日本臨床外科医学会雑誌
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47 巻, 8 号
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  • 西田 正之, 平出 星夫, 笠松 広泰, 玉熊 正悦
    1986 年 47 巻 8 号 p. 973-976
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺腫瘍の超音波像の診断基準は現在のところ主に定性的因子で構成されている.乳腺超音波像をコンピュータを用いて画像処理し,(輪郭線の長さ)2/(腫瘍面積)なるパラメータを算出したところ,腫瘍の形態の複雑度が充分に数量的に表現されると考えられ,有意差をもって良性疾患では低値を示し,悪性疾患では高値を示す結果を得た,同パラメータは乳腺腫瘍の形態の複雑度を表現する客観的パラメータとして有用と考えた.
  • 種本 和雄, 畑 隆登, 津島 義正, 小長 英二, 井出 愛邦
    1986 年 47 巻 8 号 p. 977-985
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    75歳の高齢者左房粘液腫2症例に対して体外循環下に摘出術を行い良好に経過したので報告し,併せて本邦報告摘出例を文献的に集計した. 1960年に本邦最初の摘出手術成功例が報告されて以来, 1984年末までの25年間の心臓粘液腫本邦報告摘出例は379例で,そのうち5例に再発が報告されている.手術症例数は1975年を境に飛躍的に伸び,同時に手術死亡率も著明に低下している.平均年齢は44.3歳で,男女比は1:1.37と女性にやや多かった.腫瘍の発生部位は左心房が最も多く86.8%を占め,次いで右心房の8.5%,右心室の3.4%,左心室の1.3%であった.術前に塞栓症を合併した症例は60例あり,脳・下肢に塞栓症を起こしたものが多かった.摘出腫瘍は重量・長径ともに右心房のものが左心房のものに比して勝っていた.術式に関しては完全に再発を防ぐことは難しいが,若年者では特に,心房中隔を含めて十分に切除し術後厳重に経過観察することが重要と思われた.
  • 町 淳二, 武田 仁良, 掛川 暉夫
    1986 年 47 巻 8 号 p. 986-990
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆道系手術に際して,術中超音波検査が従来の術中胆道造影にどの程度代用可能か検討した.術中超音波検査をルーチンに施行した胆道系手術580例において,胆管結石に対する両検査法の敏感度,特異度,正確度,陰性所見適中率は同等に高値を示した.一方,術中超音波検査の陽性所見適中率(94.1%)は術中胆道造影(71.4%)より有意に優れていた.次に,術中胆道造影の使用頻度は,前半の380例では315例(82.9%)であったが,後半の200例では53例(26.5%)に減少できた.後半200例における胆管結石陽性率(90.9%)は前半380例での率(88.3%)と有意差はなかった.術中超音波検査は術中胆道造影に対して,精度が優れる上,安全性が高い,侵襲が少ない,手技も簡単で確実性に富むという優位性を有する.今回の検討を通して,胆道系手術の7割近くの症例では,従来の術中胆道造影の代用として,術中胆道超音波検査のみで手術を完了できると結論する.
  • 石山 秀一, 八木 聡, 飯澤 肇, 薄場 修, 坂井 庸祐, 川村 博司, 亀山 仁一, 塚本 長
    1986 年 47 巻 8 号 p. 991-996
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部重症感染症例12例,肝硬変症例32例,および対照として食道癌症例11例の術後循環動態を比較検討した.重症感染症や肝硬変症では心拍出量の増加,末梢血管抵抗の低下を特徴とするhyperdynamic stateをとることが多かったが特に肝硬変症で著明であった.また,両者において末梢での酸素需給状態に異常がみられ,酸素運搬能は保たれていても酸素消費量は低値を示した.重症感染症では特にhypodynamic stateに陥った時や術直後にこの酸素消費量の減少が著明であり,細胞障害の存在が示唆された.また,重症感染症や肝硬変症の術後管理におけるhyperdynamic stateの重要性を再認識した.
  • 至適輸血量決定のために
    幕内 雅敏, 宅間 哲雄, 石山 秀一, 山崎 晋, 長谷川 博
    1986 年 47 巻 8 号 p. 997-1002
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝硬変合併肝癌切除例で輸血を行わなかった14例と,輸血を行った例で出血量,肝切除標本重量,リスクスコアがほぼ同等となるように13例を選択して,両群を比較した.輸血群は無輸血群に対して術後のヘマトクリット値(Ht値),ヘモグロビン値,血清総ビリルビン値,血清LDH値は有意に高値を示した.血清GOT, GPT値には差はなく,血小板数は無輸血群で高値を示したが有意差は認められなかった. Ht値は輸血群で27.0%無輸血群で26.1%に低下し,両群間に差はなく,また無輸血群ではHt値20%まで低下した例があったが臨床上問題はなかった.
    以上より,肝硬変合併肝癌の肝切除後では血清総ビリルピン値の上昇,術後の血行動態から考えてHt値20%までは輸血をせずに血漿で置き換えた方が良いと思われた.
  • 特にUS, CT, 選択的血管造影法について
    佐藤 茂樹
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1003-1018
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1978~1984年に経験した膵癌72例を対象として施行した超音波断層(US), コンピュータ断層(CT), 選択的腹部血管造影(SAG)の所見をもとに「膵癌取扱い規約」に則って総合的に進行度を判定し,肉眼的進行度との比較を行った.また切除22例については組織学的にretrospectiveな検討を行った.各検査法はその特性上の得失があり各因子によって有効性に差がみられた.径2cm以下の腫瘍描出能はUS, SAGが,全体的な把握にはCTが優れていたが, S2以下の被膜浸潤に関してはいずれも判定が困難であった.リンパ節の描出にはUS, CTが優れていたが陽性か否かの判定は困難であった.術式決定は総合判定によったが,脈管,周囲臓器に対する浸潤は標準術式で切除される範囲内であれば制限を受けず,総肝,脾動脈同時浸潤や3cm以下の門脈浸潤例でもApplebyや門脈再建などの拡大術式により切除可能であることを知った.
  • 帆刈 睦男, 高尾 資朗, 高場 利博
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1019-1030
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去10年間に, Endotoxin血症を示した急性腹症手術例は98例であった.このうち,初診時ショックを示したが術後生存した13例をA群,術後死亡した28例をB群,初診時ショック症状を示さず術後も生存した33例をC群として計74例について,血中Endotoxinの消長と重要臓器機能のparameterの時間的推移とを3群間で比較検討した.
    98例中41例(42%)が初診時ショックを示し,この群の死亡率は68%と高く,とくに膵・胆道系疾患の予後は不良であった.また死亡例の血中Endotoxin濃度は高く,ショック発現に関与することが示された.生存例では術後5病日でEndotoxinは陰性化するが,死亡例では陰性化しないまま経過する.呼吸器障害を最多とした多彩な合併症がみられたが,ショック例に多く, Endotoxinの消長と関連した.術後6時間以内の循環動態の改善は以後の経過に好結果をもたらし,予後改善の面で大きな因子であり,術前からの循環動態の補正の重要性が窺われた.
  • 松下 昌裕, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 深田 伸二, 石橋 宏之, 加藤 純爾, 神田 裕, 小田 高司, 原川 伊寿
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1031-1038
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性後腹膜腫瘍15例と原発性腸間膜腫瘍6例について検討した.後腹膜腔と腸間膜は発生学的に同一臓器であるため,組織型は類似しており, 21例の組織型は,悪性リンパ腫4例,平滑筋肉腫3例,脂肪肉腫3例,粘液嚢胞腺癌2例,脂肪腫1例,奇形腫3例,嚢胞5例で,悪性腫瘍が57%を占めた.主訴は81%が腹部腫瘤であり, 90%が初診時に腹部腫瘤を触れた.術前に, CTを16例, USを15例,血管撮影を13例に施行したが,術前診断にはCTが最も有効であった.これらの検査の組合わせにより,後腹膜腫瘍の93%, 腸間膜腫瘍の33%が術前診断可能で,とくに,奇形腫,嚢胞,脂肪腫,平滑筋肉腫では,組織型の推定も可能であった.悪性腫瘍12例の予後は,悪性リンパ腫は4例死亡,平滑筋肉腫は1例生存中で2例死亡,脂肪肉腫は2例生存中で1例死亡,粘液嚢胞腺癌は2例生存中であり,全体の3年累積生存率は47.6%であった.
  • 前浦 義市, 弥生 恵司, 稲治 英生, 森 武貞
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1039-1043
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当教室で経験した6例の乳癌術後の胸骨労再発症例について臨床的検討を行なった.胸骨労リンパ節再発は全再発症例156例の3.8%であり,術後の無病期間は平均80カ月(23カ月-138カ月)であった.初回手術時の所見では,腫瘤が内側のものが4例,外側が2例であり,内側腫瘤例はStageの早い症例であり再発迄の期間はいずれも5年以上であった.これは初回時に胸骨勇リンパ節転移があってもそれが臨床的に見いだされる迄には,かなりの時間を要することを示している.全例に全身的に化学-内分泌療法が行なわれたが,局所に対しては, 1例に照射療法, 2例に局所胸壁切除, 2例に内胸動脈よりの動注療法+胸壁切除が行なわれた.局所の制御はいずれの例でも可能であったが,再発後の予後は遠隔転移の合併に影響された.
  • 井上 雅晴, 田中 勲, 槇島 敏治, 渡辺 幸康, 笠原 大城
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1044-1048
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌の手術を受けた後,胸骨に転移を来した3症例に胸骨切除を行った,胸骨再建にはMarlex meshを二層に用いる方法を試みた.術後の呼吸・循環障害はもとより,創部の陥凹も起していない.術後3年2カ月,再発を見ない1例を経験している.転移性胸骨腫瘍に対する外科療法は,もっと積極的に行われてもよいのではないかと考える.
  • とくに診断と治療について
    中井 健裕, 勝見 正治, 田伏 克惇, 田伏 洋治, 永井 祐吾, 上畑 清文, 松本 幸子
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1049-1054
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な胃血管性病変の2例を経験したので報告する.
    第1例は, 36歳の主婦で主訴は心窩部痛.胃X線,胃内視鏡,超音波内視鏡等の検査により胃血管腫と診断し,機能温存を目的に幽門括約筋保存胃半切除術を施行した.病理組織診断は,海綿状血管腫であった.
    第2例は,58歳の主婦で主訴は貧血.舌及び前胸部に赤色の斑点が散発性に存在し,家族歴として同様の斑点を長男の舌にも認めた.便潜血は陽性で,内視鏡検査では,腹部食道から胃内にかけてtelangiectasiaが多発しており, Osler-Rendu-Weber diseaseと診断した.なお,胃癌を合併していたため,胃亜全摘術を施行し,残存したtelangiectasiaに対しては,マイクロ波凝固治療を加えた.
    消化管血管性病変は,大別してhemangiomaとtelangiectasiaに分類される. hemangiomaの診断には,血管造影が最も診断的価値が高いとされているが,著者らは,補助診断法として,超音波内視鏡が有用であると考える.
    telangiectasiaは,多発性の場合が多く,最近はレーザー等による内視鏡的治療が主流であるが,マイクロ波凝固を用いた治療も有用な一治療手段になり得ると考える.
  • 田中 肇, 浅田 健蔵, 十倉 寛治, 仲田 文造, 笛吹 高志, 谷浦 賢, 樽谷 英二, 冬広 雄一, 中上 健, 柳 善佑, 竹林 淳 ...
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1055-1059
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部単純写真にて石灰沈着を確認しえた胃癌例は比較的稀で,自験例を含め,欧米33例,本邦21例の計54例にすぎない.
    症例は,嚥下困難を主訴とする62歳男性で,腹部単純写真にて左上腹部に小斑点状石灰化陰影がみられ,胃腸透視・CT・胃カメラで診断された胃癌に一致してその石灰化がみられることが確認された.胃切除術を施行,腫瘍は胃噴門部を中心に一部食道へ侵潤する手拳大の進行癌で組織型は膠様腺癌であった.
    本症は報告例全例が膠様腺癌の組織型でかつ進行癌であり,この共通点に石灰沈着の機序があるものと思われ,その点につき文献的考察を行なった.
  • 森山 堅重, 大和田 晴彦, 竹中 文良
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1060-1062
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回我々はWhipple術後20年経た三重複癌としての残胃早期癌の1例を経験した.
    症例は72歳,女性. 31年前に結腸癌の手術, 20年前に十二指腸癌のためWhippleの手術を受けている.昭和60年1月,内視鏡検査で残胃に変化を認め,生検の結果, Grup Vと診断された,手術は残胃全別, Roux-Y吻合, H0P0S0N0,切除標本では残胃小弯に,吻合部に近接して浅い陥凹性病変を認めた.病理組織学的には中分化型腺癌で, IIC早期癌であった,
    陥凹型残胃早期癌は比較的稀なもので,ことに本症例は結腸癌術後30年Whipple術後20年目に発生した,まれな異時性三重複癌の症例である,
    文献的考察を加えて報告する.
  • 内田 雄三, 友成 一英, 安永 昭, 村上 信一, 藤富 豊, 田中 康一, 柴田 興彦, 調 亟治, 中嶋 彰久
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1063-1067
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    残胃に発生した平滑筋肉腫は稀であり,本邦においては,本症例を含めて6例の報告がみられるのみである.
    症例は71歳女性で, 11年前に胃潰瘍に対して胃切除術(Billroth I法)を受けており,上腹部痛を主訴として入院した.上部消化管造影,胃内視鏡検査, CTスキャンによって,残胃の粘膜下腫瘍と診断された.腹腔動脈造影で,腫瘍に一致してhypervascularityがみられ,腫瘍は左胃動脈および短胃動脈から血液供給を受けていることが証明された.切除標本で,腫瘍は16×11×8cm大であり,胃外型発育を示した.腫瘍の粘膜面に潰瘍形成はみられなかった.この腫瘍は組織学的に平滑筋肉腫と診断された.残胃全摘後11カ月目に肝転移が明らかとなった.
    残胃に発生した平滑筋肉腫の臨床的ならびに病理学的特徴は非切除胃に発生した平滑筋肉腫の特徴とほとんど同じであった.
  • 田口 康正, 炭山 嘉伸, 長尾 二郎, 本庄 哲也, 鶴見 清彦
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1068-1072
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    非外傷性腹腔内出血のうちabdominal apoplexyは脳血管障害によるapoplexyと対比される稀れな病態で,術前診断も困難なことが多く,多くは腹腔内動脈の特発的破綻であり,その原因としては動脈瘤形成や動脈壁の脆弱化などがあげられている.今回我々は血管造影にて出血部位を確認しえたabdominal apoplexyと思われる1例を経験したので報告する.
    症例は62歳男性.主訴は意識喪失,血圧低下である.入院後腹満感,腹痛出現し,虫垂炎の疑いで開腹術施行,腹腔内出血判明するも,出血部位確認できず,ドレナージ留置にて経過観察されていたが,再出血著明となり緊急血管造影で出血部位を確認,止血可能となった.腹腔内出血において血管造影が有効であった1例を経験したので若干の診断的考察を加え報告した.
  • 石賀 信史, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 北村 彰英, 金本 裕吉, 金川 泰一郎, 半田 斉
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1073-1078
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    29歳男性の血友病A患者における胆石症の1手術例を経験した.
    患者は右季肋部痛を主訴に来院し,排泄性胆道造影,超音波検査にて胆嚢結石を指摘された.第VIII因子製剤輸注試験を行い,患者血中に第VIII因子阻害物質はなく,第VIII因子製剤の半減期が約6~7時間であることを確認した.術直前に,第VIII因子製剤を投与し第VIII因子活性レベルを100%以上に保った後胆嚢摘出術を行った.術中術後の第VIII因子活性レベルを術中~術後1日目は100%,術後2日目~7日目は40%, 術後8日目~創治癒までは20%に維持すべき補充療法を行ったが,術後特に異常出血なく経過した.第VIII因子製剤の副作用として,高フィブリノーゲン血症,非A非B型肝炎を認めたが,共に軽快し術後36日目に退院した.
  • 小暮 公孝, 石崎 政利, 加藤 良二, 根本 雅明, 正田 弘一, 中野 眼一, 長町 幸雄, 中村 卓次, 都築 靖, 中村 茂
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1079-1087
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1980~1985年の5年間に群馬大学第1外科で行われた胃癌,大腸癌肝転移切除例は14例である.胃癌肝転移症例は4例(男3, 女1, 平均66歳)で,そのうち遠隔転移2例,連続浸潤2例であった.また大腸癌肝転移症例は10例(男8,女2,平均56歳)であり,そのうち5例の同時性肝転移切除例中4例が右側大腸癌からの転移で1例が肝曲部からの直接浸潤であった.
    また5例の異時性大腸癌肝転移症例はすべて左側結腸癌からの転移であった.
    初回手術から転移巣切除までは1年4カ月~3年10カ月を要した.診断には,血清CEA値,超音波検査, CT, 血管造影が有効であった.
    1975~1980年の5年間に当科に入院した胃癌231例,大腸癌116例中,肝転移を有した症例は各々35例, 12例であった.そのうち肝転移巣切除可能症例は各々3例存在した.
    転移性肝癌に関しては可能な限り切除することで良好な予後を期待できると考えられた.
  • 田伏 洋治, 田伏 克惇, 森 一成, 小林 康人, 永井 祐吾, 山上 裕機, 上畑 清文, 柏木 秀夫, 寺下 史朗, 滝藤 克也, 勝 ...
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1088-1091
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    71歳,女性で胆嚢癌との術前鑑別診断が困難であった1例を経験したので報告する.本症例は発熱,疼痛といった胆石症の主症状の既往が全くなく, US, CTで胆嚢内に腫瘤エコーが認められ,術前診断を胆嚢癌として手術を施行した.術中所見では胆嚢に腫瘤はなく,内腔に胆泥が充満していた.胆摘術が施行されたが,胆嚢壁の組織診断は慢性胆嚢炎,胆泥の成分は稀な脂肪酸石灰石であった.
  • 舘野 哲也, 加藤 貴史, 川嶋 昭, 日下部 輝夫
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1092-1095
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回,内視鏡的膵胆管造影(ERCP)により明らかに胆嚢被覆穿孔と診断し,手術を容易に施行し得た症例を経験した.
    症例は, 55歳女性で,右季助部痛を主訴として来院.来院時,軽度の炎症所見と腹部X線単純写真にて右上腹部に結石像を認めたため,胆石胆嚢炎の診断にて入院となった.数日間の保存的治療の後, ERCPを施行したところ,明らかに穿孔と思われる胆嚢頚部からの造影剤の漏出像と,その像に恒常性を認めたため,胆嚢被覆穿孔と診断し,手術を施行した.
  • 自験例および本邦集計例の検討
    山崎 安信, 犬尾 武彦, 釼持 誠, 池田 典次, 香川 和子, 土橋 光俊, 亀田 陽一, 永岡 貞男, 増田 英明
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1096-1101
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵の乳頭嚢胞状腫瘍(papillary-cystic neoplasm of the pancreas)は,若年女子に好発する特異な膵腫瘍である.われわれは,本症の1手術治験例を経験したので報告する.また,本邦における報告例を集計し若干の文献的検討を加える.症例は14歳,女子で,タンパク尿を認め治療中,上腹部痛が出現し精査の結果,膵尾部に腫瘍を認めた.血管造影上,膵尾部のhypovascularな腫瘤が脾動脈,下膵動脈を圧排しており,腹部CT上では腫瘍性嚢胞の所見を認めた.腫瘍性膵嚢胞の診断で,膵体尾部切除・脾摘除術を行った.病理組織学的に膵乳頭嚢胞状腫瘍と診断された.本腫瘍の本邦報告例では10歳台に多く,発生部位では頭部に多い傾向がある.腫瘍の完全切除を行えぽ予後は良好で, 10年以上再発のない例もある.しかし, 2例に肝転移を認め,その1例が死亡している.
  • 松田 真佐男, 小谷 勝祥, 伊藤 正光, 瀬尾 孝彦, 津田 憲一, 井垣 啓, 小木曽 清二, 石榑 秀勝
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1102-1110
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近4年間に門脈圧亢進症および血液疾患13例に脾摘術を施行し, 2例に術後門脈血栓症を経験した.症例1は63歳,女性,真性多血症.脾摘後2日目に超音波検査にて多量の門脈血栓を発見し,血栓除去および脾静脈結紮を行ない,良好な経過を得た.症例2は46歳,男性,食道静脈瘤.脾摘後8日目に超音波検査にて門脈血栓を認めるも経過観察.血栓の増量に伴ない肝不全,腹水増量,消化管出血を認めたが,結果的には抗凝固,線溶療法にて血栓の消失をみた.
    門脈圧亢進症や血液疾患における脾摘後門脈血栓症は,予想以上に高頻度に発生するものであり,超音波検査を中心に早期発見に努めるとともに,抗凝固線溶療法あるいは血栓除去術による積極的治療が肝要である.また本症の主原因は遺残脾静脈内での血液うっ滞と考えられ,その予防には脾静脈の下腸間膜静脈合流部直前での結紮が最も有効と考えられる.
  • 喜多 豊志, 石田 亘宏, 吉峰 修時, 冨田 隆, 日高 直昭
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1111-1114
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膀胱,回腸浸潤により血尿,イレウス症状を呈した虫垂癌の1例を経験した.症例は57歳,女性.主訴は腹痛と血尿で,イレウス治療中膀胱鏡検査で膀胱内腔に乳頭状腫瘤を認め,生検で乳頭状腺癌,イレウス軽快せず手術施行,虫垂に鶏卵大腫瘤を認め,回腸,膀胱に浸潤しており,リンパ節郭清を伴う右半結腸切除および膀胱部分切除施行.腫瘍の大きさは5×4cmで,組織学的には高分化型乳頭状腺癌,膀胱,回腸へ浸潤していたが摘出リンパ節には転移を認めなかった.膀胱浸潤を示した虫垂癌症例は,我々の調べ得た限りでは6例にすぎず,なかでも術前に診断されたものは少ない.
  • 松山 毅彦, 康 聖栄, 久保田 光博, 金 大栄, 町村 貴郎, 野登 隆, 中崎 久雄, 田島 知郎, 三富 利夫, 永倉 貢一
    1986 年 47 巻 8 号 p. 1115-1119
    発行日: 1986/08/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は,皮下腫瘤を主訴として来院したマンソン孤虫症を経験した.症例は40歳男性,家族歴,既往歴に特記すべきことはないが,食歴として鶏肉を生で食べることがたびたびある.右側腹部に母指頭大の腫瘤を認め,腫瘤摘出術を行ったところ,マンソン孤虫を発見した.マンソン孤虫のヒトへの侵入経路は(1)Procercoidを宿したケンミジンコを飲料水とともに飲んだ場合,(2)Plerocercoidを宿した第2中間宿主の肉を生で後べた場合,(3)民間療法としてヘビやカエルの肉や皮を肌に貼布する習慣等の場合があり,自験例では(2)と推測された.また, 1985年10月までのマンソン孤虫症の本邦報告例301例につき検討した.それによると,男性に多く, 21歳から50歳までに多い.寄生部位は腹部が多い.最近3年間については, 21歳から50歳までの男性では,カエルを食べた例が多く,女性では感染源不明な例が多い.よって,鑑別困難な皮下腫瘤を見た場合には考慮してもよい疾患であろう.
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