日本臨床外科医学会雑誌
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43 巻, 5 号
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  • 1982 年 43 巻 5 号 p. 475-483
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 43 巻 5 号 p. 484-493
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1982 年 43 巻 5 号 p. 494-506
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 岩井 顕, 後藤 平明, 大熊 利忠, 大塚 憲雄, 上村 邦紀, 田代 征記
    1982 年 43 巻 5 号 p. 507-513
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    重度外傷や大きな手術後に複数の主要臓器が機能不全に陥る,いわゆるmultiple organ failureの発生の引き金として感染症が重要視されている.我々は, 1976年1月から1980年12月までの5年間に当科で経験した141例の感染症患者を対象に,肺,肝,腎,消化管を対象臓器として, MOFの発生率およびMOFの予後に影響を与える因子について検討した.また剖検例にて各障害臓器の病理学的検索を行なった.
    各臓器障害の判定基準は,肺は喘鳴,呼吸困難があり, FiO2 0.2の自然呼吸下でPaO2 70mmHg以下のもの,肝は,血清ビリルビン値が2.0mg/dl以上, GOT, GPTが100U/l以上のもの,腎は乏尿,無尿があり,血清クレアチニン値が1.5mg/dl以上のもの,消化管は吐血,下血,コーヒー残渣物の確認,および内視鏡による出血の確認がなされたものをそれぞれ障害陽性とした.これらの臓器のうち,初発感染巣を除き2臓器以上の機能障害を認めたものをMOFとした.
    その結果MOFの発生率は,低アルプミン血症の患者,菌血症およびショックを感染症罹患中に認めた症例で高率であった.またMOFによる死亡率は, 50歳以上の年齢,悪性疾患,低アルブミン血症の患者,感染症罹患中にショックに陥った患者,およびドレナージ非施行例あるいはドレナージ効果不良例で高率であった.このことから,感染巣のドレナージを的確に施行し,綿密な栄養管理を行なうことが, MOFの予後改善のために重要であると考える.
    病理学的検索では,肺はうっ血,肺胞壁へのヒアリン膜の形成,肺胞内への蛋白成分の漏出,肝では類洞の開大,肝内胆汁うっ滞,中心性肝細胞壊死が認められ,腎では尿細管細胞の混濁腫脹,変性が,胃,十二指腸では粘膜のうっ血,出血,びらん,潰瘍が認められた.
  • とくに特殊組成アミノ酸輸液の予防的投与の意義について
    中山 真一, 広瀬 定吉, 諸富 郁夫, 兼松 隆之, 小林 迪夫
    1982 年 43 巻 5 号 p. 514-525
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性肝疾患,とくに肝硬変症例の合併症である肝性脳症の発現は,肝硬変症の予後に重大な影響を及ぼすものであり,肝性脳症の発症を抑制し,さらに予防することが可能であるならば,その意義は極めて深いと思われる.今回,その治療法として, Fischer液に準じた特殊組成アミノ酸輸液を慢性肝疾患16例に対し短期投与し,その各種肝機能検査,ならびに血中アミノ酸値に及ぼす影響を検討した.さらに3例の肝性脳症併発例に対し,長期間投与し,その臨床的有効性を検討し,肝性脳症に対する血漿交換療法の結果とも対比して,以下の結論を得た.
    1) 血中BCAA/AAA値は肝性昏睡の有無に拘らず, ICG停滞率と負の相関を示し,肝疾患の重篤性を反映するものと思われた.また対象例の中で昏睡の既往歴を右するものは, ICG停滞率40%以上例で, BCAA/AAA値1.0以下の例に認められた. 2) 3例の術後肝不全発症例に血漿交換療法を計5回施行し, 3回に意識レベルの改善を認めたが,救命にはいたらなかった.また血中BCAA/AAA値の増加は,意識レベルの改善が得られているにも拘らず,認められなかった. 3) 特殊組成アミノ酸輸液(GO-80)を500ml/day連日投与することで, BCAA/AAA値は投与期間中増加し,高値に保たれた.この傾向はICG停滞率40%以上のHigh risk例で明らかであった.したがって, BCAA/AAA値の改善を得るには,血漿交換療法よりも,適正なアミノ酸輸液の投与が,日常診療上単純であり,かつ有利であると思われた. 4) 3例の肝性昏睡例に対し, GO-80を投与し,意識の改善を認めた.さらに,これらの例に対して,長期間のGO-80の予防的投与を試みたところ,患者の全身状態,病態が,前回肝性脳症発症時と同程度と思われるにも拘らず,予防投与中は脳症の発現を認めず. GO-80の肝性脳症に対する予防効果は認められるものと思われた.
  • 上村 邦紀, 木本 明博, 川口 英敏, 後藤 平明, 持永 瑞恵, 宮内 好正, 水元 淳一
    1982 年 43 巻 5 号 p. 526-531
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
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    右卵巣に生じた機能的卵胞嚢胞による過エストロゲン血症が原因の巨大乳房症,特に乳輪の腫大が著しい婦人に,卵巣摘出をおこない1年6ヵ月後の今日,次第に乳房ならびに乳輪が正常に復しつつある興味ある症例を経験した.症例は, 41歳,主婦.妊娠中毒症による腎不全に対して血液透析開始後4年目に発症した.乳房ならびに乳輪の有痛性腫大が右乳房に始まり, 2年後には左乳房にも同様の症状がみられるようになった.発症から3年後当科を受診した.血液透析は週3回の頻度でおこなわれ当科受診までの6年間良好にコントロールされていた.身長154cm,体重42.2kgと痩型の婦人であるが,胸囲100cm,左右乳房の異常な腫張と特に乳輪の腫大は,左10×10cm,右11×10cmであり一見して病的と考えられた.血中ホルモン測定の結果,正常の10倍を示すエストロゲン(E1, E2)が巨大乳房症の原因と考えられた.腎不全に伴う代謝異常と原発性エストロゲン分泌亢進症の両面から検討を進めた.下大静脈カテーテル法による部位別採血エストロゲン値の変動ならびにCTによる形態学的検索により,右卵巣の腫瘍と診断し手術をおこなった,摘出標本の病理学的検索の結果,卵胞嚢腫と診断された.成書にょると,卵胞嚢腫には機能を有するものとそうではないものがあり,前者ではエストロゲン分泌亢進による異常子宮出血がみられるとされているが,本症例のように乳房,特に乳輪が標的となり巨大になるとの記載はない.組織学的には乳房,,乳輪共に間質の増生が著しく,エストロゲンの長期にわたる作用と考えられた.卵巣摘出後の約1年6ヵ月の今日,胸囲88.5cm,左乳輪5.5×5cm,右乳輪6.5×6.0cmと縮小し正常に復しつつあり,血中エストロゲン値も低値を持続している.
  • 横須賀 稔, 板橋 進, 本多 元陽, 田崎 博也, 谷本 康信, 庄司 佑
    1982 年 43 巻 5 号 p. 532-541
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    73歳の女性が腹痛,嘔気と嘔吐を主訴として入院した.胸部の単純X線写真で右横隔膜心臓角に異常陰影を認め,注腸造影で右胸腔内に横行結腸があることを証明しMorgagni孔ヘルニアと診断した.開腹してMorgagni孔ヘルニアの嚢に癒着している大網を切離し,ヘルニア嚢を切除して根治術を行った.術後の経過は良好であった.
  • 高橋 寿久, 斎藤 慶一, 若林 利重, 河合 大郎, 原口 義座, 佐久間 崇
    1982 年 43 巻 5 号 p. 542-549
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    器械吻合の有用性は,安全性,確実性,迅速性の三点をかねそなえていなければならない.われわれも1977年6月にはじめて食道静脈瘤に対しPKS-25Mを用い食道離断術を行い, 1979年6月よりは万能型吻合器(SPTU)を用い上部消化管器械吻合を行ってきた.現在までに112例の上部消化管疾患に対し実施し良好な成績をおさめた.これら上部消化管器械吻合のうち器械操作のトラブルにより手縫吻合にかえた4例を除いた108例に対し,年度別,疾患別の手術成績に検討を加え,術後内視鏡にて吻合口の観察を行ってみた.特に食道空腸吻合術時の食道断端の処理に工夫を加え,その方法が確立されてきた.
    器械吻合で最も問題となるのは縫合不全で,これは初期の3例(2.8%)にとどまり,手術手順の確立,器械操作の熟練により, 1979年5月以後80例には全くなくなった.その他の合併症である吻合部狭窄は6例で,強度の狭窄は食道離断術の2例で,他の4例は軽度で,術後内視鏡的観察にて吻合部狭窄がみられたが数カ月で軽快している.
    上部消化管器械吻合の手術手順が確立され,縫合不全が全くなくなり,その他の合併症も著しく減少し,安全,確実,迅速に行われるようになって来た.
  • 武田 仁良, 掛川 暉夫, 衛藤 道生, 福嶋 博愛, 橋本 謙, 荒木 恒敏, 日野 邦憲, 田中 政治
    1982 年 43 巻 5 号 p. 550-554
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下部食道噴門癌には下部食道(Ei Ea)やE-G junctionを中心とし噴門部癌,噴門癌,食道胃接合部癌,食道噴門接合部癌,食道胃境界部癌と呼称される癌のほかC領域の癌が含まれるが胃を中心として進行したCおよびCE癌が最も多い.今回はCM CMEなどM領域にかかるものおよび扁平上皮癌を除いたEC E=C CE C症例を上部胃癌とし,胸骨縦切開法も含めてその開胸例より胸腔内リンパ節を中心に検討を加えた.
    最近10年間の胃上部癌切除例は123例で,そのうち胸腔内リンパ節郭清を行ったものの胸腔内リンパ節転移陽性率は21.2%で腹腔内リンパ節転移陽性率も高く(1)~(11)など広範に亘りEにおよぶ上部胃癌の根治術では下部食道切除と胃全摘および膵脾合併切除も含めてのリンパ節郭清が進行癌での基本的手術である.
  • 桜井 隆久, 深井 泰俊, 堀田 敦夫, 菊川 政男, 白鳥 常男
    1982 年 43 巻 5 号 p. 555-559
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近著者らは肝内結石を形成した胆管空腸吻合部狭窄症の2例を経験したので報告する.
    症例1は55歳男性,主訴は悪寒戦慄を伴う発熱及び軽度黄疸である.家族歴には特記すべきことはない.既往歴は胆嚢結石のため某医にて胆嚢摘出術を受けたが,術中胆道損傷を起し総肝管空腸吻合術を受けている.現病歴は術後早期より時々悪寒戦慄を伴う発熱がみられ,最近になり発熱回数が頻回になってきたため当院内科を受診した.胆管炎と診断されPTCドレナージのため当科に紹介される. PTC所見にて吻合部狭窄,肝内胆管拡張及び結石様陰影を多数認めたためPTCドレナージ後約2ヵ月目に総肝管空腸Roux-en-Y吻合術を再度施行した.
    症例2は61歳女性,主訴は悪寒戦慄を伴う発熱及び黄疸である.家族歴には特記すべきことはない.既往歴は胃癌(stage I)にて根治術を受けている.本手術の肝門部リンパ節廓清時に発生したと思われる胆道損傷のため,術後難治性の外胆汁瘻を形成する.その後外胆汁瘻閉鎖のため再手術を施行するが,損傷部位の発見が因難であったため左肝内胆管(外側区域枝)空腸Roux-en-Y吻合術を施行した.再手術後時々発熱及び黄疸が出現し,肝障害を伴ってきたため当科入院となる. PTCドレナージを施行したが,総肝管の完全閉塞,肝内胆管の拡張及び結石様陰影が多数認められ,これより1ヵ月後に,前回の吻合部はそのままにして総肝管空腸Roux-en-Y吻合術を施行した.
    摘出した結石の成分は,症例1がビリルビンカルシウム81%,高級脂肪酸カルシウム19%,症例2がそれぞれ80%, 20%であった.
    この種の結石の発生には,吻合部狭窄→胆汁うっ滞→感染→ビリルビン系結石の発生,という過程が考えられ,本2症例でも胆汁中にE. coli, klebsiella pneumoniae,などが検出されたことから,この過程が除々に進行し結石の発生をみたものと考える.
  • 古屋 国彦, 飯泉 成司, 岡 寿士
    1982 年 43 巻 5 号 p. 560-564
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    突然に大量下血を来して緊急入院した53歳の男性,腹部腫瘤のほか,左側頸部のリンパ節腫脹を認め,同リンパ節の組織学的検査で転移性悪性リンパ腫と診断された.小腸造影と腹部血管造影により原発巣は回腸と判明した.下血の改善がみられなかったため開腹手術を行ない,回腸に発生した悪性リンパ腫を切除し,軽快退院した.
  • 豊野 充, 鈴木 清夫, 松本 繁, 松本 修, 石山 秀一, 海法 恒男, 大内 清則, 中村 尚志, 松田 幹夫
    1982 年 43 巻 5 号 p. 565-570
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去4年間に教室で経験した大腸癌手術例は145例で,そのうち早期癌は13例(9%)である.腫瘍の占居部位はS状結腸4例,直腸9例である.形態はIp型5例, Is型7例, IIa型1例で,最大径2.0cm以下が9例であったがIIa型の1例は5.0cm大のm癌であった.手術は13例中12例にリンパ節郭清を含めた根治手術を行なった.組織型は高分化腺癌12例,中分化腺癌1例であり, 3例に“Carcinoma in adenoma”の所見を認めた. sm癌5例中3例に脈管侵襲を認め,またn2 (+)のリンパ節転移を1例に認めたが,この症例はRbに発生した2.0cm大Is型の中分化腺癌であった.診断としては組織型やfocal carcinomaの検索と深達度診断のため可能な限り内視鏡的ポリペクトミーを行なうべきと思われた.治療方針としては, m癌に対してはポリペクトミーや局所切除で十分であり, sm癌に対しては脈管侵襲やリンパ節転移がみられたことから原則として根治手術を行なうべきであると考える.
  • 本邦報告例の検討
    松崎 正明, 上野 正樹, 神谷 勲, 杉浦 勇入, 堀尾 静, 佐久間 温巳
    1982 年 43 巻 5 号 p. 571-575
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    結腸穿孔は,消化管穿孔の中でも,虫垂胃十二指腸の穿孔に比べ稀な疾患である.特に,外傷,炎症性疾患,癌等の器質的疾患のない.いわゆる特発性結腸穿孔は極めて稀である.最近,我々は胃十二指腸潰瘍穿孔の診断のもとに手術し,治癒せしめ得た1例を経験したので,本邦報告例の検討も加て報告する.症例は58歳男性,主訴は腹痛,既往歴,家族歴共に特記すべきことなし,来院時ショック状態で,腹部膨満,腹壁緊張著明,腹部立位単純で右横隔膜下に遊離ガス認められた.胃十二指腸潰瘍の疑いで緊急手術す.腹腔内に多量の糞便を含む腹水あり, S状結腸に小指頭大の穿孔を認めた.健状部を含め腸管を約20cm切除し,端々吻合す,腹腔内を十分洗浄し,ドレーンを3本挿入し一期的に創閉鎖した.術後,腹膜炎,創感染を起こし回復遅れるも,術後50日目に全治退院した.本邦報告例40例を加え, 41例について検討した.頻度は,消化管穿孔中,虫垂を除くと2%前後,年齢は16~87歳に見られるが, 60~70歳代が最も多い.穿孔時期は午前中の排便,排尿時に多い.腹腔内遊離ガスの証明は約42%であった.手術時間と予後については, 6時間以内の症例は全例生存している.白血球増多を来たす症例の予後は良好で,生存例は66%,一方増多しない症例の生存例は47%であった.全症例の死亡率は46.3%.穿孔部位は, S状結腸に最も多く,腸間膜附着部反対側に多い
  • 中塚 博文, 黒田 義則, 奥道 恒夫, 西亀 正之, 江崎 治夫
    1982 年 43 巻 5 号 p. 576-583
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは1968年から1980年12月までに, 36例の重複癌症例を経験した.うち1例は3重複癌で,他は全て2重複癌であった.また8例は広島での原爆被爆者であった.
    重複癌の判定はWarrenおよびGatesの定義を採用し,第1癌と第2癌の発現間隔が1年未満の症例を同時性, 1年以上を異時性とした. 15例が同時性, 21例が異時性であった.
    教室において,上記13年間における悪性腫瘍症例のうち,大腸201例中11例(5.5%),甲状腺253例中12例(4.7%)肺181例中8例(4.4%)乳腺166例中5例(3.0%)胃619例中12例(2.0%)に重複癌を認めた.
    好発年齢は男性70歳代,女性60歳代で,男女比は1:1.4で女性に多かった.
    発現間隔は平均4年3ヵ月で,男女別では女性に長い傾向がみられた.また原爆被爆者8例の平均が6年10ヵ月と長かった.
    臓器別症例数は,第1癌では甲状腺7例,子宮4例,乳腺3例で消化器系は胃4例,大腸4例であった.一方第2癌では,胃7例,大腸7例,食道2例,肝1例,膵1例と消化器系が多く全体の50%を占め,また肺6例,甲状腺5例であった.
    第1癌と第2癌の組み合わせは,同一系統臓器に多い特徴は認められなかった.なお36例中25例(69%)に消化器系の癌の関与を認めた.
    予後は単発癌に比べ特に不良とは言えず,異時性が同時性よりやや良好であった.
    悪性腫瘍の発生機序としては,発癌物質や発癌ウィルス,放射線等の外来性の刺激と,遺伝,体質,免疫などの宿主側の因子が考えられ,種々の検討が行なわれているのが現状である.
    われわれは,重複癌36例中8例に広島での原爆被爆者を認めたので,これらを含め若干の文献的考察を加え報告した.
  • 秋丸 琥甫, 渋谷 哲男, 大場 英己, 日置 正文, 松山 謙, 小山 寿雄, 高橋 望, 曽我 龍紀, 庄司 佑, 掛川 功一, 野口 ...
    1982 年 43 巻 5 号 p. 584-590
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当教室で過去5年間に難治性腹水患者16人に施行した腹腔-静脈シャント(以下PVシャントと呼ぶ)の成績を報告する.
    肝硬変症9例と癌性腹水7例にPudenz弁やLeVeen弁によるPVシャント術を延べ20回施行した.シャントは原則として右上腹部において局所浸潤麻酔後, collecting tubeを腹腔内に挿入し, valveは腹直筋下に埋没させ, draining tubeは皮下を通して右内頚静脈に挿入し先端を腕頭静脈内に留置した.利尿剤は術後も使用された.そしてシャント術前,術後の腹囲,尿量その他の検査所見をチェックし比較検討した.
    腹囲については,術直後は13例(81%)が減少を示し,術後2週間でも値が術前より低いものは11例(69%)で平均9.7cm(10.9%)の減少が認められた.この11例をシャント有効例と見做した.一日の尿量については, 10例(63%)が増加を示し有効例では術後2週間でも1000ml以上が保たれており,術前に比べ平均611mlの増加であった.体重は,シャント無効例は増加を示したのに対し,有効例では術後2週間で平均4.7kgの減少が見られた.血清アルプミン値は2週間後に6例で,術前値より上昇の傾向を認めた.. BUN,血清クレアチニン, GOT,血中ビリルビン等については,シャントによる明らかな変化を認めなかった.
    有効シャントの作働期間は,肝硬変症例で平均5.9カ月,癌性腹水症例で2.2カ月であった.
    合併症では,シャント閉塞が多く見られ(70%)他に急性心不全, DIC,発熱や腹膜炎が各々1例ずつ見られた.
    以上,癌性腹水をも含めた難治性腹水症例に対するPVシャントの当教室での経験を報告し,その有用性と問題点につき検討を加えた.
  • 深尾 立, 折居 和雄, 更科 宏美, 名越 和夫, 高瀬 靖宏, 竹島 徹, 轟 健, 岩崎 洋治, 飯田 俊代, 武田 光志
    1982 年 43 巻 5 号 p. 591-594
    発行日: 1982/05/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化酵素阻害剤であるアプロチニンと腸液吸収を目的とするマクロゴールを主成分とするアプロチニン・マクロゴール軟膏を試作し,腸瘻周囲皮膚炎30例に使用し有効であった.著効を示したビラン,皮膚炎症の強い2症例について詳述した.
    なお,上記軟膏でも充分な効果をもつが,処方中の酸化亜鉛がアプロチニンの活性を低下される作用をもつために長期保存ができないことをみるけた.現在は酸化亜鉛を除いた製剤を使用し良い効果をあげている.
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