担癌生体では,血清中に糖蛋白が増加するといわれている.
我々は胃癌,大腸癌,肝胆道系癌,乳癌,甲状腺癌などの悪性腫瘍患者を主とした157例の血中過塩素酸可溶性糖蛋白(Acid Soluble Glycoproteins: ASP)を, ASPRO-GP Kitを用いて測定し,病態との関連から臨床における意義を検討した.
健康成人の血清ASP値は108.6±24.4mg/dlであるが,胃癌では155.9±67.0mg/dl,大腸癌137.1±34.1mg/dl,肝胆道系癌220.3±101.7mg/dl,乳癌125.2±42.7mg/dl,甲状腺癌123.5±35.5mg/dlと,いずれも高値をとっており, 160mg/dl以上の症例は全体の32%を占めていた.最高値を示したのは,肝癌の症例であった.
Stage別にみると,進行するにしたがって血清ASP値も上昇する傾向があり,胃癌では, Stage IVの75%が200mg/dl以上であったが,このような高値例は手術不能の経過をとった.
甲状腺の疾患別検討では,亜急性甲状腺炎に癌腫例より高い値を示す例がある.
治療前後の変動は,治療効果がうかがわれる症例では,明らかに前値より減少する傾向がみられ,全体として概略10%の減少が得られたが,試験開腹に終った例では増加していった.
各種検査と血清ASPの関係は, α
1-globulinとの相関が推測されたが, CEA, AFPやT cell, IgG FcR
+ T cellなどとの関連は見出し難なかった.
以上より,血清ASPの変動は,担癌生体の病態をある程度反映するように思われるが,これのみで判断することは困難であり,他のParameterと対比して検討するなら,悪性腫瘍患者の経過観察に際し,有用な一指標となり得ると考えられた.
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