日本臨床外科医学会雑誌
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43 巻, 12 号
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  • 木村 正治, 三隅 厚信, 西村 令喜, 荒木 啓介, 徳永 孝生, 山下 純一, 志垣 信行, 藤野 昇, 赤木 正信
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1301-1307
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最大径2 cm以上の初発乳癌38例を対象症例として,これらの腫瘤の中心部と辺縁部より別々に組織片を採取し,細胞質中のエストロゲン・プロゲステロンレセプター(以下ERC, PRC)および核内エストロゲンセレプター(ERN)の部位別変異について検討した.
    結合部位数が他部位の2倍以上を示すものを部位別変異のあるものとすると, ERC・15/38, PRC・13/38, ERN・10/38に変異がみられた.
    さらに,レセプターの陽陰性の判定の異ったものは, ERC・11/38, PRC・12/38, ERN・4/38にみられた.
    部位別変異をもたらす因子としては,
    1)測定の際のartefactによるもの.
    2)測定部位の腫瘍細胞密度の差,細胞・間質比の差によるもの.
    3)腫瘍細胞のモザイク性によるもの.
    4) レセプターの細胞内分布の違いによるもの.
    などが考えられる.これらの因子が相互に影響をおよぽしながら,部位別変異を来していると考えられた.
    38例中2例では, ERCで陽性から陰性への判定の違いがみられたことより,比較的大きい腫瘤で,臨床的にホルモンレセプター値のfalse-negativeを避ける手段としては,多数部位でのレセプター測定が必要だと考えられた.
  • 奥山 伸男
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1308-1318
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌,乳腺症,女性化乳房という本質的に異なる乳腺疾患に対してAndrogen療法が古くから行なわれている事は興味深い.そこで,乳腺に影響力が強いと考えられているプロラクチン(以下PRL)とエストロゲンの中で最も作用の強いエストラジオール(以下E2)をAndrogen (エナント酸テストステロン・デポ,プロピオン酸テストステロン水性懸濁)の投与前後に測り,それらの乳腺疾患への影響及び反応がいかなるものであるかをしらベた.
    その結果,女性疾患群(乳癌,乳腺症,他疾患女性)においてはどちらのテストステロン剤投与でもE2は上昇し, PRLはエナント酸テストステロン・デポ投与により上昇したが,プロピオン酸テストステロン水性懸濁投与では上昇しなかった.乳癌にとってPRL, E2の上昇は好ましくなく,又乳腺症にとってE2上昇は好ましくない.それゆえテストステロン療法に抗エストロゲン剤を併用する事は有効と考えられる.女性化乳房においてはエナント酸テストステロン・デポ投与によりPRLは上昇したが,他疾患男性においては上昇しなかった.これは女性化乳房のE2基礎分泌値が高かったためと思われるが,女性化乳房に対してもテストステロン療法に抗エストロゲン剤を併用する事は有効と考えられる.他疾患男性ではエナント酸テストステロン・デポ投与によりE2の上昇を示したが,女性化乳房においては上昇しなかったので,テストステロン代謝の異常が考えられた.E2上昇は性別や閉経前後により異なり, PRLもほとんど同様に対応しているようであった.従って, PRLの上昇はテストステロンの直接作用以外に変換されたE2によるものも考えられる.乳癌,乳腺症,女性化乳房のPRL基礎分泌値は他疾患々者と差はなかつた.乳癌,乳腺症のE2基礎分泌値は他疾患女性と差はなかった.女性化乳房のE2基礎分泌値は他疾患男性より有意に高かった.
  • 熊沢 健一, 小川 健治, 大谷 洋一, 川田 裕一, 芳賀 駿介, 菊池 友允, 梶原 哲郎, 榊原 宣
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1319-1324
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘除術後早期にみられる軽度の肝障害に関し,その発生する要因を手術法,麻酔法の面から検索し,つぎのような結果をえた.
    手術法別では, 1)胆摘例の術後第7病日におけるGOT, GPT, LDHの測定値は,術前に比して有意の上昇をみた. 2)胆摘例と同じ上腹部手術の胃切除例でも術後有意に上昇した. 3) 下腹部手術である子宮全摘例では術後上昇は認めなかった.
    さらに麻酔法別では, 1)胆摘例では,有意差はないがGOF群の方がNLA群た比して上昇する傾向を認めた. 2)胃切除例でも同じような傾向にあったが,上昇の程度は胆摘例に比して小さかった. 3)子宮全摘例では両麻酔法による差は認められなかつた.
    以上より,胆摘術後早期に発生する軽度肝障害の原因は,胆石症の病態そのものよりも上腹部に対する手術操作にあると思われた.すなわち,麻酔による影響も加味して考えれば,肝.胆道・血管系への直達外力がハロセンの作用とも相俟って,術中に低下している肝血流量をさらに減少させ,肝細胞がhypoxiaに陥るためと説明できよう.
    胆摘術における手術操作には,肝・胆道・血管系の愛護的な取扱いがとくに必要であり,また麻酔操作では循環動態の安定化,肝血流量に影響の少ない麻酔剤の選択などが重要であると考える.
  • 田村 隆, 加藤 彰, 中島 幹夫
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1325-1328
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆道感染症の治療薬として使用頻度のたかいCefazolin (CEZ)の臨床的有用性を明確にするため,その胆汁内移行をCephalothin (CET) Ceftezole (CTZ),のそれと比較検討した.
    胆石症患者(52例)にCEZ, CET, CTZ各2gを静脈内投与し,投与後の種々の時間において総胆管内胆汁,胆のう内胆汁,胆のう壁組織および末梢血を採取,これらの検体中の各抗生物質の濃度をB. subtilis atcc 6633を検定菌とするDisc法にて測定した. CEZの総胆管内胆汁濃度は, CET, CTZと同様胆のう内胆汁濃度や胆のう壁組織濃度に比し高く,投与後20分~1時間で467±101μg/ml (Mean±S.D), 1~1.5時間で, 387×173μg/ml, 1.5~2時間で, 148±111μg/ml, 2~2.5時間で118±62μg/mlであり,いずれの時間帯ともCET, CTZに比して高い値であった.またCEZの胆のう内胆汁濃度および胆のう壁組織濃度は同一時間帯の総胆管内胆汁濃度の10~15%程度であるが, CET, CTZに比較し良好な移行を示す成績であった.
    CEZはCET, CTZより良好に胆汁内に移行するので胆道感染症の予防・治療に最適と考えられる.
  • 林 盈財, 佐橋 清美, 赤尾 勝彦, 鳥本 雄二, 多米 英介, 前田 光信, 二村 雄次, 服部 龍夫
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1329-1334
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当教室において過去17年間に64例の原発性上皮小体機能亢進症を経験した.そのうち6例が高カルシウム血症クリーゼと診断された.
    年齢は20歳から64歳であり,男性3例,女性3例であった.臨床病型は全例骨型であった.臨床上は消化器系,中枢神経,筋系,泌尿器系など多彩な症状を呈した.特に著明な神経,筋および精神症状を認めた. 4例において,術前,頚部に腫瘤を触知した.臨床検査成績では全例に貧血を認めた.血清Ca値(14.4mg/dl~18.0mg/dl)とPTH(4.2ng/ml~7.6ng/ml)は著しく上昇していた.尿素窒素が上昇し,腎障害を示した症例には高リン血症が認められた.術後1例は尿毒症で死亡した.
    組織所見では腺腫4例,過形成2例であった.
    1965年Payneは, 1) 血清Ca値が15mg/dl以上. 2) 全身状態が急激に変化し,特に消化器,心循環器,および中枢神経症状を呈す. 3) 尿素窒素が上昇し,乏尿が起こるなど3点を高カルシウム血症クリーゼの診断基準としてあげているが,われわれの6症例はこの基準に一致した.典型的高カルシウム血症クリーゼの臨床経過をとった1例を示し,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 美崎 幸平, 舘林 欣一郎, 年光 昌宏, 山時 脩, 丹山 桂, 福田 進太郎
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1335-1339
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤直達手術において,脾摘除術は因襲的に付加されているが,われわれは11例については脾摘をおこなったが, 10例では,脾摘をおこなわなかった.後者の場合,脾の機能亢進状態の存続によって,貧血や,白血球数,血小板数の減少が懸念されるが,この点を解明するために,両群を比較検討したところ,術後の白血球数と赤血球数は両群の間に大差を認めなかったが,血小板数に関しては,脾摘群ではほとんど正常範囲内にあるの反し,非脾摘群ではすべて正常値以下であり, 3~5×104/mm3の低値を示したものもある.しかし,臨床的に紫斑や歯肉出血を認めたものはなかった.これらのことから,食道静脈瘤に対する直達手術に際しては,脾摘は不可欠のものとは考えられず,侵襲の少い経胸的食道離断術だけにとどめ,脾摘は必要のあるときだけ,後日施行してもよいものと考える.
  • 鈴木 孝雄, 柴 忠明, 寺嶋 剛, 橋村 千秋, 北原 信三, 竹内 節夫
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1340-1344
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上腹部正中切開兼胸骨縦切開・経縦隔法は比較的簡単に,しかも非開胸的に食道胃境界領域に良好な視野を与える到達法であるという.しかしながら現段階では本法に対する評価は必ずしも定まったわけではない.そこで著者らも下部食道あるいは噴門部領域を含んだ癌の6例について本法を施行した,その結果本法は食道胃境界領に良好な視野を与えると思われた.又,非開胸的に食道Ea領域を切除する場合には特に有用な到達法と考えられた.更に,本法によって食道Ei領域を非開胸的,可視的に処理することが可能であった.
  • 小野 隆男, 篠村 達雅, 小笠原 武, 及川 慶一, 伊藤 進, 山崎 拓郎, 桑田 雪雄, 森 昌造
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1345-1350
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    部分的内臓逆位症に胃癌を合併した1症例を経験したので報告する.
    症例は68才,男性.胸腔内臓器は正常位置.胃,脾,膵のみの部分逆位症に加えて胃噴門部から食道へ波及した癌腫を認め.食道の一部を含む胃全摘術を行った. CE, P0 H0N3 (+) S2, Stage IVで絶対非治癒切除となり, Roux-Y法にて再建を行った.手術後7カ月目に肝転移を認め, 9カ月で死亡した.
    内臓逆位症に胃癌を合併した症例の報告は少なく,自験例を含めた本邦報告例は23例にしか過ぎない.このうち20例は全内臓逆位症で,部分的内臓逆位症に胃癌を合併した症例は極めて希で,自験例が第3例目にあたる.
    本邦における内臓逆位症は明治22年笠原らの報告以来,昭和47年までに935例を数える.今回われわれが集計した84例(昭和48年~昭和55年)を加えた1,037例と自験例を含む23例の胃癌併存例について若干の文献的考察を行った.
  • 山本 誠己, 尾野 光市, 河野 暢之, 勝見 正治
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1351-1355
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃切除後の胃石発生は比較的すくなく,その多くのものは植物胃石,特に柿胃石である.粘液により構成される胃石はMucobezoarと云われ,胃内で粘液と食物残渣がゼリー状に凝固する為に発生すると考えられている. Mucobezoarは心窩部不快感,悪心,嘔吐等の症状を呈し,胃切除後の不定愁訴の一因となっていると考えられるが,成書にもあまり記載されておらず,僅かな文献が散見されるのみである.我々は残胃に発生したMucobezoar症例を4例経験し,そのすべてがビルロートI法により再建されていたこと,その内一例に残胃内に胃ポリープを発見したこと, Mucobezoarと柿胃石,胃腫瘍との鑑別点につき若干の私見を加えて報告した.
  • 奈良井 省吾, 大塚 為和, 佐藤 利, 今泉 信作, 栗林 和敏, 佐藤 康行, 吉田 奎介, 山際 岩雄
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1356-1361
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    本邦においては稀な疾患と考えられている原発性硬化性胆管炎は肝内外胆管にびまん性に炎症性肥厚を生ずる場合が多く,病変部位が胆管の一部に限局している症例は極めて少ない.
    今回,私共は総肝管を中心に小さな炎症性肥厚が生じ閉塞性黄疸をきたしたために発見された原発性硬化性胆管炎の1症例を経験したので報告する.
    症例は24歳男性.黄疸,〓痒感を主訴として入院.超音波検査法で肝内胆管の拡張を認め,内視鏡的胆管造影法では左右肝管合流部近傍の総肝管に長さ5mmの辺縁平滑な全周性狭窄を認めた.経皮的胆管造影法では左右肝管と肝内胆管が著明に拡張し,造影剤は左右肝管合流部以下に流出しないという所見が得られた.経皮的胆管ドレナージが不成功に終ったため開腹したところ,総肝管に小指頭大の硬結を触知した.胆嚢を摘出後,総胆管を切開し,狭窄部位を通過させてY.チューブを左右肝管に挿入し外瘻とした.十分に減黄されてから,上部胆管癌の診断のもとに再開腹し,上中部胆管,左右肝管切除,第II群リンパ節郭清,肝門部空腸吻合術を行った.,切除標本をみると,総肝管壁は7mmの範囲が著明に肥厚し弾性硬であり,同部の粘膜面は発赤し粗造であった.また,胆管壁の肥厚は左右肝管合流部にも僅かに及んでいた.組織学的に病変部位は正常部位に比して,主として漿膜下層の線維化により著しく肥厚し,中等度のリンパ球と少数の形質細胞,好酸球の浸潤が認められるも,悪性所見はなかつた.以上より,自験例は原発性硬化性胆管炎の限局型と診断された.病変部位を完全に切除し得た原発性硬化性胆管炎の予後に関する報告は少なく,自験例を長期に亘り慎重にfollow upしたいと考えている.
  • 特に切除例を中心に
    守田 信義, 宮下 洋, 吉川 静, 鳥枝 道雄, 平岡 博, 江里 健輔, 毛利 平
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1362-1367
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1978年1月より1982年4月までに当科で外科治療を行った三管合流部を含む上部胆管癌症例は14例で切除率は64% (9/14)であった.術前の肝機能を中心とした生化学検査,およびPTC, ERCPより得られた胆管造影で肝内胆管に浸潤がある症例では術前に切除,非切除を決定する事は出来なかった.切除例についてStage分類すると, Stage II, IIIが圧倒的に多かったが,本症では遠隔転移,リンパ節転移は稀れで,漿膜浸潤の程度がStageを決定する重要な因子となった.
  • 中山 隆, 渡辺 治, 吉田 衛, 高江 洲裕, 鈴木 勝一, 福嶋 久夫, 渡辺 達吉
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1368-1373
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    メッケル憩室は臨床上は比較的稀な疾患であり,その術前診断は困難とされている.今回我々は,血管撮影にて術前診断し得た症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は44歳の男性.下血を主訴として入院し,上部下部消化管の通常のX線検査では異常はなく,メッケル憩室を疑い,シンチグラフィー,小腸造影を行なうも,憩室は描出されなかった.しかし,上腸間膜動脈撮影にて, mesodiverticular band arteryが証明され,メッケル憩室と診断,手術を行なった.憩室は,回盲弁より約1m口側にあり, 3.5cm×5cmの大きさで,異所性組織の迷入は認めなかった.
    過去5年間の本邦報告例を検討し,メッケル憩室の診断方法である99mTc scintigraphy,小腸造影,血管撮影についての考察を加えた.
  • 特にアニサキス小腸穿孔例について
    佐々木 喜一, 紙田 信彦, 山口 善友
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1374-1380
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    アニサキス症は,今や3,000例にもなるといわれ決して少ないものではない.特に胃アニサキス症例は内視鏡の進歩,普及に伴い急速にその症例を増加させている.一方,腸アニサキス症は,未だその診断が困難で急性腹症,虫垂炎,腹膜炎の診断下で手術された結果,腸アニサキス症と判明するのが実状である.
    我々は内視鏡的にアニサキス幼虫を摘除した急性胃アニサキス症3例と,腹膜炎の診断で開腹し,回腸を穿孔しつつあるアニサキス幼虫を肉眼的に観察する機会を得た.
    これら症例の感染原因は, 2例がシメサバ,他はカツオの刺身と生のタラコの生食であり,いづれも摂食後数時間以内に発症している.
    血液検査で好酸球増多を示したのは1例のみであるが,腸アニサキス症例の切除標本の病理組織検査では,切除腸管壁の好酸球増多浸潤が著しく,又,アニサキス侵入部位の局所的浮腫発赤はArthus型アレルギー反応に起因すると思われた.
    アニサキスの消化管穿通については,すでに動物実験で確認されているが,臨床例では比較的稀である.特に,穿孔しつつある虫体を漿膜面より観察した例は,石倉の1例のみである.我々の腸アニサキス幼虫穿孔例は,穿孔している状態をつぶさに観察しえた本邦2例目の症例であり,極めて稀な症例と考え文献的考察を加え報告する.
  • 理学的所見以外の検査の有用性について
    里見 昭, 石田 清, 時松 秀治, 三宅 由子, 森田 孝夫, 阪田 章聖, 高橋 茂樹, 隣谷 義人, 足立 雅樹
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1381-1388
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小児虫垂炎は,病勢の進行が早いので,その診断は迅速でなければならない.しかし,多くの論文で指摘されている様に,手術適応を決めるうえで腹部理学的所見が大きな比重を占めていることは,経験的事実であり,異論はない.しかし,客観性,再現性という点では問題があり,かつ,個々の医師の技量によるところがあまりにも大きい.今回はこれをカバーしている補助的診断法を綿密に検討してみた.
    教室で経験した小児虫垂炎症例, 124例と,虫垂炎の疑いにて入院し.保存的治療のおこなわれた13例,開腹手術の結果,虫垂炎でなかった症例8例について,検討を加え,とくに,理学的所見以外の検査(白血球数,腹部単純X線写真)の有用性について考察した.
    その結果,虫垂炎における腹部単純X線写真の果たす役割は従来考えられていたよりもかなり有用であるとの印象を強くした.かつ,理学的所見を柱に,白血球数,腹部単純X線所見の組合せにより,表13の手順で手術適応を求めるのがよいと考えている.
  • 紙田 信彦, 佐々木 喜一, 長堀 順二, 山口 善友
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1389-1397
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1975年から1971年までの7年間に大腸穿孔を28例経験した.これは同期間に手術された大腸疾患の5.1%である.男女同数で,年齢は51~86歳で,平均年齢は69.1歳であった.原因・誘因等より5つの群に分ける事ができた. I. 憩室穿孔及び類似疾患(14例). II.癌症例(6例). III. 医原性症例(6例). IV. ストレス症例(1例). V. 非特異性潰瘍症例(1例)である.穿孔部はS状結腸15例,直腸8例,下行結腸3例,横行結腸1例,盲腸1例であった.手術死亡率は全体で32%と高かったが, I群と他の群では大差があった.前者は14%,後者は50%であった.これは発症から手術までの時間の差によるものではなく,腹腔内に漏出した便の性状,量の違いから来るものと考えられた.特に医原性穿孔は直死率が67%と高い.穿孔直後より,かなり強い症状があり,早期に手術を施行すれば,ほとんどが救命可能と思われた.
    診断上注意すベき点が2~3ある.それは腹腔内遊離ガス像の証明率が低い(43%)事と,腹膜炎でありながら,白血球増多例が非常に低い(24%)事などがあり,早期診断のためには,症歴の詳しい聴取と,理学的検査がより一層重視されねばならないと考える.
    単発性憩室穿孔は特発性穿孔と肉眼的には鑑別が因難で,病理組織学的検査を施行した上で穿孔の原因を云々すベきであると思う.
    中枢神経系の術後は上部消化管に合併症が多くみられるが,下部腸管にも穿孔,又は出血を来たす事もあり,手遅れにならないよう注意を払う必要がある.
    手術方法としては,状態が許すならば,穿孔部を処理すベきで, Exteriorization, 又は切除,吻合(必要ならば人工肛門を加える)を先ず選択すベきである.
    腹腔内ドレナージは施行した方が無難である.
  • 吉川 澄, 山口 時雄, 宮川 周士, 川原 央好, 中場 寛行, 前田 元, 高尾 哲人
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1398-1403
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和50年より昭和56年の7年間に,我々は7例の特発性大腸穿孔を経験した.これは同時期に当院外科において入院加療した消化管穿孔症例の7.6%を占める.
    7例中5例がS字結腸穿孔症例であり,その男女比は2:3,年齢は56歳から85歳,平均71歳であった.全例が急性腹症で受診した.
    術前診断は,汎発性腹膜炎ないし,急性虫垂炎であった. 5例中3例に慢性便秘症があり,この内2例が穿孔の誘因として便秘が考えられた. 5例中4例は,穿孔部閉鎖+人工肛門造設等により救命し得たが, 1例は,術前より血圧の低下がみられ,術後36時間目にseptic shockのため,失った.
    7例中2例が横行結腸穿孔症例であった. 2例とも慢性経過をとった症例で,上腹部の有痛性腫瘤を主訴とした.両症例とも注腸造影で所見がみられた. 1例は横行結腸の一部に壁の不整を,他の1例では,造影剤の消化管からの漏出がみられた. 2例とも術前診断は,膵のう胞の疑い,であった. 2例中1例は横行結腸部分切除+大網の炎症性腫瘤摘出を,他の1例は人工肛門造設及び糞便塊のドレナージを施行した. 2例とも略治退院せしめた.
    7例の特発性大腸穿孔症例を示すともに, S字結腸穿孔症例では,急性汎発性腹膜炎に対する診断治療について述べ,横行結腸穿孔症例においては,上腹部の炎症性腫瘤との鑑別を必要とする症例がある事を示した.
  • 神奈川県下32施設, 1,144症例について
    望月 功, 土屋 喜哉, 天野 純治, 松林 冨士男
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1404-1409
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,消化管の吻合法として,従来のAlbert-Lembert法に対し, Gambee法に代表される粘膜下織面の接合を重視する1列層層吻合法や2列層層吻合法の有効性が唱えられるようになった.更には器械吻合も広く取り入れられつつある.これら多様化した吻合法と,その重篤な合併症である縫合不全との関係は興味の持たれる所である.
    今回,われわれは,大腸の吻合法と縫合不全に関するアンケートを集計し,回答を頂いた神奈川県下32施設の1,144症例について,吻合部位別吻合法,吻合法と縫合不全発生率,縫合不全の重症度などについて検討を加えたので報告する.
  • 斉藤 敏明, 横山 茂樹
    1982 年 43 巻 12 号 p. 1410-1415
    発行日: 1982/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    特発性乳糜腹水は稀な疾患であり,わずかに急性例が小児において散見されるに過ぎない.
    我々は17才の男性の慢性特発性乳糜腹水の患者に対して種々対症的治療を行ったが軽快しなかったので,観血的にLe Veen P-Vシャントを作成し,治癒せしめ得たので報告する.
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