日本臨床外科医学会雑誌
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45 巻, 8 号
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  • 大和 宗久, 柴田 英男, 佐伯 裕司, 松本 健次郎, 小川 雅昭, 岩佐 善二, 安富 正幸, 陣内 傳之助, 熊野 町子, 石田 修
    1984 年 45 巻 8 号 p. 987-991
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    99mTc-リン酸化合物は,乳癌の骨転移巣に集積を示すとともに,乳癌原発巣への骨外集積例も多く報告されている.そこで,近畿大学第1外科で乳癌根治術を行った乳癌症例を対象として,術前に99mTc-EHDPを用いて骨シンチグラフィーを行い,骨転移を認めなかった39例について,乳癌組織への骨外集積の有無とその診断意義について検討した.
    このうち99mTc-EHDPの骨外集積は, 12例(30.8%)に認められた.
    骨外集積陽性例は,髄様腺管癌11例中9例(81.8%), 硬癌10例中3例(30.0%)であり,乳頭腺管癌ではみられなかった.
    これらの骨外集積陽性例における組織学的カルシウム沈着と骨外集積とは相関し,骨外集積の発生機序として,カルシウム代謝が強く関与していると思われた.
  • 磯部 義憲, 山田 明義, 高崎 健, 武藤 晴臣, 小林 誠一郎
    1984 年 45 巻 8 号 p. 992-997
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対する経腹的食道離断術術後再発15例に経皮経肝的門脈造影(PTP)を施行し,その再発形態と血行動態について検討した.経腹的食道離断+脾摘+血行郭清術施行6例のPTP像では,残存する細い脾静脈より多数の微細な静脈枝(無名静脈)が立ち上り,食道胃吻合部に至り静脈瘤に関与していた.また右胃大網静脈が側副路となっている2例を認めた.なお再発率は約7%であった.経腹的食道離断術に脾摘を加えない5例では脾静脈は太く無名静脈に加えて,脾門部より後腹壁,横隔膜下を経て食道裂口部に至り,横隔膜上で食道静脈瘤に入る側副路も認められた.再発率は25%と有意に高かった.胃全摘術を含む食道空膜吻合施行例では,吻合した空腸の静脈枝より吻合部壁を経た著明な食道静脈瘤の発達を認めた.再発率は33% (5/15)と高かった.再発例の内視鏡所見では前回術式による差は認めなかった.
    経腹的食道離断術後再発には主として脾静脈より立ち上る無名静脈が関与し,それらは後腹膜血行郭清後の瘢痕性結合織内を経由しているものと考えられる.食道と空腸を吻合したものではその再発率は高く,これは吻合した空腸のもつ血行動態が関与するものと推測された.従って再発の減少のためには脾摘は必須であり,また食道と吻合する腸管の血行動態に対する考慮が必要と考える,
  • 大杉 治司, 酒井 克治, 浜中 良郎, John BANCEWICZ
    1984 年 45 巻 8 号 p. 998-1006
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Manchester大学Hope病院のEsophageal Clinicで経験した症例を中心とする80例を対象にGERの診断に関する諸検査の意義を検討したところ,この中の54例にRefiuxを客観的に証明しえた. 12時間連続食道内pH測定法によるGERの検出率は81%と高く, Stress Testおよび食道造影法はそれぞれ46%・31%と低かった.内圧測定で得られた下部食道昇圧帯の静止圧は, Reflexの認められた群(10.0±7.OmmHg)と,認められなかった群(13.2±6.9mmHg)との間に有意差を認めたが, GERに対する診断的価値は低かった.食道裂孔ヘルニアは39例にみられたが,その存在がGERの不可欠な要因とは言えなかった.明らかな症状があるにもかかわらずGERを証明出来なかった症例が7例みられ,より鋭敏な検査法の開発が必要と思われた.
  • 河野 彰文, 出月 康夫, 渡辺 弘
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1007-1015
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科で施行した食道静脈瘤直達手術104例の手術前後の出血性胃十二指腸病変について検討を加えた.
    内視鏡検査での胃十二指腸潰瘍の合併率は術前14.9%,術後約1ヵ月9.2%,術後7~12ヵ月目0%と漸減したが,びらんの合併率では手術前後に著明な差は認められなかった.術前潰瘍合併は十二指腸球部,胃角に,術後潰瘍合併は胃体上部,穹窿部に好発していた.術後約1ヵ月では経腹的食道離断術に潰瘍合併率が高く一期的手術による急激で広範な血行遮断の影響が推定され,迷走神経切離による潰瘍予防効果は著明ではなかった.しかし潰瘍による出血,穿孔例はなく2~3週間後には全例瘢痕を残さずに治癒していた.
    術後出血をみた15例のうち6例が出血性胃炎あるいは胃潰瘍を主たる出血源としていた.経胸的食道離断術後3例,東大第2外科法後3例で最も症例の多い経腹的食道離断術後には発生をみておらず,一期的手術と二期的手術の胃壁血行動態にはなんらかの相違があると推定される.
    術後発生した潰瘍のうち4例は保存的治療に反応せず手術(広範囲胃切除術2例,胃全摘術2例)を行った.うち3例は軽快したが胃全摘術を行った1例は12日後に死亡しており,食道静脈瘤手術後の出血性胃十二指腸病変対策の必要性を示唆している.
  • リンパ球幼若化反応の評価と意義
    小川 泰史
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1016-1033
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前未治療時における胃癌患者260例と非癌患者112例の非特異的免疫能をリンパ球幼若化反応を中心に,各パラメータの年齢,血清アルブミン値との相関,癌の進行程度との関係,さらに年齢別(60歳以上,未満群),血清アルブミン値別(4.0g/dl以上,未満群),および組織学的分化度別(分化型,低分化型)の変動をしらべ,各パラメータの有用性と意義について検討した.
    年齢との関係では, ConA>PHA>リンパ球比>リンパ球数の順で負の相関がみられた. 2群別の検討では, PHAとConAが60歳以上群で有意の低値を示した.
    血清アルブミン値との関係では, ConA>T細胞比>リンパ球比の順で正の相関がみられた. 2群別の検討では,リンパ球比のみが4.0g/dl未満群で有意の低値を示した.又, 4.0g/dl未満群でPHA, ConA,リンパ球比のstageによる変動が消失し,特に4.0g/dl未満におけるstage Iでの免疫能の低下が示唆された.
    癌進行程度との関係で一定の傾向を示したのは, PHA, ConA, ConA/PHA,リンパ球比,リンパ球数であったが,パラメータとしての有用性において優れていたのはPHAとリンパ球比であった.特に,早期癌,進行癌,末期癌の判別や治癒切除が可能か否かの判断に有用な指標になると思われた. ConA/PHAは癌の進行と共に漸増傾向を示すが,そのピークは切除可能なstage IVにあると思われた.又, ConA/PHA≥1.0を示す症例の71%がstage IVであった.
    組織学的分化度別の検討では, PHA, ConAの分化型,低分化型におけるstage別の変動に相違がみられ,共に分化型でより良いパラメータとなると思われた.特にstage III, IVでの両群間の差は大きく,分化型のstage III, IVにおける免疫能の低下が示唆され,免疫賦活剤の適応を考えるうえにも,これらを分けて検討する必要があると思われた.
  • 余喜多 史郎, 松崎 孝世, 柘植 司郎, 北川 哲也, 山崎 真一, 黒上 和義, 林 尚彦, 長野 貢, 高橋 正倫
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1034-1040
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    徳島県立中央病院における昭和50年1月より昭和57年3月までに経験した早期胃癌104例に統計的検討を加え下記の結論を得た.
    1) 頻度は平均26.8%であり, m癌42例(40.4%), sm癌62例(59.6%)で,隆起型は25例(24.0%),平担型3例(2.9%),陥凹型76例(73.0% )であった. IIcが56例(53.8%)で最も多く,次いでIIc+III 17例(16.3%), I 16例(15.4%)であった.
    2) 年齢別では60歳代が最も多く36.4%であり,次いで50歳代26.0%, 40歳代20.2%の順であり,隆起型は陥凹型に比べ,やや高齢者にみられた.
    3) 占居部位ではAが55例(52.9%), Mが36例(34.6%), Cが6例(5.8%), MA 3例, AM 3例, MC 1例であった.最大径では5cm以上のものは陥凹型でしかもsm癌に多く認めた.
    4) 組織型では,分化型は68例(64.5%),未分化型が36例(34.7%)であった. tub1 53例(51.0%)で最も多く, por. 27例(26.0%), tub2. 14例(13.5%), sig. 9例(8.7%), pap. 1例(0.1%)であった.
    5) リンパ節転移は全体で8.7%であり, m癌2.4%, sm癌12.9%であった.転移リンパ節は第2群リンパ節;特に7番, 8番に多く認めた. 6) 5年生存率は95.8%であり, m癌は92.8%, sm癌は98.2%であった.死亡例は6例(5.8%)であり, 3例(2.9%)が再発死亡例で, 3例(2.9%)が他病死であった.
    7) 手術術式に関しては胃切除術+R2が適当であろうと考えられた.
  • 幕内 雅敏, 長谷川 博, 山崎 晋
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1041-1045
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝切除に際して右肝静脈を下大静脈流入部付近で切離する必要があるが,これを肝離断前に肝外処理を行うか,肝離断中に肝内で処理するかについては議論がある.しかし肝外処理が可能であれば,肝外処理を行った方が出血量も少なく安心して肝離断が行える.
    我々は昭和54年末に右肝静脈の肝外処理の秘訣は下大静脈靭帯の切離にあることに気付き,昭和55年以降は意識してこれを切離することに努めた.その結果,昭和54年以前の36例では9例(25%)に肝外処理ができたにすぎなかったが,昭和55年以降の25例では22例(88%)で肝外処理に成功した.
    肝静脈の処理に関して下大静脈靱帯の存在に論及した文献が見当らないので,肝切除の際の右肝静脈の処理に関し,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 小林 康人, 田伏 克惇, 青山 修, 江川 博, 野口 博志, 永井 祐吾, 金 秀男, 嶋田 浩介, 小西 隆蔵, 青木 洋三, 勝見 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1046-1051
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    開窓術を施行した8例の肝嚢胞症例に対し,術後4カ月から最長5年にわたり,超音波検査およびCTを施行し,術前と比較して再発の有無を検討した.その結果5例に嚢胞の遺残あるいは再発が認められた.その様式は, 1)取り残した小嚢胞が増大したもの, 2)開窓腔に嚢胞液が再貯留したもの, 3)嚢胞が新たに発生したと思われるもの,であった.その原因として, 1)では主嚢胞の開窓により圧迫が解除され増大し, 2)では開窓が不充分なために壁の切除断端が再癒合したり,腹壁や消化管が開窓面に癒着して嚢胞腔が再構成され, 3)では1)と同様の機序で術前見逃されていた細小嚢胞が増大したものと考えられた.
    肉眼分類では先天性多発性のもの全例に再発,遺残が認められ,組織型では真性のものに多く見られた.
    再発の防止には,術前に小嚢胞を的確に把握し,術中には超音波検査を併用して丁寧に開窓し,又,薬剤による嚢胞上皮の壊死固定や大網の挿入,縫着も有用であろう.しかし,再発しても臨床上問題となることは少なく,多発例のみならず,高齢者やpoor risk症例には優れた術式と思われる.
  • 若山 芳彦, 高橋 英世, 真家 雅彦, 大沼 直躬, 永井 米次郎, 飯田 秀治
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1052-1058
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小児虫垂炎は,比較的頻度の高い疾患の一つで,全身管理の向上により死亡症例は極めて稀となってきたが,術後合併症,特に術後創感染,遺残膿瘍は依然として高頻度にみられている.我々は,小児穿孔性虫垂炎に高頻度で検出される嫌気性菌のBacteroides fragilisの特異的な抗生剤感受性パターンに注目し, 1978年以降Bact. fragilisに対する抗生剤を投与し,術後感染症の発生頻度を激減させ得た.
    対象は, 1968年より1983年の16年間に千葉大学で経験した小児虫垂炎182例中,穿孔性虫垂炎88例である.
    手術時腹腔内検出菌では,大腸菌(82%),緑膿菌(18%)等好気性グラム陰性桿菌と嫌気性グラム陰性桿菌のBact. fragilis (68%)が大多数を占めた.術後感染巣検出菌でも, Bact. fragilis(59%),大腸菌(53%),緑膿菌(18%)とほぼ同様の結果であった.年代別術後感染症発生頻度では,嫌気性菌に対し有効な抗生剤の投与されなかった期間の発生率が極めて高く,創感染33例中16例49%,遺残膿瘍7例21%であった. 1978年以降,嫌気性菌のBact. fragilisに対してLincomycin, Metronidazoleを投与し,創感染40例中8例20%, 遺残膿瘍1例3%,と約1/2~1/7に減少させ得た.
    小児穿孔性虫垂炎の化学療法は,好気性グラム陰性桿菌に対する第二世代セフェム系抗生剤,アミノ配塘体系抗生剤と,嫌気性菌のBact. fragilisに対するMetronidazole, Clindamycinの併用投与が適当であり,特に, Bact. fragilisに対する抗生剤投与の重要性を強調したい.
  • 重松 宏, 宮田 良平, 佐々木 勝海, 盛岡 康晃, 瀬戸山 隆平, 大橋 重信, 森岡 恭彦, 宮沢 幸久, 太田 郁朗
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1059-1066
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1977年から1982年までの6年間に当科で施行した外科系疾患に対する動脈造影の合併症について検討を行なった. Seldinger法が488例,経腰的大動脈造影法が160例,四肢動脈穿刺法が422例であった. Seldinger法は主に腹部臓器疾患に,経腰的大動脈造影法は腸骨大腿動脈領域に閉塞性病変を有する例に,四肢動脈穿刺法は四肢末梢側に病変を有する例に施行された.経腰的大動脈造影の大多数には高位到達法を用い,テフロン針を大動脈内に留置して施行した.
    四肢動脈穿刺法では造影剤による蕁麻疹など軽微な合併症のみであった.手術的処置などを必要とした重篤合併症発生頻度は, seldinger法では4例0.82%に認められ,仮性動脈瘤形成,腸骨大腿動脈血栓症,菌血症,大量後出血などであり,経腰的大動脈造影法では3例1.9%に認められ,大動脈瘤被覆破裂,急性腎不全,大量後腹膜腔出血などであったが死亡例はなかった. intravasationやextravasationなどの軽度合併症の発生頻度は, Seldinger法では10例2%,経腰的大動脈造影法では2例1.3%であった.経腰的大動脈造影後の後腹膜腔出血について, CTを用いて5例に検索を行なったが大動脈周囲へわずかな出血を認めたのみであった.
    Seldinger法と経腰的大動脈造影法では合併症の発生頻度に差はなく,症例により異なる造影の部位と目的に応じて自由にseldinger法や経腰的大動脈造影法,四肢動脈穿刺法を選択していくことが,造影による合併症の発生頻度を低下させまた良好な造影結果が得られると考えられた.
  • 福井 四郎, 松浦 〓二, 早坂 滉, 水島 康博, 宇野 賢
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1067-1073
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    外科領域における術前術後の栄養管理の発展は,高カロリー栄養法などの普及とか,手術侵襲時における代謝栄養学の進歩などともあいまって,手術の拡大と生存率の延長に貢献するところ大である.したがって栄養の指標としての,またアミノ酸代謝の解明にあたっての血清遊離アミノ酸のはたす役割りは大きい.しかしながら血清遊離アミノ酸は自動分析装置が普及しつつあるも測定時の生体の条件の均一化の困難とか測定法の不一致など種々の原因が理由で日本人の正常値は確立していない.著者は20数年来,術前術後におけるアミノ酸代謝の研究の一環として,健康なる成人566人について正常値を検討した.
    1. 日本人成人の必須アミノ酸の総量ならびに非必須アミノ酸の総量は欧米人より小さい.
    2. 日本人成人の欧米人より高アミノ酸は, Asp., I-Leu., Met.であり,低いアミノ酸はGln., His., Arg., Lys., Ala., Orn., Aspn., Pro., Val.であり,その他のアミノ酸は差がない.
    したがって,欧米人の正常値を参考とすることは,つつしまなければならない.
  • 福井 四郎, 松浦 〓二, 早坂 滉, 水島 康博, 宇野 賢
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1074-1079
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    高齢化社会になるにつれて,老人高齢者の手術する比率は年々増加しつつある.老人の手術の限界を拡大し,延命効果を大ならしめるものの一つに術前術後の栄養管理の進歩がある.この栄養管理の発展に寄与しているアミノ酸代謝であるが,この研究の基礎となる老人高齢者の正常値は種々の理由によって確立していない.
    著者は20数年来,高齢者における術前術後の栄養管理に関する研究の一環として健康な老人170名高齢者106名について血清アミノ酸を検討した.
    1. 男女とも老人は成人に比較して多くのアミノ酸が低い.特にThr., Ala., Val., I-Leu., Leu.などが低い値をしめす.
    2. 高齢者は老人に比較して,アミノ酸の多くは低い.特にAsp., Aspn., Glu., Gln., Tau., Tyr., Orn., Arg., Cys., Met.などのアミノ酸が低い.
    3. 必須アミノ酸も非必須アミノ酸も老人は成人より低く高齢者はさらに低い.
    したがって,日本人の老人高齢者のアミノ酸の正常値を欧米人のそれと比較することはさけるべきである.
  • 弓削 静彦, 福島 駿, 本多 哲夫, 土田 勇, 藤政 篤志, 植田 正信, 姜 定幸, 内山 真紀, 奥 洋, 曹 光男, 枝国 節雄, ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1080-1083
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和48年4月より昭和58年3月までの10年間に大牟田市立病院外科乳腺外来を受診したものは4,283名であり,触診を主とする外来診断の結果はほぼ正常1,340名(31.3%),乳腺症1,613名(37.7%),乳腺痛449名(10.5%),線維腺腫317名(7.4%),乳癌240名(5.6%),乳腺炎237名(5.5%)その他である.そこで,正常群,乳腺症群,乳癌群の臨床的背景因子の2, 3について比較検討した結果,乳腺疾患とくに乳癌のhigh riskgroupとして 1) 出産歴がないもの, 2) 初産年齢の高いもの, 3) 早い時期の配偶者との離・死別者, 4) 卵巣摘出術を受けているもの, 5) 甲状腺ホルモン使用経験者, 6) 乳腺疾患の既往あるもの, 7) 人工乳のみのもの, 8) 陥没乳頭や乳頭異常分泌のあるもの,などがあげられた.
  • 篠崎 登, 児玉 東策, 助川 茂, 細谷 哲男, 内田 賢, 石川 正昭, 桜井 健司, 河西 信勝
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1084-1088
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌は,一般に予後良好で女性に多く,手術瘢痕・術後合併症などの理由から,消極的な手術がなされる傾向があった.今回著者は当教室で22年間に施行された甲状腺疾患手術685例の中で,何らかの理由によって2回以上頚部手術された甲状腺多手術例57例(8.3%)を対象に,その再手術の理由について検討した. 57例のうちわけは癌51例,良性疾患6例で各疾患群に占める割り合いは各々26.7%, 1.2%であった.
    甲状腺癌の多手術例の男女比は1:1.8で,単手術例の男女比1:4.4に比ぺて多手術例の男性の割り合いが有意(p<0.05)に高かった.甲状腺癌多手術例80回(51例)の再手術の理由は,局所再発36回(45%),リンパ節生検16回(20%),甲状腺生検6回(7.5%),術中癌偽陰性の診断で拡大再手術10回(12.5%),遠隔転移5回(6.25%),出血及び上気道閉塞7回(8.75%)である.しかし,局所再発と考えて再手術を施行した症例の1/3は癌が陰性であった.術中に良性と誤診して,後で拡大再手術をせざるを得なかった症例及び遠隔転移再手術例の60%は濾胞癌であった.
    一方良性甲状腺疾患の多手術例は,腺腫様甲状腺腫2例(2/71),濾胞腺腫1例(1/147),甲状腺機能亢進症2例(2/162),慢性甲状腺炎1例(1/37)であった.再手術の理由は,再発,出血,上気道閉塞,癌の疑いなどである.
    以上から再手術の理由を, (1) 術前診断, (2) 癌に対する術式, (3) 術後出血や上気道閉塞などの手術手技の3つに分けて再手術を減らす対策を考えると, (1) では頻回,積極的な検索を行ない早期に治療方針をたて,悪性の疑いがある時は最小限片葉切除兼局所リンパ節廓清術を行なう. (2) では,癌の再発と診断したら積極的に対処し,残存甲状腺全別兼根治的頚部廓清術又は保存的頚部廓清術を行なう. (3) では,手術手技上の細心の注意をすることにより,再手術を回避できると考えられる.
  • 邑山 洋一, 三島 好雄
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1089-1094
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌263例中にみられた両側乳癌18例を対象に転移性と原発性の臨床的事項及び病理組織学的事項の差異を検討し,一側乳癌患者の対側乳癌発生の危険率について検討した.
    原発性群では転移性群に比して,第一癌から第二癌発生までの期間が長, MIRROR IMAGEの頻度が高いなどの特徴をそなえていた.また原発性群では,第一癌,第二癌共にtnm病期で病期I, IIが多く認められたが,転移性群では,病期III, IVが多く,原発性群の予後は良好であった.両側乳癌は一側乳癌に比較し小葉癌の頻度が高く,転移性群では硬癌が多く,原発性群では乳頭腺管癌が多く認められた.原発性,転移性の両群共に第一癌と第二癌の組織型は必ずしも一致しなかった.一方,原発性両側乳癌の粗発生率は, 3.4%であり,一側乳癌発生患者の対側乳癌発生の危険率は正常婦人の乳癌発生危険率より高いと推定された.この高危険率の原因を究明する事が重要であると考えられる.
  • 2症例の報告とその治療を中心に
    伊東 了, 酒井 克治, 浜中 良郎, 平田 早苗, 東野 正幸, 吉岡 幸男, 裴 光男, 大杉 治司, 前川 憲昭, 小泉 英勝, 宋 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1095-1102
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道に原発する悪性腫瘍のうち,偽肉腫は稀な腫瘍である.著老は食道偽肉腫の2例を経験したので報告する.症例1は59歳の男性で嚥下困難を主訴として来院した.入院時の食道透視検査ではImに長径8cmの食道内腔を閉塞する腫瘤型の陰影欠損がみられた.胃瘻を造設し, 4,000radの術前照射を施行したところ腫瘤陰影は約1/3に縮小した.そして,根治術を施行したが,術後2年1ヵ月で肺・肝に再発をきたし死亡した.症例2は41歳の女性で食道のつかえ感を主訴として来院した.食道透視検査でImに3.0cmの腫瘤陰影を認めたが,手術に同意せず希望退院した.しかし,嚥下困難が急速に増強したため3ヵ月後に再入院した.再入院時の食道透視検査では,腫瘤はIm Eiに長径10cmにわたり食道内腔を閉塞するまでに発育していた.根治術を施行し, 3,960radの術後照射をした.術後2年4ヵ月を経過しているが再発の徴候は認めていない.
    著者の2例を含め集計しえた28例について検討した.本症の平均年齢は60歳,性差は男性78.6%, 女性21.4%で男性に多い傾向がみられ,また,発生部位としては中部食道に発生する割合が高かった.臨床症状は急速に進行する嚥下困難とそれに伴う体重減少が特徴的で,これはポリープ状腫瘤部が急速に内腔へ向って発育することに起因する.このことを症例2で明らかにした.また,症例2ではそれにもかかわらず,癌腫は上皮内にとどまっておりこの臨床症状の急速な進行が本症の予後に有利に働くことが予想された.著者は2症例の経験と文献的に本症の癌腫成分の拡がりの程度および深達度,リンパ節転移,そして,予後について検討した結果,治療としては食道癌に準じた根治術が必要であり,さらに,放射線療法を併用することにより根治性をたかめうることを推定した.
  • 大平 雅一, 鬼頭 秀樹, 北村 輝男, 中上 健, 柳 善佑, 浅田 健蔵, 十倉 寛治, 竹林 淳, 田中 勲, 藤本 泰久, 梅山 馨 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1103-1109
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    表層拡大型を呈した胃悪性リンパ腫の1例を経験した.症例. 44歳男性.術前の胃生検にて悪性リンパ腫と診断し,胃全摘.摘脾,第2群までのリンパ節郭清を行なった.組織学的検索ではreticulum cell sarcomaで,胃穹隆部より前庭部にいたる非連続的な病変で,浸潤は粘膜下層にとどまり,リンパ節への転移は認めなかった.肉眼的には表層拡大型に属するものであった.
    表層拡大型の悪性リンパ腫はX線学的,内視鏡的診断のうえで, reactive lymphoreticular hyperplasia, IIc型早期癌との鑑別が常に問題となる形態であり,本症例も生検診断が決め手となった.過去10年間に報告された200症例について検討を加えたところ,同様形態を呈するものは44例(22.0%)であり,生検により確診の得られたものは41.9%であった.占居部位については他の肉眼形態を示す群よりも前庭部に多い傾向があった.また浸潤は76%のものが粘膜下層にとどまり,組織型については悪性リンパ腫一般の傾向と同じくreticulum cell sarcomaが最も多かった.また本形態を示すものは,いわゆる早期胃悪性リンパ腫の範囲に入るものが多く,その予後は他の型よりも良好であるとされている.治療に関しては,徹底的なリンパ節郭清を含めた手術療法が第一であるが,化学療法あるいは放射線療法の併用を積極的に行なうことも必要であると考える.
  • 栗山 洋, 亀山 雅男, 梅下 浩司, 明石 英男, 水本 正剛, 青木 行俊
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1110-1113
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    84歳男性糖尿病合併・胃癌に胃全摘・横行結腸切除, R2 リンパ郭清, Roux-en Y再建を施行した.胃体中部小弯後壁寄りに9.5×9.0cmのポルマンIII型,高分化型腺癌, INF β, se, ly0, v0, ow(-), aw(-), n0であった.高齢に糖尿病を合併しているため術前・術後の管理に工夫を要した.術後縫合不全をおこし,胸膜炎,腹膜炎を併発した.腸瘻と中心静脈栄養,インスリン,抗生物質により合併症を克服し,術後2年3ヵ月の現在再発も糖尿病の悪化もなく元気に社会復帰している.
    高齢者ことに80歳以上の胃全摘合併症併発例での死亡率は極めて高く, 84歳の糖尿病合併胃全摘の報告が少ないので,臨床経過を述べ,高齢者胃癌と高齢者糖尿病について若干の考察を加えた.
  • 飯泉 成司, 山川 達郎, 三芳 端, 伊藤 誠二, 広沢 邦浩, 加藤 一富, 川端 啓介, 宇井 義典, 杉 洋一, 大石 信美, 宮川 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1114-1119
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性で,約10年来の繰返す心窩部痛を主訴に来院した.胃透視にて正常の幽門輪の大弯寄りに十二指腸球部に通ずる瘻孔を認めたため,本来の幽門輪とおもわれる一方にカニューレを挿入し,さらに大弯側瘻孔にGIF type P3を挿入し,十二指腸球部内での反転観察によりカニューレを確認,両者が別個のものであることを証明しDouble pylorusと診断し得た.手術せず外来にて経過観察中であるが,現在心窩部痛などの消化器症状はほとんど認めていない.
    本症例を含む本邦報告例は17例でその臨床的検討を行い報告した.成因としては後天性と考えられるものが多く,本症例も長期間にわたる心窩部痛があり,内視鏡にてdouble pylorus隔壁部に線状潰瘍を認めたため,後天性のものと考えた.
  • 特に嚢胞胃吻合術施行後の嚢胞の運命について
    嶋田 浩介, 小林 康人, 小西 隆蔵, 金 秀男, 永井 祐吾, 柿原 美千秋, 佐々木 政一, 竹井 信夫, 谷口 勝俊, 青木 洋三, ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1120-1124
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和47年1月より昭和57年12月までの11年間に9例の膵嚢胞を経験した. 9例中, 7例がHaward and Jordanの分類の仮性嚢胞であり,他の1例が貯留嚢胞, 1例が嚢胞腺腫であった.仮性嚢胞,貯留嚢胞の誘因は外傷4例,慢性膵炎2例,不明2例であった.手術術式は外瘻術2例,内瘻術3例,摘除術2例,膵体尾部切除術2例で,内瘻術3例中2例が嚢胞胃吻合術, 1例が嚢胞空腸吻合術であった.術後経過は内瘻術施行例では良好であったが,外瘻術施行例では術後排液が遷延し,摘除術施行2例中1例に膵体尾部切除術施行2例中1例に再発をみた.嚢胞胃吻合術を施行した2症例については,術後経時的にレントゲン検査及び内視鏡的検査を行ない,膵嚢胞及び吻合部の状態を観察した. 1例は術後15日目,他の1例では術後23日目にレントゲン検査を施行したが,既に嚢胞は消失し,吻合口は閉鎖していた.胃内視鏡検査は1例のみに行なったが,術後1カ月目には浅い陥凹として観察され, 2カ月目には線状の粘膜集中像のみとなっていた.
  • 近藤 秀則, 岡村 進介, 朝倉 晃, 佐久間 隆, 小林 直広, 池田 俊行, 古本 福市, 山本 浩史, 種本 和雄, 畠山 哲朗, 松 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1125-1132
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれは,右季肋部腫瘤を主訴とし,胆嚢十二指腸瘻を形成した胆嚢癌の1例を経験したので報告する.
    症例は57歳,女性.右季肋部腫瘤を主訴として来院.腹部には右季肋部に小児頭大の弾性硬の腫瘤を触知した.胃X線検査で十二指腸球後部より腸管外への造影剤の流出がみられ,胆嚢十二指腸瘻が認められた.超音波検査にて胆嚢より連続するlow echoの腫瘤陰影を認め, CT検査で肝,腹壁および後腹膜腔に接した胆嚢より連続する腫瘤陰影を認めた.腹腔動脈造影では胆嚢動脈の拡張,口径不同,断裂および腫瘤に一致したtumorstainを認めた. ERCPにて十二指腸に2ヵ所の瘻孔開口部を認め,その周辺を生検しGroup Vと判明した.注腸検査では横行結腸に腫瘤による壁外性の圧排像を認めた.
    以上より,胆嚢十二指腸痩を形成した胆嚢癌の術前診断にて手術を施行した.腫瘍は胆嚢底部~体部より発生し,壁外性に小児頭大の腫瘤を形成し,胃・十二指腸・膵頭部・横行結腸・横行結腸間膜に浸潤していたが,肝床部・総胆管・門脈への浸潤はなく,胆嚢腫瘍摘出術,膵頭十二指腸切除術および右半結腸切除術(R3)を施行した.病理組織学的診断は胆嚢原発の分化型乳頭状腺癌であり,胆道癌取扱い規約によると, stage IV (N0S3 B0 Hinf0 H0 P0, n3s3b0)で相対治癒切除であった.術後1年目の現在生存中である.
    胆嚢癌は発見された時には,周囲臓器への浸潤やリンパ節転移が高度で非切除に終わることが多いが,他臓器浸潤がある場合でも,積極的な合併切除により延命が期待できるものと考える.
  • 久保 正二, 酒井 克治, 木下 博明, 松岡 修二, 長田 栄一, 街 保敏, 広橋 一裕, 小林 庸次
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1133-1139
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Dubin-Johnson症候群は体質性過ビリルビン血症の代表的疾患で,本邦でも多くの報告例がある.しかしその胆石症の合併例は著者らの調べえた範囲内では16例にすぎない.最近著者らは胆石症を合併したDubin-Johnson症候群の1例を経験し,その胆汁酸代謝について検討を加えた.症例は27歳の男性.主訴は黄疸および右季肋部痛である.入院時検査では血清総ビリルビン値および直接ビリルビン値の上昇を認め,超音波検査上,胆嚢頚部にstrong echeを伴う音響陰影を認めた. ICG消失曲線は正常パターンを示したが, BSP負荷試験では60分以降の血中停滞率が再上昇していた.血清総胆汁酸値は16.2nmol/mlと上昇し, UDCA (ウルソデオキシコール酸) 300mgを用いた経口胆汁酸負荷試験では負荷30分後に最大値となり,以後徐々に低下した.血清胆汁酸分画ではUDCA, CA (コール酸), CDCA(ケノデオキシコール酸)の著明な増加とDCA(デオキシコール酸)の著明な減少を認めた.手術時,肝臓は黒色を呈し,胆嚢頚部にはコレステロール系結石が認められた.病理組織学的には,肝小葉周辺部を中心に肝細胞内に茶褐色色素顆粒が多数認められた.術後血清総ビリルビン値および直接ビリルビン値は一般胆石症患者より上昇していた.逆に本例の胆汁中総ビリルビン値は低値であった.また血清総胆汁酸値はT-tubeクランプ後急激に上昇した.しかし胆汁中への胆汁酸1日総排泄量は常に2mmol以上であり,肝での胆汁酸合成能に障害はないと考えられた.また術後胆汁中総コレステロール値は本例で高値であった.
    Dubin-Johnson症候群では胆石症合併頻度がやや高く,発症年齢も若い.またそのほとんどがコレステロール系結石である.以上本例に認められた胆汁酸代謝異常がDubin-Johnson症候群にもとづくものなのか,さらには胆石症の成因にいかに関与するかは今後症例を重ねて検討をすべき問題である.
  • 草島 義徳, 伊藤 雅之, 加藤 真史, 小西 一朗, 藤田 秀春, 宮崎 逸夫, 重田 浩一, 中瀬 真一, 岡田 保典
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1140-1145
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,超音波診断装置の進歩により,胆嚢小隆起性病変の描出が極めて容易になった.胆嚢小隆起性病変としては,胆嚢癌,胆嚢腺腫, cholesterol polyp, adenomyomatosisなどが挙げられるが,それらの鑑別は,現在でも必ずしも容易ではない.今回私供は,術前,超音波断層診断装置と胆嚢直接造影により描出し得た69歳女性の胆嚢腺腫の1例を呈示し,鑑別診断の問題点,治療指針につき若干の考察を加えた.また本例の摘除胆嚢にcholesterol polypの合併をみたが,詳細な病理組織学的検索の結果,胆嚢腺腫の組織発生および癌化の可能性を考えるうえで極めて興味ある所見を得た.すなわち胆嚢は体中部で強く屈曲し,それを境として腺腫のみられた体底部とcholesterol polypのみられた体頸部の壁構造は全く異なっていた.体底部では粘膜,筋層は萎縮し強い線維化に陥っており,粘膜上皮には偽幽門腺化生や杯細胞を中心とした腸上皮化生がみられた.その化生の最も強い部分に腺腫の発生をみ,腺腫自体も杯細胞や小皮縁の発達した腸型吸収上皮細胞を中心とする腸上皮化生が著明であった.腺腫は細胞異型性が強く,癌との境界領域と考えられた.一方体頸部の胆嚢壁では炎症細胞浸潤と浮腫が粘膜から筋層にかけてみられ,通常の慢性胆嚢炎像を呈していた.粘膜には5個のcholesterol polypがあり,上皮は過形成となっていたが,腸上皮化生は認められなかった.これらの所見は,胆嚢粘膜の腸上皮化生や幽門腺化生が腺腫発生を導く重要な因子であることを強く示唆するものと考えられた.本例では,おそらく慢性胆嚢炎の経過中に何らかの原因で,体中部にくびれを生じ,体底部では胆汁うっ滞が強くおこり胆嚢壁が荒廃し,この経過中に粘膜上皮に再生と腸上皮化生が生じ,さらに腫瘍発生をきたしたものと推定された.また本例の腺腫内には,細胞異型性の強い部分がみられ,癌化の可能性についても若干の考察を加えた.
  • 大塚 明夫, 永田 徹, 高山 澄夫, 石井 義之, 柳沢 暁, 徳安 公之, 木村 明, 吉田 忍, 黒田 徹, 関口 更一, 柵山 年和 ...
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1146-1149
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは術前診断率がきわめて低く,イレウスとなり緊急開腹手術をうけてはじめて発見されることが多い.老齢でやせた分娩歴の多い女性に好発し,大腿内側の神経痛様疼痛のHowship-Romberg signが特徴である.しかし本症は稀な疾患であり,みのがされやすく,発見が遅れるために死亡率も高率となっている.
    最近著者らは87歳女性で,腸管穿孔性の汎発性腹膜炎の診断のもとに開腹手術を行ったところ,閉鎖孔ヘルニア嵌頓による小腸穿孔が原因であったという症例を経験した.分娩の既往がなく, Howship-Romberg signもない術前診断が困難であった症例であり,汎発性腹膜炎を主症状とした閉鎖孔ヘルニアは,ほとんど例がないので,文献的考察を加え報告する.
  • 加納 宣康, 酒井 聡, 池田 正見, 原 俊介, 雑賀 俊夫, 松原 長樹, 小川 賢治
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1150-1153
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれはOgilvie's syndromeの1例を経験したので報告し若干の文献的考察を加えた.
    患者は75歳,女性.主訴は腹痛と咽吐.現病歴: 1983年11月23日より腹痛および腹部膨満出現したため某院受診し,イレウスとして保存的療法を受けるも軽快しないため当院へ転院した.入院時,腹部膨満強くとくに中腹部に横走する著明に拡張した腸管を認めた.腹部単純X線写真では,全体に拡張した腸管を認め,とくに中腹部に横走する腸管は拡張著しく直径11cmである.全身状態不良なため,同11月29日局所麻酔下に結腸瘻造設術を施行した.術後経過良好で全身状態改善したため, 12月8日注腸造影施行するに,結腸瘻造設部より肛門側に器質的閉塞を認めず,また結腸瘻造設部を越えて下行結腸もよく造影された.以上の所見からpseudo-obstruction of the colon (Ogilvie's syndrome)と診断した.
    本症は欧米では1948年のOgilvieの報告以来,現在までに351例の報告をみるが,本邦では現在まで詳細な報告例はない.
    本症の特徴は,臨床的およびX線的所見が機械的大腸閉塞に酷似しているにもかかわらず器質的閉塞を証明できないことである.
    本症の原因は不明であるが,腸管外病変を合併することが多い.
    本症の腹部単純X線写真の特徴は, (1) 著明な腸管ガス像を認めるが液体の貯留は少なく,機械的イレウスでみられる鏡面像を呈することは少ない, (2) 拡張腸管の肛門側にcutoff pointを認める, (3) 通常直腸内にガス像を認める,などである.
    治療はまず保存的になされるぺきであるが,結腸の拡張が9~12cmに達する例や保存的療法に抵抗する例は手術療法の適応となる.
    予後は合併症としての腸管穿孔の有無により大きく異なる.
  • 三宅 哲也, 小池 宏, 福田 宏司, 佐々木 敬二, 矢花 正
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1154-1161
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸に潰瘍をきたす疾患は多種多様にあるが,閉塞性結腸炎に比べて大腸癌イレウス時に生じた小腸炎に存在する非特異性多発性潰瘍については余り云われていない.我々は大腸癌イレウス時の非特異性多発性小腸潰瘍を2例経験した.症例1. 68歳,男で左側横行結腸癌にて回腸に回盲弁より口側70cmにわたりul-II~ul-IIIの広い潰瘍が多数と粘膜皺襞に沿って横走する“みみず腫れ”様の線状発赤でul-II~ul-IIIの線状潰瘍であったのと,症例2, 67歳,女で盲腸癌にて回盲弁より1m50cmにわたりul-II~ul-IVの広い潰瘍が多数と症例1と同様の粘膜皺襞に沿った線状発赤でul-II~ul-IVの線状潰瘍が見られて,いずれも非特異性の潰瘍であった.両者の小腸潰瘍は肉眼像,組織像が類似していて,癌肛門側の結腸粘膜には病変はなかった.潰瘍の発生のメカニズムを単純に大腸癌イレウスのための腸管内容のうっ滞と血液のうっ滞のみで論ずるのは困難であると考えられるが,大腸癌イレウスの時の小腸炎,潰瘍発生には腸管閉塞が背景因子となり得ると考えた.著者は大腸癌イレウス時の広範な小腸炎を,比較的急に完成された盲管(blind loop)と想定し論じた.これらの症例の臨床的意義は右側結腸の大腸癌イレウス時に一期的切除吻合が安全かどうかを検討するのに非常に参考となる症例であり,意義があると考えられる.重症な大腸癌イレウス時の盲管の腸炎は癌切除とともに治癒せしめるべき対象と考えられ,その治療には減圧か切除かの2つの方法があると考えられる.どちらを選択するかについては,大腸癌イレウス時に腸炎をきたした腸管は広範になるので,腸炎をきたした腸管の切除の方法は非常に限られた症例になるかもしれない.我々は炎症の強い腸管の切除にてイレウスを治癒せしめた.今後,充分検討される余地のある問題をかかえた症例と考え,若干の考察を加え,この2症例を呈示する.
  • 兼行 俊博, 藤村 嘉彦, 小林 修, 新谷 清, 守田 知明
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1162-1170
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    DeBakey III型解離性大動脈瘤の3例を経験した.いずれもCT検査で診断し,急性期には薬物療法を行った.症例I(IIIb型)は大動脈造影像で解離腔を証明せず,下行大動脈の最大径も4.0cmに留ったので薬物療法のみを行ない,症例II(IIIa型)はentryを中心に嚢状動脈瘤を呈したためentryの閉鎖を,症例III(IIIb型)は左鎖骨下動脈起始部直下にentryをもつ解離が腎動脈下の腹部大動脈にre-entryを生じ,同部に嚢状動脈瘤を形成したもので, fenestrationと動脈瘤切除を行った.全例,ひき続き降圧療法を行ない,症例Iは発症後4カ月,症例IIは術後3カ月,症例IIIは術後1カ月(発症後2カ月)のCT像で解離腔の閉鎖を確認した.
    解離性大動脈瘤の病態は複雑多岐に亘り,特に広範な解離では治療方針の混迷を来すことが多いが,我々の経験から,動脈硬化症を基盤としたIIIb型病変でも降圧療法のみで解離腔の血栓化が期待出来ると云える. re-entryの処置に関しても議論があるが,胸部大動脈では解離腔の血栓傾向が強いため,降圧療法で仮性腔の血流が減少すれば閉鎖の可能性が高い.
    以上のことより, DeBakey III型動脈瘤の治療は,合併症がない限り薬物療法に徹し,症例IIIの如く腹部大動脈に嚢状動脈瘤を形成したものでは, fenestrationと大動脈瘤の切除で充分であろう.解離性大動脈瘤の診断ならびに経過追跡には造影CT検査が有用であった.
  • 高田 忠敬, 安田 秀喜, 内山 勝弘, 黒沢 努, 花上 仁, 四方 淳一
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1171-1176
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹水,脾腫,血小板減少症,貧血など脾機能充進症に対しては,従来より脾摘が適応とされた.しかし,症例によっては出血傾向の存在や全身状態の低下の為,手術が禁忌となることが多かった.そこで1973年Maddisonは,このような症例に対しSplenic Embolizationを行い好成績を得たが,本邦ではいまだ関心のうすい分野である.われわれは,これまでに5例のSplenic Embolizationを施行した.
    対象はいずれも脾腫,血小板減少症を有する肝硬変,食道静脈瘤の症例であり,うち1例は肝癌合併例であった.方法は血管造影後に,まず前処置として脾動脈から抗生物質を動注,つづいて抗生物質をしみこませた2×2mm角のGelfoam片を10~50個動注した.塞栓率は50~60%のPartial Splenic Embolizationを目指した.この結果5例中4例がPartial Splenic Embolizationであり, 1例がTotal Spenic Embolizationとなった.脾腫に対するSplenic Embolizationの効果は著しく,脾腫は4例に触知できない程に縮小し,残り1例もわずかに触知される程となった.血小板数は, Splenic Embolization後上昇し, 1~2週でいずれも正常値にまで回復した.
    血小板数が正常にまで回復した時期に,食道静脈瘤の治療として,内視鏡的硬化塞栓術を4例に, PTPを1例に施行したが,全例安全に施行できた. Splenic Embolizationの副作用としては,一過性の発熱や腹痛,軽度の麻痺性イレウスを全例に認めたが,術後4~7日で改善した. Splenic Embolizationの合併症として, Total Splenic Embolizationとなった1例が術後5カ月後に脾膿瘍を形成し,脾摘術を施行した.以上Splenic Embolizationの臨床効果,問題点について検討し報告した.
  • 武山 直志, 高木 大輔, 杉島 忠志, 北澤 康秀, 千代 孝夫, 田中 孝也, 山本 政勝
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1177-1182
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    播種性血管内凝固症候群(以下DIC)は臨床の場において,時として発症する重篤な合併症であり,しばしば複数臓器不全を発生せしめる. DICは種々の誘因々子により発生するため,その発生様式,進展状況等も各種疾患,誘因々子により多少,異なるものと推察される.今回,私どもは救急領域に運ぽれ急性DICを発症した症例を,その基礎疾患群別に分け検討したところ,各々に特徴的な発症および進展状況を認めた.すなわち産婦人科領域の急性DICでは,電撃的ともいえる発症様式を示すも,治療によく反応し比較的急速な改善傾向を示した.一般外傷,頭部外傷,熱傷群では,受傷3日前後にDICを発生し, DICの進展,改善状況も比較的類似していた.しかし,脳卒中群では各種の治療を施行しているにもかかわらず, DICは持続的悪化傾向を示していた.
    以上のことより,急性DICはその基礎疾患により,その発症,進展状況も多少異なるため,その治療にあたっては,これらのことを充分把握し速やかに対処せねばならぬと思われた.
  • 佐々木 薫, 佐々木 俊夫, 長嶺 由啓
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1183-1187
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    アニサキス症の報告例は近年増加傾向にあるが,その多くは胃アニサキス症で,腸アニサキス症については確定診断が困難なため,手術後に本症と診断されることが多く,報告例も少ない.本症はskip lesionを呈することがあるが,臨床例での報告は極めて稀である.
    われわれは, 60歳の男性で,イレウスの診断のもとに開腹術を行い,同時に3か所の病変を認めるとともに,その切除標本から生きた虫体を確認しえた腸アニサキス症の1例を経験した.
    主病変は回腸末端から60cmの回腸にあって,その口側100cmにはskip lesionを形成しており,さらに回腸末端より50cmのところに腸間膜腫瘤を認めた.主病変の回腸と,腸間膜腫瘤は切除し,副病変の空腸は腸切開による内腔検索を行った.回腸切除標本内に,虫体の一部を粘膜に穿入した生きたアニサキス幼虫を認め,病理組織学的に回腸病変部は全層性の好酸球性蜂窩織炎像を呈していた.腸間膜腫瘤は消化管を穿通したアニサキス幼虫によると思われる陳旧性の肉芽腫であった.
    アニサキス症の発生にはアレルギー反応が関与していると考えられており,われわれの症例では,腸間膜肉芽腫の存在から,すでにアニサキスに感作された状態であったと推測され,そのためにイレウス症状を呈したものと考えられた.
    skip lesionは,複数虫体の侵入,単一虫体の複数個所への侵入,再感染による初感染巣の再燃化によって発生しうるが,本症例では,いずれによるものかは明らかにしえなかった.しかし,主病変の切除によって臨床上は治癒しえた.
  • 山城 敏行, 小越 章平, 米沢 健, 岩佐 正人, 松本 孝文, 野並 芳樹, 田宮 達男, 鈴木 了司, 熊沢 秀雄, 園部 宏
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1188-1194
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    アメーバ性大腸炎に合併した大腸穿孔は本邦において最近13年間に15例の報告をみるが,その予後は極めて悪い.今回,盲腸穿孔および肝膿瘍を合併したアメーバ性大腸炎の1治験例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例はインド旅行から帰国して約1カ月半後,下痢さらに右側腹部痛で発症した28歳スペイン人女性.入院時全身状態不良で緊急手術施行.肝右葉に単発性膿瘍および盲腸前壁に穿孔が認められた.肝膿瘍ドレナージ術および盲腸を創外に引き出して固定するexteriorizationを行った.術後肺水腫に陥ったが救命治癒せしめえた.盲腸穿孔部壁の組織学的検査で赤痢アメーバ栄養型を証明した.
    アメーバ性大腸炎の穿孔例は全身状態不良のことが多く,手術に際しては最も侵襲の少ない術式が選ばれるべきである.
  • 及川 郁雄, 平田 公一, 秦 史壮, 桂巻 正, 大久保 衛, 丸山 芳朗, 臼井 朋明, 白松 幸爾, 戸塚 守夫, 早坂 滉
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1195-1199
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科において昭和49年10月から昭和58年9月までの9年間に経験した重複癌患者58例について検討を加えた.この頻度は同期間に入院した悪性腫瘍患者2,349名の2.47%に相等する. 58例中異時性発生は47名,同時性発生は11名であった.性別発生比は1:1.71で女性に多い傾向を示し,年齢は50歳以上の症例が大部分を占めていた.
    臓器別では,いずれか一方の癌としては胃癌,大腸癌が各25例,生殖器癌24例,乳癌9例,口腔,咽喉部癌,甲状腺癌が各6例といった順で多く,男性では胃癌が,女性では子宮癌が多かった.このように重複癌としての組み合わせでは一方が消化器癌である割合が最も多く,このうち胃癌及び大腸癌が各々35.6%であった.
    予後は一般に不良でfollow upできた57例中, 39例は3年以内に死亡している.男性の方が予後不良であり, 3年以内に16例すべてが死亡し,そのうち72%に相等する13例は一年以内に死亡している.長期生存は女性において10例見られたが,この大部分は比較的予後が良いとされる子宮癌,乳癌,甲状腺癌を組み合わせた症例である.
    家族歴の検討では2親等内に重複癌のうち少なくとも一方の癌の発生を認めたものが15%と高頻度であった.また重複癌発見前に放射線照射療法をうけたものが23%と高頻度であった.
  • 相良 憲幸, 波江野 善昭, 黒岡 一仁, 杉本 憲志郎, 寺下 英晴, 森川 栄司, 久保 玲子, 安富 正幸
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1200-1203
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胸膜に発生する悪性腫瘍は,その殆んどが悪性中皮腫であり,扁平上皮癌の発生は極めて稀であり,欧米,本邦を通じて本症例を含めて9症例に過ぎない.
    我々は72歳の男性で右側腹部痛及び湿性咳漱を主訴として来院した患者に膿胸罹患後25年目に発見された胸膜扁平上皮癌の1症例を経験した.
    この患者は同時性重複癌として胃癌が存在したため,胃切除術を先行して行い,体力回復を待ち,開胸手術を施行した.胸膜病変は術前のCT像に示された如く主病巣である嚢胞とそれに連続する胸膜の肥厚像を認めた.
    切除標本による組織診断で,胃癌は高分化腺癌であり,胸膜腫瘍は嚢胞内腔に散在性に扁平上皮癌の像を認め,同時性重複癌である事が確認された.
    胸膜,特に膿胸腔に扁平上皮癌が発生したという報告は1949年Mc Anallyによるものが最初であり,その発生の機序については, Deatonは, 1) 膿胸気管支瘻を介し, Metaplasiaを起こした気管支上皮が膿胸腔内へ進展した場合, 2) 中皮細胞がmetaplasiaを起こす場合, 3) 皮膚膿胸瘻を介し皮膚からの上皮細胞の増生が生じる場合の3つの可能性を示している.
    本症例は瘻孔の存在は確認されず, Deatonの云う2)の可能性が最も高いと考えられる.
  • 里見 昭, 正 義之, 日高 修, 大城 淳一, 宮城 航一
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1204-1208
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    横紋筋肉腫は,小児悪性腫瘍の中で比較的頻度の低いものであるが,早期にリンパ節および血行性に遠隔転移することや,近接臓器への浸潤が強いことから極めて予後の悪い腫瘍として知られている.最近,我々は,後胸壁より発生して,胸腔内および胸椎側へ向かって発育し,その結果,下半身麻痺を呈するにいたったDumb-bell typeの稀な本症の1例を経験したので報告し,加えて,診断,治療上の問題点について若干の文献的考察をおこなった.
  • 内山 勝弘, 高田 忠敬, 安田 秀喜
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1209-1214
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大網腫瘍はその大部分が転移性腫瘍であり,原発性腫瘍は極めて稀な疾患とされている.また,その特有の症状もないことから診断についても困難である.最近,我々は大きさ42×32×8cm,重さ6,000gにおよぶ巨大な大網原発性平滑筋肉腫の症例を経験した.診断には超音波検査やCTスキャン,なかでも腹腔動脈造影が有効で,腫瘍が左大網動脈および後大網動脈により栄養されていることや血管の不整像,新生像がみられることより大網の悪性腫瘍と考えた.腫瘍摘出を行ったが,術後1年6カ月にて再発,悪液質にて患者は死亡した.
    文献的に検索し得た限りでは,本例は19例目であるが,なかでも最も巨大な腫瘍と考えられた.予後についてみると,7年生存症例もみられるが,大半は1~2年で再発しており,早期の診断法の確立と充分な外科的切除が必要である.
  • 西村 理, 柏原 貞夫, 松末 智
    1984 年 45 巻 8 号 p. 1215-1218
    発行日: 1984/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は腹直筋Desmoid Tumorの一例を経験しえた.この摘出で生じた腹壁欠損を,対側腹直筋前鞘を用いて修復し,良好な経過を得たので文献的考察を加え報告する.
    Desmoid Tumorは全身に発生するが,若年女性の腹壁に好発する.その発育は浸潤性であるので,不十分な切除では再発を免れない.従って広範な切除を要し,術後に残る欠損の再建が問題となる.
    我々の経験では,腹直筋前鞘による腹壁再建は手技が容易で,美容的にも優れていた.腹壁Desmoid Tumorは前腹壁,特に腹直筋を侵す事が多いので,本法はその腹壁再建に際して有用な一方法と考えられる.
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