日本臨床外科医学会雑誌
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47 巻, 2 号
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  • 若年者乳癌および高齢者乳癌の臨床的特徴
    野水 整, 渡辺 岩雄, 安藤 善郎, 鈴木 正人, 関川 浩司, 吉田 典行, 土屋 敦雄, 大森 勝寿
    1986 年 47 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    福島県立医科大学第2外科における1963年~1982年の女性初発乳癌253例について年齢と予後との関連性について検討し,若年者乳癌と高齢者乳癌のもつ臨床的特徴について報告する. 35歳未満の若年者群は16例, 6.3%, 70歳以上の高齢者群は17例, 6.7%であり, 35歳以上70歳未満の中年層群を対照として比較検討した.若年者群ではTisが12.5%を占めた反面, stage IIIおよびIVの進行例をあわせて31.3%を占めた.一方高齢者群ではstage IIIおよびIVの進行例が41.2%と他の2群に比べ高頻度であった.組織型では,若年者群では非浸潤癌が13.3%にみられた.また年齢がすすむにつれ硬癌の占める割合が大きくなり,高齢者群では57.1%を占めた.予後については,対照とした中年層群の5生率, 10生率がそれぞれ72.9%, 66.4%であるのに対し,若年者群では5生率66.1%, 10生率39.7%であり,一方高齢者群では5生率73.5%, 10生率73.5%であった.若年者群で予後不良であったのは,妊娠・分娩合併例を含めたstage IIIおよびIV症例が全例腫瘍死に至ったためであり,一方高齢者群の予後が良好なのはstage IIIまでの全例が生存しているからと思われた.
    若年者乳癌に対しては特殊な内分泌環境に留意するとともに,早期発見,早期切除を心がけるべきであり,高齢者乳癌に対してはさらに積極的な外科治療が望まれる.
  • 小川 勇一郎, 永末 直文, 由茅 宏文, 佐々木 幸治
    1986 年 47 巻 2 号 p. 144-152
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和44年1月から59年12月までの16年間に,広島赤十字病院外科で行われた食道静脈瘤に対する門脈圧非下降手術132例の成績を検討した.緊急手術31例では,待期,予防手術101例に比較して手術死亡率が高く,生存率が低かったが,最近2年間においては,両者ともに手術死亡率0%となっており,手術の安全性に関しては殆んど問題がなくなった.
    選択的シャント72例と直達手術60例の手術成績の比較では,食道静脈瘤改善効果,再出血率,術後合併症の面で,前者の方が有利な点が多く,我々は選択的シャントを優先する方針をとっているが,症例に応じた術式の選択が肝要である.
    当科における食道静脈瘤手術の長期的予後は,比較的満足しうるものであり,内科症例の予後と比較して延命効果が期待されるものと考えられる.
  • 平井 康博, 裏川 公章, 長畑 洋司, 中本 光春, 松井 祥治, 福岡 秀治, 熊谷 仁人, 佐埜 勇, 伊藤 あつ子, 安積 靖友, ...
    1986 年 47 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    高位胃潰瘍に対する分節胃切と分節胃切兼迷切後の遠隔成績を比較した.高位胃潰瘍は44例あり,消化性潰瘍手術総数に占める割合は17.9%で,手術適応は難治が28例(63.6%),出血は7例(15.9%)であった. 44例の主訴についてみると,心窩部痛29例(66.0%),左季肋部痛2例(4.5%)と疼痛を主訴とするのが31例(70.5%)と高頻度を占めていた.術後の減酸率は分節胃切約50%,分節胃切+迷切約60%で,術後経過が5年以上の長期になると両術式とも術後愁訴は減少し, Visickの指標でみてもほぽ満足すべき生活環境にあると思われた.ダンピング症状は幽門形成術を付加することでその出現率が高かった.術後の再発は迷切付加群で24例中3例(12.5%)に認め,分節胃切のみでは再発はなかった.
  • 鈴木 丹次, 中野 眼一, 武川 啓一, 坂本 孝作, 桜井 輝久, 村谷 貢, 矢部 正治, 山田 修司, 小川 晃男, 加藤 良二, 栗 ...
    1986 年 47 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1970年より1982年に,教室において根治手術を施行したBorrmann 3型胃癌患者のうち,重複癌,残胃初発癌及び多発癌等をのぞくprimary case 103例の予後を癌の占居部位により,上部(C),中部(M),下部(A)の3群にわけ比較検討した.その生存率は, M, A, Cの順に低下していた. A, M, Cの各部に発生した癌の背景因子は,病理組織学的にみて,癌の深達度,リンパ節転移度等の諸因子には差がなく,手術因子のうち,合併切除の有無及び切除形式に有意差を認めたが,この差は予後の差を明らかに説明し得るものではなかった.このように生物学的にみてA, M, Cの癌に大差を認めないにも拘らずC領域癌の成績が不良である. C領域癌の成績向上のために,早期発見と治療上の工夫など,今後より一層の努力が必要であることが示唆された.
  • 入山 圭二, 森 寛司, 西脇 寛, 寺西 正, 鈴木 宏志
    1986 年 47 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌における非治癒切除術の適応と限界を知る目的で検討をおこなった.過去10年6カ月間に取り扱った初回胃癌治療例500例中,肉眼的非治癒切除が行なわれた101例と非切除例97例について累積生存率を求め,さらに非治癒切除例については術後生存期間を従属変数とし,年齢,組織型, P, H, N, S因子を独立変数とした多変量解析・数量化I類を用い諸因子の生存期間にあたえる影響を検討した.その結果,非治癒切除症例の生存期間を短縮する因子は, 39歳以下の若年者, 60歳以上の高齢者,低分化型腺癌, P2以上, H (+), N4, S0が生存期間を大きく短縮し,一方40~59歳,分化型腺癌, P1以下, HO, N3以下, S1の各因子が生存期間延長に作用した.生存期間短縮因子を3個以上もつ群と2個以下の群に分けて生存率を求めると,前者は後者に比べ有意に生存率は劣っていたが,非切除群と比べると良好であった.生存期間を短縮する要因を4個有する群では非切除群と差のない生存曲線を示し生存期間の延長が期待しえずmass reductionsurgeryの効果は期待できないと考えられた.
  • 林 民樹, 裏川 公章, 長畑 洋司, 中本 光春, 平井 康博, 松井 祥治, 福岡 秀治, 態谷 仁人, 佐埜 勇, 斉藤 洋一
    1986 年 47 巻 2 号 p. 172-180
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    私達が経験した潰瘍性大腸炎8例,クローン病5例の治療成績について検討した.潰瘍性大腸炎の保存治療のみで緩解をえた症例は5例で,退院後の再燃を活動期月数の割合でみると平均32%であった.手術例は全結腸直腸切除回腸瘻造設術,亜全結腸切除上行結腸直腸吻合術,Kock法の各1例であった.クローン病は5例あり2例に術後再発を認めた.十二指腸に再発し,幽門狭窄症状があった1例には胃切除術(Billroth II法)を行い,残り1例はサラゾピリンにて寛解した.潰瘍性大腸炎は良性で若年者に多いことから,自然肛門温存術式を積極的に検討する必要があると考えている.クローン病の手術に際しては,再発の原因は不明で,術中に診断できないような微小病変からの再発例もあるため,合併症をおこしていないskip lesionの切除やリンパ節ごとen blockに切除する術式については,今後症例数を重ねて慎重に対処する必要がある.
  • 手術手技と臨床的有用性について
    小川 健治, 矢川 裕一, 大谷 洋一, 川田 裕一, 勝部 隆男, 芳賀 駿介, 菊池 友允, 梶原 哲郎, 榊原 宣
    1986 年 47 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃全摘術における食道空腸器械吻合の手術手技をのべ,その利点や安全性などについて,同期間に行われた手縫い吻合と比較して検討した,その結果,器械の取扱いに習熟して手術操作を慎重に行えば,食道空腸器械吻合には, 1. 手術時間が短縮され,手術侵襲の軽減が期待できる. 2. 他臓器合併切除などのより根治性の高い手術を積極的に行える. 3. 出血量が少ないため,輸血量も減少させうる. 4. 高齢者をはじめ,心などに合併症を持つpoor risk例にも積極的に胃全摘術を行える. 5. 縫合不全をはじめとする術後合併症の発生頻度が低いなどの利点が認められた.
  • 高 相進, 竹村 克二, 金子 慶虎, 石井 慶太, 若山 宏, 遠藤 光夫
    1986 年 47 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近の社会の高齢化に伴ない,高齢者の大腸癌も増えつつある.そこでわれわれは,過去15年間に経験した218例の大腸癌症例を, 70歳以上の群(以下高齢群)及び69歳以下の群(以下対照群)に分け,対比のうえ,検討を加えた.
    218例中高齢群は44例・20.2%であり,高齢者の割合がかなり多かった.性別は両群とも男性が多かった.なお,高齢群で特徴的な症状は,特に認められなかった.
    高齢群の6例・13.6%が切除できなかったが,これは対照群のそれと,差はなかった.なお治癒切除率は,差はなかったが,高齢群は84.2%であり,やや良好であった.
    術後合併症は,両群間で差がなかった.
    高齢群では,対照群に比べ,右側結腸癌の割合が多くなっていた.
    大腸多発癌は両群間で差はなかったが,他臓器重複癌は高齢群に多く,高齢者は他臓器も積極的に精査するべきであると考える.
    高齢群では限局潰瘍型が多く,高分化型腺癌が多かった.これは対照群と差はなかったものの,高齢群は肉眼型で,対照群は組織型でvariationに富む傾向であった.
    P・H・ly・vの諸因子やリンパ節転移陽性率も対照群と変わらなかったが,転移陽性例では, n1(+)にとどまる例が対照群より多かった.また深達度も対照群より軽度であることが多かった.
    以上の結果を反映して,高齢群ではstage IIIまでの比較的早期の症例が,対照群よりも多かった.
    しかし,早期例が多く,治癒切除率も対照群より若干良好であるのにもかかわらず, 5年生存率は対照群と差がなかった.これは,主として,体力的な衰ろえや,平均余命の短かさが関係するのではないかと思われた.
    それにしても,切除できれば予後を望みうる例が多いので,より一層の早期発見,慎重な管理及び術式選択により,高齢者といえども,予後をより向上させうると思われる.
  • 国府 育央, 高塚 雄一, 福島 幸男, 河原 勉, 倉田 明彦
    1986 年 47 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近経験した乳腺occult carcinomaが強く疑われた1例を,文献的考察をまじえて報告する.
    症例は56歳女性.主訴は,左腋窩リンパ節腫脹.現病歴は,昭和59年9月ごろより左腋窩リンパ節の腫脹に気付き, 11月に同部の生検にて, metastatic medullary tubular adenocarcinomaと診断された.乳房の理学的所見は,すべて正常であったが,他臓器の悪性腫瘍が臨床上否定され,かつ転移リンパ節の組織像が最も乳癌に近かったことにより,本症を乳腺occult carcinomaと診断し, 12月,左定型的乳房切断術を施行した.切除標本では,数カ所にslight atypical ductal hyperplasiaを認めるのみで,明確な癌病巣は見い出せなかった.しかし,郭清した腋窩リンパ節には, medullary tubularadenocarcinomaの転移がみられ(3/11),そのestrogen receptor, progesterone receptorは陰性であった.また, adjuvant chemo-endocrine therapyを施行し,術後11カ月現在,患者は再発なく健在である.
  • 伊藤 寿記, 中尾 量保, 宮田 正彦, 荻野 信夫, 津森 孝生, 川島 康生, 岩瀬 和裕, 金 昌雄, 北川 晃, 長谷川 順吉
    1986 年 47 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌症例における癌性胸膜炎は極めて予後不良とされている.今回我々は最近12年間に経験した乳癌による癌性胸膜炎14例について主として治療と予後との関連において検討した.乳癌手術時の病期はstage I: 1例, II: 2例, III: 4例, IV: 7例と進行癌症例が多かった.全例胸腔穿刺により癌細胞陽性であった.全身療法としてCAF療法を中心としたchemotherapyを行ない, ER(+)にはTamoxifenによるendocrine therapyを付加した.又,局所療法として全例に胸腔内局所療法を行なった.その結果14例中8例(57%)は1年以内に死亡した.この8例の内6例はER(-)であった.一方1年以上の延命例は5例あり,うち4例はER(+)であり, ER(+)症例に有効例が多い傾向を示した.又術前より癌性胸膜炎を認めるstage IV乳癌でも局在根治性を得るべく積極的に定乳切を行ない,適切な胸腔内局所療法+chemo-endocrine therapyにて, 4例中2例に1年以上の延命効果を認めた.
  • 小池 茂文, 田辺 博, 福富 督, 矢野 好弘, 広瀬 光男, 稲田 潔
    1986 年 47 巻 2 号 p. 204-211
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    デスモイドは,筋・腱膜より発生する比較的まれな腫瘍であるが,被膜を有さず,転移はしないが局所性の浸潤を示す特徴のある腫瘍である.多くは妊娠歴のある婦人の前腹壁に発生するが,腹壁外でも種々の部位,とくに肩甲帯,臀部などに時にみられる.
    岐阜大学第1外科において1972年より1984年の間に治療を受けたデスモイド腫瘍5例について検討した.男性2例,女性3例,年齢は24歳から60歳におよぶが平均年齢は49歳であった.全例において固定性の硬い増大性の腫瘤を認めた.腫瘍は, 2例では前腹壁,残りの3例ではそれぞれ側胸部,頚部,縦隔に発生していた. 3例では切除, 2例では切除後放射線治療を行った.現在,平均7年の経過観察で,全例健康で,再発の兆候を認めない.
  • 本邦報告例55例の文献的考察
    加藤 昇, 西脇 英樹, 梅山 馨, 進藤 嘉一, 正木 啓子
    1986 年 47 巻 2 号 p. 212-217
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃手術後消化性潰瘍の重篤な合併症の1つである胃空腸横行結腸瘻は,本邦では比較的まれな疾患であり,自験例も含めて55例の報告にすぎない.最近,胃切除後16年を経て吸収不良症候群を呈した胃空腸横行結腸瘻の1例を手術により治癒せしめえたので報告する.
    症例は36歳男性で, 16年前に十二指腸潰瘍のために広範囲胃切除術(Billroth II,結腸後胃空腸吻合)を受け, 5年前に輸入脚症候群のためにBraun吻合を施行された. 9ヵ月前より下痢が持続し, 6ヵ月間に約9kgの体重減少を来して本院を受診し,精査の結果,吻合部空腸から横行結腸への内瘻形成を発見され,手術にて完治し,術後2ヵ月で10kgの体重増加を認め,吸収試験にても大きく吸収が改善された.
  • 馬場 國男, 原田 幸雄, 宇野 武治, 吉村 敬三
    1986 年 47 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    部分的脂肪異栄養症の病態を呈する大網の巨大な脂肪性腫瘍を外科的に根治しえたので検討した.
    4歳男児.出産,乳児期には問題なし. 1歳半頃より発育が遅延しはじめ,次第に食事量の減少と低栄養状態が進行し,四肢の著しいるいそうがみられたので,諸検査を施行した. CTで腹腔内に脂肪様組織の異常集積像が認められたので開腹,大網の脂肪性腫瘍と判明した.これを全摘除したところ,重量1.6kgで体重の14.3%を占め,病理組織では良性の脂肪腫の集合したものであった.術後は食餌摂取量の増加もあり,短期間に急速な成長がみられ,皮下脂肪も発達,術後3年再発なく順調に経過している.
    大網のこのような腫瘍の報告は本邦第1例目と考えられ,大網膜全体に百個以上の脂肪腫が集合して発育していたことより,大網膜脂肪腫症と名付けた.
  • 池口 正英, 坂本 秀夫, 田村 英明, 村上 敏, 正木 忠夫, 谷口 遙, 前田 宏仁
    1986 年 47 巻 2 号 p. 223-228
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近10年間に経験した小腸穿孔35例について臨床的検討を加えた.
    原疾患では術後イレウス16例(45.7%), 腹部鈍的外傷10例(28.6%)ヘルニア4例(11.4%)が多かった.手術直接死亡率は6/35(17.1%)であり発症より手術までの経過時間が36時間以内であれば死亡率は4.3%であったのに対し,それ以後では41.7%と上昇した.
    原疾患が外傷やヘルニアでは比較的早期に手術がなされ予後も良好であった.術後イレウスによる腸穿孔では手術時期が遅れる傾向にあったが死亡率は6.3%と低かった.一方悪性疾患や動脈血栓症では全例死亡し予後不良であった.
    手術のきめ手となる腹腔内遊離ガス像,白血球増多(10.000以上),筋性防御の発現率は腹腔内遊離ガス34.3%,白血球増多51.4%に認められたにすぎなかったが筋性防御は85.7%に認められ,腹部所見を含めた全身状態の注意深い観察が必要であった.
  • 窪田 敬一, 河合 大郎, 長谷川 俊二, 原口 義座, 斎藤 慶一, 若林 利重
    1986 年 47 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    神経原性腸間膜腫瘍は,非常に稀れでありその報告例は少ない.最近.我々は, 2例の回腸腸間膜神経線維肉腫を経験したので報告する.症例1は, 55歳,男性.発熱,鮮血便腹痛を主訴に入院. CT,腹部超音波検査で,下腹部の充実性,一部嚢状の腫瘍,及び,肝臓の嚢腫が発見された.手術で,腫瘍は,回腸腸間膜より発生したものと確認された.病理診断は,神経線維肉腫であった.症例2は45歳,女性.腹痛を主訴に入院,腹部超音波検査で,卵巣嚢腫が疑われ,手術施行した.腫瘍は回腸腸間膜より発生したものであり,病理診断は,症例1と同様に,神経線維肉腫であった.
    自験2例の概略を述べるとともに,本疾患の画像診断を中心として,文献的考察を加えてみた.
  • 症例報告ならびに文献報告例の検討
    松井 昭彦, 岡島 邦雄, 石井 正則, 浪尾 博志, 川西 瑞哉, 藤井 康宏, 新垣 有正, 豊田 博
    1986 年 47 巻 2 号 p. 234-239
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    40歳の女性にみられた,腸重積を伴う盲腸リンパ管腫を経験した.主訴は右側腹部疝痛で,初診時,有痛性の腫瘤が右側腹部に触知された.腹部超音波, CT検査,注腸造影により,回盲部嚢腫状腫瘤を先進部とした腸重積と診断され,回盲部切除を行った.術中,総腸間膜症が認められた.腫瘤は,大きさ7×5×4cm,暗赤褐色で波動性に富む.割面は嚢状を呈し,淡黄褐色漿液性の内容液を含む.組織学的には,嚢腫性の二次的変化を伴う海綿状リンパ管腫であった,腸重積を合併した盲腸リンパ管腫の報告例は2例にすぎない.本腫瘍に腸重積を合併する要因として,腫瘍が巨大であることが考えられるが,総腸間膜症との関連性も否定できない.
  • 安積 靖友, 内藤 伸三, 福田 裕, 中山 康夫, 佐埜 勇, 藤本 彊, 春井 正資
    1986 年 47 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    私達はS状結腸ポリープによる逆行性腸重積症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は72歳の女性,腹痛と腹部膨満感を主訴として,腹部X線像で腸内ガス像に囲まれた腫瘤陰影,注腸造影で閉塞像及び棒状陰影を認め,下行結腸のイレウスと診断し開腹した.開腹所見はS状結腸が逆行性に下行結腸へ嵌入重積し,悪性腫瘍の存在も否定できず,下行結腸上部からS状結腸上部を領域リンパ節とともに切除した.切除標本では重積先進部に10.0×5.5×1.0cmの大きなポリープを認め,病理学的にはtubulovil-lous adenoma with malignant changeであった.成人腸重積症は器質的病変が誘因となる場合が多く,悪性化が疑われれば無理な整復は避け領域リンパ節の郭清を含めた腸切除を行う必要がある.
  • 加瀬 肇, 小林 一雄, 吉雄 敏文
    1986 年 47 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    尿膜管嚢腫は感染を伴うと膿瘍を形成し,外科的治療を要する.今回われわれは腹壁膿瘍で発症した化膿性尿管嚢腫の1例を経験したので報告する.
    症例. 49歳女性.昭和58年1月頃より臍下部の硬い腫瘤に気付いていたが放置.同年6月頃より臍周囲の疼痛が出現したため来院し入院となった.入院時,腹部超音波検査, CT検査を施行し化膿性尿膜管嚢腫を疑ったが,炎症症状が強かったため直ちにドレナージ術を施行した.術後瘻孔造影を施行し,臍との交通を確認し得た.炎症症状軽快後,摘出術を施行.術中の検索では臍と膀胱へ延びるcordが認められた.
    本疾患は本邦報告例は過去20年間に88例であり,比較的めずらしいが,腹部膿瘍として処理されている例も多いと思われる.腹部腫瘤で腹痛,膀胱炎様症状を認めたら本疾患も疑い,超音波検査, CT検査等で精査することが必要である.
  • 小川 弘俊, 大村 豊, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 加藤 政隆, 待木 雄一
    1986 年 47 巻 2 号 p. 250-253
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    従来無毒蛇と考えられていたヤマカガシによる蛇咬傷で,著明な出血傾向をきたし脳出血で死亡した症例を経験した.
    症例は14歳男性で,ヤマカガシに左手背を咬まれ,数十分後より頭痛が出現,続いて局所が腫脹,約16時間後より出血傾向が出現,約19時間後に昏睡状態となり,さらにその数時間後呼吸停止をきたした.頭部CTスキャンで左側頭葉および後頭葉に脳出血を認めた.交換輸血などを行ったが軽快せず,受傷後10日目に死亡した.
    ヤマカガシ咬傷では,上顎後部のDuvernoy腺より分泌される毒液が体内に入ることにより出血傾向がひきおこされる.本邦では坂本の症例以来自験例を含めて8例の報告例があり,全例に出血傾向が認められる.咬傷患者に対しては,出血傾向の出現に注意し,異常があれば早期に交換輸血や抗毒素血清の注射などが必要である.
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