最近の社会の高齢化に伴ない,高齢者の大腸癌も増えつつある.そこでわれわれは,過去15年間に経験した218例の大腸癌症例を, 70歳以上の群(以下高齢群)及び69歳以下の群(以下対照群)に分け,対比のうえ,検討を加えた.
218例中高齢群は44例・20.2%であり,高齢者の割合がかなり多かった.性別は両群とも男性が多かった.なお,高齢群で特徴的な症状は,特に認められなかった.
高齢群の6例・13.6%が切除できなかったが,これは対照群のそれと,差はなかった.なお治癒切除率は,差はなかったが,高齢群は84.2%であり,やや良好であった.
術後合併症は,両群間で差がなかった.
高齢群では,対照群に比べ,右側結腸癌の割合が多くなっていた.
大腸多発癌は両群間で差はなかったが,他臓器重複癌は高齢群に多く,高齢者は他臓器も積極的に精査するべきであると考える.
高齢群では限局潰瘍型が多く,高分化型腺癌が多かった.これは対照群と差はなかったものの,高齢群は肉眼型で,対照群は組織型でvariationに富む傾向であった.
P・H・ly・vの諸因子やリンパ節転移陽性率も対照群と変わらなかったが,転移陽性例では, n
1(+)にとどまる例が対照群より多かった.また深達度も対照群より軽度であることが多かった.
以上の結果を反映して,高齢群ではstage IIIまでの比較的早期の症例が,対照群よりも多かった.
しかし,早期例が多く,治癒切除率も対照群より若干良好であるのにもかかわらず, 5年生存率は対照群と差がなかった.これは,主として,体力的な衰ろえや,平均余命の短かさが関係するのではないかと思われた.
それにしても,切除できれば予後を望みうる例が多いので,より一層の早期発見,慎重な管理及び術式選択により,高齢者といえども,予後をより向上させうると思われる.
抄録全体を表示