胃におこる腸上皮化生は,しばしば見られる所見であり,分化型胃癌の発生との関連が,種々,報告されている.しかし,胆道癌については,その発生母地と腸上皮化生との関連を検討した論文は,少ない.著者らは,最近2年間に経験した胆嚢癌3例と胆管癌3例について,癌病巣内および周辺非癌粘膜を病理組織学的に検索し,胆道粘膜の腸上皮化生と胆道癌の関連について考察を行なった.さらに,血中および胆汁中CEA値との関連についても検討を加えた.
胆道癌6例中,治癒切除1例,非治癒切除3例,非切除2例で,組織型は,腺癌3例,印環細胞癌,扁平上皮癌,組織型検索不能例,各々1例であった.血中CEA値は, 6例中5例が5ng/ml以上であり,術後低下したのは,治癒切除しえた1例のみで,他は上昇した.血中CEA値は,手術の根治性を判定する指標となりうると考えられた.胆汁中CEA値は,腺癌・印環細胞癌に高く,これらの症例は, CEA蛍光抗体染色間接法により検索したところ,組織内CEAが陽性であった.また,慢性胆嚢炎5例とともに, H-E染色, PAS染色, Alcian-blue染色, Masson Gomori染色により,腸上皮化生を検討したところ,胆嚢炎5例中2例,周辺非癌粘膜4例全例に,刷子縁,杯細胞が認められた.しかし, Paneth細胞は,全例に認められなかった.癌病巣内の腸上皮化生は, CEA産生癌の2例に,刷子縁・杯細胞が認められた.以上のごとく,胆道粘膜における不完全型腸上皮化生が,胆道における腺癌の発生母地と推察された.
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