日本臨床外科医学会雑誌
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43 巻, 11 号
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  • とくに治癒切除術施行後の予後について
    富田 正雄, 三浦 敏夫, 石井 俊世, 下山 孝俊, 田渕 純宏, 原田 達郎, 中山 博司, 平野 達雄, 清水 輝久, 福田 豊
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1191-1195
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    長崎大学第1外科で過去11年間に胃切除術を施行した胃癌症例のうち,第2群リンパ節への転移陽性症例154例を経験したが,そのうち,約半数の81例に治癒切除術を施行しえた.これら81例について予後に関連する因子について検討した.
    累積5年生存率に関連する因子として癌占居部位よりみた上部胃癌,第2群転移リンパ節の部位数,壁深達度,組織学的浸潤増殖様式および脈管侵襲が関連する結果をえた.
    これらn2(+)症例に対するR2ないしR3の治癒切除は予後を改善する上で有用でありより徹底したリンパ節郭清が必要であることを強調した.とくに,上部胃癌症例やn2の部位数が多い場合には,より積極的な郭清により予後を改善できる余地があるものと考えられた.
    n2(+)胃癌:胃癌治癒手術,胃癌手術成績
  • とくに高齢者症例と比較して
    武藤 良弘, 外間 章, 栗原 公太郎, 正 義之, 内村 正幸, 脇 慎治, 鮫島 恭彦, 山田 護
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1196-1201
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近では若年者(30歳以下)胆石症々例の増加の傾向がみられる.そこで若年者胆石症の病態を把握すべく,若年者胆石症26例を臨床病理学的に検討し,かつこれら症例の病態を高齢者(75歳以上)胆石症36例と対比して若年者胆石症の特徴について研究した.
    その結果,若年者胆石症はより一層の西欧化(女性73.1%,コ系石92.4%,胆嚢胆石84.6%)の傾向がみられ,病理組織学的な胆嚢病変(炎症による壁肥厚,粘膜上皮の化生)は軽度であって,胆汁感染率も低く(17.4%)胆嚢合併症も胆石嵌頓のみであった.いいかえると,高齢者胆石症は複雑な病態を呈していて重篤な合併症を起しやすいのに反して,若年者胆石症は単純な病態を示し,重篤な合併症も併発し難い疾患と考えられた.
  • 稲吉 厚, 渡辺 栄二, 山崎 謙治, 田代 征記, 上村 邦紀, 平岡 武久, 宮内 好正
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1202-1208
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近の3年間に,われわれが経験した肝血管腫の7例8病変におけるエコーパターンの分類を行うとともに,切除した5例5病変については,エコーパターンと病理所見との対比検討を行った.肝血管腫のエコーパターンは腫瘤の辺縁および内部エコーレベルにより次の4型に分類した. A型は,境界明瞭で内部エコーが周囲肝組織より高エコーレベルを示すもの. B型は,境界明瞭で内部エコーが周囲肝組織より低エコーレベルを示すもの, C型は,境界明瞭で内部エコーが大部分は周囲肝組織より高エコーレベルの領域であるが,小範囲に周囲より低エコールレベルの領域を有するもの. D型は,境界が不明瞭で内部エコーが周囲肝組織より高エコー領域と低エコー領域の混在しているものとした,肝血管腫8病変の腫瘤径別による各エコーパターンのうちわけは,腫瘤径が3cm未満はA型の2病変のみ, 3cm以上で10cm未満はB型とC型のそれぞれ2病変, 10cm以上はD型の2病変のみであった.切除した5病変のエコーパターンと病理所見との対比検討では,高エコー型を示したものは血管壁および間質の結合織が乏しいものが多く,低エコー型を示した例は血管壁および間質の結合織の増生が著明であった.腫瘤が高エコー領域と低エコー領域の混在したパターンを示したものは,腫瘤内に海綿状を呈する部と結合織の増生による充実性部が混在しており内部構造が複雑であった.したがって,肝血管腫のエコーパターンは腫瘤径により異なったパターンを示し,それは腫瘤増大にともなう内部構造の多様化に由来しているものと考えられ,その中でも腫瘤内の結合織の増生がエコーパターンの変化に大きく関与していると考えられた.
  • 塩田 昌明, 片山 哲夫, 門田 一宣, 嶋田 裕, 平野 鉄也, 小笠原 敬三, 場田 浩二, 鈴岡 正博, 大林 瑞夫, 藤岡 十郎, ...
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1209-1217
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    各種肝胆膵疾患32例に, 99mTc-EHIDA肝胆道系シンチグラフィーを施行し,得られたヘパトグラムの解析より肝機能の評価を行い,その有用性について検討した.その結果,以下に述べる成績が得られた.
    1) ヘパトグラムの解析は,血中総ビリルビン値10mg/dl以下ならば可能であった.
    2) 摂取能Tmax値は,正常群で9.7±1.53分であり,正常群と疾患群では明らかに有意差が認められたが,各疾患群間の有意差はなかった.またTmax値は,肝機能検査の中でICG15値, ICGk値とのみ相関が認められた.
    従って, Tmax値は肝機能障害の指標としては,信頼度が低かった.
    3) 排泄係数K値は,正常群0.0340±0.0010/分,肝硬変群0.0170±0.0078/分,術前PTCD群0.0083±0.0035/分,長期PTCD群0.0093±0.0056/分,胆道再建群0.0296±0.0073/分,無黄疸胆道狭窄群0.0245±0.0071/分と,各疾患群間でよく分離した値を示した.またK値は,血中アルカリフォスファターゼ値, GOT値,総ビリルビン値と相関を示し,肝機能障害のよい指標と考えられた.予後との関係において, K値が0.010/分が外科的critical pointと考えられた.
    以上の成績より, 99mTc-EHIDA肝胆道系シンチグラフィーは,肝機能を評価する有用な検査と考えられた.
  • 小池 綏男, 花村 直, 梶川 昌二, 丸山 雄造
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1218-1222
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    21歳,女性,右乳房の腫大と一部皮膚の紫色変色を主訴として来院し,切除生検の結果,良性の血管腫と診断されたが,腫瘍および着色部が増大してきたため,乳腺全切除を施行した.病理組織学的に血管肉腫と診断されたので, Br+Ax+Mjを追加した.腋窩リンパ節には病理組織学的に転移を認めなかった.術後にFAMTおよび5-Fluorouracilを投与した.術後2カ月で右胸壁に再発巣を生じ,術後10カ月で呼吸困難のため死亡した.初診から死亡までの期間は2年であった.
    以上の乳腺血管肉腫の1例を報告するとともに,まれな本腫瘍に対する文献的考察を行った.
  • 永井 祐吾, 勝見 正治, 河野 暢之, 岡村 貞夫, 田伏 克惇, 家田 勝幸, 野口 博志, 江川 博, 小林 康人, 金 秀男, 嶋田 ...
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1223-1228
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室の開腹創の〓開について調査したところ,減張縫合の実施以来この方法によってかなりの〓開予防効果が得られたと思われるが,なお減張縫合を行なっても〓開をみた症例があり,〓開に関する因子及び〓開対策について若干の検討を加えてみた.
    対象症例及び検討項目:教室において1968~1980年の13年間の開腹症例4,815例を対象とし, 1) 諸因子別〓開率, 2) 減張縫合の効果, 3) 〓開症例の分析について検討を加えた.
    結果: 1) 全開腹症例中25例に〓開がみられ0.52%の〓開率であった. 2) 〓開頻度は1歳以下の乳幼児,高齢者男子,緊急手術,臍をこえる長い切開例,等で高くなる傾向にある. 3) 〓開予防対策として減張縫合を, 1974, 1975年には, high riskの例に, 1976年よりは,(1)新生児,乳幼児,(2)65歳以上の高齢者,(3)その他high risk例に施行し, 1973年まで0.67%であった〓開率が1976~1980年には0.38%という結果を得た. 4) 〓開の直接原因としては,創部感染・血腫44%,腹圧上昇16%等であるが,腹圧上昇による4例中2例に減張縫合が施行されていた.また,特に患者側に誘因の見あたらないのに〓開を起こした例も2例あった.
    結論:〓開予防対策として減張縫合を採用して,〓開率は減少傾向にあるが,減張縫合無効例や患者側に誘因の見あたらない〓開例もあり,創〓開の原因を患者の全身的因子のみに帰するのではなく,手技の向上に努めるとともに,開腹,閉腹に際し最善の注意を払うべきと考える.
  • 嶋田 裕, 片山 哲夫, 門田 一宣, 平野 鉄也, 小笠原 敬三, 場田 浩二, 鈴岡 正博, 大林 瑞夫, 高三 秀成, 藤岡 十郎
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1229-1234
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Zollinger-Ellison症候群において膵以外の臓器における腫瘍の報告例はきわめて少ない.我々は本邦文献上6例目と思われる十二指腸壁内腫瘍によるZollinger-Ellison症候群の1例を経験した.症例は55歳の女性で腫瘍は十二指腸球部の前壁に存在し,酵素抗体法間接法でガストリン含有細胞が証明され,本症例はZollinger-Ellison症候群と同定された.腫瘍切除後もセクレチン負荷にてガストリン抑制が見られず,腫瘍の残存が考えられたが確認できずCimetidine投与にて厳密なfollow up中である.
  • 松波 英一, 和田 英一, 山内 一, 波江野 善昭, 八田 昌樹, 下川 邦泰
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1235-1238
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝の血管肉腫はきわめて稀なもので, Edmondsonによれば肝腫瘍309例中1例とのべている.われわれは本症の1例を経験したので報告し,文献的考察を加えた.症例は64歳の男で,来院の数カ月前より,右季肋部痛,肝腫瘤,発熱をきたし来院し,超音波検査,肝CTスキャソ,腹腔動脈造影などにより肝嚢胞を疑ったが,発熱が続き,臨床検査所見より肝嚢胞の感巣と診断し,開腹の結果,肝右葉に双手拳大の腫瘤を認め,生検により肝血管肉腫と診断した.全身状態不良のため,試験開腹術に終り,術後制癌剤を投与したが,術後40日で死亡した.
    肝血管肉腫(Angiosarcoma), malignant hemangiosarcoma, hemangioendothelioma, Hemangioreticuloendotheliomaとも呼ばれ,腫瘍細胞の形態と配列とが星細胞ないしは類洞内皮に類似しており,肉眼的な形態的特徴より海綿状血管腫型と充実型とに大別されている.本腫瘍をInfantile type, Adult typeとに分けられているが,両者の間に臨床像,組織像が類似している所が多いが,臨床経過には相違があり, Infantile typeを独立した疾患と見倣すものもいる.腫瘍の発生原因としては先天性素因のほかに,肝硬変,肝外傷,トロトラストのほか塩化ビニール・モノマーとの関係がのべられている.本腫瘍の発育はきわめて速く,病脳期間も短く,症状の発現は急激であるが,諸腫の検査により肝腫瘍の診断は可能である.しかし,確診には病理組織診によらねばならない.予後はきわめて不良であり,多くの症例は発症後6カ月~1年以内に死亡している,治療法としては肝葉切除術が適応であるが, Infantile typeを除いては長期生存はない.姑息的治療として,制癌剤の投与ならびに放射線治療が行なわれているが,効果はあまり期待できない.
  • 向井 晃太, 見市 昇, 細羽 俊男, 高橋 侃, 小林 敏幸, 小笠原 長康, 成末 允勇, 坂本 昌士, 元井 信
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1239-1243
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大網原発の平滑筋肉腫は極めて稀な疾患であり,現在までに6例の報告をみるのみである.我々は37歳と63歳の男性2例を経験したので文献的考察を加えて報告する,症例1は激痛を伴う腹部腫瘤を主訴とし,手術にて大網腫瘍と判明した.大きさ24×17×8cm.摘出術施行し,術後2年8カ月現在生存中である.症例2は左季肋部痛を主訴とし,胃の壁外進展型の粘膜下腫瘍として手術施行し,術中所見で大小2個の大網腫瘍と判明した.大きさは,大きなもの21×1×10cm,小さなもの6×4×3.5cm.摘出後を施行し,術後6カ月現在生存中である.
  • 大山 廉平, 丸谷 巌, 藤田 博正, 中村 修三, 高野 真澄, 前田 耕太郎, 富田 濤児, 宇田川 康博, 西田 一己
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1244-1249
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    後腹膜奇形腫は,乳幼児から小児期に好発し,神経芽腫,腎芽腫と共に小児悪性腫瘍の代表的な腫瘍の一つであるが,成人に於ける報告は少なく, Mecray等(1937年)の報告以来, 1982年4月までに35例の欧米報告例及び1例の本邦例のみである.更に,後腹膜原発の悪性奇形腫はBruneton等の8例の集計報告のみである.今回,我々はこの様な一例を経験したので,文献的考察を加え,報告する.
    症例は55歳女性,腹部腫瘤を主訴として来院,卵巣癌の疑いで手術を行なった結果,腫瘤は,後腹膜を原発とし,小児頭大,硬く,多胞性,後面は下大静脈と強固に癒着し,これを含めて切除した.その割面にて嚢胞内に多量の黄土色混状物及び粘土状の壊死分質があり,壁の一部に結節状の充実した腫瘍組織を認め,更に組織学的にその部位に扁平上皮の癌化が認められ,後腹膜原発の悪性奇形腫と診断した.術後, 39°Cの間欠熱が持続し,全身状態の改善もみられず, 8週後に死亡した.
    剖検所見では,肝に広範な腫瘍の転移があり,更に下大静脈及び周囲組織内に腫瘍の残存が組織学的に認められた.また,副病変として肺に結核性乾酪性肺炎像を認め,術後の発熱の原因と判明した.
    本疾患の診断には,腹部単純レ線像が有用であり,更に血管及び尿路造影,超音波断層, CT等の検査法の活用が望まれる.
    しかしながら,現在,術前の良・悪性の鑑別は非常に困難である.
    治療法は,外科的切除以外はなく,その予後は,良性例では当然良好だが,悪性例の報告では,非常に悪く,症状発現後18カ月,切除後6カ月以内に全例死亡している.
  • 川田 良得, 庄司 佑, 川村 一彦, 田崎 紀元, 小林 杏一, 岩下 清志, 木下 博
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1250-1256
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    メラノージス・コリーは,大腸粘膜に黒色色素が沈着する疾患である.我々は最近,上行結腸癌に合併した,メラノージス・コリーの1例を経験した.症例は70歳の男性で,イレウスで入院した.開腹すると膀胱からS状結腸にわたる索状物を認め,これにより腸管が絞扼されていたが,これとは別に,上行結腸にクルミ大の腫瘤を認めたため,右半結腸切除を行なつた.切除標本では大腸粘膜全体にわたつてメラノージス・コリーを認めた.病理組織学的所見では,腫瘤はpapillo-tubular adenocarcinomaであつた.癌細胞内には色素顆粒を認めないが,癌巣以外の大腸の粘膜固有層には,褐色色素顆粒をとりこんだ貪食細胞が多数認められた.虫垂粘膜も,肉眼的及び病理組織学的に大腸粘膜と同様の所見を示したが,回腸粘膜は肉眼的には正常粘膜の色を呈しており,病理組織学的にわずかに色素顆粒を認めた.
    内視鏡検査の進歩とともに,本症と診断される場合が増加し,また,本症に大腸新生物が高頻度に合併することが指摘されている.本症の成因には,便秘が関係しているといわれ,さらにanthracene系あるいはanthraquinone系の緩下剤の連用との関連も注目されている.沈着する物質の本態として,メラニン様物質,消耗色素,あるいはその中間の物質等が考えられているが,一方では,それらと全く異なる物質であるという意見もある.
  • 里見 昭, 高橋 茂樹, 時松 秀治, 石田 清
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1257-1261
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    脾膿瘍,脾周囲膿瘍は非常に稀な疾患である.しかし疾患自体は古くから知られており抗生剤の普及する以前は,熱帯地方に多発していた.これも抗生剤の普及につれ減少し,本邦においても我々の調べた範囲では1952年以後8例と少ない.発生原因も色々あるが,我々は外傷が原因と思われる脾周囲膿瘍の1例を経験したのでその概要を報告し,あわせて若干の文献的考察を加えた.
    症例は6歳の男児.左側腹部をブロックにぶっつけ翌日より38°Cの発熱が持続,不明熱として受傷後35日目に当科へ転科した.腹部X線写真, Ga67citrate, CT等より本症と診断,ドレナージ手術を施行した.術後は劇的に解熱,軽快退院した.
    本症の起炎菌としては, Gonococcus以外のあらゆる化膿菌が関係するといわれており,我々の症例は, Ps. aeruginosaであった.小児の場合,脾摘後の重症感染症罹患の危険性が高いという事もあって,脾損傷に対して非手術的治療法が検討されつつある.今後,脾膿瘍,脾周囲膿瘍の増加する事が予想され,したがって外傷後の経過観察は,充分注意をはらい,不明熱の場合は,本症を疑ってみる必要がある.不幸にして脾膿瘍,脾周囲膿瘍におちいった場合,外科的処置が不可欠で,現在のところ,可能な限り脾摘がおこなわれている.しかし,小児においては,脾摘後の問題や我々の症例の様にドレナージが有効であったた例もあり,今後の検討を要する.
  • 笠川 脩
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1262-1267
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小児のそけいヘルニアは,患児の数が多く,どの施設でも外科的治療を行っている普遍的な疾患である.その手術術式は,旧くから数多く考案され,検討されており,それぞれ,担当する外科医のもっとも手慣れた術式が用いられているのが現状である.
    小児そけいヘルニアの発生は,腹膜鞘状突起の開存に基因しているのであるから,その根治のための手術法は,原則的には,腹膜鞘状突起(ヘルニア嚢)を根部で結紮するだけでよく,内そけい輪やそけい管に対する補強操作を加える必要はないとされている.
    また,ヘルニア嚢を結紮する位置は,腹膜前脂肪組織の高さでも充分に目的を達することができ,その部位で結紮することが可能であるならば,そけい管に無用な侵襲をできるだけ加えないで行う術式が合理的である.
    北摂病院外科では,昭和40年に開設以来3年間は, 56例(62側)に対してFerguson法, Lucus-Championniere法を行い,術式の検討を加えたが,昭和43年から昭和56年末までの間は, 1,102例(1,196側)に対して,そけい管を開かずにヘルニア嚢の結紮を行い,補強操作を全く加えないsimple herniorrhaphyを基本術式として採用している.
    この術式の施行により,手術は簡易で侵襲が少なく,術後の合併症は軽微で,再発も低率(0.3%)である満足すべき成績を得ているので,その概要を報告した.
    この術式は,小児のそけいヘルニアに適した術式であると考えている.
  • 畠山 元, 吉川 和彦, 田中 純一, 由井 三郎, 山下 隆史, 紙野 建人, 梅山 馨, 村井 順一郎, 黒木 哲夫
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1268-1273
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    (1)輸血後に不規則抗体が出現し,溶血性貧血を呈することは比較的稀とされている.
    (2)われわれは特発性門脈圧充進症(IPH)の食道静脈瘤に対し経腹的食道離断術兼摘脾術を行ない,その際2,000mlの輸血を行なった後に,極めて珍らしいKidd抗体(抗JKb)が出現し,術後溶血性貧血を併発した症例を経験した.
    (3)現在までにかかる不規則抗体は10数種類が知られているが,このうちKidd抗体は本邦においては1970年から1979年までの10年間で,われわれの集計しえたかぎりでは10例の報告が見られるにすぎず,極めてまれなものと思われる.
    (4)このような輸血後の不規則抗体の出現による溶血を避けるためには,輸血前にかかる抗体の存在することも考慮して,不規則抗体のスクリーニングを必ず行なうべきであると思われ,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 花上 仁, 野本 信之助, 瀬戸 明, 木村 忠広, 沓名 哲治, 竹内 正, 吉崎 聰
    1982 年 43 巻 11 号 p. 1274-1279
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我国においても下肢動脈疾患に対する積極的な直達手術が普及しつつある.的確な術前診断が必須であり,種々の末梢血管障害診断法が開発されているが,患肢動脈の器質的ならびに機能的障害の程度を精確に把握し合理的な手術計画をたてるには下肢動脈造影が最も重要である.近年急激に増加した閉塞性動脈硬化症は血行再建術の良い適応となる場合が多いが病変が多発する傾向が強いので腹部大動脈分枝部より下腿領域の動脈まで造影した上で手術術式を決定しなければならない.バージャー病を中心とする炎症性動脈疾患は病変が末梢の小動脈に多く発生するが中枢の動脈にスキップリージョンを認めると云う報告もあるので,腸骨動脈より趾尖部の小動脈まで造影する必要がある.これらの目的に応ずるには,全下肢動脈造影を行うことが重要であると考え,我々は長尺カセットチェソジャーを用いた全下肢動脈連続撮影装置を試作した.東芝製消化器診断用X線装置に4枚のドラム回転式長尺カセットチェンジャーを連動させた.カセットは14×42インチで撮影距離160cm,フイルムと被写体間は6cm,撮影間隔は1.5~10秒の間で4枚のカセットをそれぞれ独立して設定した.腹部から足尖部にわたる撮影条件の変化は連続吸収傾斜型アルミニウムフィルターと極光製連続感度補償型増感紙US-IIを用い補正した.造影剤注入器はMedrad社Mark IVを用い注入プログラムはStandardまたはUniversal Flow Moduleを必要に応じて用いた.現在までに閉塞性動脈硬化症25例,バージャー病14例,その他7例,計46例に67回の造影を行ったが,満足すべき結果が得られているので,本試作装置の概略と代表的な症例について述べあわせて下肢動脈造影に関する考察を加えた.
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