日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
42 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 1981 年 42 巻 4 号 p. 341-350
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1981 年 42 巻 4 号 p. 351-358
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1981 年 42 巻 4 号 p. 359-370
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1981 年 42 巻 4 号 p. 371-379
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 減酸率と術後障害について
    三島 秀雄, 近藤 孝, 大沢 祐三, 谷口 勝俊, 岡村 貞夫, 河野 暢之, 勝見 正治
    1981 年 42 巻 4 号 p. 380-387
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当教室で過去7年間に経験した胃・十二指腸潰瘍手術症例は370例(胃潰瘍215例,十二指腸潰瘍113例,併存潰瘍42例)である.手術術式は分節胃体部切除兼迷走神経切離±幽門形成術(分節胃切兼迷切±幽成) 15例,広範囲胃切除術(広範胃切) 92例,幽門洞切除術(幽切) 143例,選択的迷走神経切離兼幽門洞切除術(選迷切兼幽切) 83例,選択的近位迷走神経切離±幽門形成術(選近迷切±幽成) 30例,その他7例である.これらの症例に対し減酸効果の検討や術後アンケート調査(回答率81.6%)を行ない,潰瘍再発の有無並びに術後障害について遠隔成績の評価を試みた.
    術後障害は選近迷切±幽成,幽切,選迷切兼幽切,広範胃切,分節胃切兼迷切±幽成の順に良好であった.再発は選近迷切±幽成に4例,広範胃切に1例,選迷切兼幽切に1例認めた.減酸率は選迷切兼幽切92%,広範胃切77%,幽切61%,選近迷切±幽成51%,分節胃切兼迷切±幽成27%で,特に選近迷切±幽成では術後MAOは4.8mEq/hrと他の術式より高値を示した.以上の結果と潰瘍存在部位による各術式の評価から, 1) 正低酸の胃潰瘍(132例)に対しては幽切で充分な減酸効果が得られ,胃切後障害は広範胃切に比較して少ない. 2) 高位潰瘍に対する分節胃切兼選迷切兼幽成(13例)は術後障害が多く,これは幽成付加のためと思われた.一方分節胃切兼選近迷切(2例)の術後成績は良好であった. 3) 十二指腸潰瘍に対する選迷切兼幽切(49例)の術後成績は概して良好であるが,胃潰瘍(18例)又は併存潰瘍(16例)に施行した場合は術後障害の面で劣っていた.これは前者に比し胃切除量の多い事が原因と思われた. 4) 十二指腸潰瘍に対する選近迷切±幽成(30例)は各術式中最も術後障害が少ないが,減酸効果の面でやや不充分であり特に幽成付加症例(15例)では潰瘍再発が20%と高率であった. 5) 併存潰瘍は胃潰瘍と比較して再発率が高く幽切を行なう場合は迷切を併用する必要があると考えられた.
  • 三輪 恕昭, 小野 二三雄, 小林 努, 岡 哲秀, 守山 稔, 橋本 修, 井上 徹, 湊 宏司, 小島 啓明, 鶴身 孝文, 中村 憲治 ...
    1981 年 42 巻 4 号 p. 388-393
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    岡大第一外科に入院し手術を受けた大腸癌患者131例を対象とした.うち46例をLevamisole(LMS)群, 85例を対照群とし, LMS群にはLMSを150mg/日,連続3日間投与,後11日休薬のスケジュール(3投11休)で可能な限り長期に亘って投与した.併用化学療法としてmitomycin C, FT 207のMF療法を用いた.
    大腸癌の生存率を対照群, LMS群でみると, Stage I~IVでは両群間に差はなかったが, Stage VではLMS群で高く,術後2年の生存率は各11.8%, 25.0%となった.
    LMSの免疫学的パラメーターに与える効果についてみると, LMSは末梢血リンパ球の幼若化率, T cell百分率を上昇させたが, PPD皮膚反応, PHA皮膚反応には影響を与えなかった.
  • 小池 綏男, 菅谷 昭, 金子 源吾, 安達 互, 中藤 晴義
    1981 年 42 巻 4 号 p. 394-398
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去27年間に初回手術を施行した同時両側性乳癌2例を含む358例(消息判明率100%)の女性乳癌症例中の癌死例78例をI群(5年未満の死亡例), II群(5年以上10年未満の死亡例), III群(10年以後の死亡例)に分けて, I群は全乳癌例(358例)と, II群は術後 5年以上経過例(240例), III群は10年以上経過例(172例)と対比して死亡率の面から検討した.その結果,若年齢層では早期に再発死亡し,高年齢層では再発前に他疾患で死亡することが多いこと,腫瘤が大きくなるにつれ,また病期が進行するにつれて早期の死亡率が高くなる傾向がみられたが, 10年以上経過すると死亡率との間にはほとんど差がみられなくなったこと, n0は5年以上, n1は10年以上経過すると死亡率が減少するが, n2, n3では5年未満の死亡率がかなり高いが, 10年以上経過してもなお死亡の危険性が高いことなどが判明した.さらに,乳頭腺管癌の中には発育の遅いものがあり,硬癌の中には発育の早いものが多く,これらが予後に関係していると推則された.
    これらの結果は今後,乳癌患者の術後管理上参考にすべき資料となると考える.
  • 奥山 和明, 陳 文夫, 永田 松夫, 高橋 敏信, 竜 崇正, 林 良輔, 田 紀克
    1981 年 42 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は異時性多発胃癌と定義するための条件として, 1) 第2の癌の発育中心が第1の癌の切離縫合線と一致せず充分な距離があること. 2) 第1の癌に脈管内浸潤を認めないこと. 3) 第1の癌切除時に第2の癌発生部位に異常を認めないこと. 4) 肉眼型で第1の癌が限局型であり切離線までの距離が充分あり,かつ第2の癌と肉眼型が異なっていること. 5) 第1と第2の癌の組織型が異なること. 6) 第1と第2の癌の手術間隔が充分離れていること.の6つの条件のうち少なくとも5条件は満足するものとすると自験例3例のうち症例1 (58歳男性)は上述の条件のうち2)の条件を満たしていないが第1と第2の癌の肉眼型および組織型が違う場合には壁内転移による再発が否定出来ること.症例2 (50歳女性)は第1と第2の癌の組織型が同じで5)の条件を満足していないが第1と第2の癌の独立性は証明出来ること.症例3 (73歳男性)はすべての条件を満足していること.などから異時性多発胃癌といえる.
    自験例3例と最近10年間の文献報告例と合わせ検討したところ以下のことが判明した.
    異時性多発胃癌の第1の癌は胃下部に発生するのがほとんどであり,第2の癌発生までの期間も短かいものでは2~4年以内のものから長いものでは20年以上にわたる症例もありその期間も一定していないが,第1の癌切除後の厳重なfollow upにより第2の癌の早期発見が可能であること,また第2の癌が現在のところでは進行癌が半分以上を占めているが,たとえ進行癌でも積極的なリンパ節廓清と他臓器合併切除により治癒切除が出来れば長期生存の可能性がある.
    以上の自験例3例と文献報告例から胃時性多発胃癌の定義づけと臨床,病理学上の問題点につき検討し報告した.
  • 大島 昌, 中原 秀樹, 坂本 真, 印南 隆一, 栗栖 茜, 飯塚 益生, 山森 喬夫
    1981 年 42 巻 4 号 p. 406-413
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1924年大沼が胃に原発したHodgkin病(以下胃ホ病)を発表してから現在までに本邦では68例が報告されていた.
    症例. 21歳,女性, CMに直径7cmの腫瘤形成型病変とAにIIa型の副病変を伴ない, n2リンパ節転移(+),組織学的病型分類はmixed cellularityの胃ホ病を経験して胃全剔(R2),脾剔,膵体・尾部切除術を施行した.脾病変(-), Stage IIE,術後はMOPP療法を行った.術前に陰性であったツ反は治癒切除術後に陽転した. 1年を経過した現在,健在である.
    本邦例の文献的考察を行った結果は,性別は男性にやや頻度が高い.年齢は14歳から72歳に分布して男女ともピークは50歳台であったが,女性に限り20歳台にもう一つの山がみられる2峰性の年齢曲線を認めた.主訴は上腹部痛がもっとも多く,病変占居部位はA>M>Cの順で,肉眼型は(A), (B), (C)型のなかでは(C)型が多くみとめられた.術前から胃ホ病と診断されたものは僅か2例であった.手術成績の記載された59例を調べると,胃切が36例(61%),胃全剔が21例(36%)であった.胃切例にow (+)例と3例の残胃再発例があったこと.多発病変の合併率が33%,また胃ホ病の進展は隣接リンパ節転移の様式をとることから胃全剔(R2)が必要である.またsurgical stagingという観点と補助化学療法の副作用予防のために脾剔を付加する必要があると判断した.組織学的病型分類(13例)では予後良好とされるリンパ球優位型は僅か1例,結節硬化型は0に対して混合型7例,予後不良とされるリンパ球減少型は5例(平均160日で死亡)であった.予後の記載された35例では健在が18例,死亡は17例で2年以内に死亡しているので,予後は必ずしも良好とは言えなかった.予後に関係すると思われる因子は,多発病変の合併,組織学的病型.深達度であった.
  • 藤本 泰久, 曽和 融生, 高井 敏昭, 鄭 容錫, 北村 輝男, 冬広 雄一, 吉川 和彦, 深水 昭, 中尾 昭一, 三木 篤志, 大北 ...
    1981 年 42 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 49歳女性,両側頚部リンパ節および扁桃腫脹を認め,胃腸透視,内視鏡および生検で続発性胃細網肉腫と診断した. VEMP療法施行後,胃内視鏡所見にて,潰瘍病変の縮少化および周堤の平坦化を認め,頚部リンパ節腫脹と扁桃腫脹の消失した時点で,胃切除術を施行した.切除標本の病理組織所見で,胃病変に腫瘍細胞の消失と,廓清所属リンパ節での著明な腫瘍細胞の壊死がみられ,術前のVEMP療法が奏効したと思われる症例を報告した.
    以上のことより,胃悪性リンパ腫の治療には,術前の適確な診断は無論のこと,術前化学療法が必要であり,さらに胃癌に準じた根治手術を行うことが重要であることを強調した.また化学療法が著効を示した本邦での胃悪性リンパ腫症例を集計し,若干の考察を加えた.
  • 経皮経肝嚢胞ドレナージの有用性
    前田 正司, 中神 一人, 早川 直和, 鈴木 雄彦, 二村 雄次, 弥政 洋太郎, 仲田 幸文
    1981 年 42 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,非寄生虫性肝嚢胞に対して, PTCDの手技を応用した経皮経肝嚢胞ドレナージを行ない,その後嚢胞壁切除にて治癒せしめた2症例を経験したので報告する.
    症例1. 69歳,女.腹部腫瘤を主訴として,手術の目的で名古屋大学第1外科へ入院した.超音波検査,腹腔動脈造影にて肝左葉の嚢胞と診断された.腫瘤の増大のため呼吸障害が出現したので,経皮経肝嚢胞ドレナージを行なった.ドレナージ後,呼吸障害は著明に改善された.嚢胞造影にて,胆道系との交通のない,表面平滑な孤立性単胞性肝嚢胞と診断された.嚢胞壁前壁切除にて治癒した.
    症例2. 82歳,女.腹痛を主訴として尾張病院を受診.腹部超音波検査,腹腔動脈遣影にて肝左葉の嚢胞と診断された.経皮経肝嚢胞ドレナージにて自覚症状は消失した.嚢胞造影では,尾側よりの圧迫を認める表面平滑な嚢胞像が得られ,多発性肝嚢胞が示唆された.なお,嚢胞と胆道系との交通はなかった. 1月後,嘔吐が再発し,手術の目的で再入院した. CTにて多発性肝嚢胞と診断された.開腹すると,肝左葉に内容液400mlの大きな嚢胞と近接した所に3個の小嚢胞があり,有窓術を行なった.
    症例1, 2ともドレナージ液は無色透明で血清成分と近似しており,細菌検査は陰性であった.
    嚢胞ドレナージの有用性は次の如くである. 1) 応急的処置として治療的意義がある. 2) 嚢胞内容液が得られるので,胆汁成分混入の有無および感染の有無がわかる. 3) 内容液の色調・細胞診にて良悪性の鑑別の一助となる.嚢胞ドレナージにひき続き嚢胞造影を行なうと, 4) 胆道系と嚢胞との交通の有無がわかる. 5) 嚢胞の形態的特徴がわかる.以上,手術々式,特に嚢胞壁切除の術式選択に際し,多くの有益な情報が得られる.なお,経皮経肝嚢胞ドレナージによる合併症は認められなかった.
  • 中野 秀麿, 新谷 清, 守田 知明, 兼行 俊博
    1981 年 42 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術後早期の肝障害発生頻度とその要因を検討するため,術前肝機能正常例で全身麻酔下に手術を行った451例を対象とし,術後6週間に亘りS-GOT, S-GPTの推移を追跡した. SGOT, S-GPTともに50単位以上を示したものは12.4%で,術後3~4週間にピークを示し,これは6週間後も持続した.疾患別,術中輸血量は肝障害の発生に関与しなかったが,良性疾患よりは悪性疾患手術例に, 3時間未満の手術よりはそれ以上のものに肝障害が多発した.使用麻酔剤では,フローセン使用例にやや多く, NLA麻酔群では少なかった.
  • 青木 洋三, 小林 康人, 柿原 美千秋, 佐々木 政一, 竹井 信夫, 川嶋 寛昭, 勝見 正治
    1981 年 42 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室における過去10年間の膵頭領域癌70例中姑息手術に終った記載の明らかな52例の内容について,術式面から検討した. 32例は胆道バイパス術が施行されたが,このうちの10例は将来生存中に腫瘍の進展による十二指腸の狭窄,閉塞を来すであろうことが予測されたので,消化管バイパス術も同時に行われた.しかしながら胆道バイパス術が施行されながら同時に消化管バイパス術が行われなかった22例中3例に平均10カ月後に十二指腸閉塞を来し,再手術として消化管バイパス術が必要となった.このような経験から我々は,症例により手術時に明らかな消化管通過障害がなく.ても,胆摘を行ってから空腸脚を後結腸性に挙上し,胆管空腸吻合,胃空腸吻合を40~50cmの間隔を置いて行いRoux-en-Y法による再建を行って,併せて幹迷切または選迷切を附加し黄疸若しくは肝機能低下に基づく潰瘍の形成や出血を予防するようにした.我々は本術式を5例に応用したが,後刻十二指腸閉塞が発生するのを予測してこのような術式を行うことも,延命効果を上げる要因の1つと考えられる.
  • 菅野 千治, 金森 裕, 千田 雅美, 森 昌美
    1981 年 42 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は最近,急性膵炎を合併した胃切除後急性輸入脚閉塞症の1例を経験したので報告する.
    患者は55歳の女性で,約1年前に胃潰瘍の診断にて,結腸後胃空腸吻合術(Billroth-II)を受けていた.激しい心窩部痛を訴え,ショック状態で当科紹介となった.血液検査で強度の脱水と低蛋白血症をみ,血液ガス分析では著明な代謝性アチドーシスを認め,血清・尿アミラーゼは高値を示した.絞扼性イレウスおよび急性膵炎の診断にて緊急手術を施行した.
    手術所見では輸出脚の内ヘルニアによる急性輸入脚閉塞症と急性浮腫性膵炎を認め, Braun吻合と外胆嚢瘻および膵周囲ドレナージを施行して手術を終了した.しかし,術後第12病日に出血性胃潰瘍の診断にて再手術を施行し,出血は輸入脚の圧迫,壊死によるもので,トライツ靱帯より約1.0cm肛門側から吻合部を含めて約30cmの空腸を切除し,空腸・空腸吻合を行ない,その肛門側空腸で結腸前胃空腸吻合術(Billroth-II)を行なった.経過良好であったが,再手術後第6病日に縫合不全の診断にて再々手術を施行した.縫合不全部は空腸・空腸吻合部で,縫合閉鎖し,外十二指腸瘻を造設し,腹腔ドレーンを留置して手術を終了した.しかし,術後第3病日に縫合閉鎖部が再離開し,そこより1,000~1,500ml/日の消化液の流出をみるようになった.経中心静脈高カロリー輸液を施行し,ドレナージ効果も良好であったので,保存的治療を行なうこととした.第10病日には投与カロリーを2,800Calとし,第15病日には500mlと減少し,第30病日には消化液の流出を認めなくなった.再々手術後第55病日より経口摂取を開始し,第92病日にて元気に退院した.
  • 倉田 悟, 中村 勝昭, 森田 耕一郎, 藤原 敏典, 河野 佳宜, 江里 健輔, 毛利 平, 安武 俊輔, 藤井 康宏
    1981 年 42 巻 4 号 p. 443-448
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和47年11月から昭和55年9月までに当科で経験した膵仮性嚢胞は9例であった.いずれも男性で,年齢は5~51歳で7例が40歳未満であった.発生原因は4例が膵炎後に, 5例が腹部外傷後に発生したものであった. 7例に手術を行いその発生部位を確定したが,頭部4例,尾部2例,体部1例であった.主症状は腹痛,腹部腫瘤,悪心,嘔吐であった.触知した腹部腫瘤のうち手挙大以上のものは6例であったが,波動を認めたものは1例にすぎなかった.確定診断は外傷または膵炎の既往歴を有し,腹部腫瘤などの臨床症状を参考にして,血清アミラーゼ値,胃・十二指腸造影,逆行性膵管造影,血管造影などによってなされた.診断確定率は78%(9例中7例)で,術前診断不能であった2例はそれぞれ急性腹症,後腹膜血腫として緊急手術を行った症例であった.初回手術は外瘻造設術3例,嚢胞胃吻合術2例,嚢胞空腸吻合術兼膵管胃吻合術1例,開腹術1例であった.再手術は3例に行われ,それぞれ嚢胞空腸吻合術2例,嚢胞を含む膵尾部切除術1例であった.全例軽快退院した.
    保存的療法のみを行った2例では臨床症状が改善したので退院し, 1年および2年6カ月の現在経過観察中である.
    膵仮性嚢胞の外科治療は臨床症状を有し,保存的治療によっても嚢胞縮小傾向を認めない症例に考慮されるべきであり,外瘻造設術は出来るだけさけ,内瘻造設術を行うべきである.
  • 岡田 進, 佐藤 薫隆, 近添 拓世
    1981 年 42 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性,開腹歴なし. 3年前より時々右上腹部痛あり.特に1年前より毎日同部の鈍痛があった.今回,夕食後に上腹部仙痛が出現し,嘔吐,上腹部膨満感が出現したため当院受診.イレウスを疑ったが腹部所見が比較的軽度のため保存的に治療した.しかし第3病日に左上腹部にデフアンスが出現し,レ線像にて鏡面像を伴う著明な小腸ガス像を認めたため,絞扼性イレウスとして緊急手術を行った.
    開腹したところ,大網と小網に異常裂孔が存在し,小腸が大網の異常裂孔を通り大腸の上をまたぎ,盲嚢に入り込み,胃の後面を通って小網の異常裂孔に嵌頓していた.整復により血行改善したため,裂孔を縫縮閉鎖して手術を終了した.尚,本症例は子宮欠損という先天的奇型を合併していた.
    この様な経路を通った盲嚢ヘルニアの症例は,本邦9例目である.裂孔の成因は,その性状より大網の裂孔は後天的に生じたもので,小網の裂孔は先天的異常と考えられた.また,子宮欠損の合併の症例は本邦では報告がない.
  • 日馬 幹弘, 上甲 宏, 小木曽 実, 平良 朝秀, 舟山 仁行, 佐藤 茂範, 田渕 崇文, 徳毛 公人, 西田 清一, 井上 仁, 湯本 ...
    1981 年 42 巻 4 号 p. 454-458
    発行日: 1981/07/01
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    姉弟に発生した家族性大腸ポリポーシスの2例を経験した.
    症例1(発端者)29歳,男,農業.
    食欲不振及び下痢を主訴として来院.理学的検査,血液学的検査は異常を認めず.肛門鏡検査にて5cm, 3hrに山田IV型ポリープを認め生検にて頭部より高分化型腺癌を認めた.注腸造影にて大腸全域に無数のポリープを認めた.大腸全摘,回腸瘻造設した.摘出標本によるとポリープは全大腸に散在し総数約1,500個,脾曲を境界として口側に山田I, II型,肛門例にIII型を主として認めた. IV型ポリープは下行結腸から直腸にかけ5個認めた.癌化は横行結腸中部に6カ所,下行結腸に1カ所,直腸に2カ所認めたが全ていわゆるcarcinoma in situであった.
    術前の検査にてCEA(サンドイッチ法)は0.5ng/ml,上部消化管にポリープを認めず,頭蓋骨,下顎骨にX-線的に異常所見を認めなかった.
    家族歴によると父親が直腸癌で死亡しており本症が疑われた為に血縁者に検索を申し出たが姉のみこれに応じた.
    症例2. 30歳,女,家婦(姉)
    注腸造影にて全大腸に無数のポリープを認めた. IV型ポリープは横行結腸中部に2個,下行結腸に5個, S状結腸に2個の合計9個,下行結腸のIV型をポリペクトミー,他に10カ所生検したが全てgroup II~IIIであった.
    症例2は諸種の事情により他院において,大腸全摘,回腸瘻造設を施行した.
feedback
Top