錘形の腫瘍細胞,泡沫細胞が散見されたが異型性は少ない.腫瘍は結腸壁へ浸潤性に発育していた.
    本邦ではこれまでに17例の後腹膜に発生した線維性組織球腫が報告されている.これらに関して主に臨床面から比較検討した.
    本腫瘍は比較的悪性度が高いため,積極的に切除郭清を行うことによって根治性を高めることができると思われる.
  • 村山 英樹, 松峯 敬夫, 高見 実, 若林 邦夫, 松田 道生
    1981 年 42 巻 7 号 p. 812-817
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    主要な生理的凝固阻害因子であるアンチトロンビン-III (AT-III)の低下症である先天性低AT-III血症(以下本症と略す)は再発性静脈血栓症を主症状とする疾患で,今までに本邦で5家系の報告がなされている.我々は上腸間膜静脈血栓症の術後に本症と診断した1例を経験したのでこれを報告し,若干の文献的考察を行った.
    症例は34歳の男子,腹痛を主訴として来院し,翌日手術により上腸間膜静脈血栓症と診断し,空腸部分切除術を行った.術後の凝血学的検査によりAT-IIIが低下していることが判明し,検査しえた家族の4人中3人のAT-IIIも低下していることにより先天性低AT-III血症と診断した.術後1週間はヘパリン,その後はワーファリンによる抗凝固療法を行い,術後10か月の現在血栓症の再発は認めていない.
  • 上原 伸一, 冨田 隆, 小倉 嘉文, 川原田 嘉文
    1981 年 42 巻 7 号 p. 818-824
    発行日: 1981/11/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近4年間に三重大学第1外科で手術を施行した良性胆道疾患240例中いわゆるConfluence Stoneの2症例(0.83%)を経験したので報告した.症例1: 62歳男性,主訴:黄疸, PTCで三管合流部に完全閉塞を認め,総胆管結石の診断でPTC-Dにて減黄の後,開腹.胆嚢頚部から総肝管へ穿破したConfluence Stoneを認めた.症例2: 59歳男性,主訴:全身倦怠と食欲不振. PTCで総肝管は右方より圧迫されており, Mirizzi症候群又はConfluence Stoneを疑い手術施行.胆嚢と総肝管は約3cmにわたり交通しており,この部にConfluence Stoneを認めた.症例1に対しては胆嚢摘除とT-tubeドレナージを,症例2では胆嚢とともに炎症性肥厚を示した右主肝管の一部を含めて総肝管を切除し,肝側断端と空腸とを吻合し良好な結果を得た.
feedback
Top