日本臨床外科医学会雑誌
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44 巻, 8 号
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 931-942
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 942-951
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 952-965
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 966-973
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 974-983
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 984-999
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 1000-1010
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 1983 年 44 巻 8 号 p. 1010-1021
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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  • 食道ストリッピング法に関する実験的,臨床的研究
    松本 高
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1022-1035
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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    著者らの創案した非開胸的食道翻転抜去法(食道ストリッピング法)の妥当性を解明すべく,犬および剖検例で食道抜去時の縦隔肋膜損傷の有無並びに後縦隔内出血等の問題点を検索し,合わせて食道の動脈分布について研究を行った.その結果,食道抜去後の肋膜損傷を実験群の45%に認めたが,その程度は3.0cm以下の裂傷であり,後縦隔内出血も軽微で,特に一時的ガーゼタンポンによって同部の出血量を約1/3に減少させることができることから,本法の臨床応用への可能性が実証された.本法は非開胸下の手術法であるのでriskの大きい症例,特に低肺機能の症例にも手術適応を拡大し得るが, 1973年以降独自のRisk判定基準をもとに症例を選び, 24例に対して本法を施行した.低肺機能あるいはpoor riskのため開胸不能と考えられる食道癌症例に対する本法の適応を知る目的で,同時期の開胸下食道癌根治手術施行20例と比較検討を行った.手術時間,術中術後出血量の比較では本法の手術侵襲は少ないことが確認され,術後の呼吸循環機能,血液ガス・酸塩基平衡,生化学的検査値の変動も軽微で回復過程は良好であった.術後肺合併症も開胸術施行例に比べて,その発生頻度は低く本法の有用性が示唆された.手術死亡は24例中5例(20.8%)であるが,うち4例は前期手術例で,後期では12例中1例(8.3%)と手術成績は向上した.遠隔成績は現在2例の長期生存例(5年以上,7年以上)を得ており,ほぼ満足し得るものである.本法の唯一の欠点は胸腔内リンパ節を郭清できない点にあるが,一方早期回復が得られ,経口摂取が可能であるという優れた利点がある.姑息的手術ではあるが,低肺機能症例に対しても手術適応を拡大することが可能で,単なるバイパス手術を比べ,より延命効果を期待できる新しい術式である.
  • 安藤 道夫, 榊原 幸雄
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1036-1041
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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    いわゆる高位胃潰瘍に対し,選択的近位迷走神経切離術兼分節胃体部切除術(以下,近位迷切兼分節胃切術と略す)を施行した24症例について, 99mTc法による胃内容排出時間,胃分泌動態および食道胃接合部内圧変化などについて検討を試みた.近位迷切兼分節胃切術の術後胃内容排出時間をみると, T1/2値は59.8±6.72分(mean±SE), 60分残存率は52.3±2.43% (mean±SE)であり良好な排出能を示した.胃分泌に対する減酸効果は,高位胃潰瘍単独例の術前成績は大部分が低酸症例であり,術後の減酸効果は基礎分泌量(BAO) 100%,最大刺激分泌量(MAO) 89.8~100%,最高刺激分泌量(PAO)で90~100%であった.高位胃潰瘍兼十二指腸潰瘍共存例では術前高酸例が多かったが,術後の減酸効果はBAO97.8%, MAO79.8%, PAO87.5%であった.さらに本術式の食道胃接合部内圧におよぼす影響を検討する目的で, infusion法を用いて下部食道昇圧帯を測定したが,内圧約20cm H2O前後で幅約2cmにわたる昇圧帯が認められ,食道・噴門部機構もよく維持されていることが示唆された.
    以上の成績からも,高位胃潰瘍に対する近位迷切兼分節胃切術は有用な術式と考えられる.
  • 第1報 病理学的研究方法
    伊藤 正秀, 佐藤 薫隆, 近添 拓世, 為我井 芳郎, 工藤 玄恵, 三浦 妙太
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1042-1048
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍に対する迷切術の胃粘膜への影響を把握するため,同一胃に対して経時的に内視鏡生検を施行し,筆者ら独自の病理学的基準を作り,粘膜の動態を観察した.対象は最近5年間に施行した選択的近位側迷走神経切離術(SPVと略す) 16例(再発4例を含む)と選択的迷走神経切離術兼幽門洞切除術(SV+Ant.と略す) 23例である.方法は佐野の4点生検法を迷切前とSPV後の胃に対し実施した.一方,筆者らの残胃8点生検法をSV+Ant. 後に実施した.術前の生検は1回,術後は3~6ヵ月間隔で最長52ヵ月まで追跡した.病理学的検索は炎症性細胞浸潤の程度,びらんの状態,上皮の状態,腺窩上皮内粘液含有細胞の状態,腸上皮化生の有無の5項目である.各項目について程度分類を付加したのち粘膜の状態を次に示す4 stageに再編した. stage I (安定固有期):細胞浸潤が弱く,びらんの無い固有上皮で,粘液細胞も粘液胞体により充分に満たされている. stage II (修復移行期):細胞浸潤は中等度で,びらんは生検片表面の半分以下にとどまり,上皮は再生あるいは固有への移行期を呈し,粘液胞体の形成は不充分である. stage III(炎症活動期):細胞浸潤が著明で,びらんが生検片表面の半分以上を占め,上皮はほとんど再生期で,粘液細胞もほとんど認められない. stage IV(腸上皮化生):腸上皮化生を有する粘膜.成績. SPV後潰瘍非再発群と再発群, SV+Ant. 群を比較検討すると,びらん再生の頻度は, SV+Ant.>SPV非再発群>SPV再発群と言う傾向がみられた.特にSPV再発群では体部腺領域において術後早期からstage Iで安定化する傾向がみられた. SV+Ant. 群では口側粘膜の方が吻合側粘膜よりびらん再生が頻回であった.結語.筆者らの研究方法で迷切後の胃粘膜の動態が術式,再発の有無によって異なる事がわかった.
  • 尾崎 修武, 松井 泰樹, 小林 薫, 野津 長, 平井 啓介, 森 透
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1049-1054
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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    原発性アルドステロン症の手術に際して副腎腫瘍の局在診断が必要であるが,その方法の評価には一定の見解が得られていないのが現状である.我々は以前,本疾患の病態診断が必ずしも病理組織所見を反映していないことを指摘したが,今回,病理組織所見と腫瘍の局在性並びに術後遠隔成績との関係を検討し,以下の成績を得た.
    (1) 副腎腫瘍の局在診断に関しては,ヨードコレステロールによる副腎シンチグラフィーが最も信頼性が高かった.副腎静脈血サンプリングによるアルドステロン測定のみでは不確実であったが,これをコーチゾール値で補正したA/C比はかなり信頼性が高いと考えられた.副腎静脈造影やCTは不十分であった.これらの局在診断法は,主腫瘤以外のnodular hyperplasiaの局在までは判定不可能であった.
    (2) 手術後の遠隔成績に関しては,平均follow-up期間が12年余りの腺腫群では良好であったが,腺腫以外にも結節性過形成が多発していた症例などでは術後も愁訴がみられた.
    以上から,従来の腫瘍局在診断法では腺腫以外の副腎の病変の局在を診断することは無理であること,しかしながら術後のきめ細かいfollow-upを行う上で腺腫以外の病変も的確に診断することが重要であることが判明した.
  • 安田 秀喜, 高田 忠敬, 内山 勝弘
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1055-1061
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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    急性虫垂炎の診断には,従来から発症形式や触診,聴診,白血球数などを総合的に判断し行なわれてきた.しかし時に術前の病理や病勢が実際と異なることがしばしばみられた.そこでわれわれはより客観的判定法として超音波検査を導入したところ,急性虫垂炎の超音波所見の基本はstrong echoに囲まれたcystic patternであった.しかも虫垂の形状や糞石の存在,周囲腹水の存在も診断可能であった.さらに保存的治療で症状の改善をみたものでは虫垂像が消失した.なお,正常例ではいずれも虫垂像を認めなかった.
    そこで過去1年間に帝京大学第1外科で経験した46例中超音波検査で虫垂が描出されたものは21例,描出されなかったものは25例であった.又46例の計量診断ではtype Iが29例, type IIが14例, type IIIが3例であった.
    壊疸性虫垂炎4例の超音波検査では全例虫垂像を描出でき,計量診断でも全例手術適応であった.蜂窩織炎性虫垂炎7例の超音波検査では全例虫垂像を描出できたが,計量診断では手術適応のないtype Iが1例認められ,悪性過誤であった.カタル性虫垂炎16例の超音波検査では虫垂像が描出できたものは6例,描出できなかったものは10例であった.又計量診断にてgangrenous appendicitis又はappendicitis peritonitisと過剰診断した2例とも,超音波検査では虫垂像が描出できなかった.保存的例19例の超音波検査では虫垂像を描出できたものは4例で残り15例は描出できなかった.計量診断では全例type Iであった.
    以上の結果から急性虫垂炎に対する超音波検査はその病期,病勢をより客観的に判定できることから,急性虫垂炎の手術適応の決定に非常に有意義であると思われた.
  • 渋谷 進, 高瀬 靖広, 深尾 立, 岡村 隆夫, 岩崎 洋治, 長澤 俊郎, 阿部 帥
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1062-1066
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
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    特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)の治療には副腎皮質ホルモンを主体とした内科的治療と脾臓摘出術(以下脾摘)が施行されてきた.近年, ITPに脾摘を施行した成績は内科的療法の寛解率よりも良好であると報告されている.しかし,未だ脾摘の有効性を術前に予知する方法は確立されていない.今回, ITPに脾摘を施行した8例の脾摘の結果と術前,術後の検査所見を対比し,術前あるいは,術直後に脾摘の有効性を判定しうるか否かを検討した.
    観察対象は最近脾摘を施行したITP 8例であり, 8例中7例は術前に内科的療法を受け, 1例は脾摘を第1治療法とした.脾摘の効果判定は術後1ヵ月以後の平均血小板数が150×103/cmm以上に維持された症例を完全寛解とし,術前の血小板数より増加した症例を有効と判定した.術前検査項目として,年令推定発症時期から脾摘までの期間,術前1ヵ月以内の平均血小板数と平均血小板容積, 51Cr法による血小板寿命と血小板破壊場所(脾/肝比)を取り上げ,術後検査項目として,血小板数の最高値,血小板数が最高値に達するまでの期間,平均血小板容積の変化,脾重量を取り上げた.
    完全寛解例は8例中4例,有効例は3例,無効例は1例であった.完全寛解例群と有効および無効例群に分け,術前検査6項目を対比した結果,完全寛解例では平均血小板数が有効および無効例群に比し高値であり,血小板破壊場所では脾優位で脾/肝比が高い例が多くみられた.その他4項目では両群に明らかな差はなかった.次に術後検査4項目を対比した結果,完全寛解例では術後血小板数の最高値が400×103/cmm以上であり,平均血小板容積の減少が認められた.脾重量では重量の重い症例の多くに完全寛解例が認められた.
    術前検査のみでは脾摘の効果判定は困難であるが,術後数週の経過を加味することにより,予後の判定は可能であると考えられた.
  • 田中 康博, 中尾 量保, 宮田 正彦, 坂本 嗣郎, 門田 康正, 川島 康生, 覚道 健一
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1067-1072
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は甲状腺分化癌手術後5年目に肺癌を併発し死亡した症例を経験した.当初,甲状腺癌の肺転移と考えられていたが,剖検により甲状腺癌の肺転移,並びに甲状腺への転移を伴う肺癌の異時性重複癌と判明した.
    症例は65歳の男性で,昭和45年12月甲状腺乳頭癌のため根治術を施行した.術後2年目に局所リンパ節に再発が見られ,その後3回頚部リンパ節郭清を施行した.局所リンパ節再発の他は一般状態良好に経過していたが,昭和50年4月全身倦怠感が出現し,胸部X線で右下肺野,左上肺野に円形の腫瘤陰影が認められた.胸水からはadenocarcinoma cellが検出され甲状腺癌の肺転移と診断し治療を行ったが,急速に全身状態が悪化し昭和50年8月9日呼吸不全にて死亡した.
    剖検にて,右原発性肺癌とその肺癌の左肺への転移,及び甲状腺癌の両側肺転移と判明した.肺癌は肝,甲状腺等にも転移が認められた.甲状腺癌の局所再発は認められなかった.即ち甲状腺癌と肺癌とが相互に肺と甲状腺に転移した稀な病態であった.
  • 蔡 垂昇, 倉橋 真人, 渡辺 浩次, 服部 良信, 小沢 勝男, 杉村 修一郎
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1073-1076
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性で,昭和56年9月頃より嗄声が出現し声帯ポリープ摘出術を受けた.この頃より上下肢筋力と咀嚼力の低下,臀筋・大腿筋群の萎縮が著明となり内科で精査の結果,異所性胸腺腫と真性重症筋無力症の合併が疑われ外科転科となり, 11月12日症状の改善を期待し胸腺及び縦隔腫瘍摘出術を施行した.胸腺は術中病理組織にて大部分は脂肪に置換しており悪性所見はなかった.さらに縦隔を検索すると上大静脈後面に鶏卵大,上行大動脈後面にソラ豆大,主肺動脈後面に大豆大,左肺門部にソラ豆大,大動脈弓下の左迷走神経に浸潤性の大豆大の腫瘍を認めた.前三者は摘出した.後二者は摘出不能であった.ステロイド大量投与,抗コリエステラーゼ剤の投与によっても術後人工呼吸器よりの離脱に難渋した.縦隔腫瘍の最終組織診断は,小細胞肺癌中間型であった.筋電図を術後再検したところ術前とは全く異なるwaxingを呈した.筋電図の変化を考慮し,術後診断はEaton-Lambert症候群と判断し抗腫瘍剤,放射線療法と中心静脈栄養を併用し術後150日に呼吸器より離脱できたが,術後8ヵ月で死亡した.今回筋電図上術前waningを示し,術後waxingへと変化したEaton-Lambert症候群と考えられる症例を経験したので報告する.
  • 冨岡 勉, 岡 進, 織部 孝史, 山本 賢輔, 角田 司, 吉野 尞三, 原田 昇, 伊藤 俊哉, 土屋 凉一
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1077-1082
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    傍十二指腸ヘルニアは比較的希な疾患である.当教室で昭和44年より経験した傍十二指腸ヘルニアは3例であった.いずれも術前にイレウス症状を呈し,手術にて診断がなされた.これら3例と本邦報告例を合せた45例の検討を行った.
    平均年齢は28.8歳,男女比はほぼ3:1で男性に多くみられた.症状としては腹痛・嘔吐などのイレウス症状を示す.また慢性の便秘,下痢などの胃腸症状を認める場合が多く,腹部に柔らかい腫瘤を触知する場合がある.術前に診断をつけることは難しく,術前に診断した例は3例であった.検査の主体は単純及び胃腸透視によるレ線診断であるが,これらの手段によっても診断のつかない場合が多い.嵌入臓器としては空腸・回腸の大部分がヘルニア嚢の中に嵌入している場合と,空腸又は回腸の一部が嵌入している場合とがある.希に結腸の一部が嵌入する場合がある.したがって手術としては,ヘルニァ嚢の切開,嵌入臓器の整復,壊死腸管が存在すれば腸切除術が行われる.予後は比較的良好で, 1968年以降の報告例には死亡例はみられない.
    本症の発生機序としては先天的形成説と後天的形成説とがある.嵌入臓器の種類や長さから考えて,ヘルニア嚢の中に小腸の大部分が嵌入している例の多くは先天的に形成されており,小腸のごく一部がヘルニア孔の中に嵌入している例の多くは後天的に形成されたものと考えられた.
  • 林 勝知, 乾 博史, 鬼束 惇義, 後藤 明彦
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1083-1086
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    岐阜大学第1外科で最近15年間に経験した胆石症は440例で,そのうちMirizzi症候群と診断した症例は9例(2.0%)である.年齢は34~68歳(平均53.6歳)であり,性別では男性6例,女性3例と男性に多い.病悩期間は1ヵ月~3年(平均1年2ヵ月)で,症状は腹痛9例,黄疸7例,発熱7例であり,腹痛,黄疸,発熱といわゆる胆石症の三主徴がそろったものは9例中6例(66.7%)であった.黄疸例7例の黄疸持続期間は1週~3ヵ月(平均5.6週)で,総ビリルビン値は2例が正常域であったが,他の症例はすべて高値で,平均7.2mg/dlと高かった.胆石の種類はコレステリン系結石5例,ビリルビン系結石4例であった.総肝管の狭窄の程度は高度5例,中等度2例,軽度2例であった.手術々式は胆嚢摘出術(胆摘)2例,胆摘+総胆管切開1例,胆摘+総胆管切開+T-tubeドレナージ5例,拡大肝右葉切除1例である.
    Mirizzi症候群の定義はいまだ一定の見解に達していないが,われわれは以下のようにするのがもっと適切と考えている.
    (1) Mirizzi症候群は胆嚢頚部もしくは胆嚢管に存在する結石により主として総肝管の圧迫や狭窄あるいは閉塞をきたした病態である.
    (2) biliobiliary fistulaやconfluence stoneはあくまでも本症候群の一過程であり,本症候群に含める.
    (3) 胆嚢結石が無く,胆嚢周囲の炎症で胆管の狭窄をきたすものは,本症候群に入れず,良性胆道狭窄のカテゴリーに含める.
    (4) 胆嚢の悪性腫瘍により,胆管の狭窄をきたすものは,本症候群に含めず,悪性腫瘍として取扱う.
    以上当科で経験したMirizzi症候群の9例について検討し,本症候群の定義についてわれわれの見解を述べた.本症候群は術中しばしば胆管損傷をきたすおそれがあるため,本症候群の十分な認識と,術前の詳細な術式の検討が必要なことを強調した.
  • 宮田 哲郎, 松峯 敬夫, 石田 孝雄, 福留 厚, 袖山 元秀, 小山 広人
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1087-1091
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    総胆管良性狭窄の治療は手術療法が中心となっているが,胆道系の手術と炎症をくり返している症例や,状態の悪い症例では手術的に狭窄を解除することはかなりの危険を伴なうことになる.我々は胆嚢摘出術後,総胆管狭窄をきたし化膿性胆管炎と総胆管結石とをくり返した症例に対し,減黄のためのPTCD瘻孔を拡張し胆道ファイバーで截石後,小児用挿管チューブでブジーを行ない狭窄部を拡張した.この方法は治療期間が長くなるという問題点があるが,手術療法に比較し侵襲が少なく安全であると思われる.
  • 芳野 裕明, 藤本 泰久, 加藤 保之, 西野 裕二, 大北 日吉, 梅山 馨
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1092-1098
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    脾限局性病変は非常にまれで,またその超音波像の報告はほとんどみられない.今回われわれは脾限局性病変6例(脾腫瘍4例,脾嚢胞2例)の超音波検査を施行し,その超音波画像を検討したので報告する.
    脾原発性悪性リンパ腫の初期のstageにおいては,限局性のhypoechoic areaとして認められた.またかなりstageの進んだ症例においてはdiffuseなhypoechoic areaが全体を占め一部hyperechoic areaの混在も認められた.
    Hodgkin病の続発性脾病変においては,肉眼的に斑岩脾の名のごとく多数のhypoechoic areaを呈した.
    脾原発性血管肉腫においては,内部echoの不整とその中に不規則な管腔構造がみられた.
    脾嚢胞では,多房性,単胞性嚢胞について,摘出標本と肉眼的に一致した像が得られ,超音波検査がもっとも有力な検査と考えられた.
    以上,超音波検査は,脾の限局性病変の診断に有用であると考えられた.
  • 弥永 耕一, 中村 征規
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1099-1106
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    弥永外科病院を開設して以来,昭和56年末までの約20年間の開腹手術例は4,971例である.このうち急性腹症として開腹したのは289例で,全開腹手術例の約5.8%に当る.その内訳はイレウス101例,胆道系疾患75例,胃十二指腸穿孔52例,婦人科的疾患21例,虫垂穿孔による汎発性腹膜炎14例,膵炎8例,腸穿孔6例,肝疾患2例で,全く原因の不明な汎発性腹炎10例である.本文はこれらの夫々について若干の検討を加えた.また多くの本症の経験の中には驚く様な例もあり,中でも次の様な稀な6症例について報告した.
    (1) 胃X線透視検査中の胃穿孔の1例
    (2) 魚骨による空腸穿孔の1例
    (3) 肝癌の特発性破裂の1例
    (4) 小腸リンパ肉腫穿孔の1例
    (5) 高齢者の左閉鎖孔ヘルニアの1例
    (6) 柿胃石による腸閉塞症の1例
  • 樫谷 益生, 河野 裕利, 永井 祐吾
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1107-1112
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1963年Boleyら2), 1966年Marstonら3)の報告以来,大腸の虚血性病変が注目される様になってきたが,最近のBrandtら1)の報告によれぽ50歳以上の大腸炎患者のうちでは,虚血性大腸炎はその74%をしめているという,我国でも最近4~5年間に報告例が急増してきている.しかし本邦報告例の多くは,一過性型か軽度の狭窄型の虚血性大腸炎である.最近我々は, 68歳の男性で発症11カ月後に高度の腸管狭窄をきたし,腸閉塞症状を呈した,虚血性S字状結腸炎を経験し,狭窄部腸管切除を施行しこれを治癒せしめたので報告する.
  • 松波 英一, 和田 英一, 山内 一, 波江野 善昭, 八田 昌樹, 高木 宏巳
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1113-1119
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Cronkhite-Canada症候群は消化管のポリポージス,脱毛,爪萎縮,皮膚色素沈着を主症状とする稀な疾患であり,これまでに文献上87例の報告があり,その中本邦は57例である.われわれは本症候群の1例を報告し,とくに消化管ポリープの消失について検討を加えた.
    症例は43歳の男で,下痢,腹痛をきたし来院した.当時,頭髪の脱毛,爪甲の変形,皮膚色素沈着を認めた.入院精査の結果,血清蛋白量3.8g/dl, 3)I-RISA吸収試験3.69%, 3)I-PVP漏出試験0.3%であったが,消化管X線,内視鏡検査により胃および大腸に大小無数のポリープを認め,生検により腺管の嚢胞状拡張,間質の浮腫性細胞浸潤などJuvenile polyp様の組織所見を得た. Cronkhite-Canada症候群として,アミノ酸輸液,血漿蛋白製剤の投与により血清蛋白量は6.0g/dlと改善したので確診を得るため開腹術を施行した.胃全域ならびに結腸・直腸に多数のポリープを認め,横行結腸より有茎ポリープを摘出し,胃の組織像とほぼ同時の所見を得,悪性像は認めなかった.その後,さらに,同様の保存的治療を続けた.血清蛋白量は6.5g/dlと上昇し,自覚症状の改善,毛髪の増生,爪甲の再生を認めた.初診より8年経過時には全身状態良好で,通常の社会生活を営み,胃X線ならびに内視鏡検査では著しいポリープの減少を認め,生検により腺腔は縮小し,間質の浮腫も消褪し,炎症性細胞浸潤のみを認めた.注腸造影でも結腸粘膜はほゞ正常となり,内視鏡でもポリープは認めない.
    本邦報告例のうち,ポリープの減少または消失例は14例であり,アミノ酸製剤,血漿蛋白製剤,蛋白同化ホルモン,ステロイドホルモンなどが有用であり,また,抗プラスミン製剤のt-AMCHAおよびFOYの著効例についてものべ,本症候群のポリープの可逆性について検討を加えた.
  • 竹井 信夫, 勝見 正治, 青木 洋三, 谷口 勝俊, 柿原 美千秋, 嶋田 浩介, 康 権三, 湯川 裕史, 坂口 雅宏, 杉本 恵洋, ...
    1983 年 44 巻 8 号 p. 1120-1125
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    臍腸管遺残は,長い間無症状に経過する例が多い.臨床的に問題になるのは,腸閉塞,出血,憩室炎,穿孔などの合併症をきたした場合で,外科的治療が必要となる.
    著者らは, 1974年より1982年までの9年間に臍腸管遺残10例を経験したので,その概要を述べ,若干の文献的考察を加えた.
    新生児は2例で,最年長は14歳男子であった.性別では,男児7例,女児3例で,男女比は2.3:1であった.術中に偶然,発見されたのは1例で,他は1臍腸管遺残の合併症のため来院している.病型は,メッケル憩室7例,臍腸瘻2例,索状物1例で,合併症の内訳は,出血3例,腸内容の排出2例,腸重積2例,腸閉塞1例,炎症1例であった.
    メッケル憩室は全例が,回盲弁より50~60cm口側の回腸にあり,5例は腸間膜対側に,2例は腸間膜側に開口していた.異所性組織の迷入は胃粘膜が5例,膵組織が1例にみられた.手術々式は,腸瘻切除術2例,楔状切除術3例,回腸切除術5例が行われ,死亡は1例であった.
    合併症の多くは,早急に外科的処置を必要とするため,術前に診断を確定することはきわめて難しい. 2歳以下の乳児の原因不明の腹痛,下血では,本症の可能性を考慮すべきことを強調したい.
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