日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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47 巻, 11 号
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  • 三樹 忍
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1377-1388
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌における悪性度の指標を明らかにする目的で,胃癌38例につき顕微蛍光測光法による癌細胞核DNA量,酵素抗体法によるCEAの局在様式および血清CEA値を検討し,以下の結論を得た. DNA ploidy patternはI型(diploid pattern), II型(aneuploid pattern), III型(mosaic pattern)に分類され, 63.1%にaneuploidyの出現を認めた.癌の増殖進展に伴い, II・III型が優位となる傾向があるとともに, II・III型ではI型に比してリンパ節転移陽性率が高く,脈管侵襲も顕著であった.組織CEAの局在は大きくapical typeとcytoplasmic typeに分類され, aneuploidyの出現およびpolyploid化の顕著な症例では, cytoplasmic typeを示すとともに,血清CEA値が高値となる傾向にあった.
    以上より,核DNA量は生物学的悪性度を反映し,予後判定の指標となるとともに, CEAの代謝・血中移行と関連があり,血清CEA値のmoniteringにも有用と考えられた.
  • 池口 正英, 金子 徹也, 田村 英明, 村上 敏, 正木 忠夫, 谷口 遙, 前田 宏仁
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1389-1395
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去11年間に経験した原発性大腸癌287例を非閉塞・非穿孔群(n=240),閉塞群(n=34),穿孔群(n=13)の3群に分け,切除率,治癒切除率,手術直接死亡率,病理組織および予後について比較検討した.
    切除率,治癒切除率,手術直接死亡率は,非閉塞・非穿孔群で90.4%, 76.3%, 3.8%で,閉塞群で70.6%, 64.7%, 14.7%,穿孔群で92.3%, 84.6%, 7.7%と閉塞群において切除率,治癒切除率は低下し,手術直接死亡率は上昇した.
    病理組織では,閉塞群,穿孔群ともに高分化,中分化腺癌が主体であり,閉塞群ではsi (ai)が25.0%; P1以上が29.4%に認められ,治癒切除率を低下させる要因となった.
    切除耐術例の累積5年生率は45.9%~57.7%で, 3群間に差はなく,閉塞・穿孔例といえども積極的な根治手術がなされれば,予後は良いと考えられた.
  • 西 律, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 黒本 成人, 北村 彰英, 水谷 均, 浜畑 哲造, 曽我部 俊大, 田口 忠宏, 原 章倫, 松井 ...
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1396-1402
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸癌38例の原発巣の核DNA量を顕微蛍光測光法で測定し,核DNA量よりみた直腸癌の特性と組織学的リンパ節転移との関連について検討を加えた.この結果,最頻値modeにより分類した核DNA量ヒストグラムパターンのみがリンパ節転移と関連を有することが明らかとなった.すなわち,核DNA量よりみて正常細胞よりの偏位が最も強いヒストグラムパターンではリンパ節転移率,大腸癌取扱い規約によるn2 (+), n3 (+)の頻度,側方リンパ節転移率とも最も高い傾向にあった.
    今回の検討により直腸癌原発巣の核DNA量はリンパ節転移を左右する一因子と考えられ,顕微蛍光測光法による核DNA量の測定は直腸鏡生検鉗子により得られる組織でも施行可能であるため,直腸癌のリンパ節転移の有無,程度の術前診断に関して核DNA量の測定が有力な情報をもたらす可能性が示唆された.
  • 三輪 恕昭
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1403-1411
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    癌の免疫反応を癌組織局所の細胞動態の面からとらえ,その反応を活用した癌免疫療法についてまとめた.固形癌組織局所にリンパ球浸潤が著しい症例では予後がよいことが多くの臓器で認められている.この浸潤リンパ球はOKT4+細胞, OKT8+細胞やNK細胞であるLeu7+細胞であり,これらは腫瘍内にBCG, BCG-CWS, N-CWS, OK-432, PSK等の免疫賦活剤を投与することによって著しく増加させることができ,さらには所属リンパ節の反応をも増強させる.またこれら薬剤の腫瘍内投与による延命効果も報告されている.さらにこの浸潤リンパ球を採り出してIL-2等で活性化して担癌生体に再投与する方法等も試みられており,癌局所免疫反応を増強させる癌局所免疫療法の将来性の高いこと等についても内外の論文を総括し,記した.
  • 津森 孝生, 中尾 量保, 宮田 正彦, 富永 春海, 中場 寛行, 森田 実, 川島 康生, 尾上 謙三, 桜井 幹己, 畑中 信良, 竹 ...
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1412-1416
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫は四肢に好発し,頭頚部に発生する例は極めて少ない.また組織型ではStoriform-pleomorphic typeが多くGiant cell typeは稀である,今回,我々は頚部原発の巨細胞型性線維性組織球腫の1例を経験したので報告する.
    症例は78歳,男性.頚部腫瘤を主訴とし,急速に増大し,甲状腺右葉を巻き込み,気管を左側に圧排していた.腫瘤と共に前頚筋,胸鎖乳突筋,内頚静脈,甲状腺右葉を一塊として摘出した.組織学的には巨細胞型の腫瘍細胞からなり,細胞マーカーの検索にてリゾチーム, α1-アンチトリプシン, α1-アンチキモトリプシンが腫瘍細胞内に認められた事より,巨細胞型悪性線維性組織球腫と診断した.術後,アドリアマイシンを中心とする多剤併用化学療法を施行したが,局所再発をきたし,急性消化管出血を合併し4カ月で死亡した.
  • 山城 敏行, 大森 義信, 溝渕 俊二, 田宮 達男, 大和 建嗣, 楠目 修, 園部 宏
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1417-1423
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    前縦隔良性奇形腫は種々の合併症をもたらすが,心タンポナーデの合併は極めて稀で,これまで内外あわせて5例の臨床報告があるに過ぎない.私共は血性心タンポナーデを合併した1症例を治癒せしめえたので報告する.
    症例は17歳女性で,入院時心タンポナーデを来たしていた.心嚢ドレナージを施行し,無菌性の血性心嚢液1,300mlを排除した.その後経過中に腫瘍による気管,気管支の圧迫のため急激な呼吸不全の発現をみた.腫瘍摘除に際し,腫瘍は心嚢膜に強固に癒着していたため,心嚢膜を一部合併切除した.組織学的検索では,奇形腫はかなり多量の膵組織を含み,心嚢膜に接した奇形腫壁内の肉芽組織には毛細血管の増生拡張と漏出性出血が顕著であった.奇形腫壁の穿孔所見はなかった.
    縦隔良性腫瘍は,気道閉塞,心タンポナーデ等の致死的合併症発現前に速かに摘除されるべき事が強調される.
  • 庭本 博文, 大橋 秀一, 柏谷 充克, 藤本 篤, 前田 浩, 杉原 加寿子, 巻幡 修三, 津田 義三, 行政 隆康, 清水 幸宏, 末 ...
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1424-1428
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    前後2度にわたり,経口的に刺入した心臓及び腎臓伏針の1例を経験したので報告する.
    症例は14歳女児.自殺目的で針を4本飲み, 3本は排泄したが1本は確認されず,精査目的で来院す.胸部単純写真, UCT,心臓カテーテル等で右心室に伏針を1本確認したため,体外循環下に摘出術を施行した.術後外来通院していたところ,右側腹部痛を主訴に再び当院受診す.腹部単純写真にて伏針を3本確認したため観血的摘出術を施行した.その際, 1本は右腎実質内, 1本は上行結腸壁内, 1本は大網内に存在した.
    本邦での心臓伏針手術例は,自験例を含め41例であり,経口的に刺入したものは本例のみである.また腎臓伏針に関しては,本邦では過去に報告がなく,欧米でも極めて稀れである.
    特異な部位にみられた伏針の1例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告した.
  • 倉岡 節夫, 島貫 隆夫, 磯田 昇, 中村 千春, 小林 稔, 鷲尾 正彦
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1429-1432
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近教室では高齢者の弓部及び下行大動脈瘤の肺実質内破裂症例の2例を経験したので,破裂部損傷肺の対処等に若干の考察を加えて報告する.
    第1例は71歳の男性で,大動脈弓部より起始する巨大な紡錘状大動脈瘤破裂例で分離体外循環下に人工血管置換術を施行したが,損傷肺からの制御困難な出血が主原因となり術中に失った.第2例は75歳の男性の嚢状下行大動脈瘤で,部分体外循環下に瘤切除術と側壁縫合術,および剥離肺の十分な止血縫縮を施行して救命できた.
    2例とも瘤の処置に入る前に損傷癒着肺の部分的剥離操作を先行したが,特に全身ヘパリン化の術野では損傷肺からの出血や,肺瘻からの術野の汚染が懸念された.損傷肺の剥離はできる限り回避されるべきか,最小限の範囲に限定すべきで,損傷肺断端の処置に対しては特別な配慮が必要と考えられた.
  • 井上 文之, 田中 紀章, 岡信 孝治, 山本 浩史, 柏谷 昌昭, 三村 久, 折田 薫三, 佐藤 泰正, 小林 征二, 田口 孝爾, 林 ...
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1433-1439
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    46歳男性で,咳漱と手指・下肢の脱力感を訴え, HCGのみ高値を示したEaton-Lambert症候群を合併した肺小細胞癌燕麦細胞型の患者が左肺全摘術とリンパ郭清術施行後,筋無力症状とHCGの低下をみた1例を報告し,合せて本邦におけるEaton-Lambert症候群を集計した. 1984年まで医学中央雑誌にて集計し得た限りでは自験例を含めて52例を数えた.性別では男76.5%,女23.5%と男に多く,発症年齢では50歳台が40.4%と最も多く,平均年齢は55.4歳であった.合併疾患は肺癌が75.0%と最も多い,そのうち82.1%は未分化癌であった.また,近年肺癌とEaton-Lambert症候群及び亜急性小脳変性症の合併例の報告が増加しており,最近の報告をみると決して稀ではなくなってきているように思われ,我々も小脳変性と神経筋接合部病変とは同一機序で起ったのではないかと考えている.
  • 村山 祐一郎, 白方 秀二, 大賀 興一, 岡 隆宏
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1440-1444
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌(Stage II)根治術後2ヵ月目に,異常出血をきたし,諸検査の結果DICと診断された腹部大動脈瘤の1例を経験したので報告する.胃癌根治術前の血小板数が13.5×104/mm3,術後が12.0×104/mm3と大きな変動はなく,また,全身状態からも,胃癌が基礎疾患となっている可能性は低く, DICの原因が腹部大動脈瘤にあると考えられた.そこで, DICの原因除去および瘤破裂の危険性を考慮し, DICをできるだけコントロールした上で,人工血管移植術を施行した.術中,出血傾向によるのため,大量出血となり, 7,000mlの輸血を要したことから, DICの再燃を考慮し,術当日よりGabexate mesilate(以下FOY)を投与するとともに,凝固系の検索を行い,更に,ヘパリン療法を併用することにより救命できた. DICがactiveな状態での手術は,更に困難が予想され,できる限りDICをコントロールした上で,時期を逸すことなく,手術に踏みきるのが望ましいと考えられた.
  • 椎木 滋雄, 桑田 康典, 柏原 瑩爾, 上田 祐造, 寺沢 明夫, 藤井 一郎, 室 雅彦
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1445-1449
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    成人の食道憩室を伴う先天性食道気管支瘻は稀な疾患で,本邦では文献的に調べ得た限りでは18例の報告をみるにすぎない.最近本症と考えられる1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は54歳女性で, 3年前より飲食時の咳嗽発作がみられた.食道透視で中部食道に憩室を認め,右B6気管支に造影剤が流入し食道気管支瘻と診断された.食道内視鏡で中部食道右壁に瘻管開口部を認めた.手術所見では瘻管周囲に炎症,癒着,リンパ節腫大はなく容易に瘻管切除を行なえた.経過は順調で術後1年半著変はみられない.
    成人の食道憩室を伴った先天性食道気管支瘻について本邦報告例の集計を行ない,先天性,後天性の鑑別,成人に至っての症状発現原因などについて若干の文献的考察を加えた.
  • 平塚 卓, 井手 博子, 村田 洋子, 奥島 憲彦, 室井 正彦, 池本 博行, 福井 博行, 佐藤 裕一, 羽生 富士夫, 山田 明義, ...
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1450-1455
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近われわれは頚部および胸部食道に多発早期癌を有し,かつ同時性に胃癌を合併した症例を治療する機会を得たので手術法の工夫を報告し若干の考察を行った.症例は55歳,女性.頚部食道癌と胃癌(Borrmann 3型)の診断で入院した.治療は頚部食道に放射線治療を行い,次いで胃切除術を行った.その後更に胸部食道(Im)に多発癌を認めたので二期的に食道全摘,胸壁前経路で咽頭十二指腸間に回結腸を挙上し, micro surgeryによる血管吻合を追加し消化管の再建を完成した.
    診断技術の進歩に伴い重複癌症例に遭遇することは珍しくなくなった,本邦に於いては同時性食道他臓器重複癌では胃癌の合併例が約80%と多く,食道癌根治手術においては胃癌の有無に十分注意すべきである.また頚部食道癌の場合,主癌巣から離れて胸部食道にも多発癌をみられることがあり,術式選択に注意すべきことである.
  • 山本 明, 藤村 昌樹, 国貞 隆信, 田野辺 裕二, 馬場 裕司, 新屋 久幸, 佐藤 功, 平野 正満, 岡田 慶夫
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1456-1461
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    約70年におよぶ病悩期間を有するS型III度の食道アカラシア症例を経験し,有茎胃弁移植法を施行した.しかし3カ月後に再発した. S型III度の重症例では,右胸腔に大きく拡張突出したS状蛇行部がリザーバーとなり,食物が停滞,貯留することが非改善の大きな理由である.そこで再手術々式は右開胸開腹下に,下部食道噴門切除術,中下部食道縫縮術,食道胃吻合部内翻による逆流防止弁形成術を施行した.術後経過は良好で, 3カ月で10kgの体重増加がみられた.
    約10%の再手術例を数える本疾患に対しては,その病型,進行度に応じた術式を選択すべきである.そして重度アカラシア例では,器質的変化が強く, myotomyはもちろん,噴門形成術でも改善されない例があることを念頭におくべきである.我々の下部食道噴門切除,中下部食道縫縮術は,拡張・蛇行の強いadvanced achalasia症例に初回手術から適応されるべき術式と考える.
  • 太田 大作, 尾崎 彰, 古瀬 光
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1462-1468
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症は元来稀な疾患とされていたが,上部消化管造影の普及により症例数は増加している.最近,横隔膜弛緩症に合併した慢性胃軸捻転症を2例経験したので報告する.
    症例1は51歳男性.主訴は左季助部痛.胸部X線写真,上部消化管造影にて横隔膜弛緩症に合併した胃軸捻転症と診断した.経過中胃潰瘍穿孔を合併し,胃切除,横隔膜重層形成術を施行した.術後経過は良好である.
    症例2は61歳女性.主訴は心窩部灼熱感.上部消化管造影.内視鏡検査にて胃軸捻転症と診断した.保存的療法にて症状は消失し,経過観察中である.
    胃軸捻転症はその存在を念頭に置けば診断は比較的容易である.急性例は手術の適応となるが,慢性例でも自覚症状の増悪,胃潰瘍や循環障害などの合併症を伴う例は,手術の適応となる.手術術式に定型的なものはなく,年齢,合併症の有無等を考慮し,個々の症例毎に十分検討が成されるべきである.
  • 松井 昭彦, 岡島 邦雄, 石井 正則, 浪尾 博志, 川西 瑞哉, 藤井 康宏, 濱津 和雄, 新垣 有正, 豊田 博
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1469-1475
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Gastritis cystica polyposa (GCP)を母地として発生したと考えられた残胃Borrmann 1型癌の1例を経験した.患者は59歳の男性で, 20年前に胃潰瘍で幽門側胃切除を受けており,下痢を主訴として来院した.初診時,下腿浮腫と低蛋白血症が著明であった.胃透視,内視鏡検査において,残胃吻合部のBorrmann 1型癌と診断,残胃切除を施行した(Ho, Po, So, N (-)).摘出標本上,腫瘤は9×4×3cm大で息肉状を呈し,胃空腸吻合部に沿って壁全周性に発育していた.組織学的診断は高分化型腺癌であったが(中間型, pm, INFβ, ly2, v1, ow (-), aw (-)),癌巣に隣接した胃粘膜に,偽幽門腺の増殖,嚢胞化といったGCPの像が認められた.近年, GCPを母地として発生した残胃癌の報告例がみられ, GCPが癌の好発母地である可能性が推測された.また自験例は,腫瘤の摘除により下痢,下腿浮腫,低蛋白血症の消失をみたため, protein-loosing enteropathyとの関係も窺われた.
  • 胃全摘と2回の肝切除の経験
    青木 信彦, 水野 敏彦, 大野 誠, 鈴木 孝寿, 源明 己千夫, 高橋 雅明, 井上 健和, 佐藤 泰, 黒須 康彦, 森田 建
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1476-1482
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃の平滑筋肉腫は比較的まれな疾患とされ,その転移形式は血行性,播種性転移が主であり,肝,腹膜に多いとされている.しかし,胃平滑筋肉腫の肝転移に対し,肝切除の報告は極めて小ない.最近,われわれは胃平滑筋肉腫の肝転移に対し,胃切除後,異時的に2回の肝切除を行なった症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は59歳,女性.心窩部不快感を主訴に来院.胃透視,内視鏡,生検により,平滑筋肉腫と診断,胃全摘術施行.その手術時に外側区の肝転移を発見,二期的に外側区域切除術を施行.以後,外来にて経過観察中であったが, 1回目の肝切除から18カ月経過後,第2の肝転移巣を発見, S VIIIの部分切除術を施行した.
    転移性肝腫瘍は原発病変の終局を意味する病態として,その治療法について,積極的に取り組まれなかったが,適応規準さえ満足すれば,根治治療として肝切除術が最もよい成績を示すものと考えられた.
  • 渡橋 和政, 佐々木 襄, 井上 邦典, 川口 正晴, 武藤 寛, 森田 悟
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1483-1488
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃切除術後腸重積症は比較的稀な合併症であるが,診断治療が遅れれば致命的であり,臨床上注意を要する疾患である.胃切除術後15年目に吐血で発症した1例を報告する.
    症例は57歳男性で, B-II法(結腸前, Braun吻合付加)にて再建後しばしばダンピング症状を訴えていた.吐血で発症したが吻合部潰瘍を認めず,下腹部の小児頭大腫瘤をUS, CTで検索して,術前に本症と正診した.吻合部肛門側の空腸が150cmにわたり上行性に重積し,全て吻合部腔内にとどまり,小児頭大腫瘤を形成していた.整復後腸管の循環障害は改善し,切除は行わなかった.
    最近イレウスに対してもUSは有用となり,特に腸重積では特徴的な所見が得られる.胃切除後イレウス症状や吐血を呈した場合,本症をも念頭においてこれらの検査手段を有効に用い,時期を逸することなく適切な治療を開始すべきであると考える.
  • 稀な虫垂内病変の症例報告とともに
    木村 敏之, 岡 隆宏, 山岸 久一, 安村 忠樹, 和田 行雄, 園山 輝久, 小林 雅夫, 吉村 了勇
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1489-1495
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和54年1月以後6年間に206例の虫垂切除を施行,手術時に197例が急性虫垂炎と確認された.これら197例を対象に検討した.
    最年少5歳,最高齢78歳の男女各々107名と90名を低学年(10歳以下),高学年(11~19歳),青壮老年(20~69歳),高年齢(70歳以上)の4群に分けた.病型分類はカタル性虫垂炎104例,蜂窩織炎性68例,壊疽性17例,穿孔性8例であった.高年齢者を除く成人でカタル性虫垂炎は40%を占めていたのに対し,未成年者で50~60%と過半数を占めており,さらに114例中穿孔性,壊疽性等の重症型虫垂炎は11例(10%)にすぎなかった.平均病悩期間では4群に差を認めず,平均入院期間が高年齢群の21.5±6.3日に対して低学年群8.7±1.2日,高学年群9.6±3.0日,青壮老年群10.3±3.7日と他の3群との間に差を認めた.
    最後に虫垂結石の3例,大腸憩室を伴う虫垂憩室の2例,虫垂カルチノイドの1例を各々報告し,若干の文献的考察を行った.
  • 齋木 功, 佐藤 直樹, 三沢 一仁, 岡野 正裕, 宮田 昭一, 国兼 浩嗣
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1496-1501
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    横行結腸に原発する悪性リンパ腫は極めて稀な疾患である.最近,術前に本症と診断しえた1例を経験したので報告する.
    症例は72歳の男性.便通異常,腹部膨満,体重減少を主訴として来院し,右季肋部に手拳大の腫瘤を触知した.注腸バリウム検査で横行結腸に陰影欠損像を認め,大腸ファイバー下生検で,悪性リンパ腫と診断された.結腸右半切除と結腸間膜のリンパ節郭清を行なった.病理組織学的にはNon-Hodgikinリンパ腫で, Rappaport分類ではlymphocytic, LSG分類ではdiffuse type, medium-sized cell typeであった.術後にCOPP療法を開始したが, 70日目に癌性腹膜炎で死亡した.
    自験例を含む本邦8例の本症を文献上集計しえたので,その特徴を検討し,考察を加えた.
  • 奈良井 省吾, 大塚 為和
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1502-1508
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大網裂孔ヘルニアの2症例を報告する.
    症例1は64歳の男性,腹痛,腹満感,嘔吐を主訴として入院.注腸造影ではS状結腸に辺縁平滑な狭窄像が見られ,そこより口側のS状結腸は著明に拡張し,弧を描きながら再び狭窄部にもどるという所見が得られた. S状結腸軸捻転症などを考えて開腹すると,大網左側の遊離端近くにある長径約10cmの裂隙内にS状結腸が嵌入し絞扼されていることが判明した.症例2は68歳の男性.腹痛,嘔吐を主訴として入院.イレウスの診断で開腹すると,回盲弁より150cmの部位の回腸が大網の遊離端にある径約3cmの裂隙内に嵌入し絞扼されていた.症例1, 2ともに腸管を整復後,裂隙を含めて大網を一部切除した.
    大網裂孔ヘルニアと術前に診断を下すことは不可能であるが,原因不明のイレウスに直面した場合には,本症も含め内ヘルニアである可能性も念頭に置く必要がある.そして,時期を失しない内に手術することが大切である.
  • 児玉 一成, 山下 裕一, 福永 淳治, 岡本 一廣, 林田 啓介, 納富 昌徳, 諸富 立寿, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫, 弓削 啓仁
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1509-1513
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝未分化内腫は極めて稀で予後不良な疾患である.今回,成人例の1例を経験したので報告する.
    症例は30歳女性,右季肋部痛と発熱を主訴とし,腹部超音波, CT, 血管撮影等の検査にて肝右葉の腫瘍と診断された.入院中に肝腫瘍部破裂を来たし,緊急手術を施行した.手術所見では破裂肝腫瘍内と腹腔内に凝血塊,壊死物,ゼラチン様物質を認めた.腫瘍切除は不能と判断し,止血後に肝動脈内に持続動注用カテーテルを挿入留置した,術中および術後MMC, 5-FU, ADM, CPAを動注したが効果なく,術後61日目に死亡した.剖検での組織診断により肝腫瘍は肝原発の未分化肉腫と診断された.
    現在まで本邦では,成人例1例,小児例8例の計9例の報告をみるにすぎず,本症例は本邦第2例目の成人例であった.
  • 今井 信介, 鬼頭 文彦, 呉 宏幸, 大木 繁男, 杉山 貢, 西山 潔, 土屋 周二
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1514-1520
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    稀な先天性非球状赤血球性溶血性貧血の症例に摘脾を行ったが,溶血現象は改善したが貧血は余り改善しなかった.症例: 24歳男性.主訴:黄疸,脾腫.既往歴: 6歳の時から溶血性貧血と診断されていた.現病歴:胆嚢結石を合併した先天性溶血性貧血の診断を受け,症状改善のため手術を勧められ入院.入院時所見:脾腫,黄疸,胆嚢結石を認めた.赤血球数256万/μl, ヘモグロビン10.7g/dl,網状赤血球数195%, 間接ビリルビン9.5mg/dl, Coomb's testは陰性,赤血球形態は正常.溶血性貧血の原因となる各種の赤血球酵素活性を測定したが,現在知られている酵素で有意に低下したものはなかった.先天性非球状赤血球性溶血性貧血の診断で,脾臓及び胆嚢摘出術を施行した.術後1年では溶血現象は改善したが,貧血の改善は十分ではなかった.非球状赤血球性溶血性貧血は稀で原因として多数の赤血球酵素異常が知られるようになったが,摘脾の効果は一様でないと思われる.
  • 過剰発達例に対する縫縮術について
    萩原 博道, 佐々木 寿彦, 伊坪 喜八朗, 小山 年勇
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1521-1527
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者の増加と共にblood accessの種々の合併症も増加しつつある.今回high output failureの原因となりうる過剰発達blood access例に対して, access flowを適正化する術式について報告する.過去3年9ヵ月間に当院及び関連施設におけるblood access手術例は151例である.そのうちの発達過剰例に対して, (1)狭窄作製, (2)人工血管(EPTFE graft)挿入, (3)吻合部静脈縫縮, (4)吻合部静脈縫縮とbloodaccess一部同時縫縮の各術式を施行した結果,術式(4)が最も流量減少効果があった.
    過剰発達blood accessを長期間放置しておくことは,循環器系への影響の点から好ましいことではなく,なるべく早期に血流減少効果を有する縫縮術を施行し過剰なaccess flowを適正域内に調整するのが適切である.
  • 木村 忠広, 北川 裕章, 直江 和彦, 佐野 真, 花井 厳人, 野本 信之助, 吉崎 聰
    1986 年 47 巻 11 号 p. 1528-1532
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下肢静脈閉塞に対する血行再建術は動脈血行再建術に比べて不利な点が多く,積極的には行われていない.しかし,最近では手術術式の改良およびEPTFEグラフトの開発により手術成績の向上が認められている.
    今回,われわれは壁外性の腫瘍性圧迫による外腸骨静脈閉塞症を経験したので報告する.
    患者は69歳の男性で右下肢の腫脹および熱感で来院した.静脈造影で右外腸骨静脈の壁外性による高度の狭窄を認めた.手術所見では右外腸骨静脈は腫瘍により浸潤性に圧迫,狭窄されていた.血栓は認めなかった.再建術式は健側の大伏在静脈は口径が小さくPalmaの手術では閉塞の危険が高いと判断し, spiral supported EPTFEグラフト(IMPRA)を使用し右大腿-左大伏在静脈バイパス術を施行した.
    本症例の概要を述べ静脈血行再建術に対する若干の文献的考察を行った.
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