日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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44 巻, 11 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 村上 光右, 臼井 利夫, 山口 邦雄, 森偉 久夫, 内藤 仁, 宮内 大成, 伊藤 晴夫, 島崎 淳, 武宮 三三
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1265-1272
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    副甲状腺機能亢進と診断され治療をうけた19例について,その術前の状態,検査所見および術後経過を調べた.本症の尿路結石患者に占める頻度は1.38%,再発結石に限ると6.6%であった.年齢は17~58歳,平均40歳,男女比は約2:1.結石部位では腎結石14例,尿管結石4例,膀胱結石2例であった.このうち再発結石は13例68%を占めた.症状:尿路結石を主訴としたもの89%,胃腸症状は42%,易疲労感は26%,高血圧は26%にみられた.骨変化は62%にみられ,おもに手示骨とくに基節骨,中節骨に骨膜下吸収像を呈した.検査成績:血清Ca値は17例89%に明らかに高値を示し,残る2例も時々異常値を示した.血清P値では74%に異常値を示し,他の症例も時おり異常低値をみた. Al-p値は78%に上昇をみた.尿中化学: 24時間尿中Ca排泄量では72%に高値を示し, Ca排泄量の高値にともない尿路結石の形成をみるといえよう. %TRPでは74%に異常低値をみた.血中PTH濃度はあわせて57回測定し21回37%に高値を示した. Ca負荷試験は施行した全例陽性であった.腎機能では16%に軽度低下がみられた.局在診断は5例29%に予知できた.手術と術後経過:腫瘍患側部位は左上腺7例,右上腺6例,左右下腺各4例.異所性として胸腺左葉に1例認めた.腫瘍の大きさは6×3×2mmから52×50×30mm. 重量は52mg~30g. 病理組織は腺腫15例,過形成3例.結石成分はCa. oxal. +Ca. phos. 7例70%, Ca. oxal. +Ca. phos. +MAP 2例20%, MAP 1例10%であった.術後血清Ca, P値は2例を除き,ほぼ第3病日に最低値を示し,第7病日にほぼ正常となっている. Hungry bone Syndromeを呈した症例は正常化に1年2ヵ月を要した. Al-p値は2~4週で正常化した.尿中Ca, P排泄量も術後全例正常化している.
  • 鈴木 忠, 久米川 和子, 井上 完夫, 椿 哲朗, 小野田 万丈, 西 純一, 村田 順, 岡崎 武臣, 中川 隆雄, 倉光 秀麿, 織畑 ...
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1273-1281
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和57年末までの13年間に,胃及び十二指腸の良性潰瘍性疾患にて開腹手術を行なったのは,新生児例を除いて790例であり,このうち,手術所見及び病理所見により胃の急性潰瘍と診断されたのは63例であった.
    急性胃潰瘍につき,我々は,肉眼所見を主に, A: UI II~IIIの不整形潰瘍型, B: UI I~IIのビラン型, C: UI III~IVの急性深潰瘍型に分類したが,教室例ではA: 25例, B: 22例, C: 12例, A+B: 3例, B+C: 1例であった.
    この分類にのっとって下記の諸項目の検討をし,その特徴を述べた.
    1) 年齢分布, 2) 潰瘍部位, 3) 露出血管, 4) 手術術式と再手術例, 5) 死亡例, 6) 背景, 7) 急性潰瘍くり返し例.
    この中で,急性胃潰瘍の主な臨床症状は出血であり,特に緊急開腹手術の適応となった症例の大部分は,ショックレベル以下に到る大量出血を来たしたものである事を述べたが,かかる病状にあっては,救命のために積極的な止血処置が最優先されるべきである.
    開腹に際しては,胃切除に先立って出血部位の充分な確認をすべきであり,不整形潰瘍型で大潰瘍例については潰瘍の取り残しをしない事が重要であり,多発ビラン型では,そのうちの1, 2個のビラン面にデュー ラフォイ型の露出血管が存在するのを見逃がさない事が重要であると述べた.
    術式決定に際しては,胃状況に目をうばわれる事なく,全身状態,発症の背景,術後消化機能等も充分に考慮し,同時に,救命第1の観点に立って,出血部縫合止血,潰瘍部切除から胃全摘術までの多様な方針のうち,どれに決めるか,症例個々に検討する事が重要である.
  • 田伏 克惇, 勝見 正治, 小林 康人, 野口 博志, 青山 修, 江川 博, 森 一成, 山上 裕機, 東 芳典, 永井 祐吾, 田伏 洋 ...
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1282-1291
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    開発したMicrowave Tissue Coagulatorは電気メス,レーザー,あるいはクライオサージェリー,超音波メスも含めて生体組織の凝固,凍結,組織破壊,排除,切除を目的として使用する外科治療の一助となる手術機器で広義のメスと称し,これを用いて行なう外科的治療をMicrowave Surgeryと称している.
    General Surgeryの領域において昭和55年6月より昭和56年5月までの期間に種々の臨床応用を試み,以下の適応と効力についてまとめることができた.
    1. 適応として: 1) 出血病巣の止血, 2) 実質臓器腫瘍の摘除, 3) 実質臓器の切除, 4) 腫瘍の凝固壊死による腫瘍縮小に適応があり,観血的にも,また非観血的にも行ない得る.
    2. 効用として: 1) 無血的切除が可能, 2) 切除不能腫瘍に対する壊死効果に優れ, 3) 術中腫瘍細胞の散布や転移防止効果があると考えられる. 4) 局所においては加熱による殺菌効果がある. 5) 腫瘍細胞においてはnecrobiosisによる癌抗原性の増強効果を期待し得る.
    以上医学的メリットが高く,また用い方においては,非接触性に用いるレーザーや,接触性に用いる電気メスとは異なり,組織刺入法によって用いる点,新しい特長ある方法である.また本装置は従来の電気メスとは異なり,対極板設置の必要がないため接触不良による熱傷や,洩れ電流による電気ショックならびに併用する医用電子機器への電波障害がない等安全性の面においても優れたものである.
  • 天野 一夫, 磯部 ゆみ子, 樋口 良平, 金丸 洋, 倉光 秀麿, 織畑 秀夫
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1292-1296
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年開発された, Swan-Ganzカテーテルは,容易に挿入でき,これにより,一般外科医にとっても重要な循環動態に関する情報を得ることができる.
    術前よりSwan-Ganzカテーテルを挿入した22例の成績を分析し,一般外科手術患者の循環動態を解析した.
    術前値は,加齢とともに末梢血管抵抗,肺血管抵抗は増大する傾向を示し,心係数は減少する傾向を示した.
    術後は,心係数は術前4.1±1.0から術直後5.5±1.0 (L/min/M2)と増加し,末梢血管抵抗は術前1,854±976から術直後1,287±539 (dyne・sec/cm5/M2と低下した.これらの値は,術後24時間後には術前値迄近ずくが,術前値迄は房らないという傾向を示した.
    術後,肺動脈楔入圧から15mmHg以上の高値をきたした例は22例中5例で, 3例は第2~3病日, 2例は第1病日に最高値を示した.第1病日に最高値を示した例は,術前より循環水分量の過負荷があったと考えられた.
    死亡例は, 4例で全ての例で術前より,何らかの循環動態の値の異常を認めた.また死亡例の術前値は,末梢血管抵抗高値群と,末梢血管抵抗値群に分けられた.
  • 荒木 京二郎, 山田 真一, 安田 正幸, 冨士原 彰, 岡島 邦雄
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1297-1302
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1. 胃癌を中心とした10例の外科入院患者にCFX (Cefoxitin) 2gを30分間で点滴静注し,腹腔内浸出液移行(5例)および貯溜腹水移行(5例)を検討した.その結果,腹腔内浸出液では35.9~87.5μg/mlのピークが得られ,腹水では50.0~93.8μg/mlのピークが得られた.腹腔内浸出液移行の推移は血清中濃度と類似していたが腹水では投与6時間後でも平均57.1μg/mlと高濃度を維持していた.血清中濃度のピークに対する割合は,それぞれの平均で43%, 52%であった.
    2. 創感染6例,腹膜炎3例,胆道感染2例の計11例の術後感染症患者にCFXを1日4~6g, 4~18日間投与した.その結果,臨床効果は有効率91%, 細菌学的には菌消失率83%であった.副作用は認められなかった.
  • 乳頭腫瘤を作った1例
    内田 賢, 桜井 健司
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1303-1306
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳房のいわゆる癌肉腫の1例を経験したので臨床病理学的検討を行なった.
    症例は47歳,女性である.左乳頭先端に直径2cmの球形腫瘤を認め,生検後,左非定型的乳房切断術を行なった(T1N0M0). 切除乳房内に,腫瘤があり,組織学的にいわゆる癌肉腫と診断された.癌細胞が乳管内を発育進展し,乳頭で腫瘤を形成したものと推測された.摘出リンパ節11コのうち2コに扁平上皮癌巣の部分からの転移がみられた.
  • 迷切により治癒せしめた1例
    山下 裕一, 笠原 小五郎, 宮田 道夫, 金澤 暁太郎, 森岡 恭彦
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1307-1313
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Child変法Roux-Y再建術並びにRoux-Y脚と残胃間に空腸上部を間置するmodified Roux-Y再建術を行った膵頭十二指腸切除症例29例中1例に難治性胃空腸吻合部潰瘍の発症をみ,この症例の胃液酸度は, BAO値3.648mEq/h, MAO値6.944mEq/hで相対的な胃酸分泌亢進と考えられたため経胸的幹迷切術を施行し,難治性潰瘍を治癒せしめた.
    非潰瘍10症例にペンタガストリン刺激による胃液検査を行った結果, BAO値は0.155±0.199mEq/h (Mean±SD), MAO値は0.497±0.488mEq/hであり,低酸分泌を示した.非潰瘍17症例にミートソース経口摂取による血中ガストリン検査を施行し, Roux-Y群の空腹時値は27.2±8.5pg/ml, modified Roux-Y群のそれは23.8±7.lpg/mlであり共に低値を示し経口摂取後の変動は認められなかった.
    以上の事から膵頭十二指腸切除後の吻合部潰瘍発生についてガストリンの関与は考えにくいことから迷走神経関与による胃酸分泌亢進が主因の1つと考えられ,その外科的予防並びに治療には迷切が効果的であると考えられた.
  • 遠藤 秀彦, 奈良坂 重樹, 関口 淳一, 藤沢 秀仁, 八重樫 雄一, 折居 正之, 矢川 寛一
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1314-1318
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝の非上皮性腫瘍は稀であると言われるが中でも肝原発の未分化肉腫は非常に稀な疾患であり,予後も悪いと言われている.
    われわれは最近, 65歳の女性に肝腫瘍を認めこれを摘出,組織学的に未分化肉腫と診断された.術後1年9ヵ月を経過したが再発傾向を認めず健在である.
    これまで本邦では3例が報告されたに過ぎず, 1978年Stokerら1)の集計でも本邦例1例を含む31例であった.そのほとんどが小児期に発生しており最高年齢は28歳であった.本症例は65歳であり最高年齢者となる.
    若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 諸富 立寿, 今村 敦郎, 辻谷 俊一, 井上 文夫, 千葉 武彦, 森山 正明, 綾部 欣司, 岩本 吉雄, 馬場 三男, 草場 威稜夫
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1319-1325
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前に存在診断が可能であった胆嚢良性偽腫瘍の3手術例を供覧し,併せて,若干の文献的考察を加えて報告した.ちなみに,いずれも胆石非合併例であった.
    症例1: 43歳,女性.主訴:右季肋部痛.点滴胆道造影で胆嚢に陰影欠損,胆嚢超音波断層像で腫瘤エコーが認められ,胆嚢摘出術が施行された.単発した有茎性の小ポリープ様病変で,病理組織学的にはadenomatous hyperplasiaと診断された.
    胆嚢の良性腫瘍性病変としては比較的に稀なfocal typeのadenomatous hyperplasiaであった.
    症例2: 40歳,男性.主訴:心窩部痛.点滴胆道造影所見では明らかな異常所見はみられなかった.しかし,胆嚢超音波断層像で腫瘤エコーが認められ,胆嚢摘出術が施行された.有茎あるいは無茎の小隆起性病変が多発し,病理組織学的診断はcholesterol polypであった.
    症例3: 47歳,男性.健康診断の精査過程で,胆嚢超音波断層像に腫瘤エコーが認められ,胆嚢摘出術が施行された. cholesterol polypが多発し,症例2と同様な所見であった.
    なお,症例2と3の摘出胆嚢は, localized cholesterosisの状態を呈し,また,有茎性であったポリープの茎は,著しく細小であった.以上の自験例でも知られるように,今日では,胆嚢の腫瘍性小病変の存在診断は比較的容易になった.しかし,その質的診断は,なお困難であり,胆嚢摘出術の施行もやむを得ないことと考えられた.
    反面,古くから,無石胆嚢炎の術後遠隔成績が予想外に悪いことが知られており,その術後愁訴と胆道ジスキネジーとの関連も示唆されている.従って,自験例のような症例では,術後愁訴に関する遠隔成績の評価も,向後の課題のように思われた.
  • 山本 誠己, 谷口 勝俊, 河野 暢之, 勝見 正治, 玄 栄世
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1326-1329
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    十二指腸平滑筋肉腫はまれな疾患とされてきたが,近年低緊張性十二指腸造影,十二指腸内視鏡検査,腹部血管造影の普及に伴い報告例も増加し,術前診断も可能となってきている.我々は後腹膜腔へ破裂出血というまれな疾状を呈し,十二指腸潰瘍を合併した十二指腸平滑筋肉腫の一例を経験したので報告した.
  • 杉本 恵洋, 坂口 雅宏, 竹井 信夫, 谷口 勝俊, 勝見 正治
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1330-1334
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和46年1月から56年12月までの11年間に教室で経験した小児腸重積手術症例61例を, Hutchinson手技による整復のみの症例53例と腸切除例8例とに分け,腸切除を必要とした原因を見出そうとした. (1) 年齢, (2) 症状, (3) 発症から手術までの経過時間, (4) 重積の型, (5) 重積の先進部の位置, (6) 器質的病変, (7) 腸切除を必要とした原因, (8) 術後合併症,について検討した.その結果,腸切除例は,年齢,症状には特に関係なく,手術までの経過時間の長いもの,回腸回腸型,器質的病変(メッケル憩室, Schönlein-Henoch紫斑病,等)を伴うものが多かった.私達が経験した興味深い症例として, (1) エンドトキシンショックを併発し,救命しえた症例, (2) エンドトキシンショックを併発し,救命できなかった症例, (3) Schönlein-Henoch紫斑病を合併した症例,以上3例を今後の小児腸重積症の治療に示唆を与えるかと思われたので紹介した.
  • 栗山 洋, 梅下 浩司, 亀山 雅男, 野口 真三郎, 明石 英男, 水本 正剛, 青木 行俊
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1335-1339
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸結核は近年減少し,外科的治療の対象となるのは比較的まれである.我々は特異な臨床経過を示した下行結腸結核を経験したので報告する.
    症例は66歳男性で, 19歳時腸閉塞症状にて単開腹手術を受け,治癒したと考えられた結核性腹膜炎が, 47年後に,結腸の結核巣が漿膜より腹腔,大網さらに腹膜,皮下にまでおよぶ腫瘤を形成し,結腸を含めて切除し治癒できた.
    腸結核の術前診断は困難で,本症例は術前結核を確診出来なかったのであるが,回顧的にみると,注腸所見として潰瘍瘢痕を伴なう萎縮帯変化像(と思えばそう見えてくる)と偽ポリープ様像,腸間膜リンパ節の石灰化像,肺の陳旧性肋膜炎像,血沈値の亢進から,腸結核を疑えたと思われる.一歩進めて内視鏡下生検をおこなっておれば確診を得られたかもしれない.腸結核について若干の文献的考察を加えた.
  • 特に分類および鑑別診断について
    陳 鋼民, 河島 浩二, 林 宏, 坂口 勲
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1340-1344
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和55年3月より58年3月の3年間,我々は6例の大腸穿孔を経験した.その内訳は大腸癌穿孔3例,憩室穿孔1例,特発性穿孔1例,機械損傷穿孔1例である.
    全例とも術後順調に経過していたが, 1例79歳高齢者は術後32日目に2度目の急性心筋梗塞のため,失った.
    大腸穿孔の検討するためには,原因別に分類する必要性がある.我々は諸家の報告を参考して,一次的,二次的の外因性と内因性に分類した.
    単発性憩室穿孔は特発性穿孔と肉眼的には鑑別が困難である.今回我々は憩室穿孔35例を収集し,その術前臨床症状,前駆症状,病理特徴などを検討した.
  • 冨田 隆, 中井 昌弘, 東口 高志, 岡田 喜克, 五嶋 博道, 吉田 洋一
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1345-1349
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性. 3~4ヵ月前から便柱狭小化があり,突然大量の肛門出血を来たし来院した.直腸診で肛門より2cm口側に7時を中心に約半周を占め径6~7cm, 直腸粘膜で被われ内腔へ突出した腫瘍がみられ,その下端には出血を伴った潰瘍が形成されていた.生検で平滑筋肉腫と診断され,第3群までのリンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術が行われた.腫瘍割面は帯黄灰白色充実性腫瘍で,実質内に出血壊死巣が散在していた.組織学的に直腸の固有筋層由来と考えられた.周囲への浸潤やリンパ節転移はなく,術後3ヵ月の現在健在である.
    直腸に発生する平滑筋肉腫は比較的稀な疾患で,本邦では自験例を含め80例が報告されている.主症状は肛門出血,疼痛や排便困難などであるが,肛門出血が最も多く大量出血は約30%にみられた.術前診断は困難な症例が多い.主に生検組織診によるが,平滑筋腫と判定されても摘出標本で平滑筋肉腫に訂正されたり,腫瘍の部位によって組織型が異なる症例や,更に摘出標本で良性であっても数年後に再発を来たすこともある.従って確定診断に際し組織像ぽかりでなく,腫瘍の大きさや周囲への癒着などの理学的所見も十分参考にする必要がある.予後は悪く,局所再発のみならず血行性転移やリンパ行性転移も認められるため,癌腫と同等の根治手術を施行すべきである.
  • 本邦症例の集計と文献的考察
    松井 俊行, 田原 昌人, 木曽 光則, 光野 正人, 小山 〓甫, 福富 経昌, 井上 喬之
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1350-1353
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹壁desmoid tumorは稀な良性腫瘍であるが,最近我々はこの1例を経験したのでここに報告し,あわせて文献的に集計し得た本邦例に自験例を加え,これについて考察してみた.
    症例は32歳の女性で約3ヵ月前より右下腹部の固い腫瘤に気付き,同部の軽い疼痛も生じたため来院した.諸検査後,腹壁腫瘤として摘出手術を施行したが,腫瘤は外膜斜筋腱膜および内腹斜筋に被われており,これらとは容易に剥離可能であったが,腫瘤後面の横筋筋膜および鼡径靱帯に浸潤が認められた.摘出標本は軟骨様硬で,浸潤部分を除き薄い被膜に被われていた.割面は特徴的で,腱様の光沢を呈していた.組織学的には不規則な線維束を形成した線維芽細胞と豊富な膠原線維より成っていたが,腫瘍細胞には悪性所見は認められなかった.以上により,本腫瘍は内腹斜筋筋膜より発生したと思われるdesmoid tumorと診断された.
    自験例を含めた本邦例56例についてみると,女性48例(85.7%),男性8例(14.3%)と女性に圧倒的に多く,好発年齢も女性では20~30歳代に多発していた.また,発生部位は右下腹部に多く,筋との開席性では腹直筋に多いという結果を得た.
    治療法は,本腫瘍は本来良性のものであるが,再発や悪性化の報告もあることから,早期に外科的に完全摘出すべきである.
  • 松崎 正明, 堀尾 静
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1354-1356
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    5例の消化器癌の術後患者に, PSKを単独,またはFT-207との併用で投与し,血漿CEA値の低下,または臨床症状の改善を認めた. PSK単独,またはFT-207との併用療法を長期に続けても,認むぺき副作用はなかった.
    血漿CEA値の変化は,臨床症状とよく一致していたが,癌の再発に際し,血漿CEA値は臨床症状の出現に先行して高値を示した.消化器癌患者の術後に,経時的に血漿CEA値を測定することは,癌再発の早期発見に有意義であると思われた.
  • 附,脾epidemoid cystの本邦報告例の検討
    山口 隆
    1983 年 44 巻 11 号 p. 1357-1365
    発行日: 1983/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    脾嚢腫は稀な疾患であり多くは仮性嚢腫である.脾嚢腫と外傷との関連を求めると,外傷性脾実質内血腫から二次的に仮性脾嚢腫が形成されるとする報告は多いが,逆にまず真性脾嚢腫が存在し,これに外傷を誘因として嚢腫内出血を来した報告は極めて稀である.
    本症例は真性脾嚢腫のうちFowlerの定義を満たすepidermoid cystであるが,外傷性嚢腫内血腫を来し,さらに後日嚢腫感染を伴って発症したと考えられる.本症例はまた,主病変の他に周囲に数個の微視的娘嚢腫を有しており, epidermoid cystの発生或いは成因に関しても興味ある知見を提示した.
    Epidemoid cystを中心に脾嚢腫全般に亘って分類・成因・症状・診断・治療等に関する考察を加え,さらに1981年までのepidermoid cystの本邦報告例を集めて統計的観察を行った.なお,本邦報告例ではepidermoid cystの診断名に種々の表現が用いられており混乱がみられることから,呼称の統一が望まれる.よって私見を提示した.
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