日本臨床外科医学会雑誌
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46 巻, 6 号
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  • 島田 信勝
    1985 年 46 巻 6 号 p. 693-694
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 曲直部 寿夫
    1985 年 46 巻 6 号 p. 695-696
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 陣内 傳之助
    1985 年 46 巻 6 号 p. 697
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 長尾 房大
    1985 年 46 巻 6 号 p. 698
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 福島 久喜
    1985 年 46 巻 6 号 p. 699-706
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    コンピューテッド・ラジオグラフィー(富士写真フイルムの開発したFuji computed radiography,以下FCRと略す)は,最近開発された新しい画像診断システムで輝尽性蛍光体のイメージングプレートを用いてコンピュータにより画像処理をする.
    このシステムを乳房X線撮影に応用し,乳癌の診断率,乳癌のX線像の特徴について従来の乳房X線撮影法と比較検討した.
    また,乳腺良性腫瘍についてはFCRの診断率を求めた.
    1983年1月より1984年5月まで乳癌30例,乳腺良性腫瘍22例を対象にしたところ診断率は,乳癌の確診像22例, 73.3%,疑診像(確診のない腫瘤像) 4例, 13.3%, 誤診像(腫瘤像非描出) 4例, 13.3%であった.乳腺良性腫瘍では,正診像(良性腫瘤像) 5例, 22.7%,誤診像(疑い,腫瘤像非描出) 17例, 77.3%であった.
    乳癌のX線像の特徴についてFCRが従来の乳房X線撮影にくらべ優位な悪性所見は, 14例にみられた.腫瘤の不整な辺縁像が14例,腫瘤陰影の濃度差が5例,皮膚牽引が4例,乳頭陥凹が2例,腫瘤の周囲の血管陰影の増強が5例とFCRがより鮮鋭に,よりはっきりしていた.
    次にFCRにおける乳房X線の撮影線量について低減線量の測定を行なった. FCRの撮影線量は4.0~18.1mAsが3.1~7.5mAsまで低減することが可能であり,低減率は15~58%であった.
    FCRおよび従来の乳房X線撮影法では乳癌の診断率は一致したがX線像ではFCRの方が腫瘤陰影,皮膚所見など鮮明に描出された.
    FCRは従来の乳房X線撮影法に比較して低線量撮影が可能である.
  • 岡崎 亮, 成松 英明
    1985 年 46 巻 6 号 p. 707-721
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    非浸潤癌,乳頭腫,乳頭腫症などの乳管内増殖性病変についてはこれまで主に形態学的な面から研究されており,機能的側面からの検討は少ない.
    乳癌30病変,良性117病変に対し,抗17β-estradiol血清を用いたAvidin-Biotin法による免疫組織化学的染色を行ない,各病変についてestradiolから見た内分泌環境について検討した.染色陽性判定に際し,次の3項目の陽性判定基準を設定した.
    1. 発色は鮮褐色,顆粒状であること,
    2. 細胞内及び細胞同士に発色のvariationが見られること.
    3. 対象細胞の30%以上が上記の所見を有すること.
    また,各陽性細胞を4型に分類した.即ち, I型は核に近接する腺腔側細胞質に限局した発色を示すもの, II型は細胞質全体に比較的均等な分布を示すもので微細ないし細顆粒状の発色である. III型は細胞質中に粗ないし中顆粒状の発色で,均等ときには不均等分布から成る. IV型は核を中心とする同心円状ないし渦紋状の発色を示す.
    各陽性細胞の出現状態を検討し,以下の結論を得た.
    1. 陽性率は乳頭腺管癌症例に高く,他の良性病変では低い傾向にあった.
    2. 線維腺腫は高い陽性率を示すが,癌症例とは異なってII型細胞が多い.また細胞異型の強い群で陽性率が高い傾向が見られた.
    3. 乳頭腫,乳頭腫症では2相から成る構築細胞に染色所見上明らかな差が認められた.
    4. 乳癌細胞は良性細胞に比べ,陽性率には明らかな差は認められないが, III型, IV型細胞の出現率が高い.
    乳管内増殖性病変は良性から悪性にまたがる連続的スベクトルとしてとらえる必要がある.
  • 水野 茂, 仲西 直治, 佐藤 康幸, 竹内 元一, 杉浦 勇人, 藤本 牧生, 舟橋 啓臣
    1985 年 46 巻 6 号 p. 722-729
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌に対する手術の根治性を向上させる目的で,頚部と縦隔内のリンパ節も同時に郭清する広範囲郭清法を試みた.外側胸筋神経や胸肩峰動静脈を温存しながら非定型的乳房切断術を行なったのち,鎖骨下筋腱を切離して同じ皮膚切開創から頚腋窩管内組織や腋窩血管上部リンパ節,鎖骨上リンパ節,下内深頚リンパ節などを静脈角に至るまで一塊にして郭清する.この間,鎖骨や胸鎖関節には操作を加えない.つづいて胸骨縦切開を加え縦隔内から胸骨旁リンパ節,気管前リンパ節,気管旁リンパ節,胸骨柄後部リンパ節などをやはり静脈角に至るまで一塊にして郭清する.従って3群リンパ節までをすべて郭清しているがいずれも胸膜外で操作し肺は露出しない.このような広範囲郭清を49例に実施したところ術後の創痕や機能は通常の非定型的乳房切断術とまったくかわりがなく,また骨性組織の欠損がないため特別な疼痛もみられなかった.術後3年以上経過観察した症例でも上腕浮腫は通常の術式と差がなくやはり満足できる結果であった.以上,手術時間が多少長いが後遺症や合併症のほとんどみられないことから,早期症例にも十分応用できる術式と思われる.やや進行した症例には大胸筋も切除する定型的乳房切断術後に,本法にのべる広範囲郭清術式を行なう.以前進行症例に多く試みられた3領域郭清法(本法ではこれよりさらに広範囲の郭清を行なっている)は最近ほとんど行なわれなくなっているが,乳癌はリンパ節転移率の高い疾患であるので術創や後遺症の問題が極めて少ない本法なら改めて試みてみる価値があると思われる.なおこの広範囲郭清を行なっても多くの症例で輸血をしていないがそのための工夫や,頚部,縦隔内の郭清後に生じる大きな死腔の早期閉鎖法についても新しい試みを行なったので,その詳細についても述べる.
  • 安倍 十三夫, 山本 直樹, 伊藤 敏行, 井上 紀雄, 田中 利明, 泉山 修, 山口 保, 渡辺 祝安, 山田 修, 星野 豊, 佐々木 ...
    1985 年 46 巻 6 号 p. 730-737
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室で1980年5月より1984年9月末日まで,心停止液併用心筋保護液(Sapporo-Medical College液: SMC液)を開心術症例636例に応用し,手術死亡22例(死亡率3.5%)と良好な手術成績を得てきたので本法における問題点につき検討した.疾患別手術成績では,先天性心疾患278例では手術死7例(2.5%) (非チアノーゼ群194例,手術死亡なし,チアノーゼ群84例,手術死7例(8.3%)であった.後天性弁膜疾患235例,手術死12例(5.1%) (大動脈弁99例手術死4例(4.0%), 僧帽弁疾患136例手術死8例(5.9%)である.また,虚血性心疾患123例の手術死は3例(2.4%)であった.
    これらの臨床例の検討から以下の結論を得た.
    1) 心筋保護液を用いた心筋保護法では,第1期,急速心停止の獲得の重要性,第II期:心停止時の心筋保護法として,心筋低温維持,局所心筋冷却,間歇的高K+高Mg++, 高pH, 高浸透圧心筋保護液の注入,薬剤(CoenzymeQ10)の添加,第III期:再冠灌流時の心筋障害の発生防止のため,冷却心筋と再冠灌流血液との温度較差を少なくする(5°C前後).またこれら操作を行う上で必要な器械器具の開発を行い便宣を得た.
    2) 本法による心筋保護法で最長大動脈遮断時間は241分での生存例を経験し,大動脈遮断時間120分以上の症例中48例(7.5%), 手術死亡3例(6.3%)とやや高いが,全症例636例の手術死亡22例(3.5%)に比し有意差は認めなかった.
    3) 本法を用いた開心術症例の死亡例の検討で,手術手技,手術適応の問題を除き,心原性死亡例は636例中6例(0.9%)であり,満足すべき結果を得てきているが,大動脈遮断2時間以上が予想される症例には血液及び薬剤添加の必要性について検討を要する.
  • 浅井 康文, 塚本 勝, 田中 利明, 杉木 健司, 安倍 十三夫, 小松 作蔵
    1985 年 46 巻 6 号 p. 738-743
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1980年4月より1983年12月末までにファロー四徴症44例に根治手術を行い,早期死亡は3例(6.8%)であった.このうち血行動態を検索し得た40例について,右室流出路再建法に用いた材質と手術法について検討した.
    40例の男女比は22:18, 手術時年齢は4~56歳,平均11歳であった.手術法は全例, Young氏液使用下に弛緩性心停止とし,心筋保護を行い,心筋温を15°C前後に維持した.右室流出路異常筋束切除は全例に行い,ついで心室中隔欠損孔パッチ閉鎖,右室流出路再建を行った.右室流出路再建は,肺動脈弁形成3例(I群,平均24歳), EPTFEを用いた右室パッチ再建4例(II群,平均31歳), 1弁付きグルタールアルデヒド処理ブタ心膜パッチ(Rygg)による右室および肺動脈再建5例(III群,平均27歳), 1弁付き自己心膜およびEPTFE複合パッチによる右室・肺動脈再建28例(IV群,平均7歳)である.
    I群は他群に比較して,主肺動脈対上行大動脈直径比が0.67±0,31と発育が良好であった.
    右室・肺動脈圧較差は,他群に比しIII群で圧較差の残存がみられた.これはIII群が短絡手術後の成人例で,右室流出路狭窄が進行しており,最小限の心筋切除とパッチ拡大を行ったが,右室内狭窄除去が十分でなかったためである. IV群は肺動脈拡張期圧(13.8±0.8mmHg)が比較的維持され,肺動脈弁閉鎖不全の程度が軽い傾向を示していた.
    1弁付き自己心膜とEPTFE複合パッチ使用による右室流出路拡大術は,長期予後に間題があるとされているが,安定した成績を示し,ほぼ完成された右室流出路再建法と考える.
  • 岩波 洋
    1985 年 46 巻 6 号 p. 744-757
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肺嚢胞症に対して手術療法を行った31例を,手術時の所見および手技上から, retrospectiveに嚢胞並びに残存肺の形態を分類し術後の合併症の種類・特徴を比較検討した.また,肺手術14例に胸郭内横隔神経電気刺激による陰圧呼吸法の研究を行い,気腫性肺嚢胞症例の術後呼吸法に本法が成り得るか否かを検討し以下の結論を得た.
    (1) 残存肺に気腫性変化が少なく,嚢胞の形態が多発性の小ブラの集合や頚部をもつ大または巨大嚢胞の場合(15例)は,手術々式および術後経過に問題を生じなかった.
    (2) 残存肺に気腫性変化が強度で,嚢胞の形態が多発性小ブラの集合を呈し,保存的治療に難治の症例(5例)に対する手術療法は困難であった.これら症例に対する手術々式として現時点では, double tube気管内挿管下に術側肺を完全に虚脱させた状態で,最小限の肺縫縮術を行い,同部にフィブリン糊を塗布する方法が得策と考えた.
    (3) 残存肺の形態にかかわらず,嚢胞の形態が頚部としての境界のない大または巨大嚢胞(11例)は,術後術側肺および対側肺に多彩な合併症を来たす症例が約半数に見られた.この原因として,術式は肺葉切除や嚢胞切除としてのNaclerio-Langer法が,また術後一時的陽圧呼吸法が考えられた.これら合併症を減少させる目的で著者らの嚢胞切除兼肺縫縮術を考案し,併せて陰圧呼吸法を研究した.
    (4) 陰圧呼吸法として,肺手術14例の胸郭内横隔神経を一時的に電気刺激する方法を行った.換気・循環両面においてほぼ満足する結果を得,特に循環面では右心補助効果を呈した.著者らの方法は簡便で,肺嚢胞症に対する手術療法後,対側肺に容量変化が予測される症例の術後一時的呼吸補助法として利用できることが示唆された.
  • 中本 光春, 裏川 公章, 香川 修司, 中山 康夫, 高田 孝好, 長畑 洋司, 林 民樹, 松井 祥治, 福岡 秀治, 平井 康博, 熊 ...
    1985 年 46 巻 6 号 p. 758-767
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    神戸大学医学部第1外科で過去15年間に経験した60歳以上の老年者消化性潰瘍101例において,治療特に外科的治療とその予後につき検討した.消化性潰瘍の外科手術は年々減少傾向にあるが,消化性潰瘍全体に占める老年者の割合は近年増加傾向にあった.
    101例の原疾患別内訳は,胃潰瘍76例,十二指腸潰瘍16例,併存潰瘍9例であり,全体での男女比は2.6:1であった.老年者では潰瘍歴を認めないものが52.4%あり, 60歳以上で初発したものは全体の68.3%を占めていた.病悩期間は6ヵ月未満49.3%と短い症例が多かった.自覚症状では71.3%に腹痛を認め,老年者といえども腹痛は潰瘍の主要症状であった.また吐下血例が36.6%と多く,それらの症例は自覚症状に乏しく,病悩期間の短いものが多く,加齢とともに出血率も高くなっていた.
    胃潰瘍の特徴としては,単発例が76.2%, 大きさは長径1.0cm以上が86.8%, 深さはUl IVが81.8%を占め,発生部位は29.2%が高位であった.
    手術適応は,難治性が47.2%,出血・穿孔・狭窄が48.6%を占めていた.手術術式は胃体下部以下の潰瘍には広範胃切を,高位潰瘍に対しては分節胃切を主として施行した.
    年齢の増加とともに出血のための緊急手術率は増大し,また加齢とともに術前併存症保有率も高くなっていた.併存症を有しない症例の手術死亡率が0%であるのに対し,併存症を有した緊急手術例の死亡率は46.2%と非常に高いことから,老年者においては緊急手術を余儀なくされるような状態をいかに回避するかが今後の課題であると思われた.
  • 久保川 学, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 革島 康雄, 浜畑 哲造, 森田 真照
    1985 年 46 巻 6 号 p. 768-774
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    自家腹水再静注法は主として肝硬変症の難治性腹水治療法として検討されて来たが,近年,腹水中の細胞成分を完全に除去し得る腹水濃縮濾過装置が開発されたことにより,末期癌の腹水に対しても自家腹水再静注法が試みられるようになった.
    今回,教室で経験した各種薬物療法が無効であった14例の末期癌難治性腹水症例に対し,腹水濃縮濾過装置を用いた自家腹水再静注法を計21回施行し,末期癌腹水に対する本法の臨床的効果について検討した.
    本法施行前の自覚症状は主に全身倦怠感,腹部膨満感,腹痛,食欲不振であったが,本法の施行により85.7%において前記症状の一つ以上が軽快し,症状増悪例はなかった.理学的所見では施行前後の血圧や脈拍に大きな変化はなかったが,腹水再静注時に71.4%に発熱を認めた.この発熱の多くは一過性であり,とくに問題にはならなかったが, 9.5%において悪寒を伴ったため再静注を中止した.血液所見では再静注中止例を除き,施行前後においてWBC, RBC, T. P., Alb., 電解質に大きな変化はみられなかった.
    施行後の腹水消退期間は1回施行後よりも2回施行後の方が長い傾向にあり,これは腹水再静注による利尿効果の発現に起因するものと考えられた.
    また,採取腹水中の成分で本装置使用により濃縮されたものはT. P., Alb. の他, GOT, GPT, T. Bil. 等であった.
    以上より,本法は末期癌難治性腹水症例に対し低蛋白血症を来すことなく諸症状を緩和し,しかも2回以上の施行により腹水再貯留を抑制し得るものと考えられた.ただし,予後に対する本法の効果の有無は明らかにし得なかった.また再静注時に発熱例が多いことより,その予防策として再静注直前の解熱剤投与の必要性が示唆された.
  • 今脇 節朗, 横山 伸二, 多胡 護, 小松原 正吉, 寺本 滋
    1985 年 46 巻 6 号 p. 775-780
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Tilneyらが腹部大動脈瘤破裂症例におけるsequential systemic failureを1973年に報告して以来,いわゆる多臓器障害Multiple Organ Failureが注目される様になった.これは外科手術後に発症すると,その予後を非常に悪くし,われわれ外科医にとっては重要な関心事である.今回,われわれは術後多臓器障害の発症に関する因子につき教室の症例について検討したので報告する.
    対象は最近11年間に当科において行なわれた全身麻酔下の消化器手術1,392例のうち, 2個以上の臓器あるいは機能に高度の障害を呈した38例(2.7%)である.多臓器障害の発症は男性高齢者に多く,また侵襲の大きな手術後に多かった.軽快したものは38例中8例(21.1%)であり,予後は極めて悪かった.障害臓器数を見ると2臓器から7臓器に分散していたが, 4臓器以上の障害例では軽快したものは無かった.障害臓器としては,肝,心,肺が多い傾向がみられた.自験例38例中29例(76.3%)に重症感染症の併発がみられ,重症感染症を合併した症例の方が非合併症例より障害臓器数が多く,また多臓器障害の発症の術後平均日数が5.9日であり感染発症に十分な時間があることなどから,多臓器障害と重症感染症の関連性が示唆された.感染を起した起炎菌としてはグラム陰性菌が多く,感染部位は消化器手術にもかかわらず肺・胸膜が多かった.
    手術適応の拡大に加えて,積極的な補助治療手段の進歩により,いままでは術後早期に不良な転帰をとっていた症例が経過が遷延するようになり,今後益々術後多臓器障害発症の増加が危惧され,早期診断,早期治療が望まれる.
  • 人工心肺の立場から
    松倉 裕美, 立木 利一, 竹田 治士, 酒井 圭輔, 田辺 達三, 村松 宰
    1985 年 46 巻 6 号 p. 781-789
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    開心術の安全性を高めるためには補助手段の改良が不可欠である.われわれは体外循環侵襲を少なくするため様々な検討を続けてきた.今回これらの成績に基づき,現在最も安全性の高いと考えられる体外循環法を示し,今後改良すべき点について考察を加えたので報告する.
    1) 現時点ではホロファイバー型肺と遠心型ポンプの組合せ使用が,体外循環侵襲を最も少なくすると思われる.
    2) 併用する中心冷却灌流は最低食道温28°C以下で体外循環侵襲が増加する.
    3) 術後出血量は血小板数よりは体外循環中体内へ送り込まれる回路血総輸液量の影響が大きい.
    4) 薬物療法よりは人工肺,次いでポンプの改良の方が血球成分保護の効果が大きい.
    5) 今後は装置の小型化と,有効な拍動流付加に努力する必要がある.
  • 西村 昌憲, 山下 隆史, 朴 利敦, 前田 弘文, 金沢 学秀, 曽和 融生, 梅山 馨
    1985 年 46 巻 6 号 p. 790-796
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺原発の扁平上皮癌の報告は最近増加の傾向にあるがなお比較的稀である.最近われわれは術前の細胞診で扁平上皮癌と診断しえた症例を経験した.
    症例は50歳の女性で主訴は左乳房有痛性腫瘤.近医で乳腺炎の診断にて切開をうけていた.腫瘤は6×6.5cmで自発痛・腫脹・発赤があり,切開創よりの細胞診でOrange Gに好染する大型の細胞を認め, Stage IIIaの左乳腺原発の扁平上皮癌として根治術を施行した.組織学的には角化傾向の著明な扁平上皮癌で,腺腔形成はなくPAS染色, Alcian Blue染色も陰性であり, pureな扁平上皮癌と思われた.
    乳腺原発の扁平上皮癌は腺癌併存例とpureな扁平上皮癌が報告され,以前は腺癌併存例の報告が大多数であつたが,最近はpureな扁平上皮癌の報告例も散見され,欧米ではこれらを別個のものとする意見もみられる.最近10年間の本邦での報告例は32例で,欧米では発生率が報告例によって隔たりがあり,表皮・皮膚付属器由来のもの, epidermoid cystより発生した腫瘍等が含まれていることが指摘されている.発生母地は腺癌併存例では腺癌の扁平上皮化生によると考えられており, pure typeでは,化生乳管上皮由来と腺上皮由来と考えられる症例が報告されている.これら扁平上皮癌の臨床症状には特徴はないとされているが,今回調べえた限りでは炎症症状を呈した報告例が9例中4例(44.4%)あり炎症性変化を伴うことがかなりある様に思われる.診断は組織像によるところが多く,術前診断ではaspiration biopsy, imprint smearによる診断症例が報告され,その有用性が強調されている.予後については概して他の組織型と変わらないとする報告が多い様である.
    以上乳腺原発の扁平上皮癌症例について報告した.
  • 野上 厚志, 藤原 巍, 木曽 昭光, 正木 久男, 中井 正信, 山根 尚慶, 山本 尚, 勝村 達喜, 原田 種一, 牟礼 勉, 国米 ...
    1985 年 46 巻 6 号 p. 797-803
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    血液透析療法の普及により,慢性腎不全患者の長期生存が可能となったが,それに伴い心血管系の合併,さらに二次性副甲状腺機能亢進症の合併がしぼしばみられるようになった.我々は, 8年間血液透析を受けている慢性腎不全の31歳男性に発生した,二次性副甲状腺機能充進症を合併した慢性収縮性心外膜炎の1例を経験した.
    胸骨正中切開にて心嚢に達すると石灰化した厚い心外膜を認めその内層には5~10mmの厚さで砂状の多量の石灰粒を含む粥状硬化様物質が層状に心を取り囲み,心筋表面には心筋内に浸潤する厚い石灰沈着がみられたため,心外膜切除ならびに心筋表面の石灰沈着を掻爬除去した.また副甲状腺機能亢進症に対し上皮小体全摘術を施行した.重量は合計2.30gで,この内30mg相当を左前腕の筋肉内に移植した.病理学的にはいずれの上皮小体も主細胞を主体としたび慢性過形成であった.
    本例の主病因は,二次性副甲状腺機能亢進症に基づく心外膜および心筋への転移性石灰化と考えられた.
  • 川村 一彦, 矢島 俊己, 山手 昇, 庄司 佑
    1985 年 46 巻 6 号 p. 804-808
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的まれな10歳男, 26歳女, 49歳男の右鎖骨下動脈瘤に対して,動脈瘤切除,血行再建術を行った経験を報告した,病理学的所見を光顕にて検討を加え,またそれぞれ異なる発生原因に対して文献的考察を加えた.
  • 並びに71例の集計
    井村 賢治, 福井 雄一, 長谷川 利路, 藤村 正哲, 中山 雅弘, 南城 悟
    1985 年 46 巻 6 号 p. 809-815
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    新生児期よりの経過を観察し得た気管支閉鎖症の一幼児例を手術したので,報告例70例に検討を加え報告した.
    症例は生直後より呼吸障害を認め,当NICUに搬送した男児. 1週間の入院加療の後軽快退院したが,徐々に頻呼吸陥没呼吸が出現し胸部レ線において,右上野の気腫性変・肺門部の腫瘤陰影があらわれた.上気道感染をくり返すため, 1歳時気管支造影を行なったところ右上葉枝は造影されなかった.右上葉気管支閉鎖症と診断し, 1歳5ヵ月時肺葉切除を行なった. 2cm径の気管支性のう腫を形成し,のう胞状の末梢気管支の一部にはCCAM (congenital cystic adenomatoid malfomation)様の組織像を呈した.
    報告例70例の集計において,成人例では,無症状で,胸部レ線の異常を主訴とすることが多いのに対し, 5歳以下の乳幼児例では,ほとんどが呼吸器症状を訴え,また気管支性のう腫,肺葉性気腫, CCAM等の病変を合併するものも多い.
  • 松井 則親, 宮下 洋, 守田 信義, 江里 健輔, 毛利 平, 藤田 良樹
    1985 年 46 巻 6 号 p. 816-820
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で,嘔気・嘔吐を主訴として来院した.胃X線で,体中部から幽門にわたり, IIc様の境界鮮明な浅い陥凹を認め,陥凹内に不整形の多発性潰瘍と大小不同の顆粒像を認めた.早期胃悪性リンパ腫と診断し,第2群リンパ節郭清を含む胃亜全摘術を施行した.病理組織学的には,深達度smで, LSG分類によるび漫性大細胞型リンパ腫であった,本例は, Naqviの分類のstage II症例で,術後,多剤併用化学療法(VEP)を施行し,約4週間後に退院した.術後3年を経過したが,再発の徴候はない.
    以上,特徴的な胃X線検査所見より,早期胃悪性リンパ腫と診断し得た例を経験したので報告した.
  • 佐藤 光史, 吉田 宗紀, 伊藤 良仁, 嶋尾 仁, 大宮 東生, 藤田 力也, 渥美 純夫, 森 喬, 河部 康男, 谷合 明
    1985 年 46 巻 6 号 p. 821-825
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部の狭窄に対して内視鏡的乳頭切開術(EST)を行なったが1年2カ月後に黄疸が発現し,十二指腸乳頭部癌と判明したため根治術を施行した症例を報告する.
    症例は50歳の男性で,健診で血清ALP値の異常を指摘された.精査にて十二指腸乳頭部の軽い腫大と発赤を認め,胆道造影では総胆管の拡張と総胆管下部のスムーズな狭窄をみたが,明らかな陰影欠損像はなく乳頭炎による狭窄と判断された.そこで狭窄解除のため内視鏡的乳頭切開術(EST)を行なった.術後経過は良好であったが, EST施行1年2カ月後に黄疸が出現し再入院となった.胆道造影では総胆管下部は完全閉塞しており,内視鏡で十二指腸乳頭部は潰瘍を形成していた.同部の生検で乳頭部癌と判明し根治的に膵頭十二指腸切除術が行なわれた.癌は径1.2cm大で,乳頭部に位置し,一部は膵頭部実質へ浸潤していた.その後の経過は順調で,患者は術後5年2カ月を経た現在も再発の徴もなく健在である.
    胆道結石の合併がないのに十二指腸乳頭部の腫大や発赤がみられる症例で良性か悪性かの確定診断がつかず手術をすべきかどうか迷うことがあるが,このような場合ESTを行ない術後に充分経過観察していくのも一つの方法と考えられる.しかし経過観察中に悪性が完全に否定できなければ積極的に手術を考慮すべきである.
  • 橋本 雅夫, 杉本 恵洋, 榎本 光伸, 一宮 源太
    1985 年 46 巻 6 号 p. 826-831
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Von Recklinghausen病に十二指腸乳頭部癌と小腸平滑筋腫を伴った症例を経験した.
    患者は77歳女性で,眼球結膜,皮膚の黄染と発熱を主訴として来院し, CTスキャン,超音波検査, PTC造影,低緊張性十二指腸造影等より, Von Recklinghausen病に合併した十二指腸乳頭部癌と診断され,手術を施行した.手術所見で十二指腸乳頭部癌のほかに,小腸平滑筋腫も合併し,同時に切除した.
    Von Recklinghausen病に消化管平滑筋腫を合併した症例は,本邦においては文献上8例と少なく,発生部位として空腸に多く,かつ腸間膜付着部対側の漿膜下に発生する傾向がみられたが,術前に診断することは困難なことが多く,その他の合併した疾患で開腹した時や剖検時に偶然発見されることが多い.また同病に十二指腸乳頭部癌を合併した症例は,本邦においては5例しか見当らない.更に同病に十二指腸乳頭部癌と消化管平滑筋腫を合併した例は3例のみであった.
    一般にVon Recklinghausen病と癌腫との合併は無関係とされているが,同病の本態ないしは組織発生に関しては諸説があり解明されていない点が多く,今後更に検討を重ねる必要があろう.
  • とくに膵管非拡張例について
    渡辺 栄二, 平岡 武久, 加藤 哲夫, 水谷 純一, 田代 征記, 宮内 好正
    1985 年 46 巻 6 号 p. 832-839
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術後6ヵ月以上の経過観察が可能であった慢性膵炎32例のうち,主膵管径が6mm未満の膵管非拡張例の臨床像,手術成績を分析し,本症に対する外科治療のあり方について検討した.
    膵管非拡張例8例のうち,限局性病変を示したものは5例で,これらの膵内外分泌能障害,膵線維化は比較的軽度のものが多かった.頭部に病変のみられた1例は主膵管の狭窄,その他の副病変もなく,疼痛除去のための乳頭膵管口形成術でよいと思われた.尾部に病変のみられた4例は同部主膵管の狭窄,嚢胞,膿瘍などの副病変を伴い,疼痛除去または副病変に対して膵尾側切除術が必要と思われた.
    びまん性病変を示したものは3例で,膵内外分泌能障害,膵線維化は中等度ないし高度であった.これらに対しては膵全摘を含む膵広汎切除が適応と考えられるが,単に疼痛除去の目的のみで膵広汎切除を行うことには疑問が持たれる.この観点から主膵管硬化剤注入,膵神経叢全切除術を検討しているが,硬化剤注入に関してはその種類の開発が今後の課題でありその臨床応用には今一つ問題があると思われた.膵神経叢全切除術に関しては未だ1例の経験で,経過観察も3ヵ月と短いが,術後はきわめて良好に経過しており,今後本症に対して期待すべき手術術式と思われた.
  • 最近の診療実態に関する考察
    林 周作, 上岡 克彦, 加藤 克己, 山中 雄二, 李 武志, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵, 橋本 俊, 由良 二郎
    1985 年 46 巻 6 号 p. 840-848
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当院における最近2~3年の小児虫垂炎手術例をみると穿孔例を経験することが多い.そこでこの原因を追求することを目的とし,過去10年間の手術施行271例について,その診療実態を検討した.
    全虫垂炎手術例のうち小児の占める割合は以前では25%であったが昭和56年以降では30%以上となった.このうち穿孔例の占める割合は14~15%から昭和57年, 58年では30%となり増加していた.小児虫垂炎手術例の年代別変遷を年齢別および病型別にみると,最近では重症例が増えており, 5歳以下では穿孔例は64.3%に認めた.患児の来院状況をみると初診までの時間は以前よりも長くなっており,年少児および重症例ほど腹痛以外の初発症状(嘔気・嘔吐,発熱など)で発症することが多かった.また前医受診率は高い割合(穿孔例では98.0%)で認められたが,受診時に虫垂炎の診断をうけた割合は重症例ほど低かった.(穿孔例43.7%). 前医での治療状況をみると他の病型に比べ穿孔性虫垂炎では有意の差(p<0.05)をもって高率で58.3%が治療をうけており,このうち67.9%が抗生剤の投与をうけていた.術後合併症は以前に比べ最近ほどその発症頻度が高く14.4%に認められた.虫垂内および腹腔内検出菌についてみると共に前半期に比べ後半期に菌の平均検出株数(総検出株数/症例数)は高く,しかも嫌気性菌,グラム陽性球菌の検出が多くみられるようになった.
    以上のことから小児虫垂炎穿孔例の増加原因は診断の難しさに加え,最近の各種抗生剤の発達により術前から安易にこれらが使用されるため症状がマスクされやすく,手術時期が遅れることによると考えられ,この結果として術後合併症の発症率も増えたと思われる.
    ゆえに手術時期を早めに決定するためにも術前の抗生剤投与には慎重を期さねばならず,強力な抗生剤の使用はひかえるべきである.
  • 中路 啓介, 松田 明, 相川 一郎, 大森 吉弘, 岡 隆宏, 阿部 芳道, 高升 正彦
    1985 年 46 巻 6 号 p. 849-854
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は,今回成人の神経芽細胞腫を経験した.症例は, 28歳女性で,左上腹部痛及び発熱を主訴として来院.初診時,左季肋部に境界明瞭で表面平滑の硬い腫瘤を触知した.腹部大動脈造影,腹部CT, シンチグラム, IVP等の画像診断にて,左副腎原発の腫瘍と診断したが,生化学的検索にて,血中レニン活性,コルチゾル,アルドステロン,尿中VMA, HVA, アドレナリン,ノルァドレナリン,ドパミン等すべて正常値であり,術前に確定診断を得ることは困難であった.手術は,腹部正中切開にて開腹した.腫瘍は,左横隔膜直下から,下方は左腎門部まで,外側は腹壁,内側は大動脈までの範囲に存在し,比較的血管に富んだ明瞭な被膜を有し,膵臓との間は中等度の癒着があったが,脾臓及び大動脈との癒着は軽度であった.又,周囲のリンパ節の腫脹はなく,肝への転移巣は認めなかった.しかし,左腎上極及び左腎々門部との間には強度の癒着が存在し,左卵巣静脈,左尿管も一部腫瘍にまきこまれており,腫瘍は左腎と共にen blocに摘出した.摘出標本は, 14×11×8cmの大きさで,腎を含めた重量は800gであった.表面は軽度不整で,弾力性に富んだ多結節性の腫瘍で,腎門部への浸潤が存在し,一部に凝血塊を含む出血壊死巣を有していた.病理組織検査にて,花冠形成型の神経芽細胞腫と診断された.術後, Vincristine, Cyclophosphamide療法を施行し退院したが, 1年以上経過した現在も再発の徴候はない.
    成人の副腎原発の神経芽細胞腫は稀な疾患であり,本症について診断,特徴,治療,文献について論じた.
  • 重本 弘定, 藤田 渉, 西本 隆重, 宇賀治 陽一
    1985 年 46 巻 6 号 p. 855-858
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳幼児の陰嚢水腫と精索水腫の原因は水腫を形成している腹膜鞘状突起の遺残物内での分泌過剰または吸収不全により液体が貯留するためと考え, Bergmann法やWinkelmann法により手術を行っている人がある.私は肉眼的に腹腔と水腫との間に交通を認めない16例(19水腫)の手術時に腹膜鞘状突起の遺残物である索状物を摘出し,これらの連続切片を作り1例(1水腫)を除いてすべて顕微鏡的に内腔の存在を認めた.そこで水腫の原因は腹水がこの交通路を通じて下降したものと考え,手術はファーガソン法に準じ腹腔側に遺残したヘルニア嚢の高位結紮のみで陰嚢水腫14例(16水腫),精索水腫18例(18水腫),ヌック氏管水腫2例(2水腫)のすべてが治癒した.従って乳幼児の水腫にはヘルニア根治手術と同様に開存せる腹膜鞘状突起の高位結紮が推奨される.
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