日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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45 巻, 4 号
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  • 杉本 純雄
    1984 年 45 巻 4 号 p. 395-398
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 外科と脳神経外科
    魚住 徹
    1984 年 45 巻 4 号 p. 399-401
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 福田 修
    1984 年 45 巻 4 号 p. 402-404
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 梶本 照穂
    1984 年 45 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 末舛 恵一
    1984 年 45 巻 4 号 p. 409-410
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 桜井 修
    1984 年 45 巻 4 号 p. 411-412
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 症例検討
    原田 雅弘
    1984 年 45 巻 4 号 p. 413-415
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • とくに乳癌再発死亡例から
    曽和 融生, 鬼頭 秀樹, 大平 雅一, 加藤 保之, 向井 龍一郎, 大北 日吉, 梅山 馨
    1984 年 45 巻 4 号 p. 416-423
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室で経験した乳癌根治手術例361例を臨床病理組織学的に整理し,とくに再発死亡例10生例について臨床病理組織学的諸因子について検討を加え,乳癌の予後を左右する因子について考察した.
    年齢,腫瘤占居部位では40~50歳代に55.7%と最も多く,左側, C占居例が多かった.病期進行度と各因子別では新TNM分類でII, Tnm分類でIが約半数を占めた.自験例の治療術式は定型手術173例(47.9%),拡大根治術154例(42.7%),縮小手術34例(9.4%)であった.病理組織分類ではmed. tub. ca. 196例(54.3%)と多く, Paget癌,粘液癌,扁平上皮癌等の特殊型は14例(3.9%)にみられた.術後成績を病期別累積生存率でみるとTNM分類では5生率78,3%, 10生率67.6%, Tnm分類ではそれぞれ78.1%, 67.2%であった.両分類とも進行度が進むにつれて生存率が低下し,とくにTnm分類stage IVの予後が不良で5生率55.5%, 10生率41.1%であった.
    術後再発死亡例は47例で,再発81病巣では肺が30例(37.0%)と最も多く,次いで骨18例(22.2%),局所12例(14.8%)であり,とくに術後3年未満再発病巣は81病巣中56病巣(69.1%)で,肺,脳,肝等の臓器再発が多かった.これら再発死亡例を10年生存59例と比較すると前者では,新TNM分類III, Tnm分類III, IV例が多く, T因子ではT4b例が, n因子ではn1β 26.8%, n2 22.0%, n3 12.2%と多く, 10生例と対照的な成績であった.
    病理組織分類では両者間に大差はみられず特殊型の予後が良好であった.原発巣のv因子陽性頻度では再発例に72%と高く,転移リンパ節での脈管浸潤(nv)因子陽性は,再発例で60.7%で, 10生例にはなく,またリンパ節転移様式別では節外型浸潤を示す症例の予後が不良であった.以上の事実から乳癌術後予後を左右する因子について考察を加え,これらの因子をindicatorとしてfollow upする必要のあることを強調した.
  • 加辺 純雄, 大森 幸夫, 本田 一郎, 武藤 輝一
    1984 年 45 巻 4 号 p. 424-428
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    sinus histiocytosisの予後規定因子としての意義をみるため,深達度mの癌を除き,治癒切除が施行された胃癌338例と所属リンパ節10,134個(1例平均30.0個)を用い, 5年生存率ならびに他の胃癌予後規定因子との関係につき検討した.
    sinus histiocytosisが(++)以上から(+~-)に減少するとともに, 1) 5年生存率が53.4%から42.1%へ減少した, 2) n番号,転移個数,転移度のいずれの面からの検討でもリンパ節転移は増加した, 3) 肉眼分類で限局型である2型が減少し,浸潤型である3型4型が増加した, 4) 組織分類で低分化型腺癌(por)が増加した, 5) 予後的漿膜面因子ps(-)が減少し, ps(+)が増加した, 6) 間質リンパ球浸潤が減少した, 7) stageが上昇した.
    以上よりsinus histiocytosisは胃癌予後規定因子の1つとして十分認めうる.
  • 田中 恒夫, 児玉 求, 児玉 治, 江崎 治夫
    1984 年 45 巻 4 号 p. 429-432
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵頭部領域癌に対して膵頭十二指腸切除術(PD)を行った25例において,残存膵外分泌能をPancreatic Function Diagnostant test (PFD)により測定し検討した.
    PD術前の尿中p-aminobenzoic acid (PABA)の6時間排泄値は対照群に比べて低下していた(p<0.01).術後2カ月以内の6時間排泄値は術前とほぼ同値であつたが,術後12カ月以上における6時間排泄値は術前,術後2カ月以内に比べて,それぞれ改善していた(p<0.01).また,同時に尿中PABAの排泄パターンを検討することにより,膵管の状態を推察できた.
    PD術前のPFDの低下は膵管障害によるものであり,術後早期の低下は消化吸収不全,消化管ホルモンの変動などによるものと推測された.術後12カ月以上のPFDはほぼ対照群の値まで回復しており,術後早期の状態は改善し膵管空腸吻合の開存も保たれているものと考えられた.
  • 久保 信子, 横山 和子, 秋丸 現甫
    1984 年 45 巻 4 号 p. 433-436
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    開胸手術をうけた入院患者を対象とし,術後の疼痛に対する処置として,硬膜外腔に0.25% bupivacaine投与群10例と, bupivacaine非投与群(疼痛時pentazodne投与) 7例との2群に分け,術後の呼吸に対する影響を比較した.術中の麻酔管理は, GOF, Air+OF,硬膜外+GOとした.手術終了後, 72時間まで,呼吸数,肺活量の測定,および,動脈血ガス分析を施行した.
    硬膜外腔bupivacaine投与群では,術後,肺胞低換気となった症例はなく, bupivacaine非投与群に比較し,術後吸入酸素濃度を低く保ったことが出来,低酸素血症の発現はなかった.また,無気肺発生,肺炎の発症などの肺合併症は,全くみられなかった.
  • 本邦173例(自験例を含む)についての考察
    山下 裕一, 小山 広人, 吉永 圭吾, 松峯 敬夫, 十九浦 敏男
    1984 年 45 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病,肝硬変を合併した特発性食道破裂の1例を報告するとともに,自験例を含む173例の本邦報告例について検討した.
    自験例は46歳男性,破裂3日目に開胸手術施行,食道破裂創は一次縫合閉鎖できず胸腔内ドレナージを行った.術後栄養管理に中心静脈栄養を行い耐糖能低下による高血糖を惹起したが,経腸栄養に変更し栄養管理は容易となり術後5週目に破裂創の閉鎖をみた.
    本邦173例の内訳は,平均年齢46.3歳,男女比14.2:1であり,誘因として嘔吐が83,6%と最も多く,その60.6%は飲酒後に発症していた.外科治療開始時期と死亡率の検討では,発症後5日目までは死亡率は高くなる傾向にあったが,それ以後では高くなるとは言えなかった.治療は,早期に破裂部の一次縫合閉鎖と胸腔内ドレナージを行うのが望ましいが,縫合不全の発生頻度は高いと考えられた.死亡率については, 1974年までは52.9%と高率であったが1975年以降では16.4%と著しく減少していた.これは術後栄養管理法の進歩によるものと推測された.
  • 鳥枝 道雄, 森田 耕一郎, 守田 信義, 丹山 桂, 大原 正己, 宮下 洋, 平岡 博, 江里 健輔, 藤原 茂芳
    1984 年 45 巻 4 号 p. 443-448
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    65歳,男性,上腹部鈍痛を主訴として来院し,精査の結果,リンパ節転移を伴ったBorrmann 3型胃癌と診断された.術前のAFP値, CEA値は,それぞれ5433ng/ml, 6.2ng/mlと高値を呈していた.摘除に伴い,これらは一旦下降したが, AFP値は正常域には至らなかった.術後5カ月目に,癌性腹膜炎と肝転移のために死亡した. AFP値が,早期に再発を示唆したものと考えられた.
    免疫組織学的検索を行い,原発巣にAFPおよびCEAの局在を証明しえた.
    以上, AFPおよびCEA産生胃癌の1例を報告するとともに,文献的考察を行った.
  • 大野 康治, 野田 剛稔, 中郷 俊五, 森田 茂利, 水谷 明正, 山口 孝, 角田 司, 吉野 尞三, 原田 昇, 伊藤 俊哉, 土屋 ...
    1984 年 45 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近の各種画像診断法の進歩はめざましく,黄疸症例に対する質的診断の過程に大きな変遷をもたらした.我々は過去12年間に経験した黄疸症例を分析し,これらに用いられた各種画像診断法を評価することによって,その合理的な使用法について考察した.
    昭和44年10月より昭和56年12月までに黄疸を主訴として来院した症例は301例であり,このうち,悪性疾患が170例と過半数を占め,良性疾患は129例,確定診断不詳なものは2例であった.悪性疾患の中では胆管癌が63例と最も多く,以下,膵癌,胆嚢癌,肝細胞癌,膨大部癌の順であった.一方,良性疾患では胆石症が83例を占め,良・悪性を通して最多であった.
    各種検査の施行頻度をみると, PTCが163例と最も多く施行され,以下, Angio., US, ERCP, CT, DICの順であった. PTCとAngio.は悪性疾患に多く用いられており,一方, US, ERCPは良性疾患に多く用いられていた.
    各種検査の診断率をみると, PTCが90,2%と最も高い診断率を示し,以下, ERCP 75.5%, CT 74.5%, US 64.6%, Angio. 63.2%, DIC 28.6%,の順であった.悪性疾患においては, PTC, ERCPなどの侵襲的検査の診断率が高かった.一方,良性疾患においては, PTC, ERCPなどとともに非侵襲的検査であるCTも良好な成績を示していた.
    DICはその施行率,診断率ともに低率であった. USは急速に普及し,近年ほぼ全黄疸症例に対して施行されているが,膵癌・膨大部癌・胆嚢癌などで低い診断率を示した. CTは各疾患を通して平均した診断率を示したことが特徴であった. ERCPは胆道・膵臓疾患に対して特に有効であった. PTCは良性・悪性を通して最も良い成績を示した. Angio.は胆管癌・膨大部癌では低い診断率を示した.
    以上,黄疸の原因疾患とその検査法について検討した.
  • 竹尾 貞徳, 朔 元則, 市吉 裕二, 牛島 賢一, 鎌田 重之, 雷 哲明, 家守 光雄, アウヨン タックフック
    1984 年 45 巻 4 号 p. 454-457
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝外へ発育するタイプの肝細胞癌は比較的稀であって,本邦では1957年加藤の報告以来現在まで20数例の報告をみるにすぎない.
    我々は, 64歳男子で,巨大な肝外発育型肝細胞癌と肝硬変症を合併した1例を経験した.癌腫は,肝左葉外側区域より発生し,肝外へ向って発育,一部は左側横隔膜,一部は胃小弯へ浸潤癒着していた.肝左葉外側区域切除と,横隔膜の一部ならびに胃幽門側2/3をenblocに合併切除することによって腫瘤を摘出したが,腫瘤は17×11×10cmという巨大なものに発育していた.本症例のごとく,肝外発育型肝癌は,肝外性発育であるため,肝切除範囲が少範囲ですみ,巨大な腫瘤でも切除可能である場合が少なくない.反面他臓器合併切除する機会が多くなることが考えられ,術前よりの処置,特にColon preparation等の術前準備を考慮しておくことが肝要と思われる.
  • 摘出標本検索からの一考察
    柴田 信博, 藤本 直樹, 水嶋 肇, 相川 隆夫, 堀井 明, 坂野 勉, 中西 弘幸, 野口 貞夫
    1984 年 45 巻 4 号 p. 458-461
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは最近,肝転移巣を有する直腸癌症例に対し,原発巣根治切除にひきつづき,肝右葉切除を行つた症例を経験した.術前および術中の画像診断にて,前上区域に2個,後下区域に1個と計3個の転移巣を確認したが,切除標本の検索では, 2cmから0.5cm大にいたる5個の転移巣が存在した.部分切除では,当然癌遺残となり,転移性肝癌の性質上,手術術式選択にあたっては,十分な注意と画像診断の限界を考慮に入れる必要があろう.転移性肝癌に対する肝切除術式として,拡大切除か縮少切除かの問題を検討する場合,転移巣を何によって診断したかは,その予後を検討する場合に重要であり,今後検討をかさねていくべきであると考える.
  • 高村 公範, 三浦 馥, 川瀬 恭平, 近藤 成彦, 宮川 秀一, 岩瀬 克己, 伊左治 秀孝, 稲垣 喜治, 中村 従之, 鄭 統圭, 吉 ...
    1984 年 45 巻 4 号 p. 462-467
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    38歳,女性,全身倦怠感を伴う右季肋部痛を主訴とし,超音波検査, DIC,超音波下胆嚢穿刺造影などにより胆嚢の悪性腫瘍を疑い胆嚢摘出術兼胆嚢床部肝楔状切除術を施行した.摘出標本は巾1mm,長さ2mmの茎をもった3.3×1.7×0.4cmのポリープ様病変で,病理組織学的には深達度m,リンパ節転移を認めない早期癌であった.高分化管状腺癌の中に腺腫像の混在を認め,腺腫の癌化が示唆された.
    自験例も含めた記載の明らかな早期胆嚢癌63例を集計し,またそのうちの有茎性ポリープの形態を呈するもの9例について考察し,有茎性ポリープは超音波診断が有効であること,治療に対しては癌の存在も考えて十分な対応をすることが必要であることなどを述べた.
  • 深井 泰俊, 菊川 政男, 吉田 英晃, 堀田 敦夫, 吉川 高志, 桜井 隆久, 畑 芳樹, 内本 泉
    1984 年 45 巻 4 号 p. 468-473
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1958年Caroliは肝内胆管がのう腫状に拡大した症例を報告したが,それ以来この疾患,あるいは症候群はCaroli病として知られ,これをsimple typeとperiportal fibrosis associated typeに分類している.著者らは最近本症のsimple typeと考えられる症例を経験したので報告する.
    症例は77歳,男性であり主訴は右季肋部痛と発熱である. PTCDチューブからの胆管像では右後区域の胆管はのう腫状に拡張しCTスキャン像でも同様の所見が得られた.自験例は黄疸の出現がなく右季肋部痛,時に発熱がみられたこと,拡張した胆管内にビリルビン石灰石が存在したこと,脾腫,食道静脈瘤を伴わないこと,肝は組織学的に硬変肝を認めないことなどから本症のsimple typeと診断した.手術方法は肝右葉切除を施行したが術後急性肺炎を併発し死亡した.なお,摘出肝は右後区域が萎縮しており完全萎縮を呈していた.
    以上自験例を中心に本症の診断,治療について若干の文献的考察を加えたので報告する.
  • 康 市〓, 橋本 仁, 西脇 英樹, 紙野 建人, 梅山 馨, 上田 真喜子, 藤本 輝夫
    1984 年 45 巻 4 号 p. 474-481
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    横紋筋肉腫は比較的まれな疾患で,生理的な横紋筋所在部位だけではなく,それを欠く胆嚢などにも発生することが知られる.自験例の腫瘍細胞には, PTAH染色で明らかな横紋は証明されなかったが, PAS染色では細胞質内にグリコーゲンを含むことが明らかにされ,低分化多形型の横紋筋肉腫というべきものであった.電子顕微鏡的検索では,腫瘍細胞の細胞質内に種々の走向を示すmyofilamentsの発達が認められた.またmyofilamentsの一部には,高電子密度物質がZ-band様に存在する箇所も見出された.肉腫の増殖が速やかったため,その原発部位を明確にすることはできなかったが,一連の臨床検査や術中所見より,臨床的には胆嚢原発のものと考えられた.さらに,横紋筋肉腫および胆嚢に原発する肉腫(本邦の36例)について文献的考察がなされた.
  • 安斉 徹男, 川辺 昌道, 飯島 哲夫, 加藤 盛人, 仲村 匡也, 吉田 一郎, 山梨 美紀夫, 金子 達夫, 斉藤 清
    1984 年 45 巻 4 号 p. 482-487
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近5年間に, 38例の腹部大動脈瘤(AAA)患者を取扱った. 70歳以上(高齢群) 19例, 69歳以下(対照群)19例で,手術を行なったのは各々9例と16例である.手術死亡は高齢群に1例みたが術後3日目の心筋梗塞によるもので,対照群では0であった.非手術症例は高齢群で10, 対照群で3例であり,その理由は拒否,心筋障害,脳血行障害,瘤が小さいためなどである.入院中で手術前の2死亡例はいずれも高齢群で,心筋梗塞と破裂によるものである.
    手術例の遠隔予後は高齢群で老衰と肺炎による死亡,対照群では肝癌による死亡をみたが,ほぼ満足すべきであった.一方,非手術の高齢群では,心筋梗塞や脳血管障害の他に,破裂死を3例みている. 2例は動脈硬化性と炎症性瘤の手術拒否であり,他の1例は小瘤のため観察とした78歳であった.非手術例は手術不可能であるものが多く,予後は極めて不良である.
    合併症としては動脈硬化による脳・心・腎障害が主体であり,脳血管障害が手術適応の除外因子,冠障害が危険因子として働いている様である.しかし,冠疾患に対しては,血管拡張剤の適切な使用により,術前・中・後の安全な管理が可能となるものと思われた.
    第13回日本心臓血管外科学会の高齢者AAAの演題抄録からの調査によると,高齢群と対照群の数は1:1.6であり,高齢群の特徴として, 1) 非手術率, 2) 救急手術率, 3) 手術死亡率(待機・救急共に)は,対照群に比し有意に高かった.合併症では,心電図異常,心筋梗塞・狭心症,脳血管障害,高血圧を有する割合は,高齢群が高いが有意ではなく,腎機能障害のみが有意に高かった.
    高齢者AAAの手術は適応を慎重にすれば安全であり,殊に高齢者破裂例の死亡率は著しく高いので,破裂以前に発見し治療を行なう事が最も大切である.
  • 福慶 逸郎, 秋田 政昭, 東山 漸, 赤尾 勝彦
    1984 年 45 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    41歳の男性が,作業中に左前胸部を強打し,意識喪失して救急車で入院した.入院時,高度のチアノーゼと不整脈を呈し,直ちに気管内挿管,人工呼吸を行なったが,血圧測定不能となり,ついで心停止をきたした.諸種の蘇生術により,心停止後25分で洞調律となり, 24時間後には循環動態が安定したが,第3病日に麻痺性イレウス症状が現われ,第4病日に開腹した.盲腸,上行結腸は壊死となり,横行結腸に斑紋状の壊死が認められたので,結腸の右半切除を行ない,治癒させた.
    胸部に器質的損傷が認められない点から,強い疼痛刺激,あるいは強い迷走神経刺激反射による一時的心停止を生じ,これが高度のチアノーゼ,アシドーシスの原因となり,再び心停止を生じたものと推測される.
    結腸壊死の成因は,受傷後肺,腎,肝に機能不全,すなわち多臓器不全がみられたこと,および切除標本の病理組織学的所見から血栓によるものと考えられる.ショック中の循環の低下,血球の泥化,凝固性の亢進が,その原因と考えられるが,ショック中に投与された多量の抗プラスミン剤が血栓形成を助長したとも考えられ,止血の目的で漠然と抗ブラスミン剤を使用してはならない.
  • 西村 理, 柏原 貞夫, 松末 智
    1984 年 45 巻 4 号 p. 494-498
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    化膿性尿膜管嚢腫が臨床的関心を集める機会は比較的少いが,その発生機序・診断にはいまだ未解決な点が多く,興味ある疾患である.我々は過去17年間に12例の化膿性尿膜管嚢腫を経験したので,その臨床的検討と考察を行う.
    対象となった症例は男5例・女7例で,年齢は2歳から67歳までだった. 12例中9例に,虫垂切除術など,本症に先行する下腹部手術の既往があった.更に,この9例中5例は既往手術後に創部感染が合併していた.症状は臍瘻よりの排膿8例,膀胱炎様症状5例で,全例が下腹部腫瘤を有していた.特殊検査として,超音波検査を施行し得た症例は5例で,5例ともに病変を検出し得た.臍瘻からの瘻孔造影で膿瘍腔の存在と,その広がりを確認できたが,他のレ線検査では病変を検出し難い場合があった.治療として,一期的尿膜管全摘除術が全例に施行され,治癒に至った. 11例の病理組織学的検討で,移行上皮を膿瘍壁に確認し得た者は1例のみだった.
    近年に於ける診断技術の進歩は本症の診断を正確に,また容易にしている.しかし発生機序,特に感染経路に関しては明らかな説がない.
    尿膜管の走行は個体差が大きく,右あるいは左に偏位するもの等がある.従って,下腹部手術により尿膜管は直接,間接に損傷され得,特に,創部感染が合併した場合は本症が招来される可能性がある.本症の診断に際しては,その解剖学的,臨床的特徴を理解すると共に,下腹部手術の既往にも注意を払う必要がある.
  • 笹井 平, 吉川 宣輝, 杉立 彰夫, 河原 勉
    1984 年 45 巻 4 号 p. 499-503
    発行日: 1984/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    従来,開放肉芽創の保護材料としてガーゼが広く用いられてきたが,生体組織への癒着,患者の不快感,創部管理に要する労力等に問題点があった.新しい保護材SILASTICは,シリコンを主成分とするスポンジ状の材料で,その特徴は, (1)癒着性がなく創面の線維芽細胞,毛細血管が保護される. (2)非刺激性である. (3)吸収性,通気性に富む. (4)柔軟で患者に苦痛を与えない. (5)再利用可能.等である.
    直腸癌腹会陰式切除術後の移開会陰創や褥瘡等,計20例の肉芽創にSILASTICを使用したところ次の様な結果を得た.
    (1)全症例において早期に良好な肉芽組織が形成された.
    (2)ガーゼに比し圧迫等による痛みが少く快適で社会復帰が早期に可能となった.
    (3)自己管理(交換)が容易であり,医療スタッフの労力を軽減するとともに入院期間を短縮することができた.
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