日本臨床外科医学会雑誌
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45 巻, 9 号
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  • 成高 義彦
    1984 年 45 巻 9 号 p. 1229-1243
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年,検査法の進歩により数多くの腫瘍マーカーが報告されているが,胃癌に対しては満足すべきものはない.一方,最近注目されてきた腫瘍マーカーの1つに1957年Björklundらが発見したTPAがあるが,その臨床的意義や免疫学的作用はいまだ充分に解明されていない.そこで,これらの点を明らかにすべく,胃癌患者80症例を対象に血清TPA値を測定し,胃癌の進行程度やそれを規定する諸因子との関係,他の腫瘍マーカーとの関係,免疫学的指標との関係,さらに生体内に及ぼす免疫学的作用について検索し,次のような結果を得た.胃癌患者の血清TPA値および陽性率は良性疾患,健常人に比較して有意に高値を示した.胃癌の進行にしたがい,血清TPA値および陽性率は上昇した.非切除例は切除例に比較して有意に高値を示し,再発例は最高値を示した.深達度,リンパ球転移度,脈管侵襲,肝転移の進行にしたがい,血清TPA値および陽性率は有意に上昇した.腹膜転移の有無および組織型の違いによる有意差を認めなかった.他の腫瘍マーカーであるCEA, IAPとの間には正の相関を認め, AFPとは相関を認めなかった.免疫学的指標であるPPD皮膚反応,末梢血リンパ球数, T細胞比,リンパ球PHA幼若化反応, NK細胞活性などとの間に負の相関を認めた. TPA高値群の血清はTPA低値群の血清に比較して,より強くリンパ球PHA幼若化反応を抑制する傾向を認めた.標準TPA液添加によるリンパ球PHA幼若化反応では, TPA濃度依存性の幼若化反応抑制を認めた.以上の検討から,血清TPAは胃癌に対する鋭敏なマーカーとして,癌腫の進行程度,切除可能性,再発の有無の判定など臨床上有用であると考えられ,また,細胞性免疫能に強く関与し,生体内では免疫抑制的な作用をもつことが示唆された.
  • とくに細胞性免疫能との関連について
    湖山 信篤
    1984 年 45 巻 9 号 p. 1244-1255
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術症例96例を対象に, Mitomycin C, Tegafur, OK-432,およびPS-Kによる術後免疫化学療法の治療成績ならびに細胞性免疫能の変動を, Mitomycin C,およびFluorouracilによる術後化学療法のものと比較検討した.治療成績を手術法別にみると,治癒切除では免疫化学療法と化学療法の間に差はなかったが,非治癒切除・非切除では術後1年および2年において,免疫化学療法の生存率が化学療法のそれより良好であった.細胞性免疫能の変動を手術法別に免疫パラメーターでみると,治癒切除では,免疫化学療法でSu-PS皮膚反応が術後増強し,末梢血リンパ球数,末梢血T細胞数が増加する傾向にあり, PPD皮膚反応, Con Aリンパ球幼若化反応がやや増強した.これに対し,化学療法でほとんどの免疫パラメーターは術後も変動しないか,術前へ回復するにとどまったが, PWMリンパ球幼若化反応はむしろ低下した.非治癒切除・非切除で免疫化学療法のCon Aリンパ球幼若化反応は術後増強し, Su-PS皮膚反応は増強する傾向にあり, PPD皮膚反応, PHAリンパ球幼若化反応はやや増強,末梢血リンパ球数はやや増加したのに対し,化学療法ではPPD皮膚反応は低下する傾向にあり, PHAリンパ球幼若化反応, Con Aリンパ球幼若化反応, PWMリンパ球幼若化反応もやや低下した.大腸癌にこのような術後免疫化学療法を行ったときの細胞性免疫能は化学療法を行ったときに比べ,手術法の別なく良好であるが,とくに非治癒切除・非切除において予後を反映したと考えられる.
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