Cronkhite-Canada症候群は消化管のポリポージス,脱毛,爪萎縮,皮膚色素沈着を主症状とする稀な疾患であり,これまでに文献上87例の報告があり,その中本邦は57例である.われわれは本症候群の1例を報告し,とくに消化管ポリープの消失について検討を加えた.
症例は43歳の男で,下痢,腹痛をきたし来院した.当時,頭髪の脱毛,爪甲の変形,皮膚色素沈着を認めた.入院精査の結果,血清蛋白量3.8g/dl,
3)I-RISA吸収試験3.69%,
3)I-PVP漏出試験0.3%であったが,消化管X線,内視鏡検査により胃および大腸に大小無数のポリープを認め,生検により腺管の嚢胞状拡張,間質の浮腫性細胞浸潤などJuvenile polyp様の組織所見を得た. Cronkhite-Canada症候群として,アミノ酸輸液,血漿蛋白製剤の投与により血清蛋白量は6.0g/dlと改善したので確診を得るため開腹術を施行した.胃全域ならびに結腸・直腸に多数のポリープを認め,横行結腸より有茎ポリープを摘出し,胃の組織像とほぼ同時の所見を得,悪性像は認めなかった.その後,さらに,同様の保存的治療を続けた.血清蛋白量は6.5g/dlと上昇し,自覚症状の改善,毛髪の増生,爪甲の再生を認めた.初診より8年経過時には全身状態良好で,通常の社会生活を営み,胃X線ならびに内視鏡検査では著しいポリープの減少を認め,生検により腺腔は縮小し,間質の浮腫も消褪し,炎症性細胞浸潤のみを認めた.注腸造影でも結腸粘膜はほゞ正常となり,内視鏡でもポリープは認めない.
本邦報告例のうち,ポリープの減少または消失例は14例であり,アミノ酸製剤,血漿蛋白製剤,蛋白同化ホルモン,ステロイドホルモンなどが有用であり,また,抗プラスミン製剤のt-AMCHAおよびFOYの著効例についてものべ,本症候群のポリープの可逆性について検討を加えた.
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